課題
- 社内人材のスキルの正確な把握
- 人材情報の感覚・Excelへの依存による、経営判断への活用
- 新入社員の特性情報の分散による、配属・育成への活用
活用法
- 社長自らによる誕生日確認・1on1準備への日常的なカオナビ活用
- 「アビリティマネージャー」で多角的なスキル管理を現場主導で運用
- 「マイボード」上に人物紹介シート・面接評価・日報などを集約
効果
- 経営トップの率先活用が、全社における人材データの活用文化を醸成
- スキルデータが事業・採用計画と連動し、育成・配置が高度化
- 配属前の社員理解が深まり、個性に合わせたマネジメントを実現
「お客様の働く隣で、お客様と未来をデザインする」をミッションに掲げる株式会社エイコー様。IT戦略のコンサルティングからオフィス空間のデザイン提案まで、クライアントの経営課題を幅広く支援する企業です。
現在、「人事の7ヵ年中期経営計画」を推進しており、その中核にカオナビを使った「人的資本の可視化」を位置付けています。人材データの整備を経営戦略の根幹と捉え、カオナビを単なるHRツールではなく、「マネジメント層や経営層の意思決定基盤」として活用しようとしている同社。今回は、EX-LABO 人事総務戦略ディビジョン 北村 直也様、人事総務戦略ディビジョン 人事セクション 竹端 翔子様、CSXユニット 執行役員 荒井 裕太様に話を聞きました。
※本記事の掲載内容は全て取材時(2026年3月10日)の情報にもとづいています。
「10ページで伝わるものをつくる」何度もやり直した、社長直轄の人事戦略
──はじめに、現在推進されている人材戦略の概要を教えてください。
北村様:当社では「人事の7ヵ年中期経営計画」を策定し、今年4月に全社発表を行いました。これは人事部門単体の計画ではなく、会社全体の経営計画と同等の位置付けです。社長の酒井から「会社方針と同じレベルのものをつくるように」と強く求められ、何度もやり直しを重ねながら現在の形にたどり着きました。
戦略の最上位にはMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)があり、その下に人事ポリシー、人事戦略、具体的な施策が続く構造です。戦略の柱は「人材の確保と育成」「働く仕組みの構築」「価値を生み出す組織の設計」の3つ。さらに「7つの核心課題」を設定し、目指す姿とのギャップを埋める打ち手を明確にしています。全体を貫く目標は「社員の価値を2.5倍にする」こと。計画は7年間を3年ごとのフェーズで区切り、2026年度は人事戦略を全社で動かし始める1年と位置付けています。
策定プロセスは、決して平坦ではありませんでした。議論を重ねながら社長に報告するサイクルを繰り返し、何度もやり直しました。「量は多くなくていい、10ページで社員に伝わるものをつくって欲しい」と言われながらも、なかなかOKが出ない。それだけ社長が人事戦略を会社の根幹として真剣に向き合っていたということだと思います。
また、この戦略を推進するために「経営戦略本部」を設置し、現場の各部門から選抜したメンバーが1年間専任で取り組む体制をとっています。メンバーは毎年入れ替わることで、学びが現場に循環していく仕組み。実は今回同席している荒井が1期生にあたり、当社の中長期経営計画の立案も担った一人です。経営本部に携わったメンバーが現場に戻り、また次のメンバーが学びを重ねていく。その積み重ねがビジョンの浸透につながると考えています。
──その人事戦略の中で、カオナビはどのような位置付けですか?
北村様:当社はIT戦略コンサルやオフィス設計を手がける商社的な会社です。メーカーのように物を作っているわけではない。「では私たちの本当の価値とは何か」という問いに向き合ったとき、答えは「社員そのもの」でした。社員の価値を高め、その付加価値をお客様に提供していく。だから人事戦略が経営戦略の根幹であり、カオナビはその人事戦略を支えるインフラとして位置付けています。
HRテックというツールとしてではなく、経営の意思決定やマネジメントに活かせるように、システム上の人材データが常に正しく整備された状態を「当たり前」のものとして、全社に浸透させていきたいと考えています。
荒井様:人材を起点にした経営を考えるのであれば、まず社内の人的資本を正確に把握しなければなりません。これまで各部門が部分最適で動いていた部分がありましたが、「社員の価値を高める」という方針を掲げた今、全体最適でなければ連携も価値創出も成り立ちません。カオナビは、その全体最適を実現するための基盤です。
CSXユニット 執行役員 荒井 裕太様
「社内で一番カオナビを見ている」トップのコミットがデータ活用文化を醸成する
──そんなカオナビの現在の活用状況について、具体的に教えてください。
北村様:まず象徴的なのが、「社内で一番カオナビを見ているのは自分だ」と社長自身が明言しています。例えば、社員全員(約400名)の誕生日にチャットでメッセージを送るために、カオナビで日々情報を確認しているんです。また、社員全員との1on1を進めており、その事前準備にも必ずカオナビを活用。相手の経歴・キャリア・趣味まで読み込んでから一人ひとりと向き合う姿勢を示すことで、「社員の価値を高める」というビジョンが組織に浸透しやすくなると感じます。
社長自身が「人材データが整備されていて当然」という姿勢でいるからこそ、私たちもシステム上のデータを常に正しく整備しておかなければならないと身が引き締まります。データが入力されていなかったり更新が遅れていたりすると、社長から厳しい指摘が入ることもある。トップのコミットが全社のデータ品質と運用文化を牽引しているんです。
EX-LABO 人事総務戦略ディビジョン 北村 直也様
荒井様:社長は「人が関わらない事業はやりたくない」と明言するほど、社員を大切にしているんです。社員の家族を招くファミリーデーの開催など、「社員とその家族を大切にする」という姿勢を実際の取り組みで体現。1on1の前にその人の情報をカオナビできちんと把握して臨む姿勢は、マネジメント層全体へのメッセージでもあります。これが現場でのアビリティマネージャー(スキル管理機能)や「マイボード(見せたい情報をまとめて表示する機能)」の活用を強力に後押ししていると感じますね。
感覚頼りのマネジメントから脱却。カオナビを使った現場主導のスキル管理
──カオナビ導入以前、人材情報の可視化においてどのような課題がありましたか?
