【事例と対応策】人事評価で不服申し立てされるケースは?

人事評価への不服申し立ては、法令に違反した場合や制度の形骸化、成果主義への違反などが起きた際に発生します。ここでは人事評価に対する不服申し立ての事例や対応策について解説します。

1.人事評価に対する不服申し立てに注意

人事評価は基本、使用者の広範な裁量にゆだねられます。しかし「従業員は上司の評価を無条件に受け入れなければならない」というルールはありません。よって最悪の場合、不服申し立てから訴訟に発展する恐れもあるのです。

人事評価に対する不満や感情のもつれから民事訴訟を提議されると、会社は賠償金を支払うだけでなく社会的評判や企業イメージを大きく下げてしまいます。今後の経営にダメージを与えないためにも、人事評価に対する不服には真摯に向き合わなければなりません。

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2.人事評価に対して不服申し立てされる主要なケース

どのような人事評価に不服の申し立てが発生するのでしょう。ここでは人事評価への不服申し立てが発生する5つのケースについて具体的に説明します。いずれも共通して「評価基準が明確でない」「評価訓練が不十分」である点から不服申し立てが発生しています。

  1. 法令に違反している
  2. 成果主義に違反している
  3. 人事評価と賃金のバランスが悪い
  4. 目標管理が不適切である
  5. 制度が形骸化している

①法令に違反している

社内の人事評価制度内にて法令に抵触する内容があった場合、早急な見直しが必要です。特に多いのが、以下2つとなります。

  • 評価の対象に業務と無関係の事実が含まれている
  • 男女による評価差別がある

国籍や出自などで人事評価に差をつけるのは明確な差別行為です。また社員旅行や飲み会への参加率、休日の付き合いも業務外ですので、人事評価に反映させてはいけません。

さらに2のように性別を理由として評価や処遇に差をつけるのは、労働基準法第4条にて明確に禁じられています。

②成果主義に違反している

成果主義人事とは、従業員の成果や業績に応じて処遇を決定する人事評価制度のこと。これには公正かつ客観的な人事評価が欠かせません。よって成果主義人事への違反も、不服申し立てが発生する原因になるのです。

また一般的に人事評価の結果については、開示・説明の義務があります。開示がないと直ちに違法とみなされるわけではありません。しかし評価結果の開示が人事評価制度の公平さを判断するプラス材料として判断された事例もあります。

③人事評価と賃金のバランスが悪い

人事評価は従業員の処遇を決める目的で行われます。使用者の主観によって従業員の処遇が決まらないよう活用するのです。

したがって使用者の独断による昇給や降格、従業員の業績や能力に関係のない不当な評価は人事考課権の濫用とみなされ、違法と判断される場合もあります。

「人事評価に反して著しく賃金や待遇が下がる」「制度の趣旨や手続きに反する不適切な処遇がある」ときも、不服申し立ての原因となるので注意しましょう。

④目標管理が不適切である

従業員の能力から見て「明らかに到達が難しい目標」の設定がなされた場合、目標管理制度の不適切運用とみなされます。従業員に高い目標設定を課すのであれば、本人がそのために必要な能力を蓄積、実施できるための機会を保障しなければなりません。

これらを欠いたままの人事評価は公平性に欠けるため、不服申し立ての要因となる可能性があるのです。適切な目標管理が行われていれば、従業員は行動に移しやすく、評価者も的確に評価できます。

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⑤制度が形骸化している

「多面評価であるはずが、実際には1次評価者の判断のみで決定されている」「人事評価に応じたフィードバックが遵守されていない」など、人事評価制度の形骸化によって適切な運用ができていない場合も、不服申し立ての原因となります。

制度の形骸化で考えられる要因は「評価スケジュールが守られていない」「評価結果を被評価者に正しくフィードバックできていない」などです。

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3.人事評価に対する不服申し立ての事例

人事評価に対する不服申し立てとして過去、さまざまな裁判がありました。ここではそのなかでも特に有名な3つについて説明します。

  1. ダイエー事件
  2. コナミデジタルエンタテインメント事件

①ダイエー事件

上司が部下の私生活上の問題に介入し、職制上の優越的地位を利用して、人事上の不利益をほのめかしながら解決を強要した判例です。解決を拒んだ従業員に対し、上司は2カ月間8回にわたって左遷をほのめかして説得しました。

これが部下の私的問題に関する自己決定の自由を侵害する不法行為とみなされ、精神的苦痛の慰謝として30万円の支払いが命じられたのです。

上司が部下の私生活上の問題について一定の助言、説得を行うこと自体、直ちに違法になるものではありません。しかし会社における職制上の地位を利用した強要は説得の範囲を超えているため、損害賠償責任を負う恐れがあります。

②コナミデジタルエンタテインメント事件

産前産後および育児休業取得後の従業員に時短勤務での原職復帰を認めず、裁判に発展した判例です。時短勤務での原職復帰を希望した従業員に対し、会社は負荷の軽い業務に変更。それにともない原告は120万の減俸となったのです。

本件にて負荷の軽い業務に変更されたこと自体は、業務上の必要性にもとづいたものと判断されました。しかし育休取得年度の業績評価をまったくの0にしたことが人事権の濫用にあたるとみなされたのです。

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4.人事評価に対する不服申し立てがあったときの対応策

従業員から人事評価に対する不服申し立てがあった場合、会社はどのような対応をとればよいのでしょう。具体的な対応策は以下の3つです。

  1. 非がある場合は認める
  2. 個別労働紛争解決のあっせんを受ける
  3. 訴訟もしくは弁護士に相談する

①非がある場合は認める

人事評価に対する不服を申し立てた従業員および評価者から話を聞き、評価者に誤った判断があった場合、直ちに評価を見直さなければなりません。もちろん人事評価が公平に運用され、基準が法令に抵触していないことが前提です。

