360度評価ツール導入成功の5つのポイント

企業内人事評価制度の見直しが迫られるなか、近年注目を集めているのが360度評価。ここでは、360度評価ツールの導入を成功させるためのポイントや運用手順、企業の導入事例などについて解説します。

1.360度評価ツールとは?

360度評価ツールとは、上司や部下、同僚や社外関係者など多角的な立場から被評価者の特性を浮き彫りにする手段のこと。ここでは、360度評価が注目されるようになってきた背景や導入の目的、運用する際のメリットやデメリットなどについて解説します。

360度評価とは? メリット・デメリット、テンプレート、項目例
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360度評価は人事評価制度ツール

360度評価とは、その名のとおり被評価者を取り巻くさまざまな立場の関係者から、多角的な評価を受ける人事評価制度のことで、「360度フィードバック」や「多面評価」とも呼ばれます。

従来の上司による一方的な評価ではなく、複数の視点から多角的な評価を行うという形のため、より客観的で公平な評価ができる制度として注目を集めているのです。

360度評価が必要となる背景とは?

これまで人事評価は一般的に、組織の上位者である管理者層が行っていました。しかし組織のフラット化や人員削減などの影響を受け、多くの管理者層がプレイングマネージャー化しています。

また近年、ITツールの発展により、オンライン上でもコミュニケーションが取れるようになりました。ほかにも「人材育成に本人の自主性が重要視されてきた」「慎重な人事評価が必要とされてきた」などさまざまな背景があり、そのなかで360度評価の重要性が叫ばれるようになったのです。

360度評価の目的とは?

360度評価の目的は、次の4つに分かれます。

  1. 行動規範(行動する上で守るべき基準)の明確化および改善:上司一人の目では把握しきれない行動規範を広く評価できる
  2. 人材育成:さまざまな立場からの評価を受けることで、自身の強みや弱みに気付ける
  3. 偏りのない人事評価:親密性や相性にとらわれない人事評価ができる
  4. モチベーション向上:従業員満足度やエンゲージメントの向上を図れる

360度評価のメリットとは?

360度評価には、下記のようなメリットがあります。

  • 主観による評価の偏りを防ぎ、客観的な評価をより具体的に行える
  • 一方通行な評価では見えなかった強みや弱みに気付き、改善・向上に励める
  • 被評価者も評価者となるため、組織への帰属意識や当事者意識を高められる
  • 従来の一方的な評価に比べて納得のいく評価が多い
  • 自己の気付きによってさらなる成長が期待できる

360度評価のデメリットとは?

人が人を評価する以上、完璧な評価制度はありません。360度評価には3つのデメリットが存在する点も覚えておきましょう。

  • 評価者の主観が多く入り込み、一貫性がなくなる
  • 必要以上の気遣いが増え、人間関係が悪化する
  • 社員同士の談合(社員同士が示し合わせ、実態にそぐわない評価や過剰な評価を行うようコントロールすること)が発生する

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360度評価を運用する際のポイントとは?

以上のメリットとデメリットを踏まえ、360度評価を運用する際は次のポイントに留意しましょう。

  • 被評価者を明確にする(評価者は会社が決めるのか、被評価者本人が選ぶのかを決めておく)
  • ほかの評価制度との関連性を明確にする(評価結果をどこに反映させるかを明らかにしておく)
  • 具体的な実施方法を設定する(回答項目や解析方法、記名式もしくは匿名式などの細かい運用方法を決めておく)

360度評価の客観性を高めるには、実施する現場に負担がかかり過ぎないよう配慮することも重要です。一般的に回答時間は15分ほど、項目数は30項目程度が望ましいとされています

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2.360度評価ツール導入を成功させるポイント5つ

360度評価はただ実行すればよいわけではありません。「導入が決まったからとりあえずやってみた」「同業他社が導入していたので自社でも取り入れてみた」など、あいまいなまま実行しては期待する効果を得られません。

ここでは360度評価ツールの導入を成功させるポイントについて、5つ解説します。

  1. 具体的な対策を考える
  2. リーダー育成に活かす
  3. 人材育成ツールとして利用する
  4. 失敗させないための対策を立てておく
  5. 360度評価の活用事例を参考にする

①具体的な対策を考える

まず具体的な対策を考え、実行します。例は下記のとおりです。

  • あらかじめ導入する目的とガイドライン(評価方法や実施期間、注意点など)を明確に定める
  • 評価制度の説明からフィードバック、PDCAサイクルを回すためのプランなど全体的なスケジュールを計画する
  • 項目数を30問程度、回答時間を15分程度にするなど、現場の負担が少ない設問を用意する

②リーダー育成に活かす

ツール導入の成功不成功は、評価結果をリーダー育成に活かせたかどうかからも判断できます。働き方改革が叫ばれ、企業のあり方が大きく変わりつつあるなかで、組織におけるリーダー育成の重要性は増す一方です。

複数の視点から評価を得られる360度評価では、一方から見れば弱みとされる側面も、他方からは強みと評価される場合も。多角的に特性を把握すると、リーダー育成やマネジメントに活用できるのです。

③人材育成ツールとして利用する

360度評価は、自発的な成長を促すためのツールとしても利用できます。評価要因を被評価者自身が考え、具体的な改善行動に落とし込めば、周囲との関わり方や得意・不得意な分野に対する振り返りのきっかけになるでしょう。

ときには被評価者にとって不都合な評価や、厳しい評価を受ける場合も。そのためにも評価後にはフィードバックと内省の時間を十分に割きましょう。

④失敗させないための対策を立てておく

360度評価を導入したものの、「費用対効果が出ない」「現場に負荷がかかりすぎる」「既存評価と混同してしまう」などにより、残念ながら失敗となった組織も少なくありません。360度評価を成功させるには、次の3つの対策を講じておくとよいでしょう。

