人事評価の運用をシステムに置き換えている企業が増えているようです。
ここでは、
- 人事評価システムでできること
- メリットや効果
- 導入前に検討しておくこと
- システム比較のポイント
について紹介してまいります。
導入検討のご参考になさってください。
目次
1.人事評価システムとは?
人事評価システムとは社員の人事評価を効率よく適正に行うためのシステムです。評価プロセスが効率化されれば余計な時間やコストが省かれるだけでなく、適正に評価されたと感じた従業員は満足度が高まり、生産性にも大きく影響を与えていくでしょう。
今、企業の行く末に大きな影響を与える人事評価システムに、改めて注目が集まっています。
機能、できること
人事評価システムは、社員評価を一元的に管理すると同時にデータを科学的に分析できるメリットから、規模を問わずさまざまな企業で導入が進んでいます。ここでは、多くの人事評価システムに共通している4つの機能をご紹介しましょう
- 評価過程、評価結果の見える化
- 評価シートの再現
- 紙やエクセルへの出力
- (クラウドの場合)場所を選ばず評価ができる
①評価過程、評価結果の見える化
人事評価とは、社員一人ひとりを新入社員時代から継続的に評価することです。
すなわち、過去にどのような部署でどのような業務を担当し、そのときの評価がどのようなものだったかといったデータの蓄積が不可欠です。
評価システムでは、過去の評価結果もボタンひとつで確認できます。
②評価シートの再現
つまり、上司が面談でメモした手書きの評価表や、部署ごとにエクセルなどで管理・運用していた目標管理シートなどを、人事評価シートに落とし込めば一括して再現ができるというわけです。
ひとつのシステムでさまざまなデータを管理して評価シートが作成されるので、人事評価がしやすくなり、効率は一気に高まります。
③(クラウドの場合)場所を選ばず評価ができる
人事評価をする場所も、社内の会議室や面談室以外の場所で行われるようになってきました。
いつでもどこでも、タブレットやスマートフォンがあれば場所を選ばず人事評価を行うことが、当たり前になりつつあります。
2.人事評価システムを導入するメリット、効果
人事評価システムのすぐれた機能を活用すると会社がどう変わるのか、その効果についてみていきましょう。
- 評価にかかる時間の削減、運用の効率化
- 評価の「質」の向上
- 従業員満足度の向上
- 離職率の低下
- 評価結果をマネジメントに活用できる
①評価にかかる時間の削減、運用の効率化
人事評価システムの導入を検討する企業の多くは、人事評価にかかる時間的コストに頭を悩ませています。エクセルファイルなどを用いた評価シートの作成、面談後の記入、回収、集計、ファイリングなど管理に相当する作業は意外と時間がかかるもので、会社の規模が大きくなればなるほどその傾向は顕著に現れます。
その解決策としてあげられるのが、人事評価システムの導入です。効率化できる業務に時間や人件費をかけないのは企業として当然の判断。
②評価の「質」の向上
紙やエクセルファイルなどで評価シートを作成していた時代には、そのファイルの管理に追われ、本質的な評価やマネジメントが行うのがむずかしいという事実がありました。
人事評価の基本は、データを科学的に分析し人材育成や適材適所に生かすことです。
空いた時間で評価の「質」の向上が図れることは、システム導入の大きなメリットです。

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③従業員満足度の向上
従業員は自分の仕事を適正に評価してもらうことを望んでいます。
当然、人事評価だけでなく、仕事や企業に対しての満足度も上がります。企業は従業員の働きによって成り立っています。
「仕事を一生懸命やれば、会社はちゃんと評価してくれる」。この安心感こそが、企業の生産性向上という点につながっていくのです。
④離職率の低下
企業の人事部が頭を悩ませることのひとつに「離職」という問題があります。
離職の理由として「適正に人事評価がされなかった」という点を挙げる人も多く、有能な人物ほど早めに見切りをつけてしまうという傾向も見受けられます。
評価システムによって、評価運用を効率化し、評価の質を上げ、満足度を向上させることで、離職率の改善(低下)につながります。
⑤評価結果をマネジメントに活用できる
最適な人材を配属できるかどうかは、プロジェクトの成功の可否に直結します。
人事評価システムでは、一目で人事評価が確認できたり、条件を決めて希望する人材を絞り込むことが可能。
「必要な人材はどこにいる誰なのか」といった疑問も短時間でクリアにすることができます。人事はその資料をもとに配置を検討するだけなので、資料を準備する手間が大幅に削減できます。
また、さまざまな資料を集めて評価を行う場合は時間もかかる上に、絞り込みがうまくできずに、適した人材をあてがうことを逃してしまうリスクもあります。マネジメントに活用するためにも、人事評価システムの導入は重要なポイントといえるでしょう。

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3.人事評価システムで効率化・質の向上を実現した企業事例
実際に人事評価システムによって運用の効率化や「質」の向上を実現した企業の事例を紹介します。
インフォテック・サービス株式会社
導入前の課題
・エクセルとメールで管理する効率の悪い評価運用
・評価会議用の資料は4,400枚と印刷コストがムダ
・評価会議の準備に丸一日かかっていた
導入後の効果
・評価の進捗がひと目でわかり運用管理が楽に
・紙での運用をなくし、ペーパーレス化
・評価会議の準備期間が1日⇒1時間に!
