人材育成とは? 新入社員の早期戦力化や次世代リーダー育成の方法、具体例、企業成功事例など

海外へのアウトソーシングなどによって競争が激化する日本企業。この時代を生き残るためには、自らサービスや商品を生み出す、主体性のある優秀な人材を育成することが重要です。

社内のあらゆる部署における人材を育成するにあたり、担当者は全体を見通して情報収集に努め、課題設定を行う必要があります。グローバルビジネスの環境下において、日本企業も「人材育成」の重要性を見直し始めているのです。

ここでは、

  • 優れた人材の育成に役立つ3つの施策
  • 新入社員の育成を成功に導く4つのポイント
  • 中堅社員を次世代のリーダーに育てる3つの方法

をご紹介します。

1.人材育成とは?

人材育成とは社員を「会社の経営戦略の実現に貢献できる人材」として育成すること。主体性を持ち、自立した大人としての「ヒューマンスキルの向上」を主軸に置くものです。

単に「仕事ができる社員を育成する」という目的から学習や訓練を行うものとは大きく異なります。

会社の将来的な姿を見据え、その時々において必要となる人材が持つべき能力を発揮できるよう「自社の目標」とリンクさせる必要があります。これによって「組織の業績向上」と「社員の働きがい向上」による好循環を目指すのです。

教育や訓練との違い

人材育成はただ単に教育や訓練といった限られたものだけでなく、自立性、主体性を持った人としての一般的な能力のレベルアップを重視しながら、企業の業績向上と社員の個人的能力の発揮の統合を目指すものです。

長期的視野に立って企業に貢献できる人材を育成することを指し、この意識は日本企業の特徴の一つでもあります。

人材育成と人材開発の違い

  • 人材育成:長期的な視野に立ち、個人の成長を促進するため、必要なことを習得できる環境を与え、整えること
  • 人材開発:組織の課題解決に向けて個人の考え方、知識、技能などを訓練すること

人材育成と人材開発とは両輪です。そしてそのための環境が与えられることで新たな課題が生まれ、その課題克服のために訓練が実施され、成長していきます。

能力開発と人材育成の違い

能力開発とは、個人や組織などの効果向上を目的として実施される取り組みのこと。企業や官公庁で実施されるもので、具体例に企業内訓練があります。職業における教育訓練はOJT(On-the-Jjob Training)やOff-JT(Off-the-Job Training)とは区別して考えられます。

人材育成とは、長期的な視野に立って企業に貢献できる人材を育成すること。人材育成は「自社の目標」とリンクさせる必要があります

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2.人的資源=組織における最大の経営資源

経営資源とは、人材・設備・資金など企業の経営に使える内部資源です。

現代経営学あるいはマネジメントの発明者であるピーター・ドラッカーは人的資源を「最も生産的、変化しやすい、大きな潜在能力」と位置付けており、「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つの経営資源で人的資源が最も基本的かつ重要なものとされています。

「ヒト」である人的資源によって、「モノ・カネ・情報」が操作されます。つまり企業活動は「ヒト」から始まり、「ヒト」がすべての鍵を握っているのです。

経営資源とは、人材・設備・資金など企業の経営に使える内部資源で、その中でも人的資源が最も基本的かつ重要なものとなります

3.経営目標と人材育成の関係

人材育成は経営戦略を具現化するためのツールですから、企業で人材育成をする際、経営理念や企業ビジョンに基づいた経営計画を基本に策定する必要があります。

そのためにまず、中長期計画の実現に必要となる技術、スキル、個性などを明確にし、その上で、社員のスキル・経験・各種能力などの現状を確認して、新たなニーズに合うような育成計画を策定していくのです。

人材育成は「将来の組織づくり」。たとえば5年後、新規事業を伸ばすために若年層の経営幹部を多数輩出したいと考えている場合は、20代から経営者としての意識や思考、マネジメントなどを教育し、現在の仕事にて少しずつ実践してもらいます。

人材育成は経営戦略を具現化するためのツールであり、企業における人材育成は、経営理念や企業ビジョンに基づいた経営計画を基本に策定する必要があります

4.企業が従業員を育成する目的

IT化とネットワーク化が進む現代において、人は機械に仕事を奪われる立場となりつつあります。また、激化するグローバル化と海外へのアウトソーシングによってビジネス環境も目まぐるしく変化しているのです。

