360度評価とは? メリット、デメリット、運用方法、評価項目、導入率、企業事例について

360度評価とは、仕事上で関係を持つ多方面の社員が評価対象者を評価すること。

従来多用されていた上司が部下の人事評価を行う人事評価制度とはまったく異なる手法を用います。そのため、導入を検討する場合には具体的事例を含めた情報収集が不可欠です。

  • 360度評価の定義やその特徴
  • 導入率
  • 導入時の注意点
  • メリット・デメリット
  • 実際の運用方法

などについて解説しましょう。

1.360度評価とは?

360度評価とは評価対象者の周辺にいる上司、同僚、部下などが、評価対象者の人事評価を行う制度のこと。

従来の日本社会では、上司が部下を評価する人事評価制度が一般的でした。360度評価は、上司に加え、同僚や部下からも評価対象者の人事評価材料を集めて人事評価を行います。

2.360度評価の特徴

クレイア・コンサルティング株式会社『多面評価(360度評価)制度』を参考に作成

360度評価の特徴は上司や同僚、部下と幅広い立場にある人の視点を用いて人事評価を行うところです。

立場の違った複数の視点から評価対象者を見ることで、評価対象者が現場で発揮している能力などの人事評価材料をより多く集めることができます。

また、「上司にどのように評価されるか」だけでなく、「同僚や部下と良好関係を築きながらどのように仕事を進めるか」を意識するきっかけにもなるでしょう。

このように、社員同士の意識改革や組織変革を促す作用があることも特徴です。

3.日本における360度評価の導入率

労政時報が行った調査によると、2013年における360度評価の導入実績は、従業員1,000人以上の企業で16.2%。また、2016年秋発表の日本経済新聞社が約1,600社の企業(上場企業かつ連結従業員1,000人以上の企業とそれらに準じる有力企業)に対して行った調査によると、360度評価の導入率は46.1%でした。

どちらの調査結果でも、360度評価は大企業の関心が高く、導入実績も増加傾向にあることが分かります。

2つの導入目的

企業が360度評価を導入する目的は2つあり、どちらを目当てとして導入するかで、360度評価の運用方法に違いが生じます。制度を導入しても、目的に合った運用方法を実施しなければ、360度評価のメリットを享受できなくなるのです。

360度評価の導入検討時には、

  • 導入目的を明確にする
  • それぞれの目的に合った運用方法の確立

が重要でしょう。

①公平な評価を行うため

360度評価の目的の1つは、公平な評価の実行です。上司が部下を評価する単独評価には、上司の部下に対する好き嫌いなどの感情による評価エラーが付き物。

360度評価は、評価エラーが起きやすい単独評価のデメリットを補います。立場の違う複数の評価者が評価を行うことで評価対象者に関する評価の公平性や客観性を実現するのです。

一般的に、360度評価で得られた客観的かつ公平性のある結果は、処遇へと反映させます。

②人材育成、モチベーションアップのため

360度評価のもう1つの目的は、人材育成や社員のモチベーションアップ。

  • 自分が上司からどのように見られているか
  • 自分は同僚や部下からどのように映っているのか

が分かることで、スムーズな人間関係に基づく組織運営を意識した人材が育成できます。また公平な評価がなされている実感を持つことで、モチベーションも高まるでしょう。

この場合360度評価は、教育制度の一環として用いられるため、給与など処遇へ反映されないのが一般的です。

4.360度評価が注目される背景

360度評価がこれほど注目を集めた背景にあるのは、組織が抱える問題点です。終身雇用や年功序列制度の崩壊により、現代は企業内での組織変革を余儀なくされています。また、

  • コスト削減のための管理職削減
  • 社内コミュニケーションのクラウド化

などによって、上司1人当たりの部下の人数は増えたにも関わらず、部下と対面して直接コミュニケーションを取る時間が大幅に減少しました。それだけでなく組織のフラット化も進み、

  • 上司と部下といった縦のつながり
  • 同僚や部下、他部門などの横のつながり

それぞれを密にした仕事の進め方が求められるようになったのです。さらに成果主義も浸透。より客観的で公平性のある人事評価制度に注目が集まり、360度評価の存在がクローズアップされました。

