モチベーションとは?【意味を簡単に】上げ下げの要因

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ビジネスの現場では「モチベーション」という言葉がよく使われます。正しい使い方・用例など基礎知識を解説するとともに、従業員のモチベーションを上げる方法や、人事施策の具体例まで、今すぐ使える情報を紹介します。

目次

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1.モチベーションとは?

モチベーションとは動機を意味する言葉で、動機とは、人が何らかのアクションを起こす際の要因となるものを指します。

日本語での意味は「動機づけ」「意欲」「やる気」

日本語に訳すと、モチベーションには「動機」という言葉が当てはまります。動機は「意欲」や「やる気」と同様の意味で使用され、人に対して仕事などへの意欲を引き出すことを「動機づけ」と呼びます。

人材マネジメント以外の文脈では、消費者に対する購買への動機づけや、スポーツ選手の意欲向上の際にも用いられる言葉です。

ビジネス用語としての「モチベーション」の意味

ビジネスの世界でモチベーションという言葉を用いる場合、組織内での業務意欲を意味することが多いです。仕事へ意欲を持つ、仕事への意欲を引き出す、これらの動機付けを「モチベーション」と呼んでいます。

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2.モチベーションの使い方・用例

ビジネスにおいてモチベーションという表現が使われる際には、どのような意味で使用されるケースが多いのか、具体的な定義について解説します。人材育成や評価などの際には、モチベーションの定義を正しく理解した上で、その向上のための施策などを議論することが必要とされます。

「モチベーションが上がる」とはどんな状態?

ビジネスの現場では、社員のモチベーションを高める、モチベーションを向上させる、モチベーションアップを図る、などというフレーズを聞く場面が多いことでしょう。では、具体的には、どのような状態を指すのでしょうか。

モチベーションが上がると、人は業務に対して集中力を持って取り組むことが可能となります。仕事に対する充実感も高まり、新しい領域にもチャレンジしやすくなります。個人だけでなくチーム全体にも影響が伝播し、目標を達成するための職場の空気を作り出すことが可能となります。

「モチベーションが下がる」とはどんな状態?

人はモチベーションが下がると、業務に対するやる気がなくなり、仕事の質も効率も概して下がる傾向にあります。ひとつの作業を完遂するのにも時間を要するようになり、モチベーションの低い社員が増えるほど、組織の労働生産性は低下します。

一般的には、モチベーションが低下する、モチベーションが落ちる、やる気がなくなる、などという表現がされます。

従業員のモチベーションを維持するには、従業員の現在のモチベーションを把握しておくことが大切です。

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3.モチベーション(動機付け)は2種類ある

モチベーションは「動機付け」と訳されます。動機付けには2種類あると言われ、モチベーションが生まれる源泉がそれぞれ異なります。具体的に解説しましょう。

「〜のためにやる」①外発的動機付け

外発的動機付けとは目的意識から発生するモチベーションのこと。たとえば、お金のために仕事をする、生活のために働くなどをイメージすると分かりやすいでしょう。

理論上では、個人の実績を正しく処遇に反映できるシステムがあれば外発的動機付けを達成することは比較的容易だと考えられています。

ビジネスでは外発的動機付けのデメリットが大きい

しかし長期的に見れば外発的動機付けのみでモチベーションを上げ、維持することは難しいとされています。

なぜなら、外発的動機付けは短期的にはモチベーションを高める効果が期待できるものの、将来的には、やる気や柔軟な発想力、創意工夫や創造力、イノベーションへの情熱といったものを奪取してしまうからです。

こうしたリスクの回避として注目されているのが、内発的動機付けだといわれています

「やりたいからやる」②内発的動機付け

内発的動機付けとは自分の心の中から湧き出る「やりたいからやる!」というモチベーションのこと。

たとえば、スポーツに打ち込む、趣味の世界に没頭するなどは、誰かから強要されることではありません。自分がスポーツをやっていて楽しいから、金銭的な損得を考えずに時間や労力を一生懸命に注ぎ込むのです。

内発的動機付けのメリット

自分の意思が源になっている内発的動機付けがあれば、

  • 驚異的な集中力を発揮する
  • 細部にまでこだわった行動ができる
  • 向上心に導かれて成長できる

といった状態を次々と生み出すでしょう。

職場で内発的動機付けを生かすことができれば、

  • 能動的に目標を設定して進む
  • 自発的に目的に向かって成長する

ということができ、やがて業績にも反映されていきます。

外発的動機付けを刺激する給与や地位は、上昇に限界があるもの。企業は、社員が損得抜きに、自ら望んで仕事をしてくれるような内発的動機付けを刺激する方法を考案していかなければなりません。