日本においても、自社の業績に貢献する人材を生み出さなければ生き残れない時代に突入しています。そのような中、人材育成の目的は、効果的かつ効率的に企業の経営資源である「人材」を活用して競争力を向上させ、企業の利益を最大化することです。

企業の競争力に直結する知的生産性と組織パフォーマンスの向上を成し遂げることができなければ、人材を育成する意味はありません。

現代の日本では、人材育成は経営戦略の柱として、人事部だけでなく企業全体として取り組むべき最重要課題となっているのです。

退職の予防

昨今、大企業に新卒入社しても「3年以内に退職」する人材が増加傾向にあります。採用に莫大なコストをかけて、優秀な人材を獲得できたにもかかわらず、収益を上げる前に退職してしまえば、企業としての損失は大きいでしょう。

しかし、優れた人材が辞めるには明確な理由があります。決断の大きなきっかけとなるのは「社内における自身の成長に見切りをつける」こと。これを防止するためにも、人材育成に力を入れて、社員の成長につながる研修などの場を提供すべきでしょう。

短期的ではなく長期的な視野から見ると、いずれはその社員が企業の戦力となり、大きな売上や利益をもたらす可能性も高くなります。人材育成によって、企業は高いコストパフォーマンスを得ることもできるでしょう。

社員の能力向上を通じた生産性の向上

現在、あらゆる業界において人手不足が深刻化しており、2030年には、約1千万人の労働力が不足するといわれています。そのような現状において、企業の成長を促すには、人材のスキルアップなどを通じて、生産性向上を図るのが最も現実に即した施策です。

1万人の企業で5%生産性が向上すれば、500人分の人手不足に適応します。社員の生産性は企業の生産性に直結するもの。たとえば社員一人の営業力が上がれば、販売促進につながり、ひいては企業業績の向上となるのです。

社員の自己実現やキャリア開発

社員の立場となって、一人ひとりの自己実現やキャリア開発のチャンスと捉えられるプログラムであることが重要なポイントとなります。個々人の成長に合った学習機会が必要となるでしょう。

グローバル化や海外へのアウトソーシングなどビジネス環境が目まぐるしく変化する中、社員一人ひとりがスピーディかつ柔軟性をもって対応できる実践力を身に付け、継続的にその実力を発揮していくのは容易ではありません。

それを実現するためには、各自が高いモチベーションを維持することが必要不可欠になのです。

ビジネス環境が変化する中、日本の企業においても人材育成は経営戦略の柱として、人事部だけでなく、企業全体として取り組むべき最重要課題となっています

5.人材育成が目指す理想の人材とは?

人材育成が目指す理想の人物像とは、「自ら新しいビジネスを創造していける人材」。変化が速い時代では、社員が元来持つ資質を活かし、新しいものを生み出すことを一人ひとりが意識かつ実現するのが理想的といえます。

厳しい国際競争や企業間競争で勝ち残るため、社員に求められるスキルや知識は大きく変化しています。従来のようにマニュアルや上からの命令に従って行動するのではなく、自発的かつ自律的な行動が取れる社員を育成する方向へとシフトしているのです。

さらに、雇用形態の多様化や若い世代における就労観、モチベーションの源泉が変わってきたことなどもあり、より効果的な社員教育の在り方が求められています。

人材育成に必要となる要件を洗い出す

経営目標との連携を図り、社員育成の方向を決定し、要件を洗い出します。日清食品ホールディングスでは、「グローバル経営人材を増やす」という目標に対して、現時点でどのような人材がいるかを可視化するために「カオナビ」を活用しています。

変化が速い時代において人材育成が目指す理想の人物像とは、「自ら新しいビジネスを創造していける人材」です

6.人材育成の進め方(概要)

まずは、人材育成のニーズ・課題を整理し、担当者からヒアリングするなどして現場の課題をすくい上げます。

組織全体の課題が明確になったら、経営者の経営方針など将来的に自社のありたい姿を把握しましょう。このように人材育成に必要となる要件が洗い出されたら、研修ニーズを捉えた大きな枠組みの設定に入ります。

