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製造業のKPIとは、工場の生産性・品質・コストなどを定量的に測定し、改善活動につなげるための重要業績評価指標のことです。国際基準のISO22400では生産性・品質・能力など6カテゴリのKPIが定義されており、製造現場の見える化に活用されています。
本記事では、製造業におけるKPIの意味や種類、KPIツリーの作り方、設定方法を解説します。
目次
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1.製造業におけるKPIの意味

製造業におけるKPIとは、生産量・不良率・稼働率など工場の業績を数値化し、改善のPDCAを回すための定量指標のことです。
製造現場の生産性を向上させるためにKPIを活用する企業が増えています。なぜなら製造現場の業務を「見える化」してKPIで管理すると、効率的な生産体制や安全性を確保した作業環境を実現できるからです。
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2.製造業におけるKPIの必要性とは?

製造業でKPIが必要な理由とは、現場の課題を「見える化」し、感覚ではなくデータに基づいた意思決定を行うためです。
製造現場では、業務改善のためにさまざまな技術やシステムを導入する場面が多くあります。
たとえば作業のムリ・ムダ・ムラをなくすための技法である「IE(インダストリアルエンジニアリング)」を実践している企業は多いですし、2000年代以降は、効率化を追求するためにネットワークカメラを活用して作業をコントロールする企業も増加しています。
これらを導入するだけでなくKPIで管理することで、現状分析や改善を継続的に行えるとともに組織全体の目標達成へとつなげることができるのです。

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3.製造業における国際基準のKPI「ISO22400」
ISO22400とは、製造業のKPIを生産性・品質・能力・環境・在庫・保全の6カテゴリに体系化した国際規格のことです。
ISO22400の6カテゴリと代表的なKPI
ISO22400に基づく6つのKPI指標
| カテゴリ | 代表的なKPI | 計算方法・定義 |
|---|---|---|
| 生産性 | 設備総合効率(OEE) | 時間稼働率×性能稼働率×良品率 |
| 品質 | 不良率 | 不良品数÷総生産数×100 |
| 能力 | 生産能力利用率 | 実際生産量÷最大生産能力×100 |
| 環境 | エネルギー原単位 | エネルギー消費量÷生産量 |
| 在庫 | 在庫回転率 | 売上原価÷平均在庫金額 |
| 保全 | 設備故障度 | 故障停止時間÷稼働時間×100 |
そのなかでISO22400は、MES(製造実行システム)領域でのKPIを定めています。ISO22400は、次の6つの分類から構成されています。
さらに6つの領域のなかに細かい指標が設定され、合計34項目のKPIが定義されています。
生産性
労働生産性、負荷度、生産量、負荷効率、利用効率、総合設備効率、正味設備効率、設備有効性、工程効率
品質
品質率、段取率、設備保全利用率、直行率、廃棄度合、工程利用率、手直率、減衰率
能力
機械能力指数、クリティカル機械能力指数、工程能力指数、クリティカル工程能力指数
環境
総合エネルギー消費量
在庫
在庫回転率、良品率、総合良品率、製品廃棄率、在庫輸送廃棄率、その他廃棄率
保全
設備負荷率、平均故障間隔、平均故障時間、平均復旧時間、改良保全率
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製造現場の見える化KPIとは、原価管理・現場評価・作業監視の3つの視点から現場の状態をリアルタイムに把握する指標のことです。
以下の3つの視点が必要です。
- 原価管理:企業の資源であるヒト・モノ・情報・カネを、部門や工程・品目ごとに管理する
- KPI評価:製造現場にKPIを導入して、目標達成度を測る
- 現場作業監視:作業状況をリアルタイムに捉える
各視点の概要を詳しく見ていきましょう。
①原価管理
自社の製造現場では、「材料費」「労務費」「製造経費」3つに分類される製造原価が発生し、それぞれをKPIで管理する必要があります
- 材料費:期中にかかる原料費や燃料費
- 労務費:製造に関わる人件費
- 製造経費:機械の減価償却費や家賃などの材料費・労務費以外の経費
この製造原価を把握するための資料が「製造原価報告書(CR)」です。このCRはもちろん、製造工程、設備、時間、製品などのコストも把握した上で、KPIを設定しましょう。
②製造現場KPI評価
製造現場のKPIは、「ヒト」「モノ(材料費)」「設備」を管理して生産性を高めるために必要な指標です。KPIを設定する際は、生産の三要素であるQCD(品質、コスト、納期)の観点から検討しましょう。
設定したKPIは、「生産品目・スケジュール(製造指図)」と「工程・製造系列・設備ユニット」に分けて進捗を把握します。
そして日々の実績を週・月単位で集計して達成度を測る、評価結果に基づいて目標達成に必要な施策を検討・実施する、といった手順でPDCAを回しましょう。
③製造作業監視
製造作業の監視を行う理由は、製造現場のムリ・ムダ・ムラの原因を見える化して、分析するため。監視にネットワークカメラを使うことでリアルタイムに作業状況を把握できるでしょう。
たとえば映像で不良品などの異常が発生した瞬間が分かれば、現場でタイムリーに情報共有できるだけでなく、異常発生の原因分析などにも役立ちます。
また、品質を一定に保つ(標準化する)意味でも、製造作業の監視は必要です。また4M(人、装置、方法、材料)を管理することで、QCDを高めることもできます。

