外発的動機付けとは?【内発的動機付けとの違い】具体例

外発的動機付けとは、他人によってもたらされる目標に向かって行動しようとする心理状態のこと。内発的動機付けとの違いや活用するメリットなどを解説します。

1.外発的動機付けとは?

外発的動機付けとは、外部からもたらされる要因によって、行動への意欲が高まる心理状態のこと。要因には評価や賞罰、義務があり、たとえば「この仕事をしたらインセンティブが得られる」「この業務をクリアしないと人事評価が下がる」などが挙げられます。

ビジネスシーンでは、「部下にやってほしい業務がある」「部下の成長を促すために難易度の高い仕事を任せる」などで、上司が外発的動機付けを利用するケースもよく見られます。

動機付けの定義

動機付けとは、目標や目的の達成に向けて行動を起こすときの心理的過程を表す心理学用語。モチベーションとも言い換えられます。

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2.外発的動機付けが必要な理由

昨今、労働力人口の減少により、日本企業では人材不足が大きな課題となっています。そこで優秀な人材を長期的に確保するには、モチベーションを継続させる動機付けが重要なのです。ここでは外発的動機付けが必要な理由をふたつ見ていきます。

  1. ほとんどの人に対して有効
  2. 生産性の向上

①ほとんどの人に対して有効

外発的動機付けでは報酬や賞罰、義務など多くの人が同じような気持ちになる要因を使うため、ほとんどの人に対して適用できます。

たとえばある業務に「報酬がもらえる」「評価が下がる」などがあると、その業務に関心や興味が薄い人でも、業務遂行への意欲が高まりやすいのです。

外発的動機付けは行動への理由がシンプルでわかりやすいため、モチベーションアップまでの時間が短くなります。その分、早期に結果が出やすくなるのです。

②生産性の向上

外発的動機付けで従業員のモチベーションが向上すると、生産性向上や業績アップにもつながります。先に述べたとおり、多くの従業員の意欲を短期間に高められるため、組織全体の成果が上がりやすくなるからです。

人手が不足している企業では、既存従業員の生産性をより高める手段のひとつとして、外発的動機付けが活用されています。

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3.外発的動機付けの具体例

外発的動機付けで用いる要因は、3つに分類されます。いずれもビジネスシーンだけでなく日常生活でもよく見られるものです。

  1. 金銭的報酬
  2. 物質的報酬
  3. 感情的報酬

①金銭的報酬

主に金銭を絡めて動機付けを行うこと。たとえば「与えられた仕事を成功させれば給与をアップ」「目標を達成できなければ賞与の減額」などのケースが挙げられるでしょう。

金銭のほかに評価も行動要因となりえます。たとえば「業績を上げたら昇格」といった措置は、結果的に昇給へつながるからです。

②物質的報酬

休暇や福利厚生など、金銭面以外の報酬を動機付け要因とすること。

金銭的報酬のように直接的な損得は発生しないものの、従業員が働きやすい環境が整備されるため、中長期に渡って従業員のモチベーションが向上しやすくなります。ただし一度付与した物質的報酬をなくすと、従業員の不満が高まりやすいです。

③感情的報酬

行動の結果から得られた本人の感情が報酬となって動機付けにつながること。たとえば人から「ありがとう」と感謝されて嬉しい気持ちになる仕事に対しては、「次もやってみよう」とモチベーションが高まります。

ただしここには感謝のほか賞賛、評価や共感などから得られるポジティブな気持ちだけでなく、「怒られたくない」といったネガティブな気持ちも含まれるのです。

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4.外発的動機付けと内発的動機付けの違い

動機付けは「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の2種類にわかれます。双方では行動要因や目標もたらされる経緯、効果の持続時間、外部からの影響力などが大きく異なるのです。それぞれの違いについて説明しましょう。

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起因するもの

  • 外発的動機付け:報酬や罰則など外部から人為的に付与される要因が行動への動機につながる。たとえば与えられる仕事をこなすと報酬が得られるもの
  • 内発的動機付け:自分自身の興味関心な要因となって行動への動機となる。つまり行動への意欲を高める要因が、自身の内部から生じている。たとえば「もっとスキルアップしたい」気持ちから、より専門的な仕事に率先して取り組むといったもの

