自己効力感とは? 概要、評価の尺度、10種類の高める方法

何らかの課題に直面したとき、「自分ならできる」という自己効力感を持つことが大切だといわれています。自己効力感を正しく理解すれば、日常生活やビジネスシーンなどあらゆる場面で有効活用できるでしょう。

ここでは、

  • 自己効力感の概要
  • 評価の尺度
  • 自己効力感を高める方法

などを解説します。さまざまなシーンで効果を得るためにも参考にしてみてください。

1.自己効力感の意味とは?

自己効力感とは「行動前に『成果を生み出すための行動をうまく遂行できる』と感じられる」ことを指します。「困難な課題に直面したとき、どのように感じながらその課題に取り組むのか」といったことを表す際に使われるものです。

課題に直面したときに感じる、

  • 自分ならうまくできそう
  • 自分にできるかもしれない

といったポジティブな感覚こそが自己効力感そのものであるといえるでしょう。

自己効力感の定義

自己効力感は「self-efficacy」を和訳したもので、心理学者のアルバート・バンデューラ氏が提唱したものです。

バンデューラ氏は自己効力感の意味を以下のように定義しています。

beliefs in one’s capabilities to organize and execute the courses of action required to produce given attainments(ある特定の成果を生み出すために必要な一連の行動を体系化し、それを遂行する能力についての信念
自己効力感の向上プロセスに関する研究』神戸大学大学院経営学研究科

自己肯定感との違い

自己効力感と類似している言葉に、自己肯定感という言葉があります。

自己肯定感とは、自分の存在価値を自分自身で感じられることを表します。

つまり、「自分はかけがえのない存在だ」という感情です。

自己効力感とは、自分の行動について「自分はうまくできる」といった行動に結びつく感情なので、この2つは言葉としては似ていますがまったく違う意味を持っています

看護と自己効力感

自己効力感は、社会のさまざまなシーンで用いられています。なかでも、看護士や看護学生に対して自己効力感がよく使われているのです。

病を抱えている患者さんとのやり取りは、非常にデリケートな問題といえます。

「患者さんとの人間関係を構築して、患者さんのニーズを汲み取り、それに適した援助を行うことができる」という自己効力感を養うことで、円滑に取り組めるようになるのです。

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2.自己効力感による行動への影響・変化

自己効力感を持った人の行動の内容、行動による結果を決める要因は大きくわけて2つあります。

  1. 効力予期:「自分ならうまくできそう」という感覚
  2. 結果予期:「所与の行動がある結果を導くだろうという個人の目算」と定義されたもの

効力予期と結果予期

効力予期と結果予期についてもう少し詳しく見ていきましょう。

効力予期とは、自己が適切な行動を遂行できると確信することで、結果予期とは、自己の行動が特定の結果を生むと確信を持って推測することです。

効力予期は、自己から確信に満ちた行動を引き出すのに対し、結果予期はその行動から確信通りの結果を導くということになります。

具体的な行動を決定する場合、効力予期と結果予期の双方の働きが重要です。

効力予期と結果予期の高低による影響

効力予期と結果予期の高低差は、行動や感情に影響を及ぼします。

効力予期
結果予期
  • 自信に満ちた生産的な行動をする、あふれる熱意を持っている
  • 自己満足度も非常に高い
効力予期
結果予期
  • 不平不満が蓄積し、抗議的な欲望が高まる
  • 打開策(社会的活動や環境の変化など違った世界を取りこむ)が必要
効力予期
結果予期
  • 劣等感にさいなまれる
  • 自己を卑下・失望・落胆といった自己嫌悪にも似た感情を引き起こす
効力予期
結果予期
  • 無気力・無関心・無感動、諦め、抑うつといった状態
  • 困難を乗り越える力が大幅に欠如

3.自己効力感の種類・3つのタイプ

自己効力感は3つのタイプに分かれています。自己効力感の種類について見ていきましょう。

  1. 自己統制的自己効力感
  2. 社会的自己効力感
  3. 学業的自己効力感

①自己統制的自己効力感

自己統制的自己効力感は、自己の行動を制御する基本的な自己効力感です。

「自分にならできる」といった言葉に象徴されるように、自分の行動を自らコントロールできる感情です。

これまでに説明してきた自己効力感は、主にこの自己統制的自己効力感のことを指しており、大方の自己効力感はこのタイプに収まります。

②社会的自己効力感

自己効力感には、特定の場面における感情があります。それが社会的自己効力感で、対人関係における自己効力感を指します。

社会的自己効力感は、乳児期から児童期にかけての社会性が発達する時期に育まれます。

親や兄弟姉妹などの近い存在から始まり、近所の友達やその家族、幼稚園や小学校の先生、クラスメイトなどさまざまな人との関係性のなかで自己認知能力が発達する結果生じるものだと考えられています。