5.製造業のKPIの種類

製造業のKPIの種類とは、生産品目単位・設備単位・作業環境の3つの切り口で分類される各種指標のことです。
製造業KPIの3つの分類と代表指標
- 生産品目単位のKPI: 良品率、スループットタイム、製造リードタイム、ロットサイズ効率など。品目ごとの生産パフォーマンスを測定する
- 設備・製造ユニット単位のKPI: 設備稼働率、MTBF(平均故障間隔)、MTTR(平均修理時間)、段取り替え時間など。設備の効率性と信頼性を測定する
- 作業環境のKPI: 労働災害度数率、ヒヤリハット報告件数、5S実施率など。安全性と作業環境の改善度を測定する
製造業で設定されるKPIには下記のようなものがあります。それぞれのKPIの概要と改善すべき課題を確認しましょう。
生産品目(モデル・アイテム)・製造指図単位のKPI
生産品目や製造指図ごとに原価率や不良率、工数、製造リードタイムなどをKPIに設定すると、改善すべき課題が明確になるのです。これは、予定していた「計画値」と実際のデータである「実績値」とを比較することで見えてきます。
具体例
生産品目・製造指図単位でKPIを管理する際、以下のようなものが課題として挙げられます。
- 原価構成要素に原価の差異がある
- 在庫滞留を含む製造リードタイムが長い
- 量、日程、工数達成率が製造指図を満たしていない
設備・製造ユニット単位での改善につながるKPI
生産品目単位ではなく、設備や製造ユニット単位での改善を図ることができるKPIもあります。たとえば生産量や時間稼働率(どれだけ設備を効率的に使用できているか)などをKPIに設定すると、課題を見える化できるでしょう。
具体例
設備や製造ユニット単位でKPIを管理する際、以下のようなものが課題として挙げられます。
- 生産量、製造指図数、工数達成率が低い
- 就業や人材投入による労働生産性が低い
- 設備稼働中の設備稼働効率が悪い
作業環境に関するKPI
製造業では、作業現場におけるKPI管理も大切です。たとえば事故発生件数を減らすためにルールを厳守させる、作業手順などのトレーニングを徹底させるなど、作業環境を改善することで生産性を向上できます。

6.製造業のKPIツリーとは? KPI例で解説

製造業のKPIツリーとは、KGI(最終目標)から生産効率や不良率などの構成要素を階層的に分解し、改善ポイントを特定する手法のことです。
製造業でKPI管理を導入する際は、生産品目や製造指図単位、工程や設備・製造ユニット単位のほか、作業現場で必要な指標を設定します。下記に挙げた具体的な指標例を参考に、自社の製造現場に必要なKPIを検討しましょう。
①生産効率を構成するKPIツリー
1つ目のKPI例は、生産効率を構成するKPIツリーです。

②不良率を構成するKPIツリー
2つ目のKPI例は、不良率を構成するKPIツリーです。
製造工程でどれだけ不良品が出たかを測るだけではなく、部品・作業・設備のどこで不良が発生するかを測ることが改善に役立つでしょう。


