中小企業に最適な人事評価制度の作り方とは? 賃金制度との紐付けや評価シートも

中小企業の人材不足は大きな課題です。人材の採用はもちろん、育成や定着についても本腰を入れ取り組まなければいけません。こうした課題は給与や労務時間などの待遇改善だけでなく、人事評価制度の導入や見直しによって解決できます。そこで今回は中小企業が取り組むべき人事評価制度について、具体的な作り方や成功事例をご紹介します。評価シートのExcelサンプルもありますので、ぜひお役立てください。

1.中小企業における人事評価制度の実態

日本の中小企業は深刻な人材不足になっています。その背景には若い人たちの大企業志向や、賃金格差、高い離職率などがあり、なかには「人手不足倒産」に追い込まれるケースも。人事評価制度はこうした課題を解決する方法のひとつですが、十分に活用できている中小企業は多くないのが現状です。

まずは、中小企業の人事評価制度の実態について解説します。

①評価制度の導入率が低い

中小企業の人事評価制度導入率は大企業に比べ低い傾向にあります。2016年に発表された東京都中小企業診断士協会の論文で、社員数100人未満の中小企業の約6割で人事評価制度がないと判明しています。反対に1,000人以上で評価制度を導入していない企業はほとんどありません。

論文中で引用されている調査は平成14年度の厚生労働省調査で少し古いデータですが、今もそれほど変わっていないのが現状でしょう。

参考 中小企業の「人材育成型」人事評価制度を考える(平成28年6月)J-SMECA 中小企業診断協会

②きちんとした運用がされていない

中小企業では評価制度の運用にも課題があります。同論文によると、従業員が納得できる評価制度が運用できていないという実態が明らかになりました。

たとえば、次のような項目では肯定的な意見よりも否定的な意見が多くなったのです。

  • 評価者はバラつきのない適正な評価ができているか
  • 評価結果に対し、社員が意見をいいやすい風土かどうか
  • 評価結果が人材育成や能力開発に活かされているか

人事評価制度が導入されていたとしても、中小企業では形骸化しているケースも少なくないことがわかります。中小企業においては、評価者のスキル向上や、人材育成や能力開発につなげられていないことが現状の課題といえるでしょう。


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2.なぜ中小企業に人事評価制度が必要なのか

なぜ今、中小企業に人事評価制度が必要なのでしょうか? 中小企業だからこそ必要な理由が3つあります。

①従業員にやる気を出させ、能力を最大限引き出さなければならない

少ない戦力で競争に打ち勝つには、その能力を最大限に発揮させないといけません。従業員の「やる気」は仕事の生産性にとても大きな影響を与えます。

中小企業の人事評価制度において「完璧さ」は求められません。それよりも一人ひとりの仕事ぶりをきちんとフィードバックし「ちゃんと見ている」ことを伝えるほうが大切です。評価すること自体が、モチベーションアップの特効薬です。

また従業員がみなバラバラの方向を向いていたのでは効率が悪化します。評価制度のなかであるべき姿を示せば、社員を一致団結させられるでしょう。

②採用コストを抑えるためにも、定着率をあげなければならない

新しい人材の採用にはコストがかかります。熟練した既存の中核人材をしっかり定着させる方が効率的でしょう。人手不足の今、人材採用は中小企業にとっては難しい課題。仮に採用できたとしても育成にはまたコストがかかります。今働いている人がやりがいを持てるような評価制度が重要です。

③人に関する問題の影響が大企業以上に大きい

大企業に比べ人数が少ない中小企業では、人の問題が経営に与える影響も大きくなりがち。ベテラン社員の退職や、コミュニケーション不足によるモチベーション低下なども度々起こります。とくにコミュニケーション不足は、目に見えづらく火種になりかねません。

評価制度を導入することで強制的に上司と部下とのコミュニケーションが生まれ、問題の早期発見もしやすくなります。

3.中小企業が人事評価制度を導入する基準と目安

中小企業が人事評価制度を導入すべき具体的な目安とはどのようなものでしょうか? 5つご紹介します。

①従業員が50名以上

従業員数が50名以上ならば人事評価制度を導入しましょう。50名以上の規模になってくると、だんだんと社員全員の顔と名前が一致しなくなってきて、管理職が直接働きぶりを把握することは難しくなります。社員は自分の仕事ぶりをきちんと評価してもらえず、モチベーションが低下する原因となることも。

