課題
- これまでの管理的な人事から、戦略的な人事への転換が求められていた
- 人材情報が散在していて、有効に活用できていなかった
- 人事考課データをExcelで管理しており、集計作業等に時間を要していた
活用法
- 人事データをカオナビに集約
- 新評価フローを全職員カオナビで運用
効果
- データの共有と可視化がしやすくなり、ペーパーレスも実現
- 顔が見えるコミュニケーションで評価に積極性が加わった
- 自己紹介シートなどで人材データを収集しつつ、コミュニケーション活性化も
2024年3月に人材育成ビジョンを策定し、「人と、伝統と、本当のゆたかさを見つめて、ひとつ先の奈良をつくる。」という職員パーパスを定めた奈良市役所様。新しい奈良市づくりに資する人材を育成すべく、カオナビを導入されました。
今回は、総合政策部 人事課 人材育成室 室長 中村 愛子様、同室 寺本 歩実様に、カオナビ活用についてお話しいただきました。
※本記事の掲載内容は全て取材時(2025年4月18日)現在の情報に基づいています。
柔軟性とプロジェクト管理力の高さが採用の決め手
──はじめにカオナビ導入の経緯についてお聞かせください。
中村様:
人口減少下でも持続可能な行政サービスのためには、人材育成含め戦略的な人事施策が必要という考えのもと、2024年3月に人材育成ビジョンを策定。人事考課制度も刷新するなど、職員の育成により一層力を入れるようになりました。
一方で、当時は人材情報が散在しているため、効果的に活用できていないという課題がありました。これらの課題を解決するためにタレントマネジメントシステムが有用だと考えたのが、導入検討のきっかけです。
──選定はスムーズに進みましたか?
中村様:
前述のとおり人材育成に力を入れていくという方針でしたので、かなりスムーズだったと思います。予算要求から入札を経て、およそ半年で運用開始までこぎつけました。
カオナビは機能がシンプルで、システム専任といったポジションがなく、複数の業務を兼任する自治体職員の立場からすると非常に扱いやすかったです。加えて、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下、デロイト)共同によるプロジェクト管理力の高さが魅力でした。
総合政策部 人事課 人材育成室 室長 中村 愛子様
──運用開始までにどんな苦労がありましたか?
寺本様:
新しい人事考課制度の運用にあたって、カオナビ上でのシステム構築はもちろん、職員への周知も並行して進めなければなりませんでした。
また、会計年度任用職員も人事考課制度に組み込むことになったのですが、雇用区分や職種などがさまざまで、全員を評価ベースに乗せるだけでも一苦労でした。
こうした調整はデロイトの協力があったことで非常に助けられました。
定例会議で目的と目標を明確化し、スケジュール化していただいたことで、順調に運用までこぎつけました。都度のフォローや代替案の提示などを通じて、確かな信頼関係を感じられたのもうれしかったです。
総合政策部 人事課 人材育成室 寺本 歩実様
導入はゴールではない。カオナビを「使い倒す」
──主にどの機能を活用されていますか?
寺本様:
評価ワークフロー機能「スマートレビュー」では、人事考課のワークフローをカオナビに一元化し、人事考課業務の手間を大幅に削減できています。
また、「スマートレビュー」は承認フローを気軽に組めるため、庁内のプロジェクト参加の公募や、選考が必要な研修、昇任試験の申し込み・採点・結果発表などの、従来紙やExcelで管理していた各種申請についても、「スマートレビュー」で一元管理しています。
当初は「カオナビ」を人事考課のためのシステムだと考えていた人たちからも、さまざまなことに使える機能だと認識されてきていると感じます。
──社員データベース機能「プロファイルブック」についてはいかがですか?
中村様:
「プロファイルブック」に集約している人事情報のうち一部を庁内全職員に公開しました。現在は、社内コミュニケーションを目的とした自己紹介シートの作成を推進しており、新規採用職員の研修の一部として作成してもらって、全庁ポータルで流すなど、認知度を上げる工夫を重ねています。
また、採用時の情報、異動情報、研修履歴、自己申告などを一元的に見ることができ、最適配置を考える際にとても有用です。
プロファイルブックの画面イメージ。自己紹介シートをはじめ任意のシートを自由に作成可能
──そのほかの機能はどう活用していますか?
