課題
- 紙とExcelによる人事評価の業務効率化
- 人材情報を管理・共有する仕組みの構築
- 人材情報のデータ活用
活用法
- 異動希望の自己申告・評価結果といった、人材情報をカオナビでひとまとめに管理
- 紙やExcelでの人事評価をデジタル化し、辞令の電子化や再雇用・更新照会なども含めた人事業務全体のペーパーレス化を実現
- 他のシステムとのデータのやり取りにカオナビのCSVを活用することで、手作業による転記を廃止
効果
- カオナビの活用により、人事部と各施設の総務課の工数を20〜30%削減
- 人事情報の一元管理で、異動検討時のその場での情報共有や、顔写真による人物把握もスムーズに
- 年間5,600枚以上の書類とその保管スペースをなくし、ペーパーレス化を実現
神奈川県内の5つの県立病院を運営している地方独立行政法人神奈川県立病院機構様。「高齢者医療・地域医療」「がん医療」「循環器・呼吸器病」「小児医療」「精神科医療」といった専門性・特色を持つそれぞれの病院が高度・専門医療、地域医療を担っており、神奈川県の医療を支え続けています。
約2,800名の常勤職員を擁する同法人は、人事評価における「業務効率化」を目指すと同時に、将来的な「人事データの活用」も視野に入れてカオナビを導入。
今回は、複数病院を運営する地方独立行政法人における活用方法について、本部事務局 人事部 人事課 副主幹 池田太郎様と、本部事務局 人事部 給与・労務課 副主幹 中山耕二様にお話を伺いました。
紙とExcelによる非効率な人事評価業務の改善へ。人事データの活用も視野に
──まずはカオナビ導入に向かった背景をお教えください。
池田様:毎年、約2,800人の常勤職員を対象に人事評価を行い、人事異動の検討のために職員の異動希望などの意向も確認していますが、どちらも紙とExcel中心の運用を続けてきました。配布・回収・集計といった一連の作業に多くの工数がかかっていたので、業務効率化の必要性を感じていましたね。また、人材に関する情報が分散していたため、「データはあるのに活用しきれていない」という点にも大きな課題がありました。
──紙とExcelを使って、どのような運用をされていたのでしょうか?
池田様:人事評価と意向申告の書類をまとめて各施設に送付し、それを総務課の担当者が職員に配付した後、各自が書き込んだものを回収してこちらに送り返してもらう形をとっていました。人事評価の書類には、個々の職員が振り返りの自己申告を書き込み、そこに現場の上長が一次評価を、さらに上の上長が二次評価を書き込み、人事部が最終的な集計作業を行なう、という流れですね。
──人事部の皆様にとって、どのような大変さがあったのでしょうか?
池田様:職員一人につき2枚以上の紙の書類を扱うことになるため、単純計算でも5,600枚以上となります。それらの内容を確認・管理するだけでもひと苦労でした。意向申告の書類には各職員が異動への希望や意向を書き込み、今後の働き方・キャリア・配慮事項などを自己申告。人事異動の参考とするためExcelに転記し、紙の書類の保管作業も人事部が担っていました。
中山様:配付から回収、集計までの作業は1〜2名で担当していましたが、その作業だけで1〜2週間はかかっていたと思います。また、Excelへの転記作業に加え、評価結果を各施設に郵送する手間もかかっていました。
池田様:大量の紙を保管するため、スペースを大きくとられている問題もありました。人事評価と意向申告をまとめたファイルでキャビネットが埋まっているような状態でしたから。
本部事務局 人事部 人事課 副主幹 池田太郎様
──現場の方々にもかなりの負担がかかっていたのでしょうか?
池田様:書類に手書きすること自体、大きな負担だったと思います。医療現場の職員は常に業務に追われているため、持ち帰って書き込んでいるケースもあったかと思います。実際、職員からは「なぜ電子化しないのか」という声も多く上がっていました。
中山様:書類を取りまとめている各施設の総務課の担当者が、郵送による配達事故などを恐れて本部に直接持参するケースも。人事部だけでなく、各所に負担がかかっていたと思います。
──人事異動の検討においても、紙とExcelによる情報管理による大変さがあったのでしょうか?