360度評価の評価項目

人事評価制度の評価項目には

  • 成果の評価:処遇につなげる
  • 発揮能力の評価:人材育成に反映
  • 執務態度の評価:処遇や人材育成、異動や配置転換など応用範囲が広い項目

があり、360度評価では3つのうちどのような姿勢で仕事に取り組んでいるかを意味する「執務態度の評価」を担当するべきとされています。机を並べて一緒に仕事をしているからこそ、具体的な事例をもとにして評価ができるのです。

5.360度評価のメリット

クレイア・コンサルティング株式会社『多面評価(360度評価)制度』を参考に作成

360度評価のメリットは大きく分けて5つあります。

  1. 評価の客観性を保てる
  2. 社員が評価に納得できる
  3. 社員自らが改善点に気付くようになる
  4. 社員が自身の特性を客観的に把握できる
  5. 規範意識を持って行動するようになる

①評価の客観性を保てる

従来の評価方法では、上司の評価能力が不足していたり、上司が日常的に部下を見ることができなかったりということもありました。それゆえ、評価結果の公平性に疑いを持ったり不満を抱いたりする部下も少なくなかったのです。

終身雇用・年功序列など従来のシステムでは、この不満は定期的な昇給や昇進などで抑えられてきました。しかし、転職が当たり前となった昨今の状況では、人事評価への不満一つが転職の理由へとなりかねません。

せっかくコストをかけて育てた人材が、上司の評価一つで流出してしまう事態は企業において大きな損失となるでしょう。

360度評価は上司の「主観」や「心証」に影響されないため、評価の「客観性」を保つことができます。多方面からの視点により、一方向からは見えない新たな評価の発見が期待できたり、対象者の成長を促したりするのです。

②社員が評価に納得できる

360度評価は、従来の人事評価方法と比べて不公平感が解消しやすくなります。被評価者である社員は評価に納得しやすくなるでしょう。

複数の関係者が存在する評価項目で同一の評価を下した場合、上司一人だけがその項目について同じ評価を下すよりも、評価自体の信頼性が上がります。上司以外にも同僚や部下、顧客などさまざまな立場の評価者によって、評価の客観性が担保されるからです。

評価される社員は評価者が上司だけのときよりも、自分への評価を納得して受け入れやすくなります。自分が公平な評価がなされる環境で働いていると感じた社員は、評価の高低にかかわらず、職場への信頼感が増し、結果、仕事に対するモチベーションも高まるでしょう。

③社員自らが改善点に気付くようになる

360度評価では、被評価者である社員自身も評価を行います。この自己評価によって、他者評価との比較検討を可能にするのです。

従来の「上司のみが評価する手法」では、評価に対する不信感から、被評価者がフィードバックを活用しない状況が多く見受けられました。納得できない評価は自分自身の行動を改める参照要素になり得ないためです。

一方、複数の評価者が存在し、客観性が担保されている360度評価では、このような事態が解消されます。360度評価は被評価者が納得して受け入れられることが多いため、行動を振り返る参照要素として機能するからです。

④社員が自身の特性を客観的に把握できる

社員は評価との比較によって自他の認識を把握できるようになり、結果、強み・弱みといった特性をより客観的に把握できるでしょう。

比較によって、被評価者である社員はこれから自分自身の何を生かし、何を改善していけばよいのか、取り組むべき事柄が明確になります。それにより、気付きも増え、行動の改善が期待できるのです。

部下や顧客などから具体的に評価されるために、どのようなビジネスシーンでどのように行動を変えていけばよいのか、具体的に想定しやすいこともメリットでしょう。

⑤規範意識を持って行動するようになる

従来の評価方法では、上司とそれ以外の会社関係者との間で評価が著しく異なる社員であっても、上司の評価さえ高ければ昇給や昇進に結び付いていく実情がありました。この慣習が悪名高い「上司の顔色のみを窺って仕事をする人々」を生み出す要因となっていたのです。

360度評価は上司、同僚や部下、他部署の社員、顧客など、さまざまな立場の人々が評価者となるため、不公平な人事を払拭できます。評価をする人々それぞれの立場に合わせて、被評価者本人が成すべき役割を果たし、責任を取ることで、総合的な評価が得られるからです。

たとえば、上司の評判が良くても部下の教育をおろそかにしていれば、「部下の先輩」として成すべき役割を果たしているとはいえません。そのような社員は、上司からの評判は良くても、部下からの評判は悪くなるでしょう。

360度評価は「誰に対してどのような責任を果たすべきか」という規範を社員に植え付け、本人自らが規範を意識してプロフェッショナルとして生まれ変わる契機となり得るのです。