その上で、研修対象となる社員や、テーマ別の研修内容、実施方法を検討。このようなプロセスを踏むことで、研修で習得する知識と職場で得られる経験などが相乗効果を発揮する体系的な仕組みが構築できます。

こうして体系化された社員一人ひとりの成長に合わせて学習、体験できる枠組みが、効果的な人材育成へとつながるのです。

組織全体の現状を把握する

人材育成担当者がまずやるべきことは、さまざまな仕事を誰が、どのように担っているかを把握すること。具体的には、各部署・各年次・各階層が何人いて、どのような職務を行っているのか、さらには生産性の高低を把握するのです。

社内の中間層・現場の若手にヒアリングして、今すぐに解決すべき課題を把握します。また、その課題が教育で解消できるかどうかも検討しなければなりません。現場の個々人が「自らの状況」を正確に把握できていないことも問題となります。

特に管理職ともなると、他者からのアドバイスを受ける機会は少ないでしょう。そのような点においても現状把握を曖昧にさせず、明確にしていきます。

組織のありたい姿を描く

人材育成担当者が、現在および将来の人員構成を把握することも重要です。3年後、5年後にどのような構成になっているかを想定し、「3年後までには管理職スキルを持つ人材をあと20名育成する必要がある」などと把握します。

また、経営者に話を聞くことも重要です。経営者は社内の中間層や現場の若手とは異なったスキル・意識を人材に求めていることも多く、人材育成担当者はそのニーズに対応しなければなりません。

経営者は企業の成長維持を見据えて、環境の変化に即応できる先見性やリーダーシップなどの教育が必要だと考えています。

人材育成では、組織全体の現状を把握し、組織のありたい姿を描くことが重要です。このようなプロセスを踏むことで、体系的な仕組みが構築できます

7.スキルマップとは? 教育体系を構築する方法

スキルマップとは、年次・役職にふさわしいスキル・知識はどのようなものかを洗い出して、時系列に一覧表にしたもので、社員の業務遂行能力一覧表です。スキルマップによって人材育成を体系的に、効率よく実施できます。

スキルマップの個々の項目を評価項目として扱うようにしている企業が国内外で増加傾向にあるのです。スキルマップを導入している企業が多い業界・業種としては、製造業、技術系のIT業界や建築業界などが挙げられます。

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スキルマップの作成方法

スキルマップは、職場の上司が作成する場合が多く、上司が部下のスキルを把握し、評価・作成しますが、自分自身でスキルレベルを判断して作成するケースもあります。しかしスキルマップは客観的視点を要するため、適宜上司が訂正という方法を取ることも。

スキルマップとは、「年次、役職」にふさわしいスキルや知識がどのようなものかを洗い出して、時系列に一覧表にしたものです

8.人材育成における教育研修の意義

人材育成における教育研修の意義とは何でしょうか。

人材育成担当者は組織の現状を把握し、組織のありたい姿を描きます。そして必要なプロセスを踏み、求めるスキルが明確になったら費用対効果などを考慮し、集合研修・OJT・自己啓発などからどのような手段でスキルを身に付けさせるのかを決定するのです。

集合研修やOJTなどの育成手段には、それぞれに得意とする分野があり、メリットも多々ありますが、コストや現場への負担など、デメリットもさまざまです。

社員が各スキルを身に付けるにあたって、どの育成手段を選択するのが一番効果的なのか、また最もコストを抑えられるものは何かを考え、選択します。

3種類の教育研修方法

では、人材育成における教育研修にはどのような種類があるのか見ていきましょう。教育研修方法には、下記の3種類があります。

  1. OJT:On the Job Training(職場内研修)
  2. OFF-JT:Off the Job Training(職場外研修)
  3. 自己啓発

これら3種類の方法を通した知識と経験、理論と実践の場を効果的に提供できるプログラムの策定が人事育成担当者に求められるのです。

①OJT(職場内研修)

OJTとは、実際に職場で業務を実施しながら、上司や先輩がマンツーマンで行う教育訓練のこと。

仕事に必要で実践的な内容を、上司から部下に直接教えられるため、社員の成長を促進する根幹となります。しかし、教育する側のスキル不足や誤った考え方があると、期待通りの育成には結び付きにくいです。

