内発的動機付けとは?【外発的動機付けとの違い】具体例

内発的動機付けとは、自分自身の内側から生まれる動機付けのことです。ここでは内発的動機付けの具体例や外発的動機付けとの違い、活用するメリット、デメリットなどについて解説します。

1.内発的動機付けとは?

内発的動機付け(Intrinsic Motivation)とは、自分の内部から生まれた本質的な欲求によって引き起こされる行動のこと。

そもそも「動機付け」とは人に行動を起こさせて持続させる、心理的な過程です。つまり報酬や称賛など外部の誘因に関係なく、自分自身から発生する動機付け(モチベーション)を内発的動機付けと呼びます。

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2.内発的動機付けが必要な理由

内発的動機付けは人間の基本的心理欲求にもとづいた理論で、ビジネスでは業務に対するチームの積極性向上に重要とされているのです。ここでは、さまざまな内発的動機付けが必要な理由を見ていきます。

  1. 主体性を育成
  2. 人材の放出防止
  3. 生産性の向上

①主体性を育成

終身雇用が事実上崩壊している現代、働く目的やキャリア形成も大きく変化。よって社員一人ひとりが仕事に愉しさを見出し、能動的に行動しなればなりません。そのために必要なのが、内発的動機付けによる主体性の育成です。

②人材の放出防止

終身雇用の崩壊、さらに年功序列の働き方が維持できなくなっている現代において、企業はどうやって優秀な人材を社内に留めるか考えなければなりません。

そこで「仕事にやりがいを感じる」「仕事をとおして成長を実感できる」という内発的動機付けがあれば、社内での活動を促しやすく人材の放出防止につながります。

ただし給与や福利厚生のよさだけで動機付けを行うと、さらに好条件の会社を見つけたときに転職してしまうかもしれません。

③生産性の向上

労働人口の減少や少子高齢化によって、一人あたりの業務負担は増える一方です。企業としては、一人ひとりの社員に生産性を上げてもらえるよう働きかけなければなりません。

そこで内発的動機付けに注目し、業務効率化や生産性向上に寄与する取り組みを行います。

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3.内発的動機付けの具体例

内発的動機付けの支援にはさまざまな方法があります。内発的動機付けは外部から直接的に作用できない動機付けです。しかし自分自身の内部から湧き出るため上限がなく、報酬も不要になります。

従業員の主体性を育成し、個々のスキルアップをサポートして内発的動機付けを支援しましょう。

主体性の育成

上司が指示した業務を淡々とこなすだけでは、内発的動機付けは生まれません。大まかな業務内容を決めたあと、どのように進行するか、部下に任せてみましょう。

部下本人の意思で決定できる余地がある場合、自ら考えて行動するため、内発的動機付けにつながります。さらに「その業務にどのような意味があるのか」「なぜこの仕事をする必要があるのか」なども説明します。

「自分の仕事が会社や社会に貢献している」と感じられれば、モチベーションアップも期待できるでしょう。

個々のスキルアップ支援

得意分野のスキルアップを促す支援も、内発的動機付けを起こす働きかけのひとつ。社員一人ひとりの得意分野を見つけて、それぞれの特性にあったスキルアップ計画を実施していきます。

ここでは得意分野の発見やスキルアップ項目の精査が重要です。本人が望まない分野のスキルアップを実施しても、内発的動機付けを起こすどころかかえってモチベーションを低下させる可能性があります。

評価制度やフィードバック内容などを活用して、内発的動機付けを起こす要因を慎重に見極めましょう。

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4.内発的動機付けと外発的動機付けの違い

人の動機付けには「内発的動機付け」と「外発的動機付け」のふたつがあります。ふたつの違いについて、以下の3つから見ていきましょう。

  1. モチベーションの持続
  2. 関心や興味の有無
  3. 原動力の根源

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①モチベーションの持続

  • 内発的動機付け:自身の中でモチベーションが生成されている状態。掲げる目標は自分自身が設定したもので、外部に強要されているものではない。壁にぶつかったり状況が大きく変化したりしたとき、諦めずに解決方法を模索できる。モチベーションを維持しやすい
  • 外発的動機付け:目標を達成してしまえば終了となるため、持続性は見込めない

②関心や興味の有無

  • 内発的動機付け:ひとの内面的な要因によって生まれる。外発的動機付けに比べると動機付けを引き起こす要因が不明瞭なため、短期的な効果は期待できない。ただし持続性があり、高い効果も見込める
  • 外発的動機付け:短時間で行動を変容させたいときに効果的。「報酬を与える」「罰を与える」など実施方法がわかりやすいため、関心や興味の薄い人材のモチベーション向上に有効

③原動力の根源

内発的動機付けと外発的動機付けは原動力にも違いがあります。

  • 内発的動機付け:好奇心や新しいことへの挑戦など。たとえば「愉しいから」「やりたいから」といった自らの意思で、個人の内面に満足感を求める
  • 外発的動機付け:懲罰や恐怖からの回避、報酬の受け取りなど。たとえば「やらないと怒られる」「まわりのみんながやっているから」といった外部環境の影響。外部からの要因を求める(あるいは避ける)