一般的にチームメンバーが5名を超えると業務の把握が困難になるとされています。管理職の見る人数が限界に達しているならば、人事評価制度の導入を検討すべきでしょう。

②働き方改革を行う

組織の働き方改革に取り組む際には、人事評価制度の導入や見直しも合わせて行いましょう。働き方改革をするには、残業を減らし労働生産性も高めなければなりません。そのためには働いた時間ではなく能力や行動で評価する仕組みが必要

納得感のある評価制度ならば、従業員のやる気を引き出し生産性も高められます。働き方改革というと有給休暇の取得や、フレックスタイム制など労働時間管理のみに目がいってしまいがち。社員の動機付けや行動変革という視点からも評価制度の見直しは重要です。

③新規で若手を採用したい

社員の業務内容や、行動内容を変えたいならば人事評価制度の導入が有効です。時代が大きく新しく若手を採用する場合は、人事評価制度の導入や見直しを検討するいい機会です。評価制度で「あるべき姿」や「評価すべき行動」を明確にすれば、ビジョンに合致した人材を採用しやすくなりますし、結果的に定着率もあがります。

目指す人物像を明確にしてきちんと評価することで、自然と入社後の人材教育にもつながります。

④社員の行動を変えたい

社員の業務内容や、行動内容を変えたいならば人事評価制度の導入が有効です。時代が大きく変わるなか、今までと同じやり方では成長し続けることが難しくなっています。組織が変わるためには、社員の仕事の仕方や考え方から変えなければいけません

人事評価制度によって、社員に求める行動や意識を定義することで、動機付けがなされ変化を促せます。

4.コンサルティング会社に依頼すべきか、自社で行うべきか

人事評価制度の作成はコンサルティング会社に依頼することもできます。自社で行うべきか、コンサルタントに依頼すべきかの線引きについて解説します。

①コストを抑えたいなら自社

人材コンサルティング会社に依頼する場合には費用がかかるため、コストを抑えるなら自社で作成するのがよいでしょう。コンサルに依頼する場合は年間で100万円から200万円ほどの費用が必要です。専門家のアイデアを活用できるメリットはありますが、費用を算出したうえで依頼すべきかをしっかりと検討する必要があります。人事評価制度の作成方法に関する書籍やセミナーなどもありますよ。

②第三者目線が必要ならコンサルティング

より公平な人事評価制度を求めるならコンサルティング会社へ依頼するのも手です。社長や管理職が主導し作成した人事評価制度に対して、ベテラン従業員などが反対するケースもあります。

社長や管理職のみで人事評価制度を作成すると、経営者目線にかたよった仕組みになりがち。現場のことをわかっていないと反発されることも。第三者目線を入れ、従業員の納得性や公平性を重視する場合はコンサルに依頼するのがおすすめです。

5.人事評価制度の作り方

人事評価制度といっても複雑に考える必要はありません。基本的な作成方法をご紹介します。

①人事評価制度を作る目的

人事評価制度を作る目的は下記の2つです。

(1)処遇

給与や賞与、昇給昇格を決めるための基準を明確にします。重要ですが大仰にかまえる必要はありません。大切なのは従業員の「納得感」です。

)育成

人材育成も評価制度を作る目的のひとつです。何を評価するのかを明確にすれば、社員も目標を立てやすくなります。目標と評価を繰り返すことで、スキルアップしモチベーションもあがるでしょう。

②評価項目を決める

評価すべき項目は大別すると成果と情意です。それぞれ解説します。

(1)成果(目標達成、売上貢献)

社員が期初に立てた目標を達成できたかどうか、その売り上げ貢献度合いや業績などを評価します。数値化しやすく管理もしやすいですが、立てた目標に関する仕事しかやらないなどのデメリットも。そのため次の情意とセットで運用することをおすすめします。

(2)情意(勤務態度など)

勤務態度や仕事ぶりそのものを評価します。代表的な項目としては下記の4つ。

  • 規律性…会社のルールにのっとった行動ができているか
  • 積極性…自ら積極的、能動的に行動ができているか
  • 責任性…職務を全うしようとする姿勢があるか
  • 協調性…チームや部署に溶け込む努力をしているか

そのほかにも、自社の行動指針を情意評価に反映する企業もあります。情意評価はその人の仕事ぶりを評価できる反面、評価者の主観に左右されやすいことを留意しておく必要があります。

(3)その他の事例

その他の事例として、中小企業が実践している独自の取り組みを2つ紹介します。

ライオンパワー株式会社(製造業/従業員104名)

石川県で製造業を営むライオンパワー株式会社では、残業時間に「ポイント制」を設けるというユニークな取り組みをしています。残業が少ない人にポイントを付与し、賞与の評価に反映させるというものです。注目すべきことは業務量の多い社員が不利にならないよう、業務難易度や業務量を加味し調整しているところです。