荒井様:私が所属するCSXユニットには、DX推進などのIT領域からオフィス空間の設計・デザイン、複合機メンテナンスまで、多様な専門性を持つメンバーが在籍しています。技術力とスキルを持って提案・実行をする部隊なのですが、正直なところ、誰がどんなスキルを持っているのか、把握できていない部分が多かった。自分たちの現在地を知らずに、次の戦略も採用も教育も組み立てられません。そこでスキルマップをつくりたいと話していたところ、人事の竹端から「カオナビでできますよ」と提案があったんです。
北村様:これまでは、誰をどう育てるべきかを感覚に頼って判断している部分がありました。「なんとなくあの人は、あの仕事が得意そうだ」という印象で判断してしまう。役員会でも社長から「すべてを見える状態にして、その上で打ち手を考えるのがマネジメントの役割だ」と厳しく言われています。テクノロジーを使って人が持つスキルや経験を見える化していくことが、今の会社が進むべき道なんです。
──「アビリティマネージャー」の実装にあたり、工夫された点を教えてください。
竹端様:機能や見せる情報を増やそうと思えばいくらでも増やせますが、それでは現場の皆さんが使い続けてくれません。「この立場の人なら何の情報があれば便利か」という起点で設計しました。いわば、顧客思考ですね。現場の方からいろいろな要望が上がってくる中で、管理・運用しにくい形になりそうなときは「絞った方がいいですよ」と仲介・翻訳しながら進めています。管理職・一般社員・役員の3パターンにフォーマットを整理するなど、失敗から学びを活かしてきました。
人事総務戦略ディビジョン 人事セクション 竹端 翔子様
また、社内への認知を広げるために自分からカオナビの活用方法を積極的に発信するようにしたところ、「こんなこともできるの?」「アビリティマネージャーってこんな機能もあるの?」といった驚きの声が増えてきました。知らないと使えないので、まず知ってもらうことが大事だと思っています。
カオナビの活用方法を社内で発信するときのイメージ
北村様:竹端がカオナビの情報を発信してくれるおかげで、現場とのコミュニケーションはとても活発です。Teamsで「カオナビお助け隊」というチャットグループをつくり、現場の困りごとに素早く対応できる体制を整えています。
──具体的にはどのようなスキルを可視化し、どう運用されていますか?
荒井様:オフィス環境の設計・工事プロジェクトでは、図面作成・工程表の作成・現場調査・施工管理・各種打ち合わせなど、さまざまなスキルが必要になります。さらに工事には法律も絡むため、管理技術者を何人配置するかも厳密に管理しなければなりません。これまでは「誰がプロジェクトにアサインできるのか」を手探りで判断していましたが、スキルの見える化によって業務アサインや年間スケジュールが立てやすくなり、プロジェクトの進行がスムーズになりました。
さらにITインフラの領域では「AWSができる」「Azure(アジュール)ができる」といった技術スキルを細かく把握でき、適切な人材配置に役立っています。テクニカルスキルだけでなく、コミュニケーション力やリーダーシップなどのヒューマンスキルも定義して登録を進めています。チームで動く仕事では、リーダーシップがなければプロジェクトをまとめられない。意外と重要な能力で、全員が参考にする指標になっています。
アビリティマネージャーで運用しているスキル管理の画面
北村様:スキルが可視化されたことで、上司がメンバーの得意・不得意を把握できるようになり、面談の場でも「次はこのスキルを伸ばしていこう」という具体的な育成の議論ができるようになりました。また、ほかのメンバーの資格取得状況が見えることで「あいつが取ったなら自分も取ろう」という切磋琢磨の文化も生まれ始めています。
──スキルマップが形骸化せず、現場で継続して運用していくために工夫していることはありますか?
