ユーザー会レポート
現場スタッフの育成が、店舗ごとにバラバラ…多店舗展開の人事が抱えるリアルな悩みを、株式会社ベガスベガス様はこう解いた。
2026年8月1日

「店舗が増えるに従って、育成のやり方がバラバラになっていた」
多店舗・多拠点展開をしている会社の人事の方に話を聞くと、似たような悩みが出てきます。
人材育成の仕組みは本部が整えている。でも、各店舗の現場ではそれぞれのやり方があって、実際どう動いているかが本部からは見えない。店長によって指導の丁寧さも、評価の基準も、温度感もまちまち。「スタッフのモチベーションが上がらない」「評価に納得してもらえない」という声は上がってくるのに、何が原因かを突き止めるための情報が整っていない——。
今回のユーザー会で登壇してくださった株式会社ベガスベガス様の事例は、まさにこうした課題と向き合ってきた実践の記録でした。
※以下の内容は2026年6月開催イベントに基づくレポートです。
ご登壇者紹介
人事総務部 部長 兼 DX推進部 部長
莅戸 宏 様
2007年 入社
2009年 店長に就任(その後、3店舗経験)
2013年 エリア長に就任
2023年 人事総務部 部長に就任
2025年 DX推進部 部長を兼務/執行役員 部長に就任
研修課 課長代理
山田 圭一 様
2011年 入社
2014年 新店舗立ち上げ・チーフ就任
2018年 マネジャー就任
2020年 人事総務部・新卒採用担当就任
2022年 サービス研修課・研修担当就任
2025年 研修課・課長代理就任

育成を「現場任せ」から「仕組みでまわす」へ
ベガスベガス様は、パチンコ・飲食・アミューズメント・フィットネスなど多業態で全国78店舗を展開するエンターテインメント企業です。社員数は1,500名を超えています。
「多業態・多店舗」文字にするとシンプルですが、その裏にある人事業務は、想像を絶する複雑さです。業態が違えば評価指標も違う、現場の文化も違う、そもそも「良い店長像」が異なることもあります。
そうした多店舗展開企業ならではの複雑さに加え、ベガスベガス様が評価制度を見直すきっかけとなったのは、2024年8月の中期経営計画発表でした。
そこで掲げられた目標は、10年間で売上高5,000億円達成。当時の売上規模から考えると、これは3倍以上に相当する数字です。
10年後の会社の未来を見据えて人と組織をどう変えていくべきか、逆算して今できることは何か。ベガスベガス様のお取り組みとカオナビ導入の背景を余すところなく語っていただきました。
目標を掲げるだけでは、なかなか人は動かない
大きな目標が掲げられても、人はなかなか動かないのが現実です。株式会社ベガスベガス様でも同じで、中期経営計画の発表後に人事が直面したのは、4つの根本的な課題でした。

特に、4点目の「品質管理」については、今回の登壇で最も共感を集めたポイントのひとつでした。
「今までは業績についても店長に依存していて、業績不振や営業課題は店長を代えることで立て直しを図ってきた。でも、それは根本的な解決策ではなかった」莅戸さんはそう、率直に話してくださいました。店長個人の能力に依存する組織では、店長が変わるたびに店舗が乱高下してしまう。仕組みがなければ、品質は永遠に均一にならない。
これらの課題に対して、ベガスベガス様では、チェーンストア理論のように均一化・標準化するのではなく、“個の強さ”で局地戦に勝っていくことを前提に掲げられました。人材戦略も効率化だけが目的ではなく、強い個が集まった組織を築くことが重視されています。
「管理職から変える」——給与体系と評価制度の改定
まずは管理職の給与改定、評価見直しを実施しました。
従来の等級制度を見直し、管理職給与を大幅に引き上げると同時に、新しい評価基準で全店長を査定し直すという大規模な施策。昇格者が出る一方で、なかには降格者も出たそうです。
これがどれほど難しい施策かは、人事経験のある方なら想像できると思います。「シミュレーションはしていたんですか?」という会場からの質問に対して、莅戸さんは「1年かけて準備しました」と回答されていました。一気に実施するのではなく、制度の趣旨を丁寧に説明しながら段階的に進めた一方で、現場への影響は相当のものだったと思います。
同時に、面談の仕組みも見直しました。
管理職の評価面談はこれまで半年に1回でしたが、年1回に変更(3月に評価面談 → 取締役会・社長決定を経て → 5月にフィードバック面談という2段階の設計)。面談後の入力を“強制入力”にすることで、評価記録の漏れをなくし、“やったかどうか”を確認できる状態をつくりました。