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4.モチベーションが低下する仕組み

かつて日本の企業は、終身雇用や年功序列制度など安定的な人事制度を採用してきました。しかし、バブル崩壊によって代わって台頭したのが、成果に応じて報酬を分配するアメリカ型の成果主義。

企業にとっては人件費の抑制などメリットがあります。しかし社員の視点で考えた場合、安定が保証されていた身分から急に成果のみを求められることになるため、制度への不満から、モチベーションの低下が起こりやすくなりました。

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成果主義への移行により給与制度が変更されると、常時成果を上げられる人のモチベーションは上がるでしょう。しかし、好不調の波に収入が翻弄される社員や、売り上げに直結しない部署で仕事をしている社員の場合、モチベーションが低下してしまう可能性は否めません。

年功序列制度の廃止でモチベーションが下がる?

日本型経営では、年功序列制度によって、勤続年数が上がれば給与も増え、長く働けば、主要ポストに就けるため尊厳欲求が満たされていました。

しかし経営効率を追求するため、年功序列制度を廃止する企業が次々と出てきた結果、少ないポストを奪い合い、長く勤めたことが評価につながらない不満が生じています。

給与や報酬といった外発的動機付け以外に「やりがい」を社員に与える仕組みが、いま必要とされています。企業は、昇進以外のモチベーションアップの施策を検討すべきでしょう。

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5.業績悪化とモチベーション低下の関係

業績悪化で業務量や事業規模が小さくなり、「やりがいがない」と感じるようになった、悪化した業績の改善を目指した大規模な組織改革が、かえって社員の不満を生み出したといった状況では、社員のモチベーションは大幅に低下します。

モチベーション低下がさらなる業績悪化を生み出す悪循環に陥ることもあるでしょう。業績低迷時には好調時以上に上司から部下へ、「あなたの働きによって、業績向上のきっかけをつかめている」といった声掛けが重要です。

従業員の負担を削減する施策でモチベーションアップを

どんな理由があろうとも、人件費の削減は社員のモチベーションを低下させてしまいます。ノー残業デーを増やすなど、社員の負担を減らす策から人件費を再検討するとよいでしょう。

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6.モチベーションの測定方法

モチベーションは、モチベーションサーベイ(従業員満足度調査)と呼ばれるもので、測定できます。

モチベーションサーベイ(従業員満足度調査)とは?

モチベーションサーベイ(従業員満足度調査)とは、従業員に対して仕事内容や組織の満足度を調査するもののこと。

所属する組織の状態や仕事や組織の問題点などについての質問にウェブ上で回答していきます。回答の集計、分析の後、社員区分や部門で比較検討、モチベーション関係の項目を抽出、分析するといった活用も可能です。

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モチベーションサーベイの効果

モチベーションサーベイの効果は、

  • 従業員のモチベーションの向上
  • 組織パフォーマンスの向上
  • 顧客満足の向上
  • 企業価値の創造
  • イノベーションの創出

どれも、最終的に企業価値や企業業績に結び付くものばかりです。企業は、組織や個人のモチベーション管理に、モチベーションサーベイを活用しましょう。

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7.モチベーショングラフとは?

モチベーショングラフとは、自分の仕事人生におけるこれまでのモチベーションの高低をグラフ化したもの。自分がいつ、どのような仕事に対してモチベーションが上がったのか、下がったのかを可視化することにより、自己理解を深めることができます。

モチベーショングラフを描くことにより、社員ひとりひとりが目標達成しやすい自己の状態を理解するためのきっかけを掴めるはずです。

モチベーショングラフの描き方

描き方の基本のステップは以下の5つです。

  1. 時間軸に対してモチベーションの高低を描く
  2. モチベーションの高低の原因・理由を書き込む
  3. 原因・理由に対する当時の感情や思考を書き込む
  4. グラフ全体から共通点を探す
  5. モチベーションの源泉をまとめる

ステップ①時間軸に対してモチベーションの高低を描く

A4ほどの大きさの白紙を用意しましょう。まず紙に縦軸と横軸を描きます。縦軸はモチベーションの上下、横軸は時間の経過をあらわします。

より丁寧にグラフを描きたい場合には、一枚の紙にこれまでの仕事人生すべてを描くのではなく、新卒の頃、入社3年目の頃、転職活動中……など節目ごとに白紙を用意し、それぞれに縦軸と横軸を描きましょう。

