ユーザー会レポート
データはあるのに、最適配置の「最適」が定義できない——AI活用ゼミ第1回でわかった、人事のAI活用の第一歩
2026年7月1日

カオナビAI推進室です。
2026年6月5日、カオナビとしては初となる同一メンバーで継続開催するゼミ形式のユーザー会「カオナビAI活用ゼミ」の第1回を開催しました!
今回は非常にたくさんのご応募をいただき、厳正な抽選を経て選ばれた、自社の組織変革に挑む24名の人事担当者の皆さまにお集まりいただきました。
なぜわざわざゼミなのか。第1回で何をやって参加した人事の方々が何に詰まり、どんな学びがあったのか。
私たちAI推進室の想いと、実際に参加いただいたユーザーの皆さまの生の声を読んで「なんか面白そうなことやってるな!」と思っていただけましたら幸いです!

このAI全盛期に、どうして「ゼミ」を開いたのか
なぜAIが何でも答えてくれるこの時代に、わざわざ対面で複数回もお時間をいただく「ゼミ」というかたちをとったのか。そこには、私たちAI推進室の強い想いがあります。
「HOWを教える会」は、これからの時代は瞬時に陳腐化してしまうという危機感。AIに関するサービスや技術は、とんでもないスピードで変化しています。「このボタンを押すとこう出力され、それを別のシステムに転記して……」といったHOWだけを教える集合研修を開いても、その知識は数週間で古くなり、意味をなさなくなります。
だからこそ私たちが目指したのは、ツールの説明会ではありません。正解が見えない中でもAIを泥臭く動かして試し、他社事例やカオナビメンバーと意見を突き合わせながら気づきを得て修正していくための「学びの仕組み」を参加者それぞれの自社内に定着させるための場です。
同時に、見せかけだけの便利そうなプロダクトでは、人事のリアルな現場を救えないという事例も散見されるようになってきました。
今や、一見それらしいシステムや機能ならすぐに作れてしまう時代です。しかし、生々しいイレギュラーを詳細まで把握し、機能内に落とし込めていなければ、現場の本当の課題を解決することは困難です。だからこそ私たちは、生の課題から現場で使える解決策をユーザーの皆さまと共に手探りで作り上げるために、このゼミを通じて現場の「生の声」を徹底的に集めたいという想いを持っています。
そして何よりAI時代だからこそ「コミュニティ」という人的ネットワークが、ユーザー×私たちの最大の武器になると考えています。
AIが出してくる当たり障りのない改善案や、数値だけでストーリーのない「あるべき論」だけでは、実際の組織や生身の人間を動かすことはできません。
実際に自社でAIを使ってみてのリアルな悩みや、「うちはこの壁をこうやって乗り越えた」という生の事例が共有されるからこそ、「これならうちの会社でもできそうだ」「やってみよう!」という想いが醸成され、本当の課題解決に繋がっていきます。
機能の差は一瞬で埋まる時代だからこそ、カオナビはこのコミュニティの力をどこよりも強く磨き上げ、本当の価値提供の為に何ができるかを追求していきたいと考えています。
こうした想いをかたちにするため、私たちは今回、同じメンバーで最後まで伴走する全4回の「AIゼミ」という形態を選びました。
同一の参加者の方々と複数回にわたってこれほど深く連携するコミュニティの取り組みは、カオナビにとっても初めての試みです!

開発メンバーが「カオナビを忘れる」時間
このゼミには、カオナビ側の開発・推進メンバーも相応の覚悟で臨んでいます。今回の主題である「異動・配置の最適化」「組織・人員構成経年シミュレーション」「労務・勤怠データ分析」「人事評価の深掘り」という4つのテーマに合わせ、各機能の戦略を担う開発責任者やプロダクトマネージャーが各テーブルに専属で付きました。
普段の業務でもユーザーヒアリングや商談を通じてお客様のニーズを伺う機会はありますが、複数回にわたり何時間も対面で席を並べ、時にはカオナビに入っていない外部の人事データまで見せ合いながらフラットに議論する機会はそう多くありません。
ワーク中には、開発メンバーたちがカオナビをあえて一旦忘れ去る場面もありました。「そもそも人事としてあるべきフローは何なのか」をゼロベースで考えるためです。普段のバイアスを取り払うことで、私たちがまだ見落としている生の課題が浮き彫りになり、それがプロダクトを進化させる手がかりになります。