6.360度評価のデメリット

360度評価のデメリットは3つあります。対策も併せて見ていきましょう。

  1. 主観が評価に影響する可能性が高い
  2. 高評価を求め部下を厳しく教育しなくなる可能性
  3. 社員同士で互いに評価を良くし合う可能性

①主観が評価に影響する可能性が高い

「評価する側と評価される側」の関係が固定化している状況で360度評価を導入する場合、360度評価への十分な理解が必要でしょう。

評価することに慣れていないと、自分の主観や好みに合わせて被評価者を評価する可能性が高まります。業務と関係のない好悪の感情や私的な人間関係が評価に影響を及ぼしてしまうのです。

こうした感情は業務上の改善が期待できない上、公平な評価のためには排除しなければならない類いのものといえます。

主観を是正し、より客観的で公平な評価を行うには?

360度評価を導入する前に、適切な評価スキルを身に付ける研修をしましょう。

360度評価の導入意義や背景、具体的な評価方法や注意点など詳細を説明することで、新しい評価方法への理解を促すことができ、主観を排除するという原則を周知できるのです。

360度評価は複数の人々が評価するという性質ゆえ、主観の排除を最初から織り込むこともできます。たとえば、ある特定の評価者の主観的な評価が他の評価者のものと著しく異なった場合、特定の評価者の評価スキルは疑問に付されるのです。

また集団で結託して評価を下す可能性も考えられます。そのため、事前の研修による理解がより一層重要となるのです。

②高評価を求め部下を厳しく教育しなくなる可能性

一般的に部下は上司の仕事内容を知らない状況が多く、印象だけで評価をしてしまいがちです。ここで不利な立場に立たされる恐れとなるのが「厳しい上司」でしょう。

「厳しい上司は部下のことをよく考えているありがたい存在」と感じる人々は数多くいます。しかしそうしたことをすぐに感じる人は少なく、えてして時が経過してから気付くものです。短期的に見ると、厳しい上司は優しい上司と比べてあまり印象は良くありません。

特に近年、叱られることに慣れていない社員も多く、叱られてすぐ会社を辞めてしまう例もあるでしょう。そのため、社員によっては厳しい上司の評価を良くないものにする可能性が考えられるのです。

結果低評価を未然に防止するため、上司がいわば自衛の策として、部下を厳しく教育しなくなるケースがデメリットとして生じるのです。

評価内容の限定やコミュニケーションの見直しをする

このような事態を防止するためには部下が上司を評価する際、

  • 評価の内容を限定する
  • 部下との接し方を見直す

などの対策を取りましょう。また見方を変えれば、360度評価は上司が成長するきっかけにもなり得ます。

伝えることは伝えるなど厳しく接しつつも、ヒアリングやフォローも可能のように適切な評価を受けるだけのコミュニケーションスキルを上司が身に付ける機会になるからです。

③社員同士で互いに評価を良くし合う可能性

同僚・同期とはコミュニケーションが取りやすく、同じレベルの仕事をしていることも多々。お互いどのようなタスクをこなしているのか把握・評価しやすいもの。

そのため、同僚からの評価は質・量共にとても有益なものとなり得るのですが、一方で大きなデメリットもあります。

評価者と被評価者が同じ立場にある場合、以下のような評価に関するさまざまな駆け引きや取引を行う場合があるのです。

  • あの人には高く評価してもらったから自分もあの人には高い評価を付けよう
  • 低い評価を付けられたお返しに低い評価を付けよう
  • 高い評価を付けてもらうために取引をしよう
  • 高い評価を付けてほしいと頼まれた

当然のことながらお礼やお返しなど、評価のためといった心情を評価に反映させるのは適切とはいえません。

そのほか、

  • 厳しい仕事を振られてしまった同僚に同情
  • 優秀な同僚に嫉妬
  • 出世争いの足の引っ張り合い

などさまざまな感情や思惑が評価に入り、適切な評価ができなくなる可能性も。こうした点も考慮しておきましょう。

7.360度評価を導入する際の注意点

360度評価を導入するに当たって、いくつかの注意事項があります。それぞれの注意点に関して適切な対応を取ることで、客観性や公平性の高い360度評価をスムーズかつ効果的に導入できます。これから挙げる5点は、最低限認識して欲しい項目です。

