課題
- 国内8社のグループ会社の枠を超えた情報共有が難しい
- 既存システムから情報が取り出しにくく個別のタレントマネジメントが難しい
活用法
- グループ全社でカオナビを導入し、データ定義を整理して一元化
- ラーニングライブラリで各自に合った研修を手軽に選択
効果
- 情報を可視化し現場・人事双方がラフに情報を取れるようになった
- 事業会社の枠を超えたジョブマッチングのためのインフラを整備
自動車、ビルや戸建て住宅などの建物、橋梁などの大型構造物、新幹線や大型機械、船舶、オフィス用品に至るまで、幅広い領域で多彩な事業を展開する日本ペイントグループ。2024年からは、事業会社全体の人事情報をカオナビに統合しています。
事業会社の壁を越え、変化する時代に合わせた人材育成を、カオナビを通じてどう実現していくのか。日本ペイントコーポレートソリューションズ 人事部 人事室の小野葵様、後藤あゆ様に伺いました。
※本記事の掲載内容は全て取材時(2024年7月1日)現在の情報に基づいています。
グループ横断で、誰でも使いやすい人事情報データベースが必要だった
––カオナビ導入に至った前提としてどのような課題があったのでしょうか。
後藤様:
カオナビで実現したかったことは大きく3つあります。
一つ目は、社員コミュニケーションの活性化です。
当社国内グループは8社あり、会社をまたぐ人材情報が把握しづらい状況になっていました。そこで、組織の枠組みを超えた情報共有の仕組みが必要だったのです。
二つ目は、上司・部下間のコミュニケーションと現場でのタレントマネジメント促進です。
社員ニーズや働き方の多様化を背景に、上司には部下一人ひとりに合わせたマネジメントが求められます。そのために、現場社員でも活用できる人材データベースの構築は必要不可欠です。
従来のシステムは人事専用のシステムという側面が強く、現場社員でもなじみやすいシステムが必要でした。
三つ目は、人事・経営に向けた人材情報の可視化です。
職位、職務経歴、勤続年数、業績評価など、昇格や異動の検討に用いる資料を、従来はExcelで作成していました。しかし、基本情報のほかにも把握すべき情報が多く、シートが見づらくなっていました。作成の手間を削減し、分かりやすく情報を可視化できるツールがあれば、と常々考えていたんです。
小野様:
もともとグループ会社8社のうちの1社で先行してカオナビを導入しており、顔写真をキーにした親しみやすさと、社員目線で使いやすいUIが好評でした。
そこで、上記課題を解決するためにグループ全体でのカオナビ導入を決めました。
グループ全体の情報一元化で、一歩先の人事施策実現へ
––組織を超えた情報把握が難しかったとのことですが、具体的にどのような課題がありましたか?
小野様:
たとえばグループ内のA社とB社でほとんど同じ内容の研修をしていたり、そもそも職種別の研修は人事側で把握していなかったりと効率的に進められないという課題があります。
現在は職種別研修の履歴や1on1の面談記録を人事が集約することで、近年増えていた「グループ全体のデータが見たい」という経営層の要望にも手軽に応えられるようデータ整備をしています。
––グループ全体で運用するために工夫されたことはありますか?
小野様:
以前は事業会社ごとに別のシステムを使っており、会社ごとに情報を蓄積していました。
まずは情報の一元化が一番のニーズでしたので、バラバラだったデータの定義から整理しなおし、移行もスムーズになるよう工夫しました。
「カオナビを見れば情報がすべてまとまっている」状態にできたので、私たちのようなグループ全体を見る従業員はもちろん、各社の人事担当や管理職にとっても、工数削減と負担軽減が叶いました。
––グループ内で組織を超えた横断人事はケースとしてありますか?