池田様:当機構では、毎年150名程度の異動を行っています。配属先の検討は、経験・スキル、意向申告による本人の希望を踏まえて行いますが、人事評価の書類をまとめたファイルや本人の意向を転記したExcelファイルの中から必要な情報を探さなくてはならないので、大変でしたね。その上、紙の原本は1部しかなく、Excelファイルに職員の異動希望をまとめて管理していたので、人事部内で情報共有しながら検討を進めることも容易ではありませんでした。
──先ほど、「人事情報のデータを活用しきれていない」というお話をいただきましたが、こちらについてはいかがでしょうか?
池田様:医療専門職の資格って、本当にたくさんあるんです。例えば、看護師の資格に「○○専門看護師」や「○○認定看護師」があり、救急、小児、がん、精神、感染管理など多岐にわたっています。それ以外にも医療安全の研修受講等、それぞれの担当者がExcel等で管理していて、システムで一元的に確認することができていませんでした。
ご本人にとっても組織にとっても非常にもったいないため、「どんな資格を持っているのか。過去にどういった研修を受けたのか」までデータ化し、人事育成に活用していくことも必要だと考えていました。
課題に寄り添う伴走提案に魅力を感じた。導入支援の質の高さが決め手に
──カオナビの導入を検討し始めたきっかけについてお教えください。
池田様:人事評価の体制がアナログ過ぎる、非効率過ぎるということで、「何らかのシステムを導入して効率化を図ろう。」と。組織全体としても、DX化、クラウド化に取り組み始めていた時期で、合同会社デロイト トーマツ(以下、デロイト社)の支援を受けながらグループウェアの導入を推進していました。この機に人事評価のシステム導入も進めていくことになったのです。
──ほかにも導入検討されたサービスはあったのでしょうか?導入の決め手についてお教えください。
中山様:システム選定にあたっては、いくつかのツールを比較しましたが、入札を経て最終的にカオナビを導入することにしました。機能面の話でいえば、現場の職員はPCの操作に慣れていない方も少なくないので、直感的に操作ができるカオナビは誰にでも扱いやすくていいと思いました。
しかし、何よりも大きな決め手となったのは、導入支援の質の高さでしたね。
本部事務局 人事部 給与・労務課 副主幹 中山耕二様
池田様:事前に、すでに導入している病院にヒアリングする機会を設けていただきましたが、当初は大変そうだと感じました。しかし、デロイト社の担当者の方には、すでに勤怠管理システムやMicrosoft 365のグループウェア導入などの面でもご支援いただいており、当機構のさまざまな課題を把握の上、そこに寄り添う設定や運用まで考えた伴走提案をしていただき、とても心強かった。これが非常に大きな決め手になったと思います。
システムは導入すれば終わりではなく、そこからどう運用していくかが重要です。デロイト社が提案してくださったカオナビ活用の提案には、単に「システムを入れる」ではなく、「人事業務そのものをより良くしていく」「人事評価に限らず、紙の業務を減らして職員の負荷を下げていく」という視点がしっかりとあり、一緒に進めていけることに魅力を感じました。
中山様:検討を進める中で、職員一人ひとりの情報をしっかりと蓄積し、活用できる仕組みをつくることの重要性を強く感じるようになりました。さらに研修や資格といった情報を一元的に管理できれば、「人材育成」の質そのものを高めることができるのではないか、と考えたのです。
現場に根付かせるため、スモールスタートで課題抽出。改善後に横展開した
──カオナビ導入はどのように進めていかれたのでしょうか?
池田様:導入にあたって特に重視したのは、現場にしっかり根付かせることです。そのため、いきなり全体展開はせず、まずは本部と1つの病院、500名程度の職員でスモールスタートしました。「このシステムを導入する意味があるのか」「費用をかけた分を回収できるのか」などの声もあったため、課題を抽出して成功事例を作ってから横展開していこうと考えました。
──導入後、現場から不満の声などは出なかったのでしょうか?