  1. 人事評価の対象となる人すべてを対象にする
  2. 評価項目は執務態度を中心とする
  3. 平均値を評価得点とする
  4. フィードバックを行う
  5. 評価の反映先を明示する

①人事評価の対象となる人すべてを対象にする

人事評価の対象は、「すべての社員」としなくてはなりません。360度評価のメリットは、客観性や公平性を追求できるという点。

一部の社員だけを評価の対象としては、公平性があるとはいえません。対象を「すべての社員」にし、より客観性、公平性を追求できるようにする配慮が必要でしょう。

②評価項目は執務態度を中心とする

360度評価で用いる項目は、「執務態度」を中心に構成することが重要です。人事評価項目には

  1. 成果
  2. 発揮能力
  3. 執務態度

の3つがありますが、処遇や人材育成に関わるようなものではなく日常の様子を観察することで評価できる「執務態度」に項目を絞るとよいでしょう。

ただし、評価を強いることはせず、「評価できない」「分からない」などの回答を認めるといった配慮も必要です。

③平均値を評価得点とする

360度評価の評価得点を集計する方法にも、注意点があります。360度評価の評価得点を産出する場合、評価の合計を集計して平均値を評価対象者の評価得点とします。上司、同僚、部下から集めた評価得点を見てみると、人によって差があると分かります。

公平な評価ができるよう、最高値や最低値ではなく平均化した数値を最終評価得点とするようにしましょう。

④フィードバックを行う

人事評価は、評価対象者に評価得点をフィードバックし、PDCAササイクルを回すことで、初めて意味を持ちます。もちろん、評価者の個人名と何点を付けたのかといった具体的な内容を公表する必要はありません。

評価対象者には算出した平均値のみをフィードバックし、モチベーションのアップや自己啓発などに生かすようにします。

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⑤評価の反映先を明示する

評価をしたらそれで終わりではなく、結果を何かに反映して活用しなくてはなりません。360度評価についても、評価の反映先を社員に明示することが重要です。

何のために評価をしているのか、評価結果がどんなことに反映されるのか、それが明示されなければ、評価効果も半減しかねません。360度評価の仕組みを丁寧に社員に説明するよう徹底しましょう。

8.360度評価の具体的な評価項目や運用方法

360度評価はたくさんのメリットをもたらしますが、デメリットも伴います。このデメリットを極力なくし、多くの社員を納得させるためには、事前の制度設計と正しい運用が必要です。

360度評価は使い方によって非常に大きな効果を期待できますが、導入には多少のコストが必要とされます。まず最初に、社員との関係を軸に見ていきましょう。

導入決定後、社員に説明する

360度評価の導入に当たって最も重要なことは、被評価者であり評価者として参加する社員の不安を取り除き、360度評価に関する理解を高めて支持を得ること。社員に向けた説明会の開催が必要でしょう。

説明会の形式は、個人面談の場合もあれば、グループミーティングの場合も。経験のあるファシリテーターによって、半日から1日ほどの時間をかけて実施するのです。

説明会では360度評価の目標、現時点における社内の評価課題と導入の意義、上級役員たちの支持があること、そして以下のような360度評価の具体的なプロセスについて伝達します。

  • STEP.1
    360度評価がどのように機能していくのか
  • STEP.2
    360度評価導入のコーディネーターは誰か
  • STEP.3
    評価期間と評価項目の内容
  • STEP.4
    評価表の記入方法
  • STEP.5
    評価表の配布時期と提出時期
  • STEP.6
    フィードバックはどのように行われるのか
  • STEP.7
    他にミーティングはあるのか
  • STEP.8
    評価が終わった後はどうなるのか

具体的な行動・予定までを丁寧に説明し、社員に理解を促しましょう。質疑応答の場を設けることも忘れてはいけません。

説明と質疑応答によって、社員は導入前に360度評価を多角的に把握できます。理解が深まれば、不安からも解放されますし、社員自身も、能動的に360度評価に関わる準備を整えられるでしょう。

社員からの相談に個別で対応する

  • 説明会だけでは不安を解消しきれない社員
  • 説明会で質問してよいかためらう社員

なども存在するでしょう。そうした社員のため、

  • 社内にコーディネーターを置く
  • 個人面談を随時実施する

などのフォローをしましょう。

社員には、自分が同僚から評価されたり同僚を評価したりということを嫌うタイプもいます。中には、ライバル関係にある同僚にどう評価されるかと、余計なストレスをためてしまう社員もいるでしょう。