5つの機能をフル活用。理念浸透のサイクルを回す
ベガスベガス様におけるカオナビの具体的な活用方法を紹介してくださったのが、研修課 課長代理の山田 圭一さんです。「制度を作って終わりではなく、現場で使われて初めて意味がある」というお考えのもと、カオナビの活用を人事だけでなく従業員にも少しずつ運用が定着するよう進めているとのことです。「指導者・部下・教育コンテンツのあり方を定義し、現場の教育と理念浸透のサイクルを回す」という目標に向けて、複数の機能を組み合わせて使っているとのことでした。

具体的には、人材データベース(プロファイルブック)の活用をベースに、以下のような機能の活用事例をご紹介いただきました。
人材データベース(プロファイルブック)— 評価情報・研修履歴・面談内容を一元管理。
社員リスト(ピックアップリスト) — 研修対象者を条件で絞り込み・管理
ダッシュボード — 採用数や離職率をデータで可視化
社員アンケート(ボイスノート) — 研修後アンケートや自己ビジョンシートの収集
評価ワークフロー(スマートレビュー) — 管理職評価のデジタル化・標準化
eラーニング・学習管理(ラーニングライブラリ) — YouTube動画をそのままeラーニング化し、年次研修や予習復習に活用
カオナビのラーニングライブラリを選んだ決め手は「YouTubeのリンク」
施策の基盤ツールとしてカオナビを選んだ理由として、莅戸さんが挙げてくださったのは4つです。Excelからのデータ移行のしやすさ、データ集計の手軽さ、中長期のコスト、そしてeラーニング対応。
その中でも「決め手はここだった」と話してくださったのが、YouTubeのリンクをそのままeラーニング・学習管理機能の「ラーニングライブラリ」に登録できることでした。YouTubeの活用により、これまでは店長の経験則で教育していたものが、同じ基準で教育できるようになりました。また、社員自ら動画を見ようとする姿勢が生まれ、現場全体のスキルアップにつながっています。
「研修コンテンツを一から制作すると、それだけで膨大なコストと時間がかかる」——その話は参加者にも刺さったようで、うなずく方が多くいました。既存のYouTube動画を活用できれば、コンテンツ制作無しでeラーニングが始められる。
実際に配信している動画は、株式会社ベガスベガス様が制定している「夢人31行動指針」に関連するコンテンツに加え、ビジネス書の要約動画(『7つの習慣』、『人を動かす』、『嫌われる勇気』など)や専門家の講演動画など。現在すでに100本以上が登録されているとのこと。「研修担当者が探してきた動画を、その日のうちにラーニングライブラリに追加できる」という即応性は、現場主導で育成を動かしていく上で大きな強みになっているようでした。
「成功事例だけでなく、途中の状態もリアルに話してくれた」という声が交流会でも上がっていました。参加された方が「本部主導で仕組み化を進めつつ、評価者によるブレを是正し、基準を合わせにいくことが必要」と率直に語ってくださったように、まだ道半ばの状態をそのまま見せてくれたことが、聞いている側に「うちも同じだ」という安心感をもたらしていたのだと思います。

カスタマーサクセスが語る、多店舗企業“あるある”の課題
この日、ベガスベガス様ご登壇の後は、当社のカスタマーサクセス担当・西田から多店舗・多拠点企業におけるカオナビの活用パターンをご紹介しました。
カスタマーサクセスとして約100社以上のお客様を見てきた西田が、現場でよく耳にするリアルな課題とカオナビの活用方法を紹介しました。
例えば「カオナビの活用が人事だけで止まっている」という課題。具体的に言うと、評価の時期だけ開くツールになっていて、マネージャーや現場の店長、経営層にまで広がっていない、という状態があるそうです。
そこで、うまくいっている企業に共通しているのが「スモールスタート」の発想だそう。一気に全社展開しようとすると運用が複雑になって定着しにくい。まず一部の役職者に絞って始め、マイボードで「部下の情報を1on1の前に確認する」という習慣をつくることが、マネージャー活用の入り口として有効、とのこと。
さらに、人事側はデータを登録しているのに、従業員は評価入力のときしか開かないということもあるそう。これは、スマホアプリで開きやすくすることに加えて、「自分のために使う」と思える設計が重要だと西田は話してくれました。ポイントは「入れっぱなしで終わらない」こと。従業員が入力した自己ビジョンシートが実際の異動検討につながった——そういう「入力したことが使われた」という実感が、次の入力の動機になるそうです。

プロダクトマネージャーが示した、ラーニングライブラリの今後のビジョン
西田のパートに続いて、当社のPdM(プロダクトマネージャー)・岩月がラーニングライブラリとスマートレビューの「直近とこれから」も紹介しました。
ラーニングライブラリの直近リリースとして紹介されたのは、2026年3月〜6月に順次追加された機能群。AIが動画をチャプター分けする「AIチャプター生成機能」(多店舗の忙しいスタッフがすき間時間に要点だけ確認できる)、受講履歴をプロファイルブックのシート情報として連携する機能、入退職の際の対象者管理が自動化される機能。どれも「現場で回し続けるための小さな負荷軽減」を積み上げてきたものです。
そんなラーニングライブラリのビジョンは「事業貢献につながる学びを評価につなげ、才能を育てる」こと。
多店舗・多拠点企業への展望として岩月が示した次の3つの方向性は、今回参加していただいた企業の方々の「この先にやりたいこと」に確かに重なっていたと思います。

