品川区役所

人材確保と育成の未来を切り拓く! MVVと人的資本経営導入による変革

2025.12.15
課題
  • すべての情報が一つに集約された人材データベースがなかった
  • アンケートの回答率に課題があり、また集計にも時間と手間がかかっていた
活用法
  • 人事評価や異動履歴といった職員ごとの情報を集約
  • 評価やアンケートをカオナビ上で運用
効果
  • 職員の経歴や能力を活かしたマネジメントに活用
  • リマインド機能によりアンケートの回答率が向上
  • ユーザー会への参加で、他の自治体との繋がりが生まれた
  1. データに基づいた人材育成を実現するためにカオナビが必要
  2. 個別にリマインドできるようになったことで、エンゲージメント調査の回答率が88%に到達
  3. 職員の職場に対する期待だけでなく、組織の価値をも向上させる
  4. 顔が見えるという利点を活かして、「出る杭」同士を結び付ける場」にしたい

近年、人材確保の難しさは、多くの自治体にとって共通の課題となっています。
こうした状況下で、品川区は2024年に、職員の育成と確保に関する施策の方向性を示す「人材育成・確保基本方針」においてMission Vision Value(MVV)を策定しました。

区職員のMissionは「区民のウェルビーイング向上のために」。
この達成に向け、人材育成・確保を重要施策として推進。その基盤を構築するために「カオナビ」の導入を決定しました。

今回は、品川区役所 区長室 人材育成担当課長 田口 祐子様と、同室 人事課 人材育成担当 佐藤 正徳様にお話を伺いました。

※本記事の掲載内容は全て取材時(2025年8月29日)の情報に基づいています。

データに基づいた人材育成を実現するためにカオナビが必要

──はじめに、カオナビを導入した背景について教えてください。

田口様
昨今、公務員の離職率が高まっており、人材確保は喫緊の課題となっています。

このような状況を受け、当区では、優秀な人材の確保と、在籍する職員一人ひとりの価値・能力を最大限に引き出すことが重要と捉えています。
これらを達成するため、私たちは民間企業のような「人的資本経営」の考え方を導入することを決定しました。

しかし、実行には大きな壁がありました。
これまで職員情報を一元管理できるデータベースが存在しなかったためです。
そこで、この課題を解決し、さらには蓄積したデータを分析・活用できる基盤を整備するため、タレントマネジメントシステムの導入を検討するに至りました。

──数あるシステムの中から、なぜカオナビをお選びいただいたのでしょうか。

田口様
複数事業者からの企画提案を受けられるプロポーザル選定を採用しました。

その中でカオナビを選んだ決め手は二点あります。
一つは、すでに複数の自治体への導入実績があったこと。
そして、もう一つは、提案してくださったコンサルティングファームのデロイト トーマツから、手厚いサポートが受けられそうだという期待が持てたことです。

品川区役所 区長室 人材育成担当課長 田口祐子様
品川区役所 区長室 人材育成担当課長 田口祐子様

──デロイト トーマツを選定したことによるメリットがありましたか。

佐藤様
導入時に各種設定作業を代行してもらえた上、職員への説明会の実施などについてもサポートしていただけたのは非常に助かりました。
週に一度の頻度で必ず何かしらのやり取りがあり、そのタイミングで気軽に相談でき、また的確なアドバイスをいただけました。

田口様
導入の段階から品川区の状況を深く把握してくださっていたのはもちろん、カオナビについても熟知した上での支援を受けられたことは、大きなメリットでした。
デロイト トーマツは他社での活用事例など知見も豊富ですから、手探りになることなく、安心感を持って運用を進められています。

個別にリマインドできるようになったことで、エンゲージメント調査の回答率が88%に到達

──まずは、評価ワークフロー機能「スマートレビュー」を活用することになった背景と現在の様子を教えてください。

田口様
以前は、たとえ管理職であっても、職員の過去の人事評価や異動履歴などを確認するには、その都度人事課に照会する必要がありました。

しかし、現在は評価や異動の申告もシステム上で行えるようになり、管理職は手軽にデータを閲覧できます。これにより、面談を実施する際にも、職員一人ひとりに対してより的確なアドバイスが行えるようになっています。

──360度評価にもスマートレビューを活用されたと伺いました。具体的にどのように行われましたか。

田口様
品川区では各職員(“I”)が愛(“I”)のこもった温かいメッセージを贈るというコンセプトの品川式360度評価「I・メッセージ」を令和5年度からスタートしました。昨年度からはカオナビを活用して実施しています。

係長クラスや一般職員を「評価者」に、そして管理職である課長や部長を「評価対象」に設定しました。評価結果は人事データベース「プロファイルブック」内の職員ページから、閲覧可能です。

この取り組みは、部下からフィードバックを受けることで自己成長につなげることを目的にしています。評価対象である管理職の方々から、「新鮮さや気づきがあった」という感想をいただいています。

とはいえ、この施策はまだ始まったばかりです。より効果的な運用を目指していくためにも、今後も改善を重ねて進めていきたいと考えています。

360度評価画面イメージ。テンプレートをベースに、自社の評価シートにあわせてカスタマイズも可能
360度評価画面イメージ。テンプレートをベースに、自社の評価シートにあわせてカスタマイズも可能