不安を取り除いて、社員からの協力を得ることが360度評価の導入を成功させる一つのカギです。導入前の説明会後に評価者同士の情報交換の場を設けたり、デモンストレーションを行ったりすることも不安の除去に効果的でしょう。

360度評価で評価を行う項目

一般社員向けの「360度評価」にある項目の例

  • 態度
  • 印象
  • 受け入れ・対応力
  • 部署での態度
  • 仲間への対応
  • 業務遂行
  • チームワーク
  • 挨拶

このような事柄を評価し、総合評価に導きます。

リーダー向けの「360度評価」

上記にプラスするかたちで、

  • 課題思考力
  • 業務遂行力
  • 目標達成志向
  • 判断力
  • リーダーシップ
  • コミュニケーション
  • 人材育成
  • 組織の動機付け
  • 経営理念の理解

などの項目を評価し、客観的に数値化します。

これらを個別に作成して管理するより、システムで一括作成・管理するのが効率的です。自社に合わせて評価項目をカスタマイズできるクラウドサービスを導入すれば、

  • 労務管理の負担
  • 入力の簡便さが評価者の作業負担の軽減

とさまざまな面で役立つでしょう。

360度評価の運用ポイント

前述のデメリットを踏まえ実施する際には社員全員が人事評価研修を受講して、

  • 実施目的
  • 意義
  • 評価基準

などを学ぶことが大切です。人間関係に配慮して、評価を依頼した「社員の匿名性を保つ」などの対策も必要となります。

その上で評価対象者に向けて360度評価の結果を利用した研修も含めた「丁寧なフィードバック」を実施できれば、評価によって落ち込ませる、慢心させることもなく、さらなるモチベーションアップが期待できるでしょう。

9.評価基準の設計方法

360度評価の評価基準を設計する際には、いくつかのポイントを押さえる必要があります。評価基準の設計を誤ると、せっかく評価してもその効果が得られず、評価そのものが成り立たなくなる可能性もあるのです。

ここで紹介するポイントを押さえて、有効性、実効性の高い評価制度を導入しましょう。

作る際のポイント

評価項目は30項目程度、回答時間は15分以内に想定します。評価項目は評価の活用目的に応じて、いくつかのカテゴリーを設定。カテゴリーのウエイトにより設問数を配分します。

次に、質問文の作成です。カテゴリー別に質問文を多く設け、重複するものを削除しながら構成します。

質問文は、評価者が主観的に回答できるよう客観的な事例を問うものにしましょう。その際、文面は評価対象者の能力や人格を直接評価するような表現は避けます。質問文は、評価者層ごとに若干の訂正・修正が必要となる場合もあるでしょう。

最後に回答尺度を設計します。尺度は「どちらとも言えない」または「わからない」などを含めても5段階程度に抑えましょう。フリーコメント欄については、組織風土などを鑑みて設けるか否かを検討します。

10.360度評価の導入企業・事例

360度評価は、すでに大企業を中心に多くの企業で導入されています。360度評価の具体事例を知ることで、自社導入時のの参考になるでしょう。

ここでは、360度評価を生かした組織改革や人材育成を実践している5社の取り組みをご紹介します。事例に目を通しながら、自社で導入した場合にどのようになるのかイメージを膨らませてみてはいかがでしょうか。

テルモ株式会社

テルモ株式会社は自由闊達で明るく、働きがいのある職場づくりを目的として、2011年から「360度アンケート」を実施しています。

「360度アンケート」対象者は、国内の役員と部門長クラスで、年1回実施。「360度アンケート」の結果は人事評価には使用しない代わりに、社内へ公表し、誰でも閲覧可能です。

アンケートの質問カテゴリーは、仕事のスタンスとメンバーとの関わりについての計15項目が設計。それぞれの項目について5段階で回答します。「やって欲しいこと」「やって欲しくないこと」について自由コメント欄も2カ所設けています。

評価者は、評価対象者と一緒に半年以上仕事をしている上司、同僚、部下に限定し、評価対象者自身が6~20名程度の指名制で決定します。評価結果の活用も評価対象者に任せており、自己改革宣言をする人や、メンバーで情報共有する人などさまざまです。