  • 短期単発で効果が見込めるシステムではないと周知徹底する
  • 経営陣・現場の双方から、人材育成に必要な取り組みである点を理解してもらう
  • 360度評価は人材育成のための評価であり、給与や昇格などの人事考課には影響を与えないよう管理する

⑤360度評価の活用事例を参考にする

360度評価を導入する際、これまでの活用事例を参考にすると効果的です。

能力開発プログラムとして実施した企業では、360度評価を面談ツールとして活用したうえで、スキルアップ施策設定の基礎資料としました。被評価者は自己評価と他者評価とのギャップをもとに、スキルアップブランを立てられるのです。

ほかにも管理者層に活用して部下が求めるスキルを再認識した例や、役職にとらわれない評価を行って組織全体に適切な緊張感を持たせた事例などがあります。

360度評価を成功させるには、制度導入の目的を明確化したり、組織全体から十分な理解を得たりする必要があります

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3.360度評価ツールの運用手順とは?

360度評価は、客観性の高い評価ができる一方、実施時の注意も多いです。具体的にどのような手順で運用に結び付ければよいのでしょうか。ここでは導入の流れからフィードバックまで、それぞれのポイントを解説します。

導入までの流れ

まずは導入までの流れをかんたんに確認しましょう。

  • 組織の人事評価に関する課題を見つけ、360度評価を導入する必要があるか検証する
  • 先に抽出した課題に対して360度評価を導入する必要があると判断した場合のみ、導入の目的とゴールを設定する
  • 評価者や設問項目などの運用ルールを決める
  • 組織全体に360度評価導入の目的や運用方法を説明する
  • トライアルを実施、改善を重ねて本運用を開始する
  • 2回目以降の運用について決める

目的の設定

繰り返しになりますが、はじめに360度評価導入の目的を明確にしておきましょう。評価者や評価基準の設定、フィードバックの内容など、その後すべての工程が「360度評価を導入する目的」に沿って設定されます。

反対にいえば、360度評価導入の目的を明確にしないまま進めても、失敗に終わる可能性が高いのです。360度評価はあくまで手段のひとつでしかない点を、改めて認識しておきましょう。

ルールの設定

従来の上司一人による評価ではなく、複数の立場から評価する360度評価では、当然ながら多くの人員が関わります。「時間がかかりすぎる」「何のために実施しているのか分からない」といった声が残るままでは、有益なデータを集められません。

導入する際は評価者、被評価者ともに必要以上に身構えないための詳細なルールを制定しましょう。そして360度評価が人材育成のために必要な取り組みである点を十分伝えます。

評価する時期の設定

360度評価の結果を分析するには、中長期的な時間が必要です。そのため少ない負荷で続けられる運用が重要になります。

本来の業務に支障が出ないよう、360度評価を実施する際は繁忙期を避けましょう。また給与や昇進昇格など処遇への影響を抑えるという意味で、人事評価の時期と離して実施するのも重要です。

評価項目の設定

360度評価では、一般的に管理職層とそれ以外の社員層とで異なる評価項目を設定します。これは役職や職位など立場によって解決すべき課題が異なるからです。具体的には次のような視点から、それぞれの評価項目を設定します。

  • 管理職層:リーダーシップやメンバー育成など、マネジメント能力を中心とした評価項目
  • 管理職以外の社員層:主体性や協調性、遂行力など業務に必要なスキルやメンタルを中心とした評価項目

トライアル

評価項目を設定したら、本運用の前に一度トライアルを実施してみましょう。「意味が通じない文章はないか」「誤解を生む表記はないか」「立場によって回答したくないと思わせる設問はないか」などをトライアルの過程で見直します。

同時に、「回答にかかる時間は適切か」「評価者に負荷がかかり過ぎない設問量か」なども確認しておきましょう。

フィードバック

360度評価で最重要となるポイントは、その後のフィードバックです。フィードバックは「被評価者の能力を評価するもの」ではなく「被評価者の行動状態に気付きを与えるもの」と考えましょう。

またフィードバックは、評価結果の返却だけで終わってはいけません。継続的なフォロー施策も講じていきましょう。

360度評価で被評価者本人が、自分の強みと弱みに気付き、行動プランに落とし込むとより高い効果が期待できます

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4.【企業別】360度評価ツールの導入事例

上司の評価だけでは見えない特性を浮き彫りにする360度評価は、国内企業にも広く導入されています。企業の導入事例から、「どのような課題を持って360度評価を導入したのか」「実施によってどのような効果を得られたのか」などを見てみましょう。

アイリスオーヤマ

アイリスオーヤマでは、人事評価と人材育成の両面で「公正さ」を重視し、長い間「人事は不公平」という問題に挑戦し続けています。

はじめは管理職だけを対象としていた360度評価も、5年後にはパートや契約社員を含むすべての社員に実施。また幹部社員用と一般社員用で項目、運用方法、目的を変えました。昨今の人材不足を一言に嘆かず、既存の人材をいかに育てるかに重きを置いた企業です。

ISAO

ISAOでは、階層なし・管理職ゼロの「バリフラット」な組織を運営しています。この企業の大きな特徴は「リーダーやコーチがメンバーの育成責任を負っていない」という点です。

これには「メンバー一人一人が自身のキャリアを自ら定め、自分自身で目標に向かう責務がある」という考えが根底にあります。被評価者自らが評価者を指名することで、評価に対する納得感が高まり、成長意欲も促進されたのです。

なかには360度評価を実名制で行って改善サイクルにスピード感を持たせ、その後のコミュニケーションも活発にさせた企業もあります
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