従業員の主張に正当性があるにもかかわらず、人事評価の誤りを認めないと、社内外からの会社に対する信頼を大きく下げてしまいます。人事評価の誤りを正せば、従業員の意見を正当に反映できる、風通しの良い職場環境だと評価される可能性が高まるでしょう。

②個別労働紛争解決のあっせんを受ける

人事評価に問題はないものの、従業員がどうしても評価内容に納得しない場合労働基準監督署の総合労働相談センターで「個別労働紛争解決のあっせん」を受けるとよいでしょう。

「個別労働紛争解決のあっせん」とは、労働者と使用者との間で労働条件に関するトラブルが発生した際、紛争当事者の間に公平中立の第三者として専門家が介入し、具体的なあっせん案を提示する制度のこと。

裁判よりも手続きがかんたんな本制度では、一切の費用がかかりません。さらに受託されたあっせん案は民法上の和解契約の効力を持ちます。

③訴訟もしくは弁護士に相談する

人事評価制度の改善、個別労働紛争解決のあっせんを受けても問題が解決しない場合、裁判になります。しかし多大な労力を費やすため早いうちから弁護士に相談するとよいでしょう。

適切な人事評価を行うためには、男女雇用機会均等法や労働基準法など労働関係の法令に対する正しい知識が必要です。あらかじめ弁護士に相談し、アドバイスにもとづいて対策を講じれば、不服申し立てのトラブルを避けられます。

また公正な人事評価による従業員のモチベーションアップや業績アップも期待できるのです。

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5.不服申し立てされない人事評価を行うポイント

不服申し立てされない人事評価を行うには、どうすればよいのでしょうか。ここではそのポイントを4つに絞って説明します。

  1. 評価基準を明確化し周知する
  2. 評価エラーに注意する
  3. フィードバックを充実させる
  4. 積極的にコミュニケーションを取る

①評価基準を明確化し周知する

まずは何を評価するのか、その対象を明確にしましょう。評価対象があいまいなままだと評価者と被評価者の間に認識のズレが生まれ、不服を抱く原因になるからです。評価対象として代表的なものは、以下3つになります。

  • 能力:職務遂行上必要とされるスキル
  • 業績:組織や目標達成への貢献度
  • 情意:仕事に対する態度や姿勢

このほか会社はどのような理念にもとづいて事業を行っているのか、その理念を達成するためにどのような評価基準があるのか、などの理解をうながすのも重要です。

②評価エラーに注意する

人事評価では、評価者の主観によって評価が変わる「人事評価エラー」が起きやすいと認識しておくのが重要です。人事評価エラーに関する知識をつけておけば、エラーを自覚して正しく人事評価ができます。よくある人事評価エラーは下記のとおりです。

  • ハロー効果
  • 寛大化傾向、厳格化傾向
  • 対比誤差
  • 中心化傾向

③フィードバックを充実させる

適切なフィードバックが十分に行われていても、不服申し立てが発生する可能性はあります。

たとえば従業員に評価結果だけを伝え、その評価に至った経緯を共有していなかったとしましょう。こうなると従業員はその評価に納得できません。本人にとっては不当な評価を受けたという印象のまま終了してしまうのです。

「どうすれば目標が達成できるか」「効率よく仕事するにはどうすればよいか」など、具体的なアドバイスを交えて気づきを与えるとよいでしょう。

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④積極的にコミュニケーションを取る

不服申し立てする人事評価の原因として挙げられるのが、相互のコミュニケーション不足。「上司が仕事内容を正しく理解せず不当に評価する」「実績を生み出しても正しく評価してくれない」といった不満は、コミュニケーション不足が原因の場合もあるからです。

コミュニケーションを積極的にとっていければ、互いの状況が把握できるだけでなく、成果以外の見えない部分を評価、フィードバックも可能になります。

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6.不服申し立てをされないための人事評価制度

不服申し立てをされないためには、従来の人事評価制度だけでなく新たな制度の導入の検討も必要です。

  1. 360度評価
  2. コンピテンシー評価
  3. 目標管理制度(MBO)

①360度評価

ひとりの従業員に対して関係する複数の従業員が評価を行う人事評価制度のこと。これまで人事評価といえば、上司が部下に対して一方的に行うのが主流でした。しかしこれには公平さに欠け、不服申し立てをされやすいといった課題があったのです。

360度評価では上司からの一方的な評価だけでなく、部下や同僚などさまざまな立場から多面的に評価します。これにより客観性の担保、公平かつ納得度の高い評価を可能とするのです。

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②コンピテンシー評価

仕事のできる人の行動特性(コンピテンシー)を基本に評価項目や評価基準を設定する評価制度のこと。

コンピテンシー評価では理想的な行動特性を具体的な評価項目として設定します。よって従業員は高い評価を得るための行動をイメージしやすいのです。

また評価者は主観が入りにくく、評価するポイントが明確にわかります。公平な評価によって、従業員からの不服申し立ての発生を防げる制度です。

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③目標管理制度(MBO:Management ByObjectives)

従業員一人ひとりに自らの個人目標を決めてもらい、その進捗や達成度に応じて人事評価を決めるマネジメントのこと。この制度は個人の目標を会社の経営目標や部門目標などと連動して立てるため、相互に納得感を得やすいです。

従業員が個人目標を達成すれば組織にとってもプラスとなります。従業員の不服申し立てを防ぐのはもちろん、自尊心も満たし、モチベーションアップにもつながるでしょう。

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