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社内外と連携して共創づくりをリードするのが、人事のあるべき姿。 共感力からマインドセットに取り組む、SE出身の人事リーダー

株式会社ポーラ
 | 人事戦略部ワーキングイノベーションチーム リーダー

松場 裕子さん

Interview

2019.08.09

「Science. Art. Love.」を企業理念に、スキンケア・メークブランドやエステサービスなど、“美”を支える事業を幅広く展開している株式会社ポーラ。女性が多く活躍する同社は、人事課題や働き方改革に対し、どのように向き合っているのだろうか。

PROFILE

松場 裕子

株式会社ポーラ

新卒でSEとしてIT企業に就職。2006年に株式会社ポーラに転職し、各種システムの開発運用を中心にPMなども経験。2018年に人事戦略部へ異動し、現在に至る。

IT活用で、いかに価値を変えられるか。
ユーザーに近づきたくて転職

 本日のインタビューは、ちょっと今までと雰囲気が違いますね。女性が多いこともあってか、社屋に入った途端キラキラした雰囲気で……。

「普段いると気付かないのですが(笑)。それより、私は人事のエキスパートというわけでもないので、参考になるようなお話ができるかどうか心配です」

 これまでの取材でも“人事一筋”という方はほとんどいらっしゃらないのです。むしろ、現場を知っているからこそのお話などをぜひお伺いさせていください。松場さんが人事に携わるようになったのはいつ頃からですか?

「実は人事に携わるようになったのは2018年からなんです。新卒でSE(システムエンジニア)として働きはじめ、13年前にポーラへ転職したときから異動するまでずっとシステム担当だったこともあり、人事関連についてはまだまだ勉強中です」

 現在2社目で、これまではずっとシステム畑を歩んでいらしたということですが、転職を考えられた理由は……?

「SE時代はITを通じていかに新しい価値を作り出していくかを念頭に仕事をしていました。でも外部からシステムを委託開発しているだけでは、納品したらそこで終わってしまう。社内SEとして働くほうが常にユーザーと向き合えて、ITから様々な価値を提供し続けるという理想に近づけると考えたのです」

 なるほど。実際に社内SEとして働き始めて、いかがでしたか?

「肌診断の”APEX”と”いうシステムを開発するなど、非常に充実していました。
全国に45,000名のビューティ―ディレクターが、約4,200の店舗でサービスを展開していますが、10代から90代まで幅広い人がシステムを利用します。世の中はデジタル化が進んでいても、個々のITリテラシーは様々なので、どんな人でも使いやすいシステムを開発し、また使い方や有用性をどう伝えるかには苦心しました。

弊社のビューティーディレクターの中には、90歳以上の方が約300人いらっしゃるほど。それは海外メディアに取り上げられるなど社会から評価を頂いており、弊社が地域に与える大きな価値となっています。これだけ多様なユーザーがいるシステム開発に携われたのは、事業会社にいるSEだったからこそ、と思います

プロジェクトマネジメントの経験が
人事改革にも生かされる

 人事への異動というのはご自身で希望されたんですか?

「いえ、突然の辞令だったので驚きました(笑)」

 ずっとシステムに携わっていたということは、いわゆるデジタル化・IT化に長けていて、そんな部分を人事業務に活かしてほしいという思惑もあったのでは……?

「それもあるかもしれませんが、急務となっていたのは計画を遂行するための要件をまとめること、いわばPM的な業務だったと思います。人事部にも“想い”がある人はたくさんいて、こうしたらもっと良くなるよね、あんなことをしたらいいのではなど、アイデア自体はたくさん出ていたんです。でも、いざそれを実現しようとすると何から始めたらいいかわからないし、スケジュールも粗い。逆に私はシステム畑だったので、一度ゴールを設定したらスケジュール/タスク/人員など、あらゆる計画を立てて遂行するのは得意でしたから」

 確かに、システムは納期というゴールに向けて業務を完遂しなければいけませんものね。

「そうですね。それに加え、異動の前年に情報システム部でちょっとした働き方改革を成功させたことが『それを全社に広げてくれ』と評価されたのかもしれません」

 その改革への思いはなぜ生まれたのですか?

「情報システム部にはどこか閉塞感があったんです。でもITの見地からは経営層の考えも社内の動きも俯瞰して見ることもでき、マインドセットによってはすごく楽しい仕事なのにもったいない。社内から『システムで働きたい!』という声が上がるくらいにするには、自分たちで何かを変えていかなくてはいけないよね、と考えオフィスの環境を変えることから意識改革に取り組みました」

 そんな成功体験が異動後に役立ったということでしょうか?

「はじめはとにかく、計画だけで止まっていた仕事を進めることにしました。ちょうど4年前から、働き方改革と並行してインナーブランディングとして“Sense&Innovation”を掲げ、新しい価値を生み出すという全社活動を行っていました。その取り組みの中で経営提案された企画の中に『自分たちの未来に向けた仕事を創っていきたい』という意見があり、人事で形にすることになりました。

まず、ありたい姿 (=ビジョン)への共感を醸成。そして、今の業務を止めるものは止め、続けるものは磨いて、ありたい姿につなげるように変えていく。かつ、ありたい姿につながる新しい業務を作っていくというワークショップを作り、社内に展開しているところです」

“使いたい”と思う気持ちを醸成できる
社内環境整備

 ちなみに、経営サイドが考えていた課題はどのようなものだったでしょうか?

「2020年に向けて”「驚きと感動」を生む「究極のおもてなし」で、世界ブランドへ”というビジョンを立てています。そのビジョンを見据えたときに必要なのが、組織単位の仕事ではなく市場視点に立つこと。さらに、現状課題の積み重ねで仕事するのではなく、ありたい姿から仕事を考える体制に変えることが課題となっています。

もう一つは、伝統的に縦割り組織の部分が大きいので、市場価値を高めるためにも縦横斜め自由に連携することを強化していかなければならない点ですね」

 それらの課題に対し、実践されていることはありますか?