株式会社博報堂アイ・スタジオ
導入前の課題
・エクセルでの評価運用が現場の上長の負担に
・独自の評価をシステムに取り入れたい
・精度の高い評価を実現させたい
導入後の効果
・開いたり閉じたり、エクセル作業の手間を削減
・高い柔軟性で独自評価をそのまま再現
・人材情報の見える化で評価会議が活性化
株式会社アイモバイル
導入前の課題
・エクセル評価では誰が評価済みだかわからない
・使っていた評価システムの使用感に不満
・さまざまな人材情報を蓄積し、活用したい
導入後の効果
・進捗の見える化で評価の運用管理がラクに
・シンプルな評価システムが評価者の負担を軽減
・人材情報を一元管理。パッと引き出し面談で活用
4.人事評価システム導入前に確認・検討すること
人事評価システムは、効率よく社員の評価結果を管理できる点で注目を集めているため、導入を検討している企業も多いことでしょう。
せっかく導入するのであれば、失敗のないよう慎重に進めたいものです。ここでは、以下4つの導入前に確認・検討しておくとよいポイントをお伝えします。
- 導入目的:なぜ?
- 導入時期:いつ?
- 導入方法:(評価プロセスの)どの部分を?
- 運用ルール:どうやって運用する?
①導入目的:なぜ?
たとえば、
- 現状の人事評価の運用方法に限界を感じている
- 人事評価作業を効率化したい
- 人事評価の結果を現場のマネジメントに活用したい
- 膨大な人事評価データをより科学的に分析したい
- パソコンだけでなくタブレットなども使って、いつでもどこでも人事評価を可能にしたい
など、自分の会社がどうして人事評価システムの導入をするのか、導入によって何を実現させたいのかを、じっくり検討しておくようにしましょう。
②導入時期:いつ?
市場には非常に多くの人事評価システムが流通しています。
簡単に「システムの導入」といっても、「どのシステムを導入するのか」「どんな方法で情報収集するのか」といった比較や検討をする時間も必要です。
実際、導入するシステムが決まっても、自社向けにカスタマイズするには、さらに時間を要します。
「いつの評価から新システムに置き換えたいのか」という着地点を設定し、事前の準備を考えていくことが重要です。システム導入にあたっては、現実的なスケジュールを含めて検討しましょう。
③導入方法:(評価プロセスの)どの部分を?
一般的に評価プロセスには、
- 目標設定
- 中間面談
- (実際の業務)
- 自己評価
- 期末面談
- 一次評価
- 二次評価
- 評価調整会議
- 評価の決定
- 評価結果の反映
- フィードバック面談
といったさまざまな行程があります。
- すべてをシステム化するのか
- 一部分を切り出すのか
など、検討結果によっては、構築するシステムの内容が大きく変わってしまいます。システム構築に手間取らないよう、導入目的とも照らし合わせて慎重に行いましょう。
④運用ルール:どうやって運用する?
システム導入の目的や時期、方法が決まったら、システムの運用方法について検討しましょう。
運用に関するルールがなければ、現場は混乱してしまいます。人事部門が中心となって各部署とも意見交換し進めていくと現場の声も反映できるので、導入後も運用しやすくなります。
人事評価システムのメリットをあますところなく享受するためにも、現場でもスムーズに運用ができるようなルールを設定しましょう。
5.人事評価システム比較の7つのチェックポイント
システムを選ぶときは比較検討した上で、自社に最適な機能が備わっているものを選択しましょう。
比較検討には次の8つを押さえておくことがポイントです。
- 提供形態
- 対象としている従業員規模
- 対応する評価の種類
- 料金形態
- 操作性、使いやすさ
- システム連携(データ入出力方法)
- サポート


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1.比較して導入すべき「人事評価システム」とは?
人事評価システムとは、人...