当時の自分自身の仕事に対するモチベーションを思い出し、その高低を曲線で描いてください。

ステップ②モチベーションの高低の原因・理由を書き込む

描いた曲線のうち、モチベーションが高まったり、逆に低くなったりした原因や理由を詳細に書きます。具体的な出来事がある場合には、その出来事を事実のままに記載します。

ステップ③原因・理由に対する当時の感情や思考を書き込む

モチベーションの高低に影響した出来事に対する、当時のありのままの気持ちを書きましょう。モチベーショングラフを描くうえで最重要の作業です。胸の奥に深く眠っている感情や、行動の元となる思考をまとめ、心的な癖を露わにします。

「Why?(なぜ?)」を何度も繰り返して考えると、自分の行動に対するモチベーションの源泉がわかるはず。時間をかけて取り組みましょう。

ステップ④グラフ全体から共通点を探す

ステップ③までを通してグラフを一通り描けたと思います。次にグラフの全体を眺め、自分の行動や感情の中から共通点を見出す作業に入ります。

小さな意思決定の連続により人生は作られます。仕事の場合も同様、自分の行動を決定してきた判断基準があるはずです。モチベーショングラフから、自分の癖をひとつひとつ見直しましょう。

ステップ⑤モチベーションの源泉をまとめる

ステップ④でまとめた共通点は、自分の思考・感情の特徴と言えます。どのような条件でモチベーションが上がるか、やりがいを感じる対象は何か、成し遂げたい夢はあるのか、などの情報を言語化し、整理できたはず。グラフを通して明るみになった事実を、最後に箇条書きでまとめましょう。

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8.モチベーションが低い社員が抱える原因

報酬を得ること以外に「やりがい」を感じない社員の場合、給与や賞与のダウンは当然モチベーション低下に繋がります。このような外発的動機付けの失敗だけでなく、その他にも様々なモチベーション低下の要因は存在します。一例をご紹介しましょう。

①労働環境や業務内容に変化が多い

そもそも人間は、安定した職場を求めるもの。「一貫性の原理」といった心理学的視点から考察しても、一度決めたことに対する変更を人はあまり好みません。

人事制度に変更が多い、組織改変などが頻繁に行われる、成果主義によって、報酬に浮き沈みが多いといった変化の多い状況は、組織そのものへの忠誠心を低下させます。このことは、職場の人間関係も希薄になるなど、モチベーションの低下以外でも組織にとってさまざまな弊害をもたらすでしょう。

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②人事評価に対する不満が大きい

転職理由の上位ランキングには常に「頑張りが適正に評価されない」という理由がランクインしています。

自分は一生懸命頑張っているのに、会社が適正に評価してくれない、怠けていると感じられる人が評価されたといった場合、社員は不満を抱きます。

気持ちよく仕事をするためには、努力が適正に評価されたり公平な評価が実施されたりすることが重要です。企業は、社員の気持ちをくみ取った評価制度の見直しや尊厳欲求に対しての配慮を追求すべきでしょう。

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9.モチベーションマネジメントとは?

従業員がモチベーションを維持して業務に取り組むよう、企業側が従業員のモチベーションを管理することをモチベーションマネジメントと言います。

従業員の「やりがい」を生むべく、外発的・内発的動機付けを適切に用いることが求められます。

目標設定における注意点

モチベーションを上げるためのモチベーションマネジメントを実施する際は何のために行動するのかという「動機付け」を行うことが不可欠です。それにはまず、目標設定を行います。

目標設定では、

  • 明確な目標
  • 大きな目標
  • ステップを踏むための到達可能な小さな目標

を意識します。

また、社員一人だけが高いモチベーションを持っていても、組織全体が同じような状況でなければ、持続性のない一過性のモチベーションで終わってしまいます。

研修などを利用して、組織単位でモチベーションを高めるためのフォローを行い、環境整備を徹底することも忘れてはなりません。

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10.モチベーションマネジメントと二要因理論

企業がモチベーションマネジメントを実施する際、「ハーズバーグの二要因理論」についての知識を持っていると便利です。

「ハーズバーグの二要因理論」とは、動機付けの要因が、仕事に対する満足度を決める動機付け要因と不満足感を決める衛生要因に分かれているという理論のこと。

アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが発見したもので、やる気を高めるには、「職務満足度を上げればよい」といったことが導き出されています。

動機付け要因とは?