特に、近年求められている社員の主体性や自律性を促進するような教育となると、個々の知識や経験、性格に応じた教え方、気付かせ方、支援の仕方が必要となります。

人事担当者は、各状況に対応したOJTにおける教育方法や考え方について、管理職・リーダーに対する研修などを行い、十分に支援していく必要があるのです。

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②OFF-JT(職場外研修/集合研修)

OFF-JTとは、日常の業務と切り離して複数の社員を集め、集中的に実施する教育研修方法(集合研修)のこと。

集合研修は、その受講対象と時期によって、

  • 階層別に実施
  • 職能別に実施

経営幹部候補として選抜された社員に実施

などに分かれります。

さらに、職種、階層などにかかわらず行う、

  • ビジネススキル研修(語学、ロジカルシンキング、プレゼンテーション、IT関連など)
  • テーマ別研修(モチベーション、リーダーシップ、グローバル人材育成など)
  • それぞれのキャリアプランに応じた「キャリア自律研修」

といったように、OFF-JTで行う研修も多様化しています。

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③自己啓発

自己啓発とは、社員個人が学習する内容を決めて、自発的に受ける教育研修方法のこと。職務上、必要と判断されるケース、個人のキャリア構築のための資格取得を目的として受講するケースなどがあります。

社員が自発的に判断することがベースですが、実際には選択しやすいよう、企業がいくつかのバリエーションを設けて、中長期的な視野で個人のキャリア支援のためのプログラムを用意するケースが多いようです。

自己啓発のメリットは、主体的にスキルアップを目指す人のニーズに合う、時間や場所の拘束がなく、自由時間を活用して実施できるなどがあり、デメリットには、活用する上で強制力がない場合、受ける人と受けない人のばらつきが出やすい点などがあります。

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人材育成における教育研修方法には、OJT(職場内研修)、OFF-JT(職場外研修)、自己啓発の3つの種類があります

9.人材育成手法の具体例

上記以外にも人材育成にはさまざまな手法があります。具体的に見ていきましょう。

外部講師による集合研修

外部講師による集合研修によって、世の中のスタンダードとしての知識やスキルを習得できます。それぞれの分野のエキスパートならではのノウハウが習得できるでしょう。

内部講師による集合研修

内部講師による集合研修によって、業務に固有の専門スキルを習得できます。多くの対象者に対して一度に、実務を踏まえたノウハウを教育できます。

外部講師による公開講座

外部講師による公開講座によって、世の中のスタンダードとしての知識やスキルを習得できます。ただし、講師派遣型研修より1人当たりの受講コストが高くなりやすいです。

部内研修や課内研修

部内研修や課内研修は、少人数で実施しやすく、主体的な活動として着手しやすいもの。これらは、教える側の管理者やリーダーなどにとっても、スキルアップの機会となります。

eラーニング

eラーニングは時間や場所などの拘束がなく、自由時間を活用して実施できます。また、受講後に知識確認テストなども併せて行える場合も。

人材育成方法の具体例には、外部講師や内部講師による集合研修、外部講師による公開講座、部内研修や課内研修、eラーニングなどがあります

10.人材育成につながる施策

人材育成は、自社の利益を上げ、今後さらなる成長を目指すために欠かせません。しかし、より優秀な人材を育成するためには、効果的かつ効率的な施策を打つ必要があるのです。ここからは、人材の育成に役立つ下記の3つの施策を紹介します。

  1. 目標管理制度
  2. タレントマネジメント
  3. 人事評価制度の導入

①目標管理制度

目標管理制度とは、個別またはグループごとに目標を設定し、それを達成した度合いによって評価を決める制度のこと。1954年に「マネジメントの父」と呼ばれる経営学者ピーター・ドラッカーが提唱した組織マネジメントの概念のひとつです。

アイデアや企画を産出する発案力などは優秀な人材に求められる要素。上司からの指示を待ち、与えられた仕事をこなすだけでは会社の牽引力となる人材にはなり得ません。

目標管理制度の導入により、各人が目標を設定し、それに向かって行動するようになり、社会人としての責任感が養われるようになるのです。さらに目標を達成して評価されればモチベーションアップにもつながり、自発的に次のステップに進めるでしょう。