──社内アンケート「ボイスノート」はどのようにご活用いただいていますか。

佐藤様
職員アンケートや研修後のアンケートなど、様々なアンケートに幅広く活用しています。
令和7年度からは、品川式エンゲージメント調査「We・メッセージ」も開始し、デロイトとともに調査の設計、結果の活用も含めて進めています。

以前は、アンケートなどを実施しても対象者を絞ったリマインドができず、回答率向上が課題でした。
しかし現在は、未回答者のみにリマインドを送信できるようになったことで先日実施した「We・メッセージ」の回答率は88%にまで達しました。

また、結果の集計もボタン一つでできるため、集計作業の負担がかなり軽減したことに加え、集計結果のグラフがとにかく見やすいので、ダウンロードしてそのまま報告資料として活用したり、全庁に向けて結果を公開したりできる点も大きなメリットです。

アンケート機能:ボイスノートの集計結果画面イメージ。アンケートを自在に作成でき、回答後の管理・集計がスムーズ
アンケート機能:ボイスノートの集計結果画面イメージ。アンケートを自在に作成でき、回答後の管理・集計がスムーズ

職員の職場に対する期待だけでなく、組織の価値をも向上させる

──カオナビ導入後、組織浸透や活用促進のためにどのような工夫をされましたか。

田口様
デロイト トーマツによる導入支援はもちろんありましたが、それとは別に私たちが独自に行った取り組みも数多くあります。

具体的には、週に一度庁内に発信している人材育成担当通信「トランジション」を通して、カオナビの機能や360度評価制度について何度も丁寧に説明を行ったことです。導入前から継続的にアナウンスを開始していたため、実際にシステムが動き出す頃には、組織内にある程度浸透していました。

佐藤様
さらに、職層ごとに利用できる機能が異なるため、導入時にはその点も含めて全職員向けに対面とオンラインのハイブリッドで説明会を実施し、カオナビの使い方や導入目的を説明しました。

また、自己申告書類やアンケート調査など、カオナビを活用できるものはできる限りカオナビ上で実施していく方針としたこともあり、カオナビと職員の接点が必然的に多くなりました。できる限りカオナビの機能を用いることで、職員は使う機会が増え、私たちとしてはデータが集約・蓄積されるという、理想的な運用が実現できています。

区長室 人事課 人材育成担当 佐藤正徳様
区長室 人事課 人材育成担当 佐藤正徳様

──カオナビを導入したことで、どのような効果があったと実感されていますか。

田口様
システムを導入している自治体が少ない中で、私たちは様々な人事プロセスをカオナビで運用しています。

この取り組みによって、職員たちは「新しいことに挑戦している」「組織が変わっていく」という、前向きな期待感を抱いてくれていると感じています。

また、カオナビを導入したことで、品川区役所が人材育成に力を入れているということが他の団体でも話題になり、結果的に組織としての価値向上にも繋がっています。

佐藤様
まず、各種評価結果の集計や分析作業が非常に楽になりました。これは大きな改善点です。

また、カオナビは他の団体と交流できるユーザー会が盛んで、自治体同士で気軽に相談し合える環境があるのも魅力です。私たちは導入事例や活用事例を聞かれることもありますし、逆に自分たちとは異なる活用方法を学んだりしています。カオナビの導入をきっかけに、自治体間の横のつながりができたのは、非常に大きなメリットだと感じています。

顔が見えるという利点を活かして、「出る杭」同士を結び付ける場」にしたい

──最後になりましたが、今後のカオナビ活用について展望を教えてください。

田口様
今後は、カオナビの「顔が見える」という大きな特長を活かし、職員同士の相互理解をさらに深めていきたいと考えています。

例えば、別の課に業務を依頼する際も、事前に相手の顔が分かれば、お互いに安心感のあるやり取りができます。さらに、カオナビ上で個人の特技などをPRできれば、仕事に限らず共通の仲間が見つかるなど、職員間のコミュニケーションツールのような活用も期待できるとみています。

庁内にはさまざまな能力やスキルを持った職員がいます。突出した才能を持つ「出る杭」同士を結び付け、仲間を増やして活躍の場を増やしていくこと。さらにその取り組みを庁外に発信することで共感を広げて、品川区で一緒に働きたいと思う仲間を増やしていきたいと考えています。

佐藤様
区実施研修以外にも他機関での研修などを含めると年間200本以上の研修があり、ゆくゆくはそのお知らせもカオナビを通して行っていければと考えています。

また、カオナビ上に研修受講情報などを蓄積し活用していくことで、各職員の職種やレベルに合った研修やスキル取得を助ける研修をレコメンドできるようになります。将来的には蓄積した情報を最大限に活用して、職員一人ひとりの能力向上支援に繋げていきたいと考えています。

品川区様・デロイト トーマツ・カオナビの関係者一同
品川区様・デロイト トーマツ・カオナビの関係者一同
職員数:
2951人(2025年4月1日時点)
  • ※インタビューの内容は取材時のものになります。

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