ユーザー同士の交流会で見えた、多店舗企業の共通点
登壇セッションのあとは、現地参加者によるワークショップと交流会。業態は異なるものの「多店舗・多拠点展開」という同じ構造を持つ企業の人事担当者が集まったことで、話し合いはいつにも増して深まりました。
今回のワークショップテーマは「自社の育成の現在地とこれから」。
ベガスベガス様のお話を踏まえて、参加者同士で各社の課題や工夫を語り合いました。

まずは個人ワークです。参加者それぞれが自社での育成施策を、「誰に」「どんな施策を」「現状の課題」の3点で付箋に書き出し模造紙に整理します。

各社の様々な取り組みが並べられた後は、同じテーブルの参加者同士で共有し、ディスカッションを行いました。
現場ごとに教育の温度差があることなど、企業ごとに課題や施策は異なっていても、多店舗展開企業として同じ課題がいくつも見つかり、ディスカッション中は「わかります!」「そうなんですよね」と共感の声が多く聞こえてきました。

ワークショップの最後には、参加者それぞれがこの日学んだこと・気づきをお一人ずつ発表し、改めて多店舗展開企業ならではの課題や今後のありたい姿について共有し合い、
以下のようなテーマが話題の中心となりました。
育成を評価につなげること
「学ばせること」より「学びを評価に結びつけること」が本質なんじゃないか、という話が出てきました。評価への不満の背景を掘り下げると、「ちゃんと見てもらえていない」という感覚から来ているケースが多い。1on1をきちんと実施していなかったり、フィードバックが管理職の評価に反映されていなかったり——「まず見る仕組みを整える」ことが先決だという話に、各社の共感が集まっていました。
理念・目標を「構造化」すること
M&Aや組織統合を経た企業では、カルチャーの乖離がサーベイ結果に直接出てきてしまうことがある。組織の基本情報が各部署でバラバラな形式で管理されている問題も、「所属シートの構造化」で解決できそうという可能性の話に発展していました。
経営目標との接続
育成・評価の施策を、最終的には経営管理ダッシュボードや事業目標と接続したい——というニーズが各社から出てきました。「人事だけで完結させない」という方向性で各社の意識が重なっていたのが、印象的でした。
「全職能JD(ジョブディスクリプション)を整備したい、でも作るのがとにかく大変…」という悩みも各社共通で、この日の交流会は似た業態だからこそ、終始会場が共感に包まれていました。


参加者のみなさまの声
人事制度の見直しから現場への実装、カオナビ活用までを一連で聞くことができ、とても参考になりました。
評価のばらつきや育成の属人化への活用が具体的で、自社でも取り入れられそうなイメージが持てました。
成功事例だけでなく、途中の状態もリアルに聞けたのがよかった。完成形を見るより、プロセスを知れる方が参考になります。
プロファイルブックとマイボードの組み合わせ方、ラーニングライブラリへのYouTube動画アップという発想は目からウロコでした。

リアルな状況を打ち明けることで始まる共感
今回のユーザー会は、多店舗・多拠点展開の企業の皆さまに向けたものでした。現地・オンラインのハイブリッド形式で開催しましたが、オンラインには160名以上のお申し込みをいただき、「多店舗・多拠点」という構造を共通項に、こんなにも多くの方が関心を持ってくださったのだと、驚きました。
もしこの記事を読んで、「うちの店舗でも育成・評価のやり方がバラバラで困っている」「現場に伝わる評価制度をどうつくればいいか、まだ答えが出ていない」という状況であれば、今回のユーザー会のテーマや、あの場に集まった皆さまが持ち寄っていた悩みと、かなり重なる部分が多いのではないでしょうか。
株式会社ベガスベガス様は、「ここで迷った」「まだこれは試行錯誤中」という途中の状態も、包み隠さず話してくださいました。そのリアルさが、交流会での「うちも全く同じです」という会話を次々と引き出していました。完璧じゃなくていい、途中でいい——そう思えることが、人事の現場で次の一歩を踏み出す力に繋がるのかもしれません。
人材育成や人事評価に、「これが正解」という答えはありません。業種・業態によっても、企業規模によっても、現場のリアルによっても、最適な解決策は異なります。だからこそ、同じ構造の悩みを持つ方々が「うちはこうしてみた」「それ、うちではどうなんだろう」を話し合える場をこれからも続けていきたいと思っています。
次回も、ぜひご参加をお待ちしています!
2026年6月|ユーザー会レポート|東京開催
文:臼井 貴美(カオナビキャンパス コミュニティグループ)