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②タレントマネジメント

人の才能(タレント)は多種多様ですので、人事担当者は個々人の才能を見極め、適材適所に配置することが求められます。

そこでポイントとなるのが目標達成のために必要なタレントを見出し、育成や評価などのプロセスを経て個人の潜在能力などを引き出すタレントマネジメント。

採用時にその人の能力を見定め、能力に応じた部署に配置するというのが理想的ではありますが、現実としてなかなか成功しません。

そのため経歴、資格などをもとにある程度範囲を絞り、その後研修での評価や配属先での仕事ぶりなどを考慮して、段階的に調整することとなります。

人は自分の得意分野においては存分に本領を発揮するもの。それが正当に評価されればさらにステップアップしていくことでしょう。

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③人事評価制度

人事評価制度とは、社員のスキルや職務の遂行、会社への貢献度を評価し、昇進や昇給などの待遇に反映させる制度のこと。

従来は、一定の勤続年数に達するだけで昇進・昇給が保証されていました。しかし昨今は実力社会であり、個人の能力や実績を反映しない昇進・昇給制度は若手人材のモチベーション低下に直結します。

また、向上心などが生まれず、優れた人材が育成されない可能性もあるでしょう。一方、人事評価制度は年功序列に関係なく、社員一人ひとりのスキルや実績に比重を置くため、年齢や勤続年数といった要素で不利になることはありません。

実績を上げれば昇進・昇給できる環境が整備されることで、社員のモチベーションもアップし、社内全体も活気づくでしょう。

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優れた人材の育成に役立つ施策として、目標管理制度、タレントマネジメント、人事評価制度の3つがあります

11.新卒から入社3年目までの若年層の育成方法

独立行政法人労働政策研究・研修機構「人材マネジメントのあり方に関する調査」(2014年) によると、新卒から入社3年目までの若年層の育成方法として活用されているものとして、

  • 定期的な面談(個別評価・考課)
  • 計画的・系統的なOJT
  • 企業が費用を負担する社外教育

などが挙げられます。

若年層および管理職層にも該当しない中堅層と比べると、「指導役や教育係の配置」や「企業内で行う一律型のOff-JT」「計画的・系統的なOJT」(入社ガイダンスや安全衛生研修など基本的には全員を対象に行うもの)の実施割合が高くなっているのです。

若年層を育てる際の課題

同調査によると、若年層の人材育成上の課題には、

  • 業務が多忙で、育成の時間的余裕がない
  • 上長等の育成能力や指導意識が不足している
  • 人材育成が計画的・体系的に行われていない
  • 人材育成を受ける社員側の意欲が低い

などが多く挙げられており、これらは同じく中堅層などにも多い課題といえます。また、中堅層等と比較すると若年層では「離職等で人材育成投資が回収できない」点を課題とする企業が多いです。

若年層の育成方法として最も活用されているのは、「定期的な面談(個別評価・考課)」。また若年層の人材育成の課題としては、「業務が多忙で、育成の時間的余裕がない」などが挙げられます

12.新入社員の育成を成功させる4つのポイント

新入社員をできる限り早く戦力に加え、企業の利益を上げるには、採用の段階から早々に育成を開始することが大切です。初期段階で人材の見極めや判断を誤るとミスマッチが起こり、開花するはずの才能やスキルが伸び悩む可能性も出てきます。

また、新入社員の育成をうまく行わなかった場合、離職リスクも高くなります。そのためにも、人事担当者は初動をおろそかにしないよう気を付けることが肝要です。ここでは新入社員の育成を成功させるための4つのポイントを紹介します。

  1. 採用段階でリーダーシップを見極める
  2. 内定者の入社後ギャップを解消する
  3. 入社後研修では、厳しさと丁寧なフォローのバランスを取る
  4. 時短社員を育成担当にする

①採用段階でリーダーシップを見極める

新入社員は最初のうちは上司や先輩にならい、仕事を一から覚える「部下」の立場にあります。しかし、その新入社員も1年経つと「先輩」になり、将来的には会社の「リーダー」になるでしょう。

そのため、採用時にリーダーシップを兼ね備えた人物であるかどうかを判断するのが大切です。リーダーシップは、持って生まれた才能やこれまでの経験で培ってきたスキルのひとつなので、採用の段階で見極められます。

