2019年に創業20周年目を迎えた株式会社エスネットワークス(以下、エスネットワークス)は、主に財務会計面にフォーカスしたコンサルティングファーム。クライアントの多くは中小企業やベンチャー企業で、各社の抱える各種経営課題を解決すべく、同社メンバーが常駐型で業務にあたる実務実行支援型コンサルティングサービスを提供しています。業容拡大や社員増加にともない、人員の適材適所の配置や活用をはじめ、海外拠点をもカバーするタレントマネジメントなど、包括的な人材管理データの整備、可視化・共有が必須となった同社が選んだのが「カオナビ」。その導入効果と活用法を紹介します。
エスネットワークスの「ハンズオンコンサルティング」とは?
クライアントに常駐し解決までの実務実行支援を行う
謝 博文様(以下、謝様):日本の企業のうち、99%を占めているのが中小企業です。企業の規模によっては人員不足が深刻で、一人が複数のポジション、業務を兼業するケースが多くあります。財務会計に関しても専任者がいない、また、いたとしても財務会計の視点から所属企業にどのような付加価値をもたらすのか、創造するところまで踏み込むことが難しい状況が出ています。
こうした案件に対して解決策を提示することに留まらないのが私たちのスタイルです。クライアントの「実際に一緒に取り組んでくれる人が欲しい」というご要望に寄り添い、私たちはクライアント先に常駐し、お客様と一緒に解決をおこなっています。これがハンズオン、実務実行支援型のコンサルティングサービスと私たちは位置付けています。
企業の課題・成長フェーズに応じてチームで対応
角田 透様(以下、角田様):創業期から成長期にかけて、アイデアやサービスはあっても軍資金がないという時の資金調達、成長期の株式公開に向けてのサポート、さらに外部の証券会社や投資会社とのコングロマリットによる支援を行っています。また、成熟期にはM&A戦略で企業のさらなる成長をサポートしています。企業が成長していく過程で直面する経営課題は多彩です。私たちは、こうした企業のライフサイクルにおけるさまざまなフェーズに対応する専門のチームを適宜編成し、クライアントに専任メンバーが赴いてクライアントの課題解決に現場で取り組んでいます。
「カオナビ」導入にいたった、エスネットワークスの人事管理の課題
一人ひとりにフォーカスできる人材管理が必要
角田様:メンバーの知識と経験を磨き、プロのコンサルタントを育てていくために、新卒入社者は3年間のジョブローテーションを実施しています。ところがここ数年、入社者が年間で30〜50人(うち、新卒入社は10名前後)と社員数が大幅な増加傾向であること、またクライアント拠点にメンバーが赴く就業スタイルのため、プロジェクトのアサインを決定する各部門責任者のメンバーの把握は容易ではなく、「社員の顔と名前が一致しない」状態になりつつあります。これらのことから効果的な教育や配置を行うためにも、適切な人事管理体制の構築は急務となってきました。
解決すべき課題−1 人材管理ツール導入による的確な業務アサイン
角田様:実は我が社には人材管理に特化した仕組みがなく、創業来20年が経過してもプリミティブな管理手法に終始していたというのが実情です。さらに現場のプロジェクトを部門横断的に管理する仕組みもなく、プロジェクトのアサインなどに関してマネジメントレイヤーによる職人的な采配でやりくりしてきたような状態でした。この属人的な仕組みのままでは当社のこれまで以上のスケーリングは覚束ない状態であることは勿論、メンバーと業務のミスマッチが起こり、個々の能力を十分に活かす機会の損失になりかねません。
解決すべき課題−2 残業管理による適正な「働き方」の推進
角田様:国を挙げて「働き方改革」が推進されている昨今、コンプライアンス遵守やSDGs経営促進の観点からも、残業時間の管理は私たちにとっても重要課題となっています。コンサルティングという仕事、ましてやハンズオンでは、どうしてもクライアントの意向を最優先する傾向が強くなり、ともすれば超過勤務に陥りがちです。メンバー自身に時間管理の意識を持たせ、適正な「働き方」をしてもらうには、誰が働きすぎているのかがパッとわかるソリューションの導入こそが効果的ではないかと考えていました。
多数の取引先企業から評判を聞き、「カオナビ」の「顔と名前の一致」に納得
角田様:これまでもいくつかの人材管理ソリューションを検討・運用してみましたが、フォーマットの自由度が少なかったり、社内で浸透しなかったりと、当社にとって使いやすいものがなかなか見つかりませんでした。そんな時、多数のクライアント企業が「カオナビ」を使っているという情報が耳に入ってきたのです。またメンバーからも「自分が関わっている案件3社すべてで『カオナビ』を使っている。操作させてもらったところ、とても便利だった。当社でもこういうソリューションがあるといいのに」という声が上がりました。
実際に「カオナビ」を試してみて、「顔と名前が一致するというのはこういうことなのか!」と実感しました。本当に驚かされましたね。そして「カオナビ」こそが、私たちが抱えている課題を解決してくれるソリューションだと確信したのです。役員会議のプレゼンテーションでは、パワーポイントによる説明だけでは足りないと思い、私が実際に「カオナビ」を操作して、ジョブローテーションのシミュレーションを実演してみせました。やはりビジュアルでの訴求力は絶大で、経営陣はすぐにその効果に納得しました。経営陣にとっては何度も説明を重ねるよりも、パッと見てわかるということが重要なポイントです。そういう点でも、「カオナビ」は理想的なシステムでしたね。
「カオナビ」を活用した課題解決と展望
基本情報を保管する「人事奉行」に対して「カオナビ」は“フロー”で活用する