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5.内発的動機付けを活用するメリット

内発的動機付けから起きた行動は「自分がしたいからする」もの。そのためモチベーションの維持や有能感の獲得、創造力向上などさまざまなメリットが得られます。

  1. モチベーションの維持
  2. 幸福感や満足感の獲得
  3. 創造力の向上
  4. 優秀な社員の離職を防止

①モチベーションの維持

外発的動機付けの場合、精神的あるいは金銭的な報酬が与えられなくなるとそれらに起因していたモチベーションは停止してしまいます。

しかし目的と自己決定感、そして自己効力感が保たれている限り、内発的動機付けでは外部からの報酬がなくても長期的にモチベーションを維持可能です。

②幸福感や満足感の獲得

内発的動機付けの場合、誰かに強制されて、あるいは何かに影響されて行動するのではなく、本人の意思によって行動します。そのため目標を達成した際に満足感や幸福感を得やすいのです。

この満足感と幸福感が、モチベーションの維持や離職防止につながります。報酬や外部評価を求めない内発的動機付けは、いうなれば行動そのものが報酬なのです。

③創造力の向上

内発的動機付けでは行動そのものが目的になります。そのため「どう行動するか」「どの選択肢を選ぶか」を自主的に考え、工夫するようになり、この過程で創造力が磨かれるのです。

誰かに指示された目標を達成するより、自分で掲げた目標を達成するほうが質の高い行動になります。より効率的なプロセス、有意義な行動方針を試行錯誤するため、おのずと創造力もアップするのです。

④優秀な社員の離職を防止

優秀な人材を外発的動機付けだけで社内につなぎとめておくのは難しいもの。「より報酬のよい他社が出現した」「重要視していた福利厚生が廃止された」など、外部報酬に魅力がなくなった時点で、会社に留まる理由が薄れてしまうからです。

内発的動機付けで「日々進捗を実感できてうれしい」「毎日新たな学びができる」などポジティブなフィードバックが生まれれば、この会社に留まりたいと考えるようになります。

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6.内発的動機付けを活用するデメリット

内発的動機付けにはさまざまなメリットがある一方、効果を得るには本人の興味関心を見極めなければなりません。そのため次のようなデメリットが生じます。

  1. 時間が必要
  2. 周りからの動機付けが困難
  3. マニュアル化がほぼ不可能

①時間が必要

内発的動機付けには本人の関心や好奇心、あるいは成功体験などが必要です。しかし何に対して興味関心を持つのか、どの過程で好奇心を持つのかはわかりません。また成功体験を積み、その行動に何らかの意味づけをするまでにある程度の時間がかかるのです。

よって短期的な成果を望む場合、内発的動機付けではなく外発的動機付けが適しています。

②周りからの動機付けが困難

内発的動機付けは基本、外部からコントロールできません。本人が「おもしろい」「興味がある」と自発的に感じる点から行動が促されるため、他者が直接的に動機付けを行うのは不可能です。

さらに動機付けの要因、それによる行動のレベルにも個人差があります。一定の働きかけで効果を期待する際は、外発的動機付けを検討してみましょう。

③マニュアル化がほぼ不可能

内発的動機付けは本人の内側から湧き出るもので、個人の価値観や特性に左右されます。また関心や興味の持ち方は千差万別ゆえ、これをマニュアルに標準化できません。一人ひとりのタイプを把握して、個別にアプローチを取る必要があります。

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7.内発的動機付けを促す方法

内発的動機付けには損得ではなく「これをしたい」という意欲が重要です。しかしどのような方法で内発的動機付けを促せばよいのでしょう。その方法を見ていきます。

  1. 外発的動機付けから内発的動機付けへと変化させる
  2. 意思決定の機会を設ける
  3. 仕事の意味づけに取り組む
  4. 本人のレベルに合った仕事を任せる

①外発的動機付けから内発的動機付けへと変化させる

はじめのうちは上司に言われていやいや取り組んでいた仕事も、実際取り組んでいくうちに面白さを見つけ出し、内発的動機付けになったというケースは多くあります。外発的動機付けはフィードバックとチャンスの提供で、内発的動機付けに変えられるのです。

②意思決定の機会を設ける

何事かの方向性を定め、それによって周囲を動かす意思決定には多少のストレスが生じるもの。しかしそれと同時に「自分の意見を認めてもらった」という一種の承認欲求も満たされます。これが内発的動機付けにつながるのです。

またフィードバック内容の見直しも効果的。直接答えを提示するのではなく「どうしたらよかったと思う?」と自分の言葉で語らせることが内発的動機付けを促します。

③仕事の意味づけに取り組む

企業としてのミッションやビジョンを現場業務に浸透させ「自分の仕事が会社に、また社会に価値を生み出しているんだ」と自覚してもらいます。顧客の声をとおして価値提供の実感を高めるのも効果的です。

仕事の意味づけを行うには、管理職層のコーチングスキルが重要です。また1on1や研修などを活用して個人のミッションや価値観を明確にしておきましょう。自己理解を進め、仕事内容との一致点を見出す状態を作るのです。

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④本人のレベルに合った仕事を任せる

内発的動機付けと関連深い用語に「フロー状態(時間を忘れるほど作業に没頭している状態)」があります。「仕事そのものが愉しい」という内発的動機付けにとって最適な状態であり、フロー状態になるため必要なのが本人のレベルに合った業務なのです。

部下の適性や能力を正しく見極めてかんたんすぎず難しすぎない業務を割り振ると、内発的動機付けにつながります。