効果の持続期間

  • 外発的動機付け:外部から刺激(要因)を与えるため、慣れてしまったり刺激が弱まったりすると、モチベーションが低下しやすい
  • 内発的動機付け:「やりたい」という内面から生じる意欲が行動の動機となるため、興味関心がなくならない限り意欲的に取り組める。よって外発的動機付けと比べてモチベーションが持続しやすい

目標設定のプロセス

目指すべきゴールを設定するプロセスにも違いがあります。

  • 外発的動機付け:行動要因と達成すべき目標が外部からもたらされる。これらは自分で設定した目標ではないため、集中力やモチベーションの持続時間などが内発的動機付けより低下しやすい
  • 内発的動機付け:「こうしたい」「こうなりたい」という自身の願望を達成するために、自身で目指すべきゴールを設定

周りからの影響

  • 外発的動機付け:外部からもたらされる損得が行動の動機となる。そのため周りからの影響でモチベーションを高められる
  • 内発的動機付け:自分自身の願望や価値観などから湧きおこる意欲が行動の動機となるため、外部からの影響を受けにくい

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5.外発的動機付けを活用するメリット

外発的動機付けは実施方法がシンプルでわかりやすいため、多くのメリットが得られます。外発的動機付けを活用するメリットを3つ説明しましょう。

  1. シンプルで万人に動機付けができる
  2. 短期間で効果が得られる
  3. 仕事への興味関心が低い人材にも有効

①シンプルで万人に動機付けができる

外発的動機付けでは、「特別報酬が貰える」「上司に叱られる」など行動を促す要因がシンプルです。多くの人はこのような要因に対して「それならやろう」という気持ちになるため、一度に大勢への動機付けが可能となります。

内発的動機づけでは、その人の価値観や興味などによって行動要因はさまざま。外部からこれらの要因を直接付与するのは難しいでしょう。

②短期間で効果が得られる

外発的動機付けは実際の行動につながりやすく、短時間で効果を上げられます。報酬やペナルティ、つまり自分にとっての損得が明確なので、行動への意欲が高まりやすいのです。

とくに即効性が期待できるのは、「成果を達成できたらインセンティブを出す」のようなプラス方向の金銭的報酬でしょう。短期間で生産性を上げたいときには外発的動機付けが有効です。

③仕事への興味関心が低い人材にも有効

外発的動機付けでは、万人に効果のあるシンプルな行動要因を与えるので、仕事への興味関心が低い人のモチベーション向上にも効果があります。自身の行動によって損得が発生するとなれば、興味関心が薄い仕事であっても意欲が高まるからです。

ただし仕事への興味関心が持てない原因を把握したうえで、金銭的報酬や物理的報酬、感情的報酬を使い分ける必要はあるでしょう。

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6.外発的動機付けを活用するデメリット

外発的動機付けは、外部からの働きかけで行動を促すため、個人の積極性や業務への貢献度が高まりにくいです。ほかにも生じるデメリットを3つ解説します。

  1. 効果の持続が短期間
  2. コストの負担
  3. 期待以上の結果は困難

①効果の持続が短期間

短時間でモチベーションアップが可能であるものの、報酬に慣れてしまうと効果が持続しにくくなります。

たとえばインセンティブといった金銭的報酬の付与に慣れてしまったり、「感謝されて当たり前」と感情的報酬に慣れてしまったりすると、モチベーションを継続しにくくなるでしょう。

そのため長期的にモチベーションを維持するには、外発的動機付けから内発的動機付けにつなげる仕組みが必要といわれています。

②コストの負担

外発的動機付けは、報酬の付与にコストがかかります。

金銭的報酬では昇給やインセンティブ、物理的報酬では福利厚生や職場環境の整備、いずれも金銭的負担が発生します。モチベーションを継続させるために、このような報酬を与える外発的動機付けを続けると、費用対効果を下げてしまうかもしれません。

③期待以上の結果は困難

自身にもたらされる損得が行動要因となるため、外部が定めた目標を達成したらそれで終わりです。つまり目標以上の成果を目指す必要性がありません。

外発的動機付けのみで高い成果を出し続けるには、つねにそれなりの報酬が必要となり、コスト負担も増大します。また一定以上の成果が出ないため、自社の成長が遅れる恐れもあるのです。