配布された「プロンプト」の意図
第1回のゴールは、「4つのテーマから自社が取り組むものを一つ選び、課題と『どうなっていたいか』を言語化すること」でした。
当日、参加者には生成AIチャットを「人事専門のコンサルタント兼インタビュアー」に変身させるプロンプトを配布しました。AI側から一問一答のインタビュー形式で質問を投げかけさせ、参加者がそれに答えていくことで、自社の業務フローやデータ構造を整理していく仕掛けです。
具体的には、以下のようなステップに沿って思考の壁打ちを進めてもらいました。

今回のワークではこのステップで言語化した内容を、最終的に「HTML形式のレポート」として出力し、同じテーブル内で共有することを一つのゴールとしました。
本丸のAI活用の手前で、データの蓄積が不十分な状態のままAIに答えを丸投げするのではなく、人間にしかできない前提の言語化に集中してもらうための設計です。
このプロセスを体験した参加者からは「AIからの質問に思ったことをそのまま回答していくだけで、最終的に綺麗なレポートの画面ができ上がったのが魔法のようでした」という驚きのお声をいただきました。
浮き彫りになった「AI以前」のボトルネック
50分間の個人ワーク、そしてその後のグループ共有の中で、参加者の皆さまがAIと向き合った結果、非常に興味深い共通の壁が見えてきました。それは、AIの性能云々ではなく、人間側のオペレーションや組織構造、あるいはデータの持ち方に起因するボトルネックです。
AIに問いかける前段階で、多くの人事担当者が「そもそも人間側で言語化できていない問題」に直面することになりました。現場で実際に交わされた、3つの具体的な事例を紹介します。
-基準や人物像の定義が必要だった
「次世代の経営幹部候補を発掘し、育成配置を設計したい」という参加者は、AIと向き合う中で、社内に幹部候補の選定基準や育成記録が存在しないことに気づきました。精度の高い回答を得るためには、AIに渡せる「定義」が必要です。
そこで、まず取るべきアクションとして「現在取り出せるデータで仮の候補をリストアップする」という現実的なラインへ絞り込みました。
-意思決定の材料がシステムに載っていない
毎年の大規模な異動案の作成が「パズルのような属人的な思考作業」になっているという参加者が言語化したのは、その構造的な理由でした。判断に必要な情報の多くは口頭や個人メモにとどまり、スキルデータも複数システム間で統一されていない。AIに渡せる状態を整えるため、まず「候補者の抽出」にスコープを絞ることから始めることになりました。
-データ不足を可視化することを成果にする
人事評価の偏りを可視化したいと取り組んだ参加者は、その裏づけとなるデータが社内にそもそも不足していることをワーク中に発見しました。「現状のデータでは評価の偏りを説明できない、という事実を可視化すること自体を成果にする」として、足りないものを正しく示すことも前進だと定義しました。
事例が示した「AI活用の前提条件」
今回のワークの中で共通していたのは、「AIに問う前に、まず人間が言語化しなければならないことが山積している」という課題です。
基準がないなら定義から。データがなければ範囲の絞り込み・システム連携から。不足があれば不足の可視化から。
「AI以前」の現状やあるべき姿の「言語化」こそが第一歩。
至極当たり前な着地に思えますが、これが第1回ゼミを通じて全員が体感した、改めての気づきでした。
次回以降は、こうして言語化された課題を起点に、実際にAIを動かし活用していきます。

💡番外編:AIゼミ運営者のインタビュー記事
「魔法の杖」ではなくAIを「道具」として使うための一歩
ここから、私たちの半年間のAIゼミは本格化していきます!
データをAIに投げる前段階で、人間がどうデータを整え、どうコンテキストを整理しておくべきか。
AIは「魔法の杖」ではなく、使いこなすべきひとつの「道具」です。そのアウトプットの質は、指示する人間がどう振る舞うかによって大きく変わります。
今起きている生の課題を理想のかたちに近づけるため、イレギュラーを含めてどうしたら「AIに価値ある仕事をさせられるのか」。手順や作法を一歩ずつ身に付けていくことが肝です。
そして、カオナビを通じて解決できる課題については、積極的に機能開発に活かさせていただきます。
綺麗事のAI論を語るつもりはありません。
次回からは、同じ問題意識を持つ仲間たちと一緒に、一つひとつの課題を泥臭くこじ開けていきます!
今後も様々なかたちで本取り組みを発信していく予定です。
「人事データ×AI」と向き合い、リアルな課題を解決していくゼミの続報を、ぜひ楽しみにお待ちください!