動機付け要因は、社員の就労に対する満足感を高めるのに必要な条件のこと。

満足感を高めるには、

  • 目標達成の充実感
  • 権限委譲による責任感

を得ることが不可欠です。

具体的な方法に、

  • 自分の頑張り次第で達成可能な目標の設定
  • 「最終責任は取るから、自分の力を発揮してチャレンジしてみては」といった権限委譲

が挙げられます。

しかし、個々の社員がいくらモチベーションを上げても、他メンバーのモチベーションにばらつきがあれば組織全体のモチベーションは低下してしまいます。モチベーションマネジメントは、チーム単位で実践していくべきです。

衛生要因とは?

衛生要因とは、仕事に対して不満を感じる条件のこと。具体的には、給与や待遇といった処遇や条件を指しています。

私たちが尊厳欲求を満たすことを希望する場合、尊厳欲求よりも下層に位置する、

  • 生理的欲求
  • 安全欲求
  • 社会的欲求

がすでに満たされていることが必要条件です。そのためにも企業は、社内の人間関係や給与など処遇改善に積極的に取り組まなければなりません。

モチベーションマネジメントを実行する際は、動機付け要因と衛生要因の2つの側面から考えていきましょう

11.モチベーションマネジメントに成功した企業事例

モチベーション向上施策に成功した企業があります。3社の例を見ながらどのような施策が効果的であるかを考えてみましょう。

  • 事例①ザ・リッツ・カールトン
  • 事例②クックパッド
  • 事例③資生堂

事例①ザ・リッツ・カールトン

ザ・リッツ・カールトンは、ホテルを世界展開している企業です。ザ・リッツ・カールトンは、大切にしているる経営・営業理念「クレド」実現のため、マズローの欲求5段階説の中の尊厳欲求を満たす施策を実施しています。

顧客以外にも同僚、上司、部下へ感謝を示すために、

  • 従業員全員が「ファーストクラス・カード」という感謝と敬意を示すカードを持つ
  • お礼を言いたいときなど、言葉だけでなくカードを使って明確な感謝を伝えてお互いに褒め合う
  • 他部門の人に助けてもらった場合にカードを直接手渡しする

などを実践しました。

事例②クックパッド

クックパッドは、料理レシピに関するサイトを運営している会社です。

  • 社員自ら担当業務をやりたいという意思を持つ
  • 意思だけでなく、実現性、実効性を重要視する
  • ことを目的として、マズローの欲求5段階説をもとに人事施策が立案されたのです。
  • 人員が必要な部門に対し、社内外から求人募集を行う
  • 自分のやりたいことの実現に向けて、自ら異動を申し出た社員に対し会社側が歓迎する制度の創設
  • オフィス内に、自由に料理ができる環境を整備

などが実施されています。

事例③資生堂

資生堂は化粧品メーカーで、女性従業員が多いこともあり、仕事と子育ての両立支援が求められています。資生堂では、マズローの欲求5段階説の中で、安全欲求を満たす施策を中心として人事施策が検討されました。

全国の百貨店などの化粧品売り場を担当している子育て中の従業員1万人以上を対象として、子どものお迎えや夕食準備といった家事をスマートに行うために早めに退社する仕組みを構築。

また、「カンガルースタッフ」という、退社した従業員のために、代わりの美容部員を用意しておく体制が整えられています。

企業は、個別の事情に応じてさまざまな角度から、モチベーションの維持や向上の人事施策を検討、実施しています

12.部下のモチベーションが上がるマネジメント

部下のモチベーションを高めるために押さえておきたいポイントです。ここでは、3つの観点からモチベーションを高めるポイントを見ていきます。

  1. 上司からの期待感
  2. 第三者からの評価
  3. 失敗の許容

①上司からの期待感

部下のモチベーションを高めるために外せないポイントは、上司からの期待感です。

出世などの野心やナルシシズムを刺激し、部下の潜在的可能性を期待することでモチベーションを高めていきます。部下に対する期待感は、部下の承認欲求を満たすことにもなるため、結果的に高いモチベーションの維持につながるのです。

②第三者からの評価

第三者から客観的な評価をしてもらうことも、部下のモチベーションを高めるためのポイントになります。

第三者からの評価によって自分の実力を自覚すると、自分にどのような可能性があるのかに気付くことができます。同僚や上司、その他の利害関係者以外からの評価にはそれだけの重みがある、という認識を持ちましょう。