角田様:「カオナビ」導入にあたっては、まず人事の管理機能としての役割を優先し、マネジメントレイヤーの使い勝手を考えて設定することからはじめました。すでに当社では人事情報のデータベースとして「人事奉行」を採用しています。「人事奉行」には社員の基本情報を記録しており、「カオナビ」では「人事奉行」に格納されないような情報、たとえば評価や案件の経緯、経験など、その都度更新していく“フロー”的な情報を管理し、柔軟に運用していくようにしました。
ジョブローテーション会議の時間が約3分の1に短縮
角田様:「カオナビ」が大活躍したのが、先にお話ししたジョブローテーションの会議でした。「カオナビ」導入前は、ホワイトボードに部署名をすべてリストアップし、マグネットで氏名などを記入したチップを動かしながら、手作業で異動のシミュレーションをしていたのです。一人を動かすと玉突きのように動いていくため、相当時間がかかっていました。マネジメントレイヤー12名で、毎年3回、各2時間は費やしていたでしょうか。頼りになるのは彼らの記憶とカンだけという、超アナログで煩雑な作業でしたね。
「カオナビ」導入後は、2台のテレビ会議システムと3台のモニタを用意して開催。モニタの1台目に「カオナビ」の社員データベース機能PROFILE BOOKで顔写真と現所属を、もう1台には事前に行った面談結果を表示。残りの1台でSHUFFLE FACEのマトリクス機能とPICKUP LISTを使って配属のシミュレーションをしていくというやり方にしました。「カオナビ」の各機能と3台のモニタをリンクさせながら作業したところ、なんと1回目の約1.5時間で、ほぼ8割の作業が終了してしまったのです。従って2回目は微調整のみ。あまりに時間が短縮してしまい不安になるほどでした。
会議では、「カオナビ」の最大の魅力である「顔が見える」ことが非常に大きなアドバンテージになりました。特に事前面談でのデータに関しては、顔と名前を一致させることで、各人のキャリア志向や配置希望をより明確に把握できるようになり、効果的なジョブローテーションを組めるようになりましたね。このことはメンバーのモチベーションやパフォーマンスの向上につながるだけでなく、最終的にエンゲージメントを高めることにもなるのではないかと期待しています。
残業時間を可視化し効果的に短縮につなげる
角田様:残業時間の管理については、勤怠システムからのデータを「カオナビ」に反映し、月次ベースで全メンバーの勤務時間データをマネジメントレイヤーに提出しています。「カオナビ」は簡単にデータをまとめることができ、残業時間の推移や比較が一目でわかるので便利ですね。ハンズオンのメンバーが多いので、このデータは各人の働き方を把握するための重要な素材となります。なぜ残業してしまうのかを推察し、仕事時間のコントロールにつなげています。「働き方」にまで目を配れるようになったのは大きな成果です。
残業時間は2015年度の平均が月36時間、直近では平均月24時間まで徐々に減少してきています。緩やかな下降ですが、管理する方もされる方にも無理のない推移ではないかと思います。
謝様:生産性の管理を突き詰めていくと、クライアント企業からの「期待値コントロール」にも取り組んでいく時期が来ると思っています。クライアント企業の要望とメンバーのスキル、仕事量に不均衡はないか。次第に高くなっていくクライアントの期待値に応えようとして超過勤務が発生し、アウトプットは産み出せず生産性も低下することにならないように、メンバー各位のスキルセットを把握しておきたいと思います。こうしたデータも「カオナビ」に蓄積して、メンバーのキャリア育成継続に役立てていきたいですね。
「カオナビ」の登録写真にこだわりあり
角田様:現在、「カオナビ」に登録しているメンバーの数は約300人。各人の顔写真は、PROFILE BOOK、 SYNAPSE TREE、SHUFFLE FACE、PICKUP LISTなどさまざまな機能で使われますが、私たちは全員の写真を必ず社内で撮影し、背景をカットするようにしています。これは服装や背景、撮影条件、さらに言えば表情が異なることにより、評価や判断に何らかのバイアスがかかってしまうことを極力回避するためです。またプレゼンテーション等に用いる宣材資料としても顔写真は欠かせませんが、その際のストックとしても二次利用しています。
今後の活用について
社内コミュニケーション促進や海外での人事管理ツールとしても期待
角田様:「カオナビ」導入当初の優先事項だったマネジメントレイヤーの使い勝手については申し分ありませんので、次はメンバー間のコミュニケーションを促進するツールとしてもどんどん利用していきたいですね。クライアント先で仕事をするハンズオンという性質上、手薄になりがちな社内コミュニケーションの深化や醸成に関しては特に注力しており、「カオナビ」に搭載されている性格診断テストの「エニアグラム」なども、その一環として活用できればと思索を巡らせています。また2008年のベトナム社会主義共和国進出を皮切りに、現在も年々海外拠点を拡大しており、海外進出を検討する日本企業の現地でのサポートや、現地採用メンバーのマネジメントも今後の重要な課題です。「カオナビ」で既存のシステムやデータベースと連携し、各種の管理をシームレスにつなげていきたいですね。
- 設立
- 1999年10月
- 資本金
- 5億6,700万円
- 社員数
- 310人 *2019年8月現在
- 事業内容
- 組織再編支援/経理・財務・経営企画支援/PDCAサイクル構築支援/SCAN(企業診断サービス)/新規株式公開(IPO)支援/MBO支援/事業承継 支援/企業再生支援/M&Aプロセス支援(セルサイド・バイサイド)/経営統合支援(PMI)/フィナンシャルアドバイザリー/アジア進出支援/人事制度構築支援