メンター制度とは?【失敗例・成功事例】具体例に何をする?

メンター制度とは、年齢の近い先輩社員が新入社員や若手社員をサポートする制度です。精神面のサポートをメインとすることから、社員の心理的安全性を高める効果に期待できます。

今回はメンター制度について、導入のメリット・デメリットや失敗性・成功事例、導入手順や運用のポイントなどを詳しくご紹介します。

1.メンター制度とは?

メンター制度とは、年の近い先輩社員が新入社員や若手社員をサポート・育成する制度のこと。業務に関する支援だけでなく、人間関係やキャリアなど、幅広くサポートする点が特徴。不安や悩みを聞いてアドバイスするなど、精神的なサポートも含まれます。

メンターとの年齢が近いため後輩社員も相談しやすく、心理的安全性も高まります。

メンターとは?

メンターとは、「良き指導者」「助言者」を意味します。メンターは他部署、かつ年齢の近い人が望ましいでしょう。なぜなら、他部署の人なら同じ部署の人には言いにくい身の回りの相談がしやすく、他部署とのつながりを作るきっかけにもなるからです。

メンターは、仕事を与えたり業務の指示・指導を行ったりするわけではなく、上司とは違った立場からのサポート役となります。

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メンティーとは?

メンティーは、メンターの指導や助言を受ける人であり、主に新入社員や若手社員がメンティとなります。メンティーにとってメンターは直属の上司と異なり、年齢や経歴が近く、気軽に相談できる存在です。

まだ組織に入って浅いメンティーは、メンターがいることで社内とのつながりを感じられ、安心感が得られます。

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2.メンター制度の目的

メンター制度の主な目的は、新入社員の育成や離職防止です。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)」によると、新規大卒就職者の就職後3年以内の離職率は32.3% と、およそ10人に3人が離職している状況にあります。

組織にまだ馴染めていない若手は、業務や人間関係などさまざまな不安・悩みに対するアラートを出しにくい立場。

年齢が近く、気軽に相談できるメンターの存在は、心理的安全性が高めてくれるだけでなく、若手の孤立化を防ぎ、組織に馴染む架け橋として役割を発揮してくれるでしょう。

また、女性の活躍推進を目的にメンター制度を導入する企業も増えています。ロールモデルとなる先輩女性社員をメンターとすることで就業継続の意欲を高め、女性管理職候補の昇格への不安を払拭する効果が期待されているのです。

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3.メンター制度とエルダー制度、OJTとの違い

メンター制度と混同されやすい制度に、エルダー制度とOJTがあります。メンター制度を正しく理解するためにも、それぞれの違いを押さましょう。

エルダー制度との違い

エルダー制度とは、先輩社員を「エルダー」とし、新入社員や若手社員を育成する制度です。エルダー制度は、仕事面のサポートに重点を置いている点にメンター制度との違いがあります。

メンターは業務や人間関係の悩み、キャリア形成のサポートに重点を置くため、エルダー制度のように実務面でのサポートの比重は大きくありません。

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OJT(On The Job Training)とは、先輩社員が後輩社員に対して実務を通じて業務に必要な知識・スキル指導する制度です。

新入社員に対する研修で活用され、実務への実践的な知識・スキル・経験が身につけられます。メンター制度は精神的なサポートの役割が大きいですが、OJTは実有領域に特化している点に違いがあります。

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4.メンター制度のメリット

メンター制度を導入すると、下記のようなメリットが期待できます。

新入社員・若手社員の定着率向上

新入社員や若手社員はまだ組織に馴染めていない人も多く、精神的な不安を抱えやすい立場です。気軽に相談できる人がいないと悩みを抱えたままになってしまい、モチベーションやエンゲージメントがどんどん低下して離職に発展する恐れもあるでしょう。

メンターの存在は新入社員・若手社員の心理的安全性を高め、定着率の向上につながります。

社内コミュニケーションの活性化

メンターとなる先輩社員は、他部署の人です。メンター制度を通じて部署を超えた人間関係が構築され、新入社員・若手社員が組織とのつながりをもつきっかけを与えてくれます。

結果、社内コミュニケーションが活性化し、組織の風通しが良くなる効果も期待できるのです。メンター制度をきっかけに些細なことも相談でき、組織への居心地の良さが生まれれば、定着率の向上にも寄与します。

先輩社員の指導力向上

人材育成ではメンターのような役割も必要といえます。悩みや不安を聞き入れ、適切にアドバイスしてサポートを提供することは、管理職にも求められる能力です。

メンター制度を通じてメンターとなる社員自身も成長でき、将来の管理職候補の発掘・育成にもつながります。

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5.メンター制度のデメリット

一方で、メンター制度には以下のようなデメリットもあります。導入の際は、デメリットを解消できるよう工夫が必要です。

先輩社員の負担増加

メンターは自分の業務をこなしつつ、その一方で後輩社員をサポートします。業務負荷がかかってしまうため、メンターが精神的なストレスを抱えてしまわないよう、業務量を調整するなどして会社側がメンターをサポートする体制を整えることが必要です。

