高い品質と洗練されたデザインで多くのファンを持つオーディオメーカー、株式会社オーディオテクニカは、設立60周年を前に人事評価制度を刷新し、カオナビを導入しました。同社の新評価制度の設計とカオナビ導入をサポートしたのが、ワンアイルコンサルティング株式会社です。オーディオテクニカの評価制度刷新に同社がどう関わったのか、カオナビ導入に当たって同社が果たした役割などについて、オーディオテクニカ管理部経営企画課兼人事課のマネージャー中村聡様と同課の村松龍治様、そしてワンアイルコンサルティング取締役の濱浦惇様に聞きました。

*本記事の掲載内容は全て取材時(2022年2月3日)の情報となります

課題抽出、「在るべき姿」の深掘り――60周年を機に着手した人事制度改革

オーディオテクニカ様の人事制度改革プロジェクトが立ち上がった契機はどんなものだったのでしょうか。

中村様 2022年で会社が創立60周年を迎えるのを機に、将来を見据えた経営課題の改革に着手しようと2020年から検討を始めました。人事制度改革はその中のひとつです。私はプロジェクトが本格始動した21年2月に加わりましたが、その時にはすでにワンアイルコンサルティングの濱浦さんが準備を進めていました。実は濱浦さんは2013年まで当社の社員だったこともあり、コンサルタントに転身された後もお付き合いがあったんです。

オーディオテクニカ 管理部 経営企画課兼人事課 マネージャー 中村聡様

濱浦様(パートナー) 当時私は別のコンサルティングファームに在籍していたのですが、オーディオテクニカの担当役員の方から「力を貸してほしい」というお声がけをいただきました。2021年にワンアイルコンサルティング参画後、まずは社内にどんな課題があるかをあぶりだすため、中核社員を中心としたプロジェクトメンバーと議論を重ねました。そこでブランド戦略や他の経営課題とともに浮き彫りになったのが、既存の人事評価制度が抱える課題でした。優先すべきは、企業の最も重要な財産である「人」がやりがいを持っていきいきと働ける環境づくりだろう、ということで他のプロジェクトに先駆けて21年3月に立ち上げたのが「人事活性化プロジェクト」でした。

ワンアイルコンサルティング 取締役 濱浦惇様

人事評価の課題というと、具体的にどんな問題があったんですか。

村松様 95年に導入した当社の評価制度は、職能基準や明確な「成果」の設定など、当時としてはかなり先進的な内容を盛り込んだものでした。これをブラッシュアップしながら長年運用していたのですが、時代の流れもあり、残念ながらうまく機能しているとは言えない状態になりつつありました。プロジェクトメンバーとして関わってみて驚いたのは、社員の中には不満を持っている人だけでなく、評価制度の内容すら把握していない人も多くいたこと。せっかく先進的な制度があるのに、従業員にはほとんど興味を持たれていなかったんです。

オーディオテクニカ 管理部人事課 村松龍治様

中村様 メンバーに詳しく話を聞くと、もともと制度に関する周知が十分でないままスタートした上、運用はマネージャーの裁量に任される部分も大きかったために、管理職が変わると評価の基準も変わってしまう、といったことが常態化していました。それが不信感やモチベーションの低下を招き、離職にもつながることもあったようなんです。

濱浦様(パートナー) とはいえ、ベースとしては決して悪い制度ではなく、むしろ90年代にここまで先進的な評価制度を作っていたのかと驚いたほどです。でも、運用が属人的になってしまっていたことが不信感や制度の軽視につながり、目標や評価の欄は前年のものをコピー&ペーストするような雑な運用も見られ、形骸化していました。また、紙とExcelベースの運用が非効率という問題もありました。

村松様 そこで、現行制度の見直しの必要性を社内の多くの部署に直接、説明し、大半の部署から協力を取り付けました。まずは現状の評価制度にどんな課題があるかを明確にした上で、5年後、10年後のオーディオテクニカを思い描くワークショップを開催するなどしながら意見を集約し、当社が在るべき姿を“To-Be”と定めました。

中村様 その“To-Be”の実現を最終目標に定めて、新しい人事評価制度を設計しました。目指したのは、従業員がやりがいと納得感を感じられ、いきいきと活躍してもらうためのインフラとしての評価制度。絵に描いた餅に終わらないよう、評価運用については何度かシミュレーションも実施しました。

濱浦様(パートナー) シミュレーションといっても、当初からシステム導入を前提にしていたわけではありません。ただ、「To-Be案」の実現には、一人ひとりの社員に積極的に関わってもらうことに加え、評価データを蓄積していく必要もあり、Excel運用のままでは限界があると判断しました。そこで、簡単な操作でデータベースまで作れるシステム導入の検討を始めました