③学業的自己効力感

もう1つ、特定の状況で生じる効力感が学業的自己効力感です。学業的自己効力感とは、学校などでの学習における自己効力感を指します。

学業や学習に対する自己効力感が高いと、学習に対する満足度も高まるという相関関係があると分かっています。

高い学力を持つ人物ほど自己効力感が高い傾向にあるといえば理解しやすいでしょう。

学業的自己効力感は、学力と学習の場に限定して自己効力感を定義したものです。

4.自己効力感を評価・測定する尺度GSES

自己効力感は、

  1. 自己統制的自己効力感
  2. 社会的自己効力感
  3. 学業的自己効力感

と3つのタイプに分かれていますが、この自己効力感を評価・測定する尺度があります。それがGSESで「General Self-Efficacy Scale」の略語です。自己効力感の尺度GSESの概要を見てみましょう。

一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)の概要

自己効力感は目に見えにくいものです。しかし自己効力感を測る尺度があれば可視化でき、人材開発や人事評価、配置転換などさまざまなシーンで活用できるでしょう。

自己効力感の尺度には一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)があります。

ここでは、

  • 一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)の開発者
  • 項目数
  • 対象

といったものを含めた概要を見ていきます。尺度を正しく理解して、実際の現場で自己効力感の効力を十分発揮できる環境整備などにも役立てましょう。

具体的な項目

自己効力感を測る尺度はGSESで、認知行動療法の権威でもあり社会的学習理論を提唱した学者スタンフォード大学教授のアルバート・バンデューラ博士が提唱しました。

人間の行動を、

  1. 先行要因
  2. 結果要因
  3. 認知的要因

の3つに分類し自己効力感がそれら人間の行動を決定するキーポイントになる認知的変数であるとしています。

自己効力感の高低を測定するため16の質問項目が用意されており、すべての質問項目は「はい」「いいえ」の2択で答えるのです。また16の質問には得点範囲が設定されており、得点が高いほど、自己効力感が高い状態であることを示しています。

近年、GSESの重要性は高まっており、

  • 教育
  • ビジネス
  • 臨床
  • 予防医学

などで幅広くGSESが利用されています。

参考 一般性セルフ・エフィカシー尺度作成の試みNII

5.自己効力感を高める方法

自己効力感を測る尺度が判明したら、次は自己効力感を高める具体的な方法を見ていきましょう。自己効力感を高める方法は10種類あります。

  1. 成功体験
  2. 代理体験
  3. 社会的説得
  4. 生理的・感情的状態
  5. 行動に対する意味付けや必要性
  6. 行動の方略
  7. 原因の帰属
  8. ソーシャルサポート
  9. 認知能力
  10. 健康状態

①成功体験

成功体験とは、過去にうまくやり遂げた経験のこと。現在の自分があるのは、過去の積み重ねのおかげともいえるでしょう。

成功体験の積み重ねがあることで、「自分は今までやってきたのだから、これからも困難に立ち向かうことができる」と自己効力感を高めることが可能です。

しかし、自己効力感が確立される前に失敗を重ねすぎてしまうと、自己効力感が育まれないままになります。

また、容易に自己効力感が積み重ねられると、ちょっとした失敗で落胆したり、物事を安易に考えやすくなったりします。

②代理経験

代理経験とは、他人の行動をじっくりと観察することで、自らの自己効力感を確立する方法です。

代理経験には2つの形成方法があります。

・「あの人にできるなら自分もできる」:観察者と被観察者の類似性が高いほど、自己効力感が高くなる特徴を持つ
・「あの人よりも自分のほうが上手にできる」:他人と自分を比較し、自分が優位と感じることで自己効力感を増幅

どちらのタイプも、自分で経験したことをもとに自己効力感を高めているのではない点が弱点です。

③社会的説得

「あなたにならできる」「君ならやれる」といった、他人からの励ましをもとにして、自己効力感を高める方法も有効です。

周囲から後押しされることで自分が思っている以上の力を発揮することもあり、その際自己効力感も増幅します。

ただ他人の発言で自己の意欲や感情が決定するため、否定的な発言をされると一気に自己効力感が減少します。

また、自らがまったく成功体験を積むことなく、社会から推奨されただけでは自己効力感は生じません。いくらかの成功体験を重ねておくことは重要です。

④生理的・感情的状態

自分自身の生理的・感情的要因も自己効力感の影響を受けます。たとえば、

  • 体調が整わない日が続く
  • ストレスの多い生活を過ごす

といったケースでは自己効力感は高まりません。

体調不良やストレス過多の状態を自分自身でどのように解釈して乗り切るかは、自己効力感の高低に大きく関わるのです。

たとえば、自己効力感が高くかつ自己効力感を以て対処するすべを身につけている人物の生活がストレス過多だったとしましょう。

自己効力感の高さや対処の知識を持っているため進む方向性は大きく変わります。

⑤行動に対する意味付けや必要性

何かに取り組むとき「何のためにそれを行うのか」といった目的や行動意義があると、非常に強い力を生み出します。自己効力感についても同じことがいえるでしょう。

自己効力感を以て「何のために何をするのか」という行動に対する意味付けや自己効力感の必要性を認識することは重要です。

自己効力感を持つ目的を意識の中に確立できれば感情や気分といったものもコントロールでき、自己効力感の効果をアップできます。

⑥行動の方略

行動の方略とは、ある課題を成し遂げるための手法などを知っている・それを活用して行動できることを意味します。

取り組み方がわかっていれば、そのとおりに進めていけばよいのです。

そのため不安を感じることなく、さらにモチベーションも高くキープできます。

方略には、

  • 自らが課題を成し遂げたという経験
  • 過去にやったことがある
  • 先輩に教えてもらったことがある
  • 親や友人・知人から話を聞いたことがある
  • 本で読んだことがある