池田様:
病院はインターネットにつながるパソコンの台数が限られているため、初年度にスマホで入力できる仕組みにして、レイアウトも違和感のないものを作っていただきました。
権限設定についても調整が必要でした。「評価対象外の幹部も評価情報を確認できるようにしてほしい」という要望に対応しつつ、職位別の閲覧範囲についても課長同士がお互いの評価を見られないよう、試行錯誤しながら設定を工夫しました。
カオナビ上のデータは項目ごとに閲覧・編集の権限を細かく設定が可能(※上はイメージ図)
中山様:実際に運用する中では、「IDやパスワードを忘れた」というケースがかなり多かった。当初は「パスワードを間違えてロックされたから解除してほしい」という問い合わせが1日に4件くらいはあったので、シングルサインオンにする必要性を実感。現場ならではの課題を一つずつ解決した上で、全体への展開に移りました。
また、セクション長が紙出力したいという要望が複数あったため、帳票出力機能を追加して紙で出力できるよう改善をしてきました。
──導入後、横展開していくために解決すべき課題などは出てきたのでしょうか?
中山様:初年度で出た課題(シングルサインオンや閲覧範囲等)を解決したこと、説明会をきちんと行ったことなどが功を奏し、大きな不満は出ませんでした。全員共通の操作を丁寧に説明し、評価を行う管理者向けの説明もしっかり行いましたので。また、もともと使っていたExcelの書類様式を踏襲してもらっていたため、違和感なく導入できたと感じます。
池田様:職員にとっては、手書きする手間がなくなりましたし、総務課の担当者にとっても書類を取りまとめる作業がなくなったので、カオナビ導入後は、むしろ「便利になった」という声を聞くことも多くなりました。
人事異動の検討にもカオナビを活用。顔写真があることで人物イメージが湧く
──人事評価には『スマートレビュー』を活用されているとのことですが、そのほかで使っているカオナビの機能についてお教えください。
池田様:人材データベース『プロファイルブック』は、職員の情報を調べたり、確認したりする際に活用しています。細かい話ですが、例えば氏名の漢字表記がわからない時には、職員番号で検索するだけでパッと確認できますし、逆に、職員番号がわからなくても名前検索すればいいので、非常に便利ですね。
中山様:異動してきた職員について調べるときにも、かなり便利に活用しています。顔写真もあるので、「どんな人なのか」というイメージが湧きやすいです。“頼もしそう”、“優しそう”などの本人の空気感も把握しやすくなりますし、職員一人ひとりをイメージしやすいですね。『プロファイルブック』は、病院に勤務する管理職の職員も同じように使っていると聞いています。
直感的に全社員を把握できるプロファイルブックのイメージ(※上はイメージ図)
──人事異動の検討においても、顔写真を確認できることにはメリットがあるのでしょうか?
池田様:実は、私たちは紙を使っていた時にも、意向申告の書類に職員の顔写真を一枚ずつ貼っていました。異動配属先を検討する際、顔写真があることで文字データだけでなく「人物」として認識しやすくなります。職員数が多い分、人事部側での把握にも役立っています。
中山様:以前は打ち合わせにExcelを印刷した資料や意向申告書の写しを使っていましたが、今はカオナビの画面を映し出しながら、さまざまな情報をもとに検討を進められています。評価や必須資格の取得などの人事情報もすぐに確認できて効率的ですし、組織図を確認できる『シナプスツリー』も、所属の人員構成が表示されるので便利です。どの雇用形態の職員が何名働いているのかを直感で確認できますから、異動希望を出している職員に合う職場かどうかを検討するときにもイメージしやすくなりましたね。
池田様:現在、カオナビに入っているデータもかなり溜まってきているので、選択した情報から一覧化できる『セレクトビュー』も便利に使っています。在職歴や異動歴、取得資格、働き方の希望などでソートをかけて、その条件に当てはまる職員を一覧表示できます。何らかのリストを作る際にも便利ですね。意向申告はCSV出力で見ることが多いですが、いろいろ組み合わせて確認できるのがありがたいです。
点在する情報を簡単に一覧化できるカオナビの『セレクトビュー』(※上はイメージ図)
人事評価業務における工数を20〜30%削減。組織全体にも業務改善の意識が芽生えた
──導入後の効果はいかがでしょうか?まずは定量的な効果についてお教えください。
池田様:人事評価の業務については、人事部と各施設の総務課を合わせた工程のうち、個人的には20〜30%程度の工数を削減できていると感じています。これまで紙やExcelで対応していた人事評価の進捗管理や集計が、システム上でリアルタイムに把握できるようになり、大幅に負担が軽減されました。また、現場の職員や上長にとっても、書類に手書きするなどのアナログな作業を削減できていると思います。
池田様:評価結果の開示もカオナビで行っているので、紙に打ち出して職員一人ひとりに配付する手間もなくなりました。そのほかにも、辞令の電子化、再雇用・更新照会などにも活用を広げており、人事業務全体を効率化できていると感じます。
──定性的な効果については、何か実感されていることがありますでしょうか?