結果として、残業も減り賞与も増えたことで従業員の満足度が高まっています。

株式会社井口一世(製造業/従業員45名)

埼玉県の株式会社井口一世では、多様な人材に活躍の場を提供するため、全従業員共通のスキルマップを評価にとりいれました。CADや検査技能などのスキル取得が評価の対象になったことで、社員のモチベーションが向上し、多能工化にも一役買っています。

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6.評価シートの作成例

評価の項目として成果と情意をご紹介しました。それぞれに対応した評価シートの作成例もご紹介します。

①多くの企業で導入されている目標管理制度(MBO)

目標管理制度(MBO)とはピーター・ドラッカーが提唱したマネジメントの仕組みで、日本の多くの企業で成果評価に採用されています。MBOの仕組みは期初に目標を立て、期末にその達成度合いを評価しフィードバックするというもの。MBOを導入することで、上司と部下のコミュニケーションも増えます。

目標設定にはコツがいります。とくに営業以外の数字目標を置きにくい部門の場合は、下記の点を意識しましょう。

数値化できるものはなるべく数値化する

例)

  • 半年後までに、毎週の発注業務で必ずダブルチェックを行うことで、月に数件発生してしまっているミスをゼロにする(事務職)
  • 第一四半期末までに契約書の保管棚を整理することで、収納スペースを現在の1/3にする。(事務職)

達成した状態を明確にする

例)

  • 一年後までに、月に一度の勉強会を行うことで、総務部メンバー全員がマイナンバー実務検定を取得する。(総務)
  • 第一四半期末までに経理の書籍を読み、BS(貸借対照表)を作成できるようになる。(経理)

MBO評価シートのサンプル

MBOの評価シートは下図のとおりです。サンプルのExcelも用意しましたので、参考にしてくださいね。

MBO評価シート サンプル
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▼MBOのExcel評価シートはこちら▼
【カオナビ人事用語集】MBO評価シートサンプル(※クリックでダウンロード)

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②ウチ(自社)らしさを評価する情意評価

情意評価を活用すると「自社らしさ」を評価しやすくなります。経営理念や行動指針などを項目に加えてもよいでしょう。たとえば「積極的に業務の改善をしているか」や「部下や後輩に対する支援を行っているか」などです。クレドカードの項目をとりいれる企業もありますね。

部署や職種ごとに設計しだすと複雑ですし、組織改編があるたびに作りなおすのも手間がかかります。全従業員共通にするとよいでしょう。

情意評価シートのサンプル

情意評価のシートは下図のとおりです。こちらもサンプルのExcelをダウンロードいただけます。

情意評価シート サンプル
※クリックで拡大

▼情意評価のExcel評価シートはこちら▼
【カオナビ人事用語集】情意評価シートサンプル(※クリックでダウンロード)

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7.賃金制度とどう紐づけるか

評価を行ったあとは、賞与や給与に反映させます。賃金制度との紐づけは下記のようにすると納得感が得られやすいでしょう。

①賞与は成果を反映

目標達成や業績などの成果は数字化しやすく明確ですが、運やタイミングなどの外的要因が入ることも。成果のみを基本給などに反映すると、不平不満がでたり人間関係がギスギスしたりするケースもあります。成果は短期的指標として、賞与への反映がおすすめです

②昇給昇格は成果と情意を総合評価し反映

昇給昇格にも成果を反映します。ただし勤務態度などの情意指標と合わせ総合的に評価することが重要です。情意評価を待遇に反映させることでウチ(自社)らしい人材をきちんと評価し、組織の健全な成長を促せるでしょう。

8.中小企業の人事評価の実践事例

最後に中小企業の人事評価の実践事例を2つご紹介します。

①評価制度の運用によりスキルアップや定着に成功│株式会社喜久屋(従業員191名)

足立区でクリーニングサービスを提供する同社は、パートタイム従業員の動機付けのため「職能等級制度」を設けています。能力に応じた賃金支給だけでなく、店長や正社員登用の仕組みを設けているのもポイント。評価の仕組みが従業員のスキルアップや継続勤務のモチベーションにつながっています。

②人事評価制度導入でビジョンの実現を目指す│株式会社ケンコー(従業員100名)

給湯機器のメンテナンスを手がける同社は修理件数の減少によって、社員の行動変革に迫られました。今までのやり方を変え、修理点検以外の創意工夫で収益をあげるために人事評価制度の導入を決意。数字に表れない頑張りを上司が評価する「思いの加点」など、同社らしい取り組みでビジョンの実現と人材育成を目指しています。