などがあります。

⑦原因の帰属

自己効力感は、「物事の原因が何であるか」という原因の帰属に大きく左右されます。

ある実験で、子供が何らかの課題に関して失敗もしくは成功したとき、「自分の努力の結果である」と考えるよりも「自分の高い能力の結果だ」と考えるほうが自己効力感の高い状態を維持できるという結果が出ました。

これは失敗や成功といった結果は自分の能力が導き出したものと考えることが、自己効力感を高めることにつながることを意味しています。

⑧ソーシャルサポート

自己効力感は、ソーシャルサポートの面からも高めることが可能です。

一人で取り組むことも重要ですが、自分のサポーターを多く持っていることも課題解決の力となります。

  • ソーシャルサポートの存在を認識
  • いかに有効なソーシャルサポートとつながりを持つか

などで、力以上の能力を発揮できるシーンは多くなります。

自己効力感を高めるポイントに、ソーシャルサポートの観点は欠かせないといえます。

⑨認知能力

自己効力感は、認知能力(過去・現在・未来という時間軸のなかで自分自身を振り返ったり未来を予想したりする)の向上を通じて相乗効果を発揮することも分かっています。

  • 過去の自分自身の言動を反省
  • 現在の自分の置かれている立場や状況を分析
  • 未来に起こり得るリスクを認知する

といった認知能力を身につければ、自分が取るべき行動の決定に磨きがかかります。認知能力が高ければ高いほど、自己効力感も相乗的に高まるでしょう。

⑩健康状態

若いうちはさほど感じないかもしれませんが、健康状態と自己効力感は大きく関係しています。特に高齢者の場合、小さな体の不調や衰えで判断能力が低下したり注意力が散漫になったりしてしまうのです。

健康なら何でもないことも体の不調により不安な気持ちが増幅する場合もあり、同時に「自分ならできる」という自己効力感も低下します。

健康状態と自己効力感は無関係のように思いがちですが自己効力感を高めるには健康維持、健康管理も重要なポイントになっています。

6.高い自己効力感から得られる結果(効果)

自己効力感は、さまざまな方法で高められるとわかりました。自己効力感が高まった際、そこから得られる結果や効果には何があるのでしょう。

高い自己効力感から得られる4つの効果を見ていきます。

  1. 行動の達成
  2. 生理的・心理的反応
  3. 行動に向けた努力
  4. 似たような状況での行動
参考 自己効力感の概念分析

①行動の達成

高い自己効力感は、「課題を自らの行動で達成する」行動の達成を生み出します。

自己効力感が高ければ高いほど、与えられた課題の達成率や達成の度合いが高くなることを意味するのです。

高い自己効力感によって、

  • 熱心さ
  • 専門的知識
  • アイディアの豊富さ
  • 課題達成に対して豊かな才能

などが存分に発揮されます。その結果、課題に対して評価の高い結果が生み出されるのです。

②生理的・心理的反応

自己効力感が高い状態とはつまり自信に満ちあふれており不安や恐怖といった感情とは無縁の状態です。

自己効力感が高ければ心身ともに安定した状態で取り組め、自己効力感が低ければ、不安や恐れといった感情が湧き上がります。

それは、血圧や心拍数にも影響を及ぼすという研究結果もあるほどです。自己効力感が高ければ、血圧や心拍数など生理的な面はもちろん、不安感といった心理的反応からも解放されます。自己効力感が生理的・心理的反応に及ぼす高い効果は軽視できないでしょう。

③行動に向けた努力

自己効力感が高まると「自分ならできる」という意識により高い目標に対して努力を惜しまない状態になります。

しかし、自己効力感が低ければ、「どうせ自分ではできない」「いくらやっても無理」というマイナスな感情が全面に出て、努力の程度も低くなるでしょう。

高い自己効力感が生み出す効果は、課題に対して立ち向かう努力の度合いにも大きく影響を与えます。

④似たような状況での行動

自己効力感は、成功体験を繰り返すことで高まるものです。なぜなら

  • 以前に似たようなことができたのだから今度もできる
  • 以前の経験を生かして今度も成功させる

といった感情を湧き上がらせるからです。

自己効力感が高い状態ですと、経験が無くとも似たような状況下であれば不安なく積極的に行動できます。これは、ビジネスシーンや日常生活の一場面だけでなく、人生を送るうえでも大きな力となるでしょう。