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7.外発的動機付けを促す方法

外発的動機付けを促す方法として挙げられるのは次のふたつです。

  1. 目指すべき目標を明確にする
  2. 賞罰の内容を具体的にする

目標が明確になると従業員はやるべきことをすぐに理解でき、行動を起こそうというモチベーションが上がります。また賞罰が具体的になっていると、目標達成したときの損得をイメージできるため、外発的動機付けの効果が高まりやすくなるのです。

たとえば「新規顧客を5人獲得できたら20万円のボーナスを与える」といった、定量的な条件と具体的な報酬を提示するとよいでしょう。

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8.外発的動機付けの注意点

すべての従業員、すべての業務に対して外発的動機付けが有効とは限りません。ここでは注意点を3つ解説します。

  1. 報酬への耐性や慣れ
  2. アンダーマイニング効果
  3. 多方面からの観点が必要

①報酬への耐性や慣れ

いつも同じ報酬や罰則などを長期的に継続していると、次第に効果が薄れる場合もあります。「もらえるのが当たり前」という意識が生まれ、報酬に魅力を感じなくなるからです。

だからといって報酬を下げたり付与を止めたりすると、従業員は「報酬がないならやらない」という気持ちから、モチベーションが下がってしまうでしょう。

②アンダーマイニング効果

外発的動機付けによって、内発的動機付けの効果を下げてしまう「アンダーマイニング効果」に注意が必要です。

内発的動機付けによって行動する人は、達成感や満足感を得ることが目的。しかしそこに外発的動機付けを行うと、行動の目的が「報酬を得ること」へ変わります。

本来自分が望んで取り組んでいる業務に、外発的動機付けによって賞罰がつくと「やらされている」と感じてしまい、モチベーションが下がりやすいのです。

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③多方面からの観点が必要

外発的動機付けをする際は、多様な視点から報酬や評価内容を決めましょう。たとえば「新規顧客を獲得した」「売上を10%アップさせた」など、業績のみを評価してしまうとそれ以外の業務が疎かになってしまう可能性があるからです。

また業績に関係ない部署の従業員は報酬を得られないため、不公平からモチベーションを下げてしまうかもしれません。外発的動機付けに用いる評価基準には、業務内容や担当者によって「業務の質」なども取り入れたほうがよいでしょう。

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9.外発的動機付けから内発的動機付けにつなげる方法

外発的動機付けから内発的動機付けにつなげると、従業員のモチベーションを長く保てます。内発的動機付けが成功すると、従業員の内面から行動への意欲が生まれるためです。ここでは3つの方法を解説します。

  1. フィードバックが重要
  2. エンハンシング効果
  3. 信頼関係の構築

①フィードバックが重要

まず外発的動機付けで行動するきっかけを作り、従業員が目標に向かって取り組み始めたら、適切なフィードバックを行いましょう。

フィードバックによって従業員の視点が変わると、仕事の面白さを発見できる場合もあるからです。またフィードバックを受けてよりよい成果を上げられれば、達成感や自信が生まれます。このような気持ちが内発的動機付けにつながるのです。

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②エンハンシング効果

「賞賛効果」とも呼ばれるエンハンシング効果も、外発的動機付けを内発的動機付けへつなげる方法です。

心理学者の研究実験によって、人は褒められるとその行動に対する意欲が向上しやすいとわかっています。一方で「叱る」という行為は、一時的に意欲が高まるものの、賞賛とくらべて意欲が持続しません。

そのため外発的動機付けで取り組ませて「褒める」と、内発的動機付けにつなげられるのです。このとき行動の結果だけでなく過程も褒めると、よりエンハンシング効果を発揮できます。

③信頼関係の構築

従業員を褒めてモチベーションを高める場合、相互の信頼関係を築いていることが重要です。「この人に認められたい」という相手からの賞賛ならば、うれしいと感じて内発的動機付けにつながる可能性が高いでしょう。

十分に信頼関係を築いていないと相手に深読みされてしまい、「自分にやらせるために褒めているだけ」のように誤解される恐れもあります。