その方法の代表例として挙げられるのが「インシデント・プロセス法」。これは、マサチューセッツ工科大学のピコーズ教授夫妻が考案した事例研究法の一種です。

実際に起こった出来事(インシデント)を事例とし、その出来事の背景にある事実を収集しながら問題解決のための方法を模索します。

インシデント・プロセス法を人材採用に取り入れた手法

インシデント・プロセス法を人材採用に取り入れた手法が「インシデント・プロセス面接」で、以下の流れで進みます。

  • 人事担当者が被面接者に対して事例を提示
  • 被面接者が質問によって事例の背景の情報を収集
  • 得られた情報をもとに被面接者が問題点を洗い出す
  • 解決策を提示する

インシデント・プロセス面接で判明するのは、被面接者の情報収集能力や洞察力、仮説思考力や課題解決能力などのスキルで、そのいずれもリーダーシップ候補には欠かせません。

インシデント・プロセス面接は高度なアプローチが必要となるため、経験の浅い新入社員には負担が大きいかもしれません。しかし最善の回答でなくても、問題点に着目する能力などを見極める判断材料として有効活用できるでしょう。

見せかけのリーダーシップに惑わされない

「リーダー」というと、率先して集団を牽引していく人材というイメージがあります。ですが本来リーダーとは、周囲の意見を尊重し、必要に応じて自らの考えを変えていけるような柔軟な人材のことを指すのです。

周囲を自分の手足と考え、自らの考えを変えようとせず、強引な方法で引っ張っていこうとする人は本物のリーダーではありません。

面接で自分の理想ばかりを前面に押し出し、集団を牽引していく存在になりたいと豪語しているような人物には、本来の意味でのリーダーシップは備わっていないと考えるべきでしょう。

人事担当者は、見せかけのリーダーシップに惑わされず、本質的な意味でのリーダーシップを持つ人材を見極める必要があります。

②内定者の入社後ギャップを解消する

入社後ギャップとは、内定者が入社前に思い描いていた会社のイメージと入社後の現実との間に差を感じること。多くの企業の中から選び抜いた会社に面接を申し込むのですから、内定者は少なからずその会社にメリットや魅力を感じています。

ところが実際に入社してみると業務内容や待遇、労働環境などがイメージしていたものと全く異なるというケースもあるでしょう。

「思っていたより良かった」場合は問題ありませんが、逆にマイナス面が大きく、「こんなはずじゃなかった」と失望してしまうと、最悪の場合、入社早々に退職してしまいます。

人事担当者は入社後のネガティブギャップを最小化するためにも、適切なフォローを行う必要があるのです。

フォローとして有効な内定者研修の実施

採用前は、企業側も新入社員の育成や指導をしっかりと行うことを強調しますが、実際の現場では多忙でなかなか指導に当たることができず、その際新入社員は、疎外感など不満を抱えてしまいます。

これらを回避するためのフォローとして有効なのが内定者研修です。同じ内定者同士を集める内定者研修を実施して、グループワークやeラーニングで基本的なビジネスマナーやスキルを習得できます。

基礎的な知識やスキルを習得していれば、入社後もスムーズに業務に取りかかることができます。また研修を通じて内定者同士の良好な関係が構築できれば、モチベーションもアップし、新しい環境でチャレンジする意欲も高まるでしょう。

③入社後研修では、厳しさと丁寧なフォローのバランスを取る

入社後研修とは、現場で即戦力として働くためのスキルや知識を習得することを目的としています。新入社員といえどもすでに会社の一員であり戦力であるので、現場でもある程度の逆境に耐えられるよう、多少厳しい姿勢で指導にあたる必要があるかもしれません。

ただし、スパルタ式で教え込もうとするとモチベーションの低下につながってしまったり、反感を抱いたりする可能性が高いです。

また、自立させようと必要以上に干渉しなければ、適切なスキルや知識が養われず、現場に出ても活躍できなくなってしまいます。

新入社員に社会人としての厳しさを教えつつ適切かつ丁寧なフォローを行うことで、体力面と精神面を同時に鍛えることができるでしょう。

④時短社員を育成担当にする

一般的に新入社員の育成担当は入社2年目の先輩社員が行います。ただ、入社2年目はちょうど仕事を覚えてきた時期で、自らの業務で余裕がないことも。中には、キャパシティを超えて、本人の仕事が滞ったりストレスを抱えてしまったりするケースもあるでしょう。