「長く付き合える企業か」――品質に加え、手厚く柔軟なサポート体制を評価

複数のツールを比較検討されたと思いますが、カオナビを選んでいただいた決め手は何だったのでしょうか。

中村様 カオナビを含めた3社にRFP(提案依頼書)をお送りし、21年夏から秋にかけて選定を行いました。選定には3つの評価カテゴリを設け、詳細にスコアをつけて検討しました。3つのカテゴリ全てで高評価だったカオナビに決めました。第1の評価カテゴリは、ベンダー企業そのものを評価する「General」。第2はRFPへの理解とそれに対する提案力、納期・コストの妥当性に関する「Proposal Review」。そして第3は、そのツールでわれわれが目指す制度と運用をどこまで実現できるかという「Product Review」です。機能はもちろん、使い勝手や分かりやすさ、Microsoft365や他システムとの連携、ランニングコストやサポートの充実度と、ツールそのものだけでなく今後の拡張性や保守性も踏まえて評価し検討をしました。選定に当たったメンバーからも、「全社員が無理なく直感的に操作できそうだ」、「営業担当者や企業の姿勢、実績も信頼できる」という声が多く上がりました。

濱浦様(パートナー) 当社はもともとカオナビのパートナー企業ではありましたが、選定の際は3社を公平に評価して判断してもらいました。提案に当たっては、オーディオテクニカ様が目指す“To-Be”を実現できるのか、長期的に付き合っていけるベンダーであるかという点が非常に重要です。カオナビには事前にデモ環境を用意してもらえて、機能だけでなく使い勝手も十分把握することができましたし、提案時のサポートも柔軟かつ手厚かったので、安心感がありました。

村松様 導入の前に社員向けに説明会を開催したときも、使い方に対する質問はなく、制度に対する内容ばかりでした(笑)。ほとんどの社員が迷うことなく操作を進めていて、検討時に思っていた通り、使いやすいシステムなんだなと改めて感じましたね。

カオナビのデータベース機能画面(イメージ)。どこを押せばなにが見られるかが直感的に分かるユーザーインターフェースになっている

コンサル企業の「第三者の視点」を交えることで最適な環境構築を実現

コンサルティング企業のサポートなしに導入される企業様も多くあるのですが、パートナー企業を介した導入にメリットを感じられることはありましたか。

中村様 ええ。濱浦さんに担ってもらったミッションは制度の設計プロセスがメインですが、カオナビの構築・セットアップの際のアドバイスが非常に的確で、大変助かりました。大掛かりな制度変更にもかかわらず、過不足のないシステム環境の構築ができたのは、カオナビのサポート担当からの確認事項に対して「この場合の権限は新たに設定しなくてもよいか」「この項目は、運用初期は敢えて残しておいたほうがよいのでは」などと、われわれ当事者だけでは気付かない点をワンアイルさんが指摘してくれたおかげです。

村松様 「当事者だけでは気付かない」という意味では、プロジェクト全体にとっても濱浦さんの存在は大きなものでした。ともすれば制度の構築だけで力尽きてしまいそうなところを、運用もしっかり見据えたスケジュールに沿ったサポートをいただいたからこそ、約半年という短い期間で詳細に制度を設計し、運用をスタートできたのだと思います。社員にとって使いやすいツールの選定も、自社のメンバーだけだったら、他の工程に忙殺されて熟考できなかったかもしれません。

2021年12月に導入を決定していただき、まだ運用をスタートしたばかりとのことですが、今後カオナビを活用してどのようなことをしていきたいとお考えですか。

中村様 社員に新しい制度を知ってもらい、浸透させるために、まずはカオナビを社員同士のコミュニケーションツールとして活用してもらいたいですね。そのために、カオナビにさわってもらえる仕掛けを作っていく必要があると思っています。当面は本丸となる評価運用機能「スマートレビュー」の活用浸透が目標となりますが、性格や適性診断ができる「エニアグラム」やマトリクス表示機能「シャッフルフェイス」など、配置検討に活用できそうな機能があるので、引き続きワンアイルさんにアドバイスをいただきながら使いこなして、適材適所の人材配置や戦略に生かしていきたいです。

村松様 カオナビは過去に入力して蓄積したコメントを見やすく表示できる上、ワークフローも可視化できるので、目標達成度の測定もクリアかつ簡単にできそうで期待しています。設定した目標以外にも、他の社員の働きやサポートに敬意を表し、評価の際にも加味する「リスペクトポイント」というしくみを導入しました。こうした新しい取り組みについても、走りながらより良いかたちを探っていきたいと思います。

濱浦様(パートナー) 制度が固まり、カオナビで人事データを蓄積できるインフラも整ったので、次の課題は貯まったデータをどう人事戦略に生かしていくかということです。最適かつ戦略的な採用、育成、配置を実現し、リテンションや給与制度の見直しなどにもつなげていければと思います。社員の皆さんがやりがいを持っていきいきと働くことができる環境を整えることで、企業成長と従業員エンゲージメントの向上を促し、それによりさらに働くことが楽しくなるという好循環サイクルを生み出していきたいですね。