③失敗の許容

失敗の許容とは、業務に取り掛かる前に、

  • これは非常に難しい仕事だ、私も同じようなケースで過去に失敗したことがある
  • 失敗する可能性もあるが、勇気を出してチャレンジしてみよう

など声を掛けること。

取り組む業務について、事前に「困難な仕事だ」とアナウンスすることも、ハードルやプレッシャーから部下を解放する効果があります。

部下のモチベーションを高めるためのポイントは、上司からの期待感、第三者からの評価、失敗の許容の3つです

13.目標達成とモチベーションアップの関係

目標達成において「行動を起こす」は絶対条件。モチベーションが低い状態では、目標達成に向けたアクションを起こす気力が湧きません。アクションを起こさなければ、当然、成果を得ることもできません。目標達成にモチベーションアップは必要不可欠と心得ましょう。

目標を達成するために努力を継続するには?

モチベーションを維持したり高めたりしていくには、目標に対しての継続的な努力が欠かせません。そして、目標を達成するために努力を継続するには、自分の目標達成の目的を明確化することが重要です。

そこで、

  • 目標達成時に、自分にどのような成長が見込めるか
  • 目標達成時に、自分がどのようなプラス効果を手に入れられるか

といったイメージを具体的に持つ必要があります。

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14.モチベーション管理における注意点

モチベーションを上げるために押さえておきたいコツを3つのポイントから見ていきましょう。

  1. ルーティンを維持するために自律する
  2. 給料や待遇以外に働きがいを持つ
  3. マスタリー目標を持つ

①ルーティンを維持するために自律する

ルールに従って行動できる自律性があれば、他人から制約を受けずに自分で決めたルールに従い行動できる、自分で決めたマイルールを守れるなどが可能となります。

自律性が高められなければ、モチベーションを維持することも困難でしょう。

②給料や待遇以外に働きがいを持つ

ハーズバーグの二要因理論では、

  • 外発的動機であるお金はモチベーションアップにつながり、モチベーションの維持にはつながりにくい
  • 達成、承認、昇進、仕事内容といった成長などに意識を向けると、意識変化からモチベーションが上がる

と説かれています。給料や待遇以外に働きがいを持つことは、モチベーションを上げるためにも重要です。

③マスタリー目標を持つ

自分自身の成長や技能や能力の上達、向上などを目的とした目標を「マスタリー目標」といいます。このマスタリー目標を持つことで、高度な水準のモチベーションを長期的に維持しやすくなります。

なぜなら、ハーズバーグの二要因理論の中でも説かれているように、モチベーションを維持するための鍵は成長にあるからです。そのためにも、上記のようなマスタリー目標を確立させましょう。

モチベーションを上げるためのコツは、
ルーティンを維持するために自律する
・給料や待遇以外に働きがいを持つ
・マスタリー目標を持つ

15.企業経営におけるモチベーションアップの効果

なぜ企業経営において社員のモチベーション管理が声高に叫ばれているのでしょうか。今日では、人材のモチベーションアップはよりいっそう重要性が増しています。モチベーション管理を適切に行った場合に企業にもたらされるメリットや効果について解説します。

①離職率が低下し、採用コストが下がる

業務に対するモチベーションを維持することができている社員が増えれば増えるほど、相対的に退職者数は減少するはずです。既存の社員の離職率を低い状態で維持できれば、新規に採用しなければならない人材の絶対数も減ります。

採用コストを抑えた分、すでに働いている社員たちの福利厚生やインセンティブなどにコストを掛けることも可能となり、よりモチベーション管理がしやすくなるでしょう。

②人材育成にコストや時間をかけなくて済む

社員が自発的にスキルアップを目指したり、業務への推進力を向上させたりすることができるならば、それに越したことはありません。本来的には、人事側より特別な施策を打たずとも、人材がモチベーションを高い状態で維持できていることが理想とされます。

そのためには、企業風土や事業とのマッチング性を意識した採用活動を行うこと、人材の希望に則した配置転換を実現すること、人材のキャリアパスを具体的に描くこと、上司との緻密なコミュニケーションを行うこと、などが必要とされます。

③労働生産性が高まる

従業員ひとりあたり、もしくは1時間あたりなどにおいて、どれほどの成果を生むことができたかを示す指標が労働生産性です。社員ひとりひとりの労働生産性が高まると(ひとりあたりの付加価値額が高まると)、少ない労働力で業務を行うことができるようになります。