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7.製造業のKPI設定方法

製造業のKPI設定方法とは、SMARTの法則に基づいて具体的・測定可能・達成可能な指標を定めるプロセスのことです。
製造業のKPIは、自社の製造現場に合ったものを設定することが重要です。
以下の項目に該当するものを指標にしましょう。
- 改善の余地がある
- 改善目標を立てることができる
- 継続して実績を把握できる
- 目標と実績を比較することで改善策を検討できる
KPIの設定における注意点
製造業でKPI管理を始めるにあたり、以下のようなことに注意しましょう。
目的を見失わない
システムや仕組みにとらわれず、KPIで管理する目的は何かを常に振り返り改善することが大切です。KPIの形が整ってからITシステムを導入しても遅くはありません。
時系列を重視する
時系列で把握できないものは、「見える化」による評価・検証ができません。時系列で比較できるものをKPIに設定しましょう。
現場の関係者が運用する
KPIの目標と実績にギャップがある場合、原因は現場にあります。権限を与えられた現場の関係者が、継続的に原因分析を行い、改善策を見出すことが大切です。

KPI設定のコツ「SMARTの法則」
SMARTの法則による製造業KPI設定例
製造業KPI設定のSMART基準
| SMART要素 | 意味 | 製造業での設定例 |
|---|---|---|
| Specific(具体的) | 何を改善するか明確にする | 「生産性を上げる」→「A製品ラインのOEEを改善する」 |
| Measurable(測定可能) | 数値で測れるようにする | OEEを現在の65%から75%に引き上げる |
| Achievable(達成可能) | 現実的な目標にする | 過去の改善実績から10%向上は実現可能と判断 |
| Relevant(適切) | 経営目標と整合させる | OEE向上は工場全体の生産コスト削減に直結 |
| Time-bound(期限明確) | 達成期限を設定する | 2026年度第3四半期末まで |
SMARTの法則は次の頭文字をとって名付けられています。
- Specific:具体的
- Measurable:計測可能
- Achievable:達成可能
- Relevant:関連性がある
- Time-bound:期限が明確
SMARTの法則に則ってKPIを設定・計測すれば、より効果的に目標設定から達成までが叶うはずです。
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ここでは、製造業のKPI活用をよりイメージしやすくするために、架空の企業を例にKPI設定から改善までの流れをシミュレーションします。
企業概要
東和精密工業株式会社(従業員180名・自動車部品製造)
課題
主力製品の不良率が3.2%と業界平均(2.0%)を上回り、リワークコストが年間約2,400万円発生していた。しかし不良の原因が属人的な経験則でしか把握されておらず、体系的な改善ができていなかった。
施策
- Step1: KGIを「年間リワークコスト1,200万円以下(50%削減)」に設定
- Step2: KPIツリーを作成し、「不良率」「初回合格率」「設備故障停止時間」の3つをKPIに選定
- Step3: 不良率の目標を3.2%→1.5%に設定し、工程別の不良発生データを毎日集計する仕組みを導入
- Step4: 週次のKPIレビュー会議を実施し、不良率が高い工程の原因分析と対策をPDCAサイクルで回す
結果
6か月後に不良率は1.8%まで改善し、リワークコストを年間換算で約40%削減。設備故障停止時間も月平均12時間から5時間に短縮され、OEEが62%から74%に向上した。
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製造業でまず設定すべきKPIは何ですか?
まずはOEE(設備総合効率)の導入が推奨されます。OEEは時間稼働率・性能稼働率・良品率の3要素を掛け合わせた指標で、設備のパフォーマンスを総合的に把握できます。世界的な製造業の指標として広く採用されています。
製造業のKPIはどの部門が管理すべきですか?
現場のKPI(稼働率・不良率など)は製造部門が日次で管理し、コストや納期に関するKPIは生産管理部門が管理するのが一般的です。経営層向けには月次で工場全体のKPIをダッシュボード化し、改善施策の意思決定に活用します。
OEE(設備総合効率)の目安はどのくらいですか?
一般的にOEE 85%以上が「ワールドクラス」とされています。日本の製造業の平均は60〜70%程度で、時間稼働率90%以上・性能稼働率95%以上・良品率99%以上を個別目標として設定するケースが多く見られます。
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