「会社のビジョンと組織のビジョンのほかに、『ここはつながっていないといけないよね』と思われる複数の業務領域にまたがる横断ビジョンというのを作りました」

 様々な取り組みに対する社内の反応や、「ここが変わったぞ」という実感はありますか?

「大きく変わったことの一つに、環境改革があります。もともと弊社はIT化が遅れていた方でしたが、昨年、全社員のノートPCを手軽に持ち運べるSIM入り軽量タイプに変え、社外でもデータ閲覧や承認など、あらゆる社内システムを制約なしに利用できるようにしました。合わせて、予約なしで使えるフリースペースを社内に設け、自由に働ける環境を整えたんです。ファシリティを変えたことで、違う部署に行って気軽に相談や打ち合わせをする、リモートワークができるなど、コミュニケーションが大きく変わったと思います」

 それはすごいですね。

「とは言え、まだ社内もワークフローは基本的に紙で、宣伝部だと稟議決定書を年間1000件くらい起こしていたんですね。このシステム化を考えているタイミングで宣伝部の取組みの中で『電子化して業務を変えたい』という声が上がり、システムの電子化と業務フローの改善という二軸で働き方を変える検討が始まりました。これは社内の他部門と人事が横断的に動くことで実現した事例の一つだと思います」

 働き方の可能性が広がったのは良いことですね。

「業務特性によってITの使い方は変わると思いますが、ITという武器をまずは使いたい、使ったらいいかもという気持ちを醸成していくことで推進につながるのかなと考えています」

人事が本気でやりたいと願い、
現場の意見を巻き込むことでハラオチさせる

 お話を伺っていると、松場さんは社内の方を巻き込む力が強いですよね。

「人事のトップは、『人事にこそマーケティングが必要であり独りよがりの人事ではいけない、あらゆる部署・拠点、社外と連携して、ニーズがある人事にならなければいけない』とよく言います。だからなのか、様々な部署に話を聞きに行くのは当たり前という意識はありますね」

 新たな人事的取り組みに対し、社員からの抵抗というのはないんですか?

「ものによりますね(笑)。稟議決定書の電子化などは各組織と人事が目指すものがそれぞれwin-winだったのでスムーズでした。やはり人を動かすには、何のためにやっているのかというのをハラオチさせるのが大事だと思います。まずは人事が本気でやりたいと思うことが前提とは思いますが……」

 ツールやITの導入にあたり、システム担当としての経験が生かされているのではないでしょうか?

「ツールはツールでしかないので、それをどう使うかが大事というのは当たり前と考えていますね。それは過去に、システムを入れても使われないという経験をしたからかもしれません。入れるだけなら自己満足ですから」

 これからやってみたい取り組みなどはありますか?

「この会社で働きたい、働いてよかったという人であふれる組織を作っていきたいんです。
まずは柔軟に働くためのツールや最適化環境は導入が進んできているので、次はそれを活用するためのマインド醸成を進めたいですね。弊社の社風だと、来年のオリンピック時期もみんな真面目に出社してしまうと思うのですが(笑)、せっかくツールがあるんだから自由に働き方を選べばいいのではないかと。

2つ目は、ありたい姿に向かう仕事をする組織を増やすこと。そして最後に、ダイバーシティ。すでに社内には多様な人がいるので、全ての人が活躍し、内発的動機で働けるような環境・意識・制度を推し進めていきたいです。そうでないと変化の激しい現代において、戦えない組織になってしまうので。知と知が組み合わせられるような出会いやつながり、そして一人ひとりの幅を広げられるという二軸で取り組めることがダイバーシティだと考えています。

私は人事一筋ではないですし、転職も経験していますが、だからこそ、立つ位置が変わると会社の切り口や見え方、管理の仕方もまるで変わると実感しています。視野、視座が変わるという意味では、経営においてジョブローテーションは意味のあることなのでしょうね」

 最後に、これからの人事に求められる要素はなんだと思いますか?

「なんといっても共感力ですね。人事だけでできることは何もなく、コミュニケーションにより共感してもらい、相互理解をすることで初めて実現するのが人事の仕事。ですから、私自身も傾聴力を磨き、相手を否定しないことを心がけています」

人事なら読むべし! オススメの1冊

直感と論理をつなぐ思考法
VISION DRIVEN
著:佐宗邦威
刊:ダイヤモンド社

最近刊行された話題の一冊ですが、頭に余白をつくり、自分のやりたいことを出し、それに向かって進むためのヒントが詰まっています。イメージ脳が弱い私にも、アイディア磨くことできるかも!と、前向きになれる一冊です

会社概要

社名 株式会社ポーラ
設立 1946年
事業内容 スキンケア・メーク商品・健康食品・ビューティケア用品の開発、エステサービス、宿泊施設などに向けたアメニティ商品のBtoB事業など
従業員数 1,621名
会社HP
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松場 裕子

株式会社ポーラ

新卒でSEとしてIT企業に就職。2006年に株式会社ポーラに転職し、各種システムの開発運用を中心にPMなども経験。2018年に人事戦略部へ異動し、現在に至る。

ABOUT

“kaonavi HR Innovators”は、人事/HR領域で活躍するHR領域で活躍するキーパーソンが「人事の未来」を語るWEBメディアです。人々の働き方や人材の価値が急速な変化を迎えている今、人事のキーパーソンとして真摯に課題と向き合う方々に「人事/HRの在り方」、「テクノロジーの活用」などを語っていただくことで、人事担当者が抱える課題を解決に導くヒントをお届けします。