①提供形態
まず、提供形態の違いについて見ていきましょう。
それぞれ特徴が異なりますが、次の項では比較しやすいように、メリットとデメリットをあげながら解説していきます。いずれにしても自社に適したものを選ぶことが必要でという点は認識しておきましょう。
クラウド(Saas、ASPなど)
・導入までの期間が短い
・どこでも使える
・カスタマイズ性低い
提供形態で主流になっているのがクラウド型です。クラウド型はインターネット経由でシステムを提供しする形態で、2012年頃から急速に利用数が増えてきました。
数千円~数万円程度の月額制を採用しており、イニシャルコストを抑えられます。
また、クラウドベンダーが運用管理を一手に引き受けているので、導入までの期間が短く、バージョンアップやセキュリティ問題などへの対応も任せられます。
ネットがつながる環境であれば外出先でも利用可能な点も嬉しいポイント。カスタマイズの乏しさや、ネット環境下にいないと使用できないといったデメリットもありますが、手軽さから最も注目されている提供形態といえます。
いわゆる“Saas”や”ASP(Application Service Provider)”はこのクラウド型に当てはまります。
オンプレミス
・イニシャルコストが高い
オンプレミス型はサーバーを自社で構え、システムを構築する提供形態を指します。
自社サーバーを利用した提供なので、アプリケーションの開発などカスタマイズ性に優れています。特殊な業種、役職がある場合には、それに合った機能も追加できます。
ただ、サーバーの準備や導入時のカスタマイズなどイニシャルコストがそれなりにかかること、障害発生時などのトラブル対応やバックアップ、さらにはセキュリティ体制の構築といった管理が必要な点など多くのハードルがあります。
導入は、事業規模が大きい企業、資金的に余裕があり人的ソースのかけられる企業に限られているのが実情です。
パッケージソフト
・利用できる端末が限られる
パッケージソフト型は、メーカーが製造・販売しているソフトウェアを購入して、パソコンにインストールするという提供形態です。
汎用性を追及しているので、シンプルながらも使い勝手のよい機能を備えているのが特徴です。製品価格も比較的抑えられており、事業規模が小さくても導入しやすいというメリットがあります。
ただ、インストール済みのパソコンでしか利用できないので、複数でデータを共有することができません。
バージョンアップやそれによるセキュリティ対策も、自分たちで対応する必要がありますので、導入後の人的コストを見込んで決定する必要があります。
②対象としている従業員規模
- 小~中規模企業向け
- 大規模企業向け
大別するとこの2種類から選ぶことになると思われますが、そのシステムがどちら向けかは導入実績を見たり、営業担当に確認するといいでしょう。
それぞれには、
- 小~中規模企業向け→最低限の機能、低価格
- 大規模企業向け→高機能、高価格
という傾向があります。
しかし、システム利用の目的によって、中小規模の企業が大規模企業向けシステムを使ったり、その逆があったり、ということはよくあることです。
- 自社に必要な機能はそろっているか?
- 反対にいらない(なくてもいい)機能はないか?
という観点で選別しましょう。
③対応する評価の種類
評価制度は各社さまざまで独自の評価シートで運用している企業も多いのではないでしょうか。
たとえば、
- コンピテンシー評価
- 目標管理制度(MBO)
- 360度評価
とさまざまなものがあります。
そもそも自社の評価シートが再現できるかどうかはしっかり確認しましょう。

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④料金形態
料金形態は人事評価システムの提供形態によって大きく変わってきます。
オンプレミス型やパッケージ型は初期費用は高くなりますが、月額費用が安く抑えられる(もしくは無い)といった特徴があります。
一方、クラウド型は初期費用が安くなりますが、月額費用などのランニングコストがかかる点は覚えておきましょう。
⑤操作性、使いやすさ
使い勝手が悪いシステムは、結局使わなくなるといったことが往々にして起こります。
いくら高機能でも、使いにくいものは避けた方が良いでしょう。
そこで社員同士で意見を出し合い、導入につなげていくことが大切です。
⑥システム連携(データ入出力方法)
従業員の数が多ければ多いほど、全社員の情報を新規に導入した人事評価システムに手入力するという作業は、時間ばかりがかかってしまいます。
その場合、社内の他システムやデータベースからさまざまな情報を人事評価システムに取り込む必要があります。
⑦サポート
最後はサポート体制についてです。
いくら納得して人事評価システムを導入しても、運用をしている過程で疑問点、不明点は必ず出てくるもの。
また、システムの不具合がどうしても解明できないということもあります。
また、どこまでが無料で有料の場合は何をしてくれるのかという点も、チェックしておきたいポイントです。