業務の仕組み化などにより効率性の向上を狙うこともできますが、人材のモチベーションアップによる生産性の向上は、より爆発的な効果を期待することができるでしょう。

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16.モチベーション向上に効果的な人事施策

社員のモチベーション維持、向上のための人事施策として考えられるのはどのようなことでしょうか。紹介した理論の使い方を含めて紹介します。

適切に人材配置を行う

一つは、適切な人材配置。

社内の人間関係に配慮し、人間関係がギスギスしたものにならないような人材配置を実施します。また、組織を構成するメンバー同士がお互いにモチベーションを高め合うことができれば理想的な組織となるでしょう。

当然業務上の結果や成果にもつながり、企業としても大きなメリットになります。モチベーションが高い社員同士でチームを構成するような配慮も重要です。

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人事評価制度を充実させる

人事評価制度の充実も有効です。

頑張った分だけ評価してもらえれば、仕事へのモチベーションは高まります。

  • 成果を上げたとき金一封を支給
  • 給与額決定の際のプラス査定
  • 成果が出せなかった場合でも、貢献度や業務プロセスに応じて評価する

といった人事評価システムの導入もよいでしょう。

また、

  • 社員一人ひとりの会社や組織への貢献度を数値化する
  • 社内で情報共有する

などの工夫で、間接部門からの社員評価も可能となります。

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社員と企業方針の共有を図る

社員と企業方針の共有を図ると、社員のモチベーションは向上します。

経営者や管理職と社員では、企業方針に対する視点が異なります。経営者にとって当然と思えることも、社員の理解が思いのほか進んでいないことはよくあることです。

そこで、社員一人ひとりの仕事が会社全体にどう役立っているのか、会社の存在意義はどのようなものなのか、自分や自分の会社は社会にどれだけ貢献しているのかといった企業方針に関わる情報を経営側と社員が共有するのです。

非金銭的インセンティブの導入など

非金銭的インセンティブの導入も有効でしょう。ハーズバーグの二要因理論からも分かるとおり、動機付け要因を満たすためには、金銭的な報酬以外の非金銭的インセンティブの導入を積極的に検討すべきです。

たとえば、上司が部下に対して、

  • 「力を出し切って頑張ってもらった」といった好評価のコメントを発する
  • 「次はもう少し大きいプロジェクトを任せたい」など今後の期待値を伝える
  • 「以前やりたいと申告があった仕事を任せます」など本人の希望に沿うような仕事を任せる

このような上司の言動は、部下のモチベーションを高めるでしょう。

モチベーションの維持・向上には、
・適切な人材配置
・人事評価制度の充実
・企業方針の共有化
・非金銭的インセンティブの導入
が効果的です

17.従業員のモチベーションが上がる5つの施策例

社員のモチベーションを上げるための5つの方法を見ていきます。

  • 例①組織のミッションやビジョンを浸透させる
  • 例②成果を見える化する
  • 例③職場環境を整える
  • 例④定期的に面談を行う
  • 例⑤キャリアデザインを設計する

例①組織のミッションやビジョンを浸透させる

自分の業務が組織や企業、社会にとって役に立っている実感がなければ、労働意欲は減退するもの。

企業は、実現させたいビジョンを社員と共有する、業務が企業のビジョンを支えていると意識できる機会を積極的に設けるなどの工夫をしましょう。

例②成果を見える化する

自ら行っている業務が組織や企業、社会の役に立っていると実感できたとき、モチベーションは高まります。

成果や貢献度を見える化し、具体的な数値・表彰などで示すことで、モチベーションアップ効果はさらに高まるでしょう。

例③職場環境を整える

社員のモチベーションは、職場環境の整備によっても高まります。

職場環境の整備とは、

  • 周囲に意欲的な人材が集まっていると、影響を受け自分もその気になる
  • 一時的に落ち込んだりやる気が失せたりしても、周りの影響を受けてモチベーションを回復できる
  • 失敗しても、周りに支えられ再起できる

例④定期的に面談を行う

定期的な面談の実施は、モチベーション向上の一助になります。社員の目標に対する成果を評価する場合、数字で現れる成果以外にも、目標達成までのプロセスを重視することが重要です。

  • 定期的に面談を行い、振り返りを実施する
  • プロセスごとに細かく評価を実施する
  • 各プロセスで小さな成功を丁寧に評価し、小さな成功体験を積ませる

といった内容で、個別面談を時間的に余裕があるときを見計らい、実施しましょう。

1on1ミーティングのように、制度として導入するのがおすすめです。

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例⑤キャリアデザインを設計する

キャリアデザインとは、自分の理想とする将来像を実現するため、どのような仕事や職業、働き方が適当であるかを設計すること。

将来の理想像を自ら設計することで、社員のモチベーションが向上します。さらにその影響は組織全体へも派生し、組織を活性化できるといったメリットにつながるケースも。

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社員のモチベーションを上げるためには、組織ビジョンの浸透、成果の見える化、職場環境の整備、定期的な面談、キャリアデザインの設計などが有効です