小野様:
会社を横断する異動の事例は過去からありましたが、近年の会社体制では組織を超えた異動が減っていました。今後は組織を超えたジョブマッチングにさらに力を入れていく方針です。
カオナビを活用して、職務経験・業界経験などのスキル情報と、グループのコンピテンシーやフレームワークの達成度合いの両面で情報を把握したいと考えています。そうすることで「この事業会社のこのポジションには、どの条件が必要か」といった視点でジョブマッチングを検討できます。
現在、年齢・性別・社員グレード・勤続年数といった、人的資本の情報開示に必要な情報を集計し、カオナビのダッシュボード機能でまとめている最中です。今後はこの情報を、横断人事をはじめとして積極的に活用したいですね。
学習管理機能でより“個”にフォーカスした研修制度を実現
––よく使われているカオナビの機能を教えてください。
後藤様:
データベース機能「プロファイルブック」と評価ワークフロー機能「スマートレビュー」を主に活用しています。
プロファイルブックでは、自己紹介シートに任意で情報を入れてもらっています。これにより、電話帳代わりに連絡先がすぐ検索できますし、趣味の欄があって、事業会社によっては、同じ趣味の人たちでランチ会をしたという話も聞いています。
また、1on1などの面談の記録もプロファイルブックで管理しています。本人と上司が同じ情報をタイムリーに確認できるため、定期的なコミュニケーションの記録が残せる点がうれしいですね。
––スマートレビューはどのように活用されていますか?
後藤様:
今年から、スマートレビューを活用して年一回のキャリア申告制度をスタートしました。以前は別システムで同様の制度を運用していたのですが、システムの都合上、過去の申告内容の閲覧が制限されていました。カオナビに移行したおかげで、上司が事前に過去のキャリア希望を見てから1on1に臨めるようになり、より有効な人材育成につながっていると感じます。
小野様:
「プロファイルブック」や「スマートレビュー」の活用によって、より1on1の精度やクオリティが高まっていると感じますね。
運用の初期段階のため、今後改善の余地は出てくるとは思いますが、現場の意見も踏まえてカオナビを活用した推進施策を検討していきたいです。
––学習管理機能「ラーニングライブラリ」はお使いになってみていかがですか。
後藤様:
eラーニングの受講管理で活用されることが多い機能だと思うのですが、オフライン研修の受講者募集や日程調整にも便利です。以前はExcelを使って手作業で管理していたので、業務が各段に効率化されました。受講対象者をピックアップして通知を一斉送信もでき、申し込みが済んでいない社員へのリマインドも簡単です。
小野様:
ラーニングライブラリ導入により管理の工数が削減できたこともあり、個人で自由に選択できる研修の数を徐々に増やしています。同じ研修でも開催日が何回かあれば自分の都合に合わせて受講できますし、研修ごとの最大人数を設定すれば、空席の有無も各自で確認できます。
個人のキャリア志向や経験、スキルに合わせた人材育成がさらに進むと期待している機能です。
一般社員にとっても使いやすく便利なカオナビを目指して
––カオナビで叶ったことと、これからの展望をお聞かせください。
後藤様:
カオナビを導入することで、人事に問い合わせなくても社員自ら情報を取りに行けるようになり、現場・人事双方の工数削減につながりました。
管理職だけでなく一般社員でも、会議前に参加者の顔を見て確認する、参加した会議で発言していた人を後から確認するといった使い方もされていると聞きます。
経営層に対しては、グループ横断で社員データを提示することで、グループ会社の枠を超えた人材の把握・活用に役立てています。
小野様:
現在、グループ横断での人材育成の取り組みを強化しています。育成状況やキャリア展望についてもカオナビで情報を蓄積・可視化することで、パイプラインの強化につながればと思っています。
また、カオナビの操作方法や活用してほしい場面・機能を発信するなど、カオナビ活用による現場コミュニケーションの活性化に向けた工夫も行っています。社員からの反応も良く、社内からのカオナビに対する期待を感じます。この流れに乗って、現場・人事の両面でカオナビの活用をより積極的に進められたらと思います。
- 設立:
- 1881年3月
- 社員数:
- 3,433名(2023年時点)※国内グループ会社合計
- 事業内容:
- 塗料全般の製造販売/表面処理剤、電子部品材料、化学工業製品の製造販売