それらを鑑み、お勧めなのが時短社員を育成担当にすること。時短社員は時間の制約があるため育成には適さないと思われがちですが、短時間労働だからこそ仕事の見極めができ、新入社員にも適切に割り振りや教育を実施できます。

先輩社員がマンツーマンで教えていても、新入社員のスキルが十分に養われず、自立することはできません。そこで時短社員が育成を担当すると効果的でしょう。

新入社員をできる限り早く戦力とするためには、早い段階から育成を開始することが重要です。4つのポイントを押さえることで、育成は成功するでしょう

13.中堅社員(入社3年目以上)の育成方法

独立行政法人労働政策研究・研修機構「人材マネジメントのあり方に関する調査」(2014年) によると、中堅層の人に活用されている人材育成方法として、

  • 定期的な面談(個別評価・考課)
  • 企業が費用を負担する社外教育
  • 目標管理制度による動機づけ

などが多く挙げられます。

また、キャリア形成を目的とした人事異動については、

  • 他企業との人事交流(出向等)
  • 転勤(事業所間の配転)

は中堅層で多くなっていることが分かります。

また、計画化・系統化されていないOJTが多くなっている点も特徴的です。若年層に比べ、キャリア形成を目的とした多様な人事異動や計画化・系統化されていないOJTなどを通じて人材育成を図っていることが分かります。

中堅層を育てる際の課題

同調査によると、中堅層の人材育成上の課題は若年層と同じく、

  • 業務が多忙で、育成の時間的余裕がない
  • 上長等の育成能力や指導意識が不足している
  • 人材育成が計画的・体系的に行われていない
  • 人材育成を受ける社員側の意欲が低い

が比較的多く挙げられています。しかし、これらを課題と回答した企業の割合は若年層より高くなっていることから、若年層より中堅層の人材育成に課題を抱える企業が多いと分かります。

中堅層の人材育成方法は、若年層に比べ、計画化・系統化されていないOJTなどを通じて行われています。若年層より中堅層の人材育成に課題を抱える企業が多くなっています

14.中堅社員を次世代リーダーに育てる方法

ある程度の実績があり、勤続年数を積み重ねた中堅社員は、近い将来会社を背負って立つリーダーになる存在といえます。ただ次世代リーダーになるにはそれ相応の素養が必要不可欠です。

リーダーとしての十分な知識や経験をプロセスに沿って身に付けてもらう必要があるでしょう。次世代リーダーとして学ぶべき具体例としては、マネジメントや経営知識などが挙げられます。

メンバーのまとめ役であるリーダーになるのは容易なことではありません。長い目で見て、じっくりと時間をかけて育成しましょう。中堅社員を次世代リーダーに育て上げるために下記の3つの方法を紹介します。

  1. 部下を持たせる
  2. 幅広い業務知識を蓄えさせる
  3. 責任のある役職に就かせる

①部下を持たせる

リーダーには、下記のようなスキルが必要です。

  • 目標達成のために周囲の人たちの意見や声に耳を傾ける
  • それらをうまくまとめ上げる
  • 目の前の問題を解決に導くための分析力や提案力

そのため、誰にでも務まるわけではありません。もちろんリーダーとして選ばれる人間には優れたリーダーシップが備わっているでしょう。しかし実際に現場でリーダーとして一線で活躍するには、マネジメント力をさらに強化する必要があります。

そのためには経営学などを学習するのも方法ですが、実際に部下を持ち経験値を上げるほうが効率的といえます。他人を指導・管理し、目標達成に導くためにはどうすればいいかを実際に体験することで、マネジメント能力にも一層磨きがかかるでしょう。

②幅広い業務知識を蓄えさせる

一般的には営業なら営業、総務なら総務の仕事だけに注力すれば、自らの仕事を滞りなくこなすことができるでしょう。

しかしリーダーともなると自分の仕事や目先の仕事だけでなく、社内全体の動向に着目してどのようにすればより自社が成長していけるかまで考えなくてはなりません。そのためには幅広い業務知識や広い視野で物事を俯瞰する能力を習得させる必要があるのです。