効果のバラつき

メンターを担当する社員の指導能力によって、効果にバラつきが生じます。一律でメンター制度の効果を発揮するためにも、適性のある社員をメンターに選出する、事前に研修を実施するなどして、メンターの育成にも力を入れることがポイントです。

離職率が高まるリスク

メンターとメンティーの相性にも注意が必要です。相性がよくないと双方にとって精神的ストレスになってしまい、かえって離職率が高まってしまうリスクも。メンターとメンティーの組み合わせを決定する際、双方の性格や特徴を考慮することがポイントです。

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6.メンター制度の失敗例

メンター制度は、表面的な施策になってしまうと逆効果です。ここでは、企業が陥りやすい失敗例をみていきます。

適当なメンターの選出

「年齢が近いから」「趣味が似ているから」などといった表面的な理由だったり、直属の上司がメンターを兼任したりと、適当な選出はメンター制度の本来の効果を発揮できません。また、年次的にメンターを任せるといった機械的な選出も控えましょう。

メンターの質によって、メンティーへの効果やメンター制度運用の成功が左右されます。メンターは誰でもよいわけでなく、適性やスキルを見極めて選出することが大切です。

根拠のないマッチング

なんとなくのマッチングやくじ引きで決めるなど、根拠のないマッチングは失敗する可能性を高めます。メンター制度を成功させるには、双方の信頼関係が重要。即席でマッチングするのではなく、双方の性格や特徴を考慮してマッチングすることがポイントです。

とはいえ、考慮してマッチングしても相性が合わないケースもあるのでその場合はメンターを変更するといった柔軟に対応しましょう。

不明瞭な目的

メンター制度は、組織の課題や目的に合わせて設計すべき制度です。目的が明確でないとメンター制度の方向性が曖昧になり、失敗する可能性もあります。

メンターとメンティーが何をすべきかを理解したうえでメンター制度を運用できるよう、目的を共有しましょう。それにより、納得感を持って取り組んでもらえます。

定期的な検証・改善の放棄

メンター制度の運用体制・ルールを構築し、その後検証・改善を放棄するのも失敗につながります。

運用開始後は、定期的な検証と改善により、メンター制度の質をアップデートしていくことが大切です。人事部門を中心にメンター制度の効果検証を行い、明らかになった課題への対策を検討しましょう。

そのためにも運用状況を把握できる仕組みを構築し、適切な改善を図りながら運用していきます。

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7.メンター制度導入企業の成功事例

企業によって、メンター制度の内容や工夫点はさまざまです。ここでは、メンター制度の成功事例を2社ご紹介します。

キリン株式会社

キリン株式会社では、女性活躍推進を目的にメンティーが次のメンターになる「メンタリングチェイン」を実施。現場の課題に応じたボトムアップ型の人材育成プログラムを企画し、メンター制度を中心として女性社員の意識改革を推進しています。

女性総合職の継続就業と女性経営職のキャリア支援を目的にスタートさせ、役員とのメンタリングを経験した女性経営職が次のメンターになる仕組みを構築。

その結果女性社員の離職率低下や女性がいなかったポストへの女性の登用、女性社員活躍支援を重要視する意識の向上につながりました。

参考 メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル厚生労働省

株式会社メルカリ

株式会社メルカリでは2020年4月より、直属以外の経営陣と話せる環境を構築して社員の視野を広げることを目的に、経営陣をメンターに配置するメンター制度「Exec Mentoring Program」を開始。

育成型組織を目指すため、経営陣とHRBP(HR Business Partner)が企画したプログラムです。

実施頻度や内容、やり方はすべてメンバーの希望を重視して決定。人材育成を主眼としたメンター制度の成功事例であり、「Exec Mentoring Program」を開始してから業務や意思決定のスピード感の向上につながりました。

参考 “斜め上の経営陣”がメンター、やり方はメンバーが決める──メルカリ新メンタリング施策の手応えmarcan

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8.メンター制度運用のポイント

メンター制度を成功させるためには、正しい手順で制度を構築・運用することが大切です。ここでは、メンター制度運用のポイントを解説します。

メンターの役割を明確にする

メンターの役割が不明瞭ですとメンターが何をすればいいかが明確にならないだけでなく、目的も達成されません。メンター制度導入の目的とあわせて、企業側はメンターに何を期待するのか、責任や負担の範囲はどこまでかを明確に整理して伝えましょう。

経営層・人事が連携して主導する

メンター制度を成功させるうえでは、社内全体の協力体制が不可