18.モチベーションの上げ方を紹介する本

一口にモチベーションの書籍と言えど、自己啓発本から心理学的な観点の解説本まで、多くの書籍が出版されています。

  1. モチベーションマネジメントについて理解が深まる書籍
  2. モチベーション心理学を学習できる書籍
  3. モチベーションを上げるための自己啓発の書籍

の3点からおすすめの書籍を紹介します。

①モチベーションマネジメントを理解するための本

『モチベーション3.0』(ダニエル・ピンク著/大前研一訳)

『やり抜く人の9つの習慣』(ハイディ・グラント・ハルバーソン著/林田レジリ浩文訳)

②モチベーション心理学を学習するための本

『人間性の心理学』(A.H. マズロー著/小口忠彦訳)

『モティベーションをまなぶ12の理論』(鹿毛雅治編)

③モチベーションを上げるための自己啓発の本

『モチベーション革命』(尾原和啓著)

『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)

モチベーションは教育・心理学的観点より専門的な理論研究が進んでいる領域です。書籍によるインプットは有効な手段と言えるでしょう

19.モチベーションが高い社員の特徴

高いモチベーションで仕事ができる人は

  • 短時間で仕事をやり遂げることができる
  • 自分のことだけでなく同僚など周囲にも気を配って仕事ができる

といった傾向にあります。

つまり、モチベーションは業務効率や組織プレーに影響を及ぼすのです。高いモチベーションで仕事に取り組むことがいかに重要視されているかが分かるでしょう。

20.モチベーションが低い社員の特徴

モチベーションが低い人には

  • 個々の仕事を完結するための時間がかかりすぎる
  • ルーティンワークを好む
  • チームで取り組むよりも一人で仕事をすることが多い

といった傾向が見られます。

組織で動くことの多い会社の場合、高いモチベーションで仕事に取り組む社員の育成に励むことが得策だと考えられるのです。

モチベーションが高い人のほうが、会社組織で求められる業務効率や組織プレーに結果を出せる傾向にあります

21.組織活性化とモチベーションアップ

モチベーションのアップは、組織の活性化につながるため、社員一人ひとりのやる気を引き出し、組織メンバー同士の相互活力を高めることが欠かせません。

モチベーションをアップするには、

  • 社員一人ひとりに適した行動計画を立案する
  • 自らマネジメントを行えるよう指導する

といった施策の実施が重要となるのです。

また、人事が上司・部下間での人間関係の悩みに対して人事・教育施策を行うことで、組織内の円滑な人間関係が保たれます。結果、組織の活性化と社員のモチベーション向上といったつながりを強化できるでしょう。

モチベーションは日々の煩雑な業務によって気が付かないうちに低下してしまいます。人事は、研修や面談などを活用し、定期的に社員のモチベーションに対してフォローアップを行いましょう。

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組織の活性化と社員のモチベーションアップはリンクしています。社員一人ひとりのやる気を引き出しながらチーム内で相互活力を高めることが重要です

22.モチベーション理論・心理学的法則

私たち人間の心理に関する理論は多いです。その中にある、モチベーションがどのように変化していくのかを分析、解明したモチベーション理論や心理学的法則を5つ、見ていきましょう。

  1. マズローの欲求5段階説
  2. 期待理論
  3. マクレランドの欲求理論
  4. ピグマリオン効果
  5. 自己効力感

①マズローの欲求5段階説

マズローの欲求5段階説は、アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローが提唱したもので。「人間の欲求は5段階のピラミッド状になっていて、基本的に低階層の欲求が満たされるとより上層の欲求を欲する」という理論です。

ピラミッド状の5段階は、

  • 生理的欲求(食事や睡眠といった本能的な欲求を満たしたい)
  • 安全欲求(安全で安心な暮らしがしたい)
  • 社会的欲求(孤独な状態でいたくない)
  • 尊厳欲求(他人から承認されたり尊敬されたりしたい)
  • 自己実現欲求(自己の能力を発揮することで、より良い自分をつくりたい)