ときには畑違いの部署の仕事を見学させたりセミナーへの参加を勧めたりするなど、よりワイドな知識に触れさせる機会を設けましょう。また、戦略的人事異動であるジョブローテーションによって多様な職種を経験させることも方法のひとつといえるでしょう。

③責任のある役職に就かせる

リーダーともなれば、責任重大な難易度の高い仕事に携わる機会が増えていきます。仕事の難しさももちろんですが、逆境に置かれた際にプレッシャーに負けてしまうようなメンタルだとリーダー役を務めることはできません。

そこで、責任あるポストに就かせるのです。肩書きが変われば身も引き締まり、モチベーションも上がります。またプロセスを踏んで仕事の難易度を上げていき、その仕事がこなせるようになればリーダーとして成長するとともに達成感も得られるでしょう。

これらによって、将来的にリーダーとして大きな決断を迫られる場面でも、冷静な判断を下せる優れた人材に育ちます。これを最終目標としてじっくりと時間をかけて、リーダーを育成していくのです。

中堅社員を次世代のリーダーに育てるには、「部下を持たせる」「幅広い業務知識を蓄えさせる」「責任のある役職に就かせる」という方法があります

15.管理職層の育成における課題

独立行政法人労働政策研究・研修機構「人材マネジメントのあり方に関する調査」(2014年) によると、管理職層の育成における課題として、

  • 世代等により管理職候補者の能力・資質にムラがある(質的確保が困難な世代がある):52.9%

が最も多い結果となりました。

これは、計画的に管理職候補を育成することの難しさがうかがえる結果といえるでしょう。

次いで、

  • 管理職になりたがらない者や、転勤の敬遠等で管理職要件を満たせない者が増えている:(31.0%)
  • 事業展開の不確実性の高まりに伴い、管理職の計画的・系統的育成が困難になっている:27.8%
  • ライン管理職になれなかった人材の有効活用やモチベーション維持が難しい:26.9%

となっています。

マネージャーの育成が注目されている理由

厚生労働省が発表した 「能力開発基本調査」(2013年度)によると、「マネジメント(管理・監督能力を高める内容など)48.2%とOff-JTとして実施したものにマネジメントが含まれていました。

ここから、マネージャーの育成が必要と考える企業が多いことが見て取れます。

また独立行政法人労働政策研究・研修機構「人材マネジメントのあり方に関する調査」(2014年)によると、企業による管理職の育成・登用方針として、「内部育成・昇進を重視」(67.6%)が「経験人材の外部調達を重視」(7.4%)を大きく上回っています。

管理職層の育成における課題は、世代等により管理職候補者の能力や資質にムラがある点。これにより、計画的な管理職候補の育成が困難になっています

16.人材育成の成功事例

最後に人材育成の成功事例を紹介しましょう。

資生堂

資生堂は化粧品事業を中心に、国内外に幅広く展開している企業です。資生堂は2014年12月からすべての領域にわたる変革を実施してきました。この変革を実現できるかどうかは、社員の「心に火を点けられるか」だと考えています。

まずは、トップ層の人材育成改革から着手しており、「リーダーシップアカデミー」というグローバル共通の教育体系を構築。成長したいと思う人には、チャンスを増やしています。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、圧倒的なシェア率を誇る国内トップの自動車メーカーです。あるときから、トヨタの伝統的な「教え/教えられる風土」をバックグラウンドとした教育システムがうまく機能しなくなっていました。

そして管理職の人数が減少し、管理職が自然に育つ育成システムは消滅。そこで、「OJTの再強化」と「教え/教えられる風土」への回帰を試みました。それにより、人間力の向上を図っているのです。

丸井織物

丸井織物は、石川県にある合成繊維やスポーツウェア素材を製造している企業です。同社は採用活動と社員育成に注力しています。そしてさまざまな取り組みによって内定辞退者の数や若手社員の離職率を大きく低下させるなどの成果を挙げているのです。

たとえば、20代を中心とする中堅社員研修や管理職昇格を控える社員を対象にしたリーダー研修など、多様なプログラムを用意しています。

それぞれの企業風土に合った人材育成のシステムを構築し、着手している企業では、離職率の低下など一定の成果が上がっています