池田様:顔写真を確認できる仕組みによって、想定以上に「見え方」が変化したと思います。人材を“データ”としてだけでなく、“人”として捉えやすくなったことは、配置や育成の質にも好影響を与えてくれると感じます。
中山様:人事評価や意向申告の書類は、近年ではExcelで送付し、各施設の総務課で出力・配付してもらうケースも増えていました。それらの作業もなくなったことで現場からも「本当に楽になった」と言ってもらえるようになりました。
──カオナビを導入した結果、組織全体で変化したことについてお教えください、
池田様:カオナビ活用で業務効率が向上したことを実感したために、各施設の総務課や現場の看護局長などから「これもカオナビで管理できるのではないか」「こういう使い方はできるか」などの相談を受けることが増えています。カオナビが前提となった業務改善の意識が広がってきました。
中山様:また、これまで人事部門や総務部門が中心に扱っていた人材データを、各セクションの課長などが直接確認できるようになったことで、部下の過去の人事評価の記録を確認し、育成に活用するケースも出てきています。人材データが一部の部門に閉じたものではなく、現場で活用される共通の基盤になりつつあると感じています。
池田様:単なる情報管理ではなく、データを「見える化」し、意思決定に活かしていくという段階に少しずつ進んできていると感じています。
中山様(左)と池田様(右)
人材データを「管理情報」ではなく「経営資源」として活用することを目指す
──現在の課題と今後の展望についてお教えください。
池田様:今後は、蓄積してきたデータをさらに活用していくフェーズに進みたいと考えています。まずは研修・資格の管理をより体系的に行う仕組みを構築していきます。医療系の専門職の資格はとにかくたくさんあるので、人材育成やキャリア形成に有用な資格をピックアップし、カオナビに集約することがまず一つの課題ですね。また、研修履歴もカオナビで一元管理していくことで、各職員に受けるべき研修について促しやすくなりますし、上長も育成プランを考えやすくなるだろう、と思っています。
中山様:ワークフローを活用した各種手続きの電子化も進めつつ、カスタムガジェットによるデータの可視化・分析などにも取り組んでいきたいと考えています。組織における男女比率や年齢構成をグラフ化するなどで、部署ごとの人材配置の最適化にも活用していきたいです。
池田様:将来的に目指しているのは、「必要な人材データを必要なタイミングで誰もが活用できる状態」です。幹部や現場がその都度データを確認できるようになれば、人事部門が集計にかけていた時間を、分析や戦略立案に充てることができます。
中山様:また、人事だけでなく現場の管理職や経営層が同じデータを見ながら人材について議論し、迅速に意思決定できる組織を目指しています。これから先の時代は、病院運営においても、人材データを「管理情報」ではなく「経営資源」として活用することが重要だと考えています。
──最後に、カオナビの活用を検討されている方に向けて、メッセージをお願いします。
池田様:病院においては、大きな施設ではDX化が進んでいるケースも増えていますが、中小規模の場合はマンパワーで解決することが多いので、なかなかDX化に舵を切りにくいのではないかと思います。しかし、人事評価や人事情報の管理をシステム化することで、課題が見えやすくなりますし、できることが増えていきます。
導入を提案した当時、人事評価にコストをかけることに疑問を抱く人もいましたが、組織全体の業務負荷の軽減に加えて、人材育成に役立てて職員の質の向上につなげていくことができると感じます。私たちも、カオナビを活用して毎年1つずつ新しい仕組みを実現し、さらなる発展につなげていくつもりです。
中山様:カオナビのような新しいシステムを導入する際には、最初から機能拡大しようとせず、少しずつ使える機能を増やしていくのがいいと思います。無理なく、段階的に必要なことを実現していくことができると思います。
デロイト社、カオナビ社、神奈川県立病院機構様の皆さま
- 設立:
- 2010年4月1日
- 常勤数:
- 2,586名(2025年3月31日現在)
- 事業内容:
- 神奈川県にて、県立5病院を運営