荒井様:スキルマップの更新・運用を、事業計画・採用・教育とセットにしています。「次に伸ばすべきスキルはどれか」を上司との面談で話し合い、「こういう人材を採用したい」という依頼を人事に上げる仕組みにしました。すると必然的に、スキルマップを更新しないと事業計画も採用も進められなくなる。ツールの活用が事業の推進と直結しているんです。
北村様:これまで、各部門が部分最適で動いていたんです。でも「社員そのものを価値にしていく」という方針を掲げた今、全体最適で考えないと連携が取れないし、価値にならない。全体最適で「この戦略があるからこれが必要で、こういう手を打たないといけない」と考えられるようになり、私も含めて現場の皆さんの意識も徐々に変わってきていますね。
「上司が自分を理解してくれている」マイボードによる心理的安全性の醸成
──1on1やフィードバックの場面で、ほかに活用している機能はありますか?
竹端様:「マイボード」を活用しています。以前は、新入社員の適性テスト結果や申し送り事項がExcelやメールに分散していて、現場の上司が見返す習慣もなく、必要なときに情報を探すのが難しい状況でした。そこで配属前の人物紹介シートをマイボード上に作成し、顔写真・基本情報に加えて、適性テストによる能力・性格の傾向、面接時の評価、入社の動機、さらに苦手なことや趣味などを1つの画面にまとめました。
また、研修期間中に新入社員が書いた日報(充実度や学び)と、それに対する人事からのフィードバックもマイボードで閲覧できるようにしています。
北村様:さらに、定額制研修の受講履歴もカオナビと連動させています。社内で年間約600回の研修が行われており、9割以上の社員が活用しています。この活用率の高さは、研修プロバイダーから表彰されるほどでした。定額制研修はどうしても「受ける人は受けるが、受けない人は全く受けない」という二極化が起きやすい。それを防ぐために、1on1の中で上司がメンバーに研修をレコメンドし、その受講状況をカオナビで確認できる仕組みを整えたことが効果的でした。研修を受けて終わりではなく、育成のサイクルの中に組み込んでいるんです。
荒井様:配属前に社員の特性を把握できるのは、とても助かります。極端な話ですが、「この人は残業が苦手」とあらかじめ分かっていれば、そういう接し方ができる。配属先の検討材料になるだけでなく、配属後の指示やコミュニケーションも個性に合わせられます。
北村様:人材情報の可視化は、スキルを把握することだけが目的ではありません。技術系のメンバーには自己表現が得意でない人も多い。自分の強みやできることを積極的に言えなくても、システム上に登録されていれば会社や上司に正しく認識してもらえる。上司が自分のことを理解しようとしてくれていると感じることは、心理的安全性にもつながります。上司と部下、双方の解像度が上がり、1on1や日常のコミュニケーションが円滑になっていますね。
カオナビを、経営の意思決定を支える「人的資本ポータル」へ
──最後に、今後のカオナビ活用について展望をお聞かせください。
北村様:社員のスキル・資格・キャリア・研修・面談履歴など、あらゆる人材情報をカオナビに集約し、「人的資本のポータルサイト」として機能させていきたいと考えています。女性管理職比率や男女賃金格差など、企業が開示を求められるデータも、社員が誰でも確認できる環境を整えていく必要があります。
私たちが目指しているのは、データをデータのままで終わらせないことです。インプット→アウトプット→アウトカムというサイクルを回し、最終的に「経営の意思決定」という成果につなげる。そのためにデータ入力完了率を現在の約20%から40%へ引き上げることをKPIに設定し、社長とも密に連携しながら取り組んでいます。テクノロジーと人事の知見を融合させ、経営の意思決定を支える戦略的バックヤードでありたいと思っています。
荒井様:ダッシュボードなどでデータが可視化されることで、経営層は組織の「現在地」を正確に把握できます。事業計画と連動した採用計画や育成方針など、データにもとづいた意思決定が可能になる。さらに、そのデータを社員にも共有できれば、「自分たちの組織にはこういう強みがあるから、次はこんな戦略を目指せるのでは」というボトムアップのアイデアが生まれる環境になっていく。それが理想です。これからは人の価値を上げようとするときに、会社だけでなくメンバー自身からも新しいアイデアや提案が出てくる組織にしたいと思っています。
竹端様:「入力させられた」と感じているメンバーにも、「あなたたちが入れたデータがあるからこういうグラフが出て、面談の質が高まった」という実感を持ってもらいたいんです。みんなが「カオナビを使って良かった」と思える状態をつくることが、今の私の目標です。
- 設立:
- 1974年1月18日
- 社員数:
- 430名
- 事業内容:
- 法人の経営課題に応えるサービス・商品をインテグレートし、販売・構築・保守サポートを行う