という欲求が積み重なっている状態を示しています。

人間の欲求は低階層から段階的に満たされていく

マズローによれば、人間の欲求は低階層から高層階へと、段階を経て満たされていきます。衣食住に満たされ治安も良い日本では考えられませんが、最初に満たされる欲求は、食事や睡眠など本能的な欲求と安心・安全が保障されている安全欲求です。

また、その上にある社会的欲求も、日本で会社に属して仕事をしているような職業人であれば満たされる欲求です。しかしさらに高層階の尊厳欲求は、自分の仕事ぶりが認められなければ満たすことができないため、モチベーション停滞の原因になり得ます。

②期待理論

期待理論は、V・H・ブルームが創り出しL・W・ポーターとエドワード・E・ローラー三世が進化、発展させた理論です。マズローの5段階の欲求のうち、どうやったら社員の尊厳欲求を満たすことができるのかを説いたことで知られています。

努力、成果、魅力の掛け合わせでモチベーションが変動する

期待理論とは、努力によって得られる成果が魅力的であればあるほど、人間はやる気を出せるという理論のこと。

具体的な理論の中身は、

  • 人間には、もともと向上心が備わっている
  • 努力が報われることが分かれば、人間は努力できる
  • 努力した結果、手にした成果が魅力的であればあるほど、モチベーションを長期的に維持できる

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従業員育成のためには、ひとりひとりのモチベーションを高める必要があります。従業員の仕事に対するモチベーションを高めていくための期待理論や、モチベーション理論について知っておくことで、従業員育成に役立て...

③マクレランドの欲求理論

マクレランドの欲求理論とは、人間の行動に、達成や権力、親和、回避という4つの欲求・動機があることを提唱したもの。

それぞれの欲求・動機は、

  • 成果より自分自身で何かを「成し遂げたい」といった達成動機
  • 他人に影響力を持ち、コントロールしたいという権力動機
  • 親しい対人関係を保有したいという親和動機
  • 失敗や困難を回避しようという回避動機

と説明されています。

④ピグマリオン効果

ピグマリオン効果とは、「人は期待された通りの結果を出す傾向がある」というもので、心理学者のローゼンタールが提唱しました。

ピグマリオンとは、ギリシャ神話に登場する人物の名前です。教師が生徒に期待をかけるか否かで成績の伸びに違いが出るのかを検証した結果、導き出されました。

ピグマリオン効果とは? 具体例、教師期待効果、ホーソン効果との違い
部下を褒めて育てるピグマリオン効果は、 上司と部下のコミュニケーションの円滑化 新しいイノベーションの創造 高いモチベーションを維持できる部下の育成 を目的に、さまざまな企業で活用されています。ピ...

⑤自己効力感

自己効力感とは、自分ならきっとできる、自分ならできるかもしれないといった自己実現の可能性を肯定的に捉えること。カナダの心理学者アルバート・バンデューラによって提唱されました。

自己効力感とモチベーションとは相関関係があるため、自己効力感が高ければ、モチベーションも高いと予想できます。

自己効力感とは?【わかりやすく簡単に】自己肯定感との違い
自己効力感とは、ある状況の中で必要とされる行動のこと。 たとえば、 結果を出す 目標を達成する といった結果を出そうとする際「自分がうまくできるかどうか」という予期のことをいいます。 自己効力感は...

モチベーション理論・心理学的法則には、マズローの欲求5段階説を含んだ、5つの代表的な理論があります

23.【類語解説】モチベーションとやりがいの違い

モチベーションに類似した言葉に、やりがいがあり、

  • 仕事にやりがいを感じる
  • やりがいのある仕事に就きたい

などと使用されます。

  • やりがい:行動を起こした際、やってよかったと思う感情
  • モチベーション:行動を起こす際の原動力になる動機

両者は似ているように見えますが、それぞれの意味は異なるのです。

モチベーションとテンションの違い

モチベーションに類似した言葉にテンションがもあります。テンションが下がる、テンションを高めていこうなどと使用される言葉で、精神的な緊張や不安感といった意味を持っています。

テンションには、モチベーションが持つ動機という意味は含まれていません。

モチベーションと士気(モラール)の違い

モチベーションに類似した言葉に、士気(モラール)もあります。

  • モラールを向上させよう
  • モラール・サーベイを実施して人事の方策を立案しよう

などと使用される、目標達成を目指す意欲や態度を意味する言葉です。そのため、モチベーションとは用途が異なります。

モチベーションに類似していますが意味が異なる言葉に、「やりがい」「テンション」「士気(モラール)」などがあります

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