寺本様:
学習管理機能「ラーニングライブラリ」は、集合型研修とe-ラーニングの両方を管理していて、今年度にもすでにいくつかの研修を設定しています。使い方について問い合わせが来ないことから、職員もUIの良さを実感しているのかなと。
「ラーニングライブラリ」の画面イメージ。受講者に合わせた講座の出し分けや受講進捗の管理が一括で可能
あとは「ダッシュボード」機能です。職員数や退職者数、女性管理職比率などの人事関連データ、残業時間などの労務関連データを幹部職員に共有するのに使っています。月次データが自動更新なのが便利ですね。
中村様:
組織図機能「シナプスツリー」は、人事内での異動シミュレーションや組織図の確認に使っています。昇格など少し複雑な要素があって「シナプスツリー」では表しきれないところは、組織マトリクス図機能「シャッフルフェイス」でより詳細の分析ができるため、機能を横断して効率化を図っています。
「シナプスツリー」の画面イメージ。組織図を再現できるほか、異動シミュレーションも可能
「導入をゴールとせず、カオナビをとにかく使い倒しましょう」と導入当初にデロイトから言われた言葉が印象的で。それを意識して頑張った一年でした。
カオナビはシンプルで使いやすいがゆえに、「とりあえずやってみよう」と触ってみると、やりたかったことを実現できたりする。これはカオナビだからこその特長だと思います。
活用を通じてカオナビが特別な存在になってきた
──実感する効果はありますか?
寺本様:
直感的に使えるUI、視認性の高さ、ペーパーレス化などについては、市長をはじめ上層部にも好評です。
人事担当者からすると、「スマートレビュー」による評価フロー全体の状況把握が容易で、簡単に進捗確認ができることで人事考課における作業効率が確実に上がっています。
さまざまな人事に関する検討の場でも、以前は大量の資料を印刷して配っていたものが、今はカオナビの画面を投影するだけで済むことが増え、ペーパーレスや業務の効率化につながっています。
「スマートレビュー」の画面イメージ。各職員の進捗管理はもちろん、考課にかかる業務を一元化できる
──職員の皆さんからの反応はありますか?
中村様:
普段、職員の皆さんは、庁内で使うシステムを「人事給与システム」や「財務会計システム」のように、システムの目的に応じた名称で呼ぶのですが、カオナビについてはシステム名称の「カオナビ」と呼ぶ人が増えてきています。それを見ると、カオナビが評価ツールに留まらない特別な存在になってきたと感じます。
今後は、「カオナビ通信(仮)」のような媒体を制作して、定期的にカオナビの情報を発信していきたいと思っています。カオナビへの理解がさらに進み、コミュニケーションツールとしての活用や、職員からの自発的な活用アイデアにつながったらうれしいです。
カオナビにはチャレンジングな姿勢を期待
──これからカオナビでやっていきたいこと、展望を教えてください。
寺本様:
顔の見えるコミュニケーションツールとしての認識がもっと高まって、縦割り組織に横串を刺すような組織活性につながってほしいと思っています。
また、スキル情報の集約、意見の吸い上げなど、人材情報の収集を強化したいと思っています。スキル管理機能「アビリティマネージャー」や配置検討機能「ポジションマッチング」など、まだ使えていない機能にも興味があります。きちんとデータとして可視化・共有し、より良い人材配置に近づけていきたいです。
中村様:
人事考課の目標設定や考課のアシストにAIが活躍できるようになるといいな、と期待しています。
民間企業では進んでいるDXも、地方自治体ではまだ伸びしろのある部分です。私たち奈良市役所はもちろんのこと、カオナビとデロイトには、チャレンジングな姿勢で自治体特有の課題に切り込んでいってほしいという期待もありますし、いいパートナー関係でありたいと思っています。
奈良市役所様・デロイト トーマツ コンサルティング・カオナビの関係者一同
- 職員数:
- 約4,800人(2025年4月1日時点。会計年度任用職員含むカオナビ登録者数)