  • 上司に意見を言う場ができて良い
  • 職場の雰囲気が明るくなった

といった声が聞かれるようになり、「360度アンケート」は自由闊達な組織風土創造のきっかけになっています。

株式会社クレディセゾン

  • 職場の人間関係形成
  • フィードバックによるモチベーションの向上

などを目的として2012年から自社仕様による多面評価・「MAP」(「SQ・感性」「EQ・理性」「IQ・知性」を掛け合わせた「BQ・ビジネス感度」で成り立つ夢中力・アセスメント・プログラム)を導入しています。

「MAP」は日頃の自分の行動特性を理解し、現状を把握、行動を変えることなどを狙いとし、年1回、全社員を対象として行われているのです。

評価対象者が5~7名の評価者を指名、上長は指名に偏りがないかを確認。質問は、7つの夢中力タイプから1つを選択し、設定されている「BQ・ビジネス感度」に基づく28項目に関して5段階で評価します。

28項目は毎年見直しを行っており、評価結果は夢中力タイプの比較だけでなく、評価対象者へのエールをイラストで表現するなど分かりやすさへの工夫もなされています。

「BQ・ビジネス感度」の総合結果も、評価対象者と評価者の回答の数値的な比較のみならず、グラフ化され視覚的にフィードバックされます。

「MAP」の実施により、社員間のコミュニケーションが活発になるだけでなく、企業自身の持っている価値観、あるいは行動指針に対する社員の理解を深める良い場になっているのです。

アイリスオーヤマ株式会社

アイリスオーヤマ株式会社は、

  • 評価される本人が納得できる
  • フィードバックにより強み・弱みに気づき、自己成長に繋げる

ことを目的として、2003年に多面評価を導入しました。導入時、対象者は管理職階層に限定されていました。しかし5年後にはパート、契約社員を含む全社員に拡大しています。

多面評価シートは、主任以上の幹部社員用と一般社員用の2種類を作成。幹部社員用では、「業務力」「実力」「指導力」「人間力」の4分野計12問、一般社員用では、「基本的行動」「能力」「人間力」「実績」の4分野計12問の構成で、それぞれ6段階評価となっています。

幹部社員用の評価者10~30人の人選は人事部、一般社員用の評価者9名の人選は部門長が担当します。評価結果は、

  • 12項目の結果のグラフ
  • 4分野ごとの平均値
  • 社内における順位
  • 12項目の数値
  • 前年度の数値
  • 他者評価のバラツキ度

などが個人にフィードバックされます。また、幹部社員については人事評価と人材育成のために、一般社員については人材育成のために利用されるのです。

社内で行った多面評価に対する満足度・納得度の調査結果は、5点満点中4.2と高評価でした。

株式会社ディー・エヌ・エー

「社員1人ひとりの意思(will)や情熱(passion)を尊重し、熱意を持って働ける環境を創出すること」を目的として、全社約130名のマネージャーに対して記名式の360度フィードバックを実施しています。

マネージャーに求められるテーマ、「レバレッジ」「@マークピープルケア」を強化するために、

  • ゴールを示す
  • 適切に任せる
  • 支援する
  • 結果を出す
  • インテグリティ(誠実さや真摯さを表す言葉)が高い

といった5項目の実践度合いについて、具体的なコメント付きで評価するのです。

記名式のメリットを生かして、フィードバックされた内容をもとに部下と一緒に改善策をディスカッションしたり、改善策のコミットメントを宣伝したりと、マネージャーそれぞれが課題や改善に取り組んでいます。

株式会社メルカリ

OKR(Objectives and Key Results)という目標管理のフレームを使用して、「目標達成度合い」「バリューに沿った行動」を軸に四半期ごとに評価制度を実施しています。

OKRとは、目標を定め、目標達成に必要な要素を3~4成果指標に分解し、進捗をスコア化してトラッキングするフレームワークです。

さらに、社員同士で「成果給」を送り合うピアボーナスの仕組みを利用し、360度フィードバックを実行。個人にはバリューにつながる行動が一目瞭然になり、評価時期にそれらの行動を参照しやすいようにしています。

また、四半期ごとに感謝や賞賛の気持ちを伝えたい相手に贈れる「Thanksカード」制度の導入も行っています。通常の評価制度以外の部分でも、社員同士がお互いを認め合い、高め合える環境を整えているのです。

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また、自社独自の項目を使用している場合でもカスタマイズが容易に行えます。 360度評価の運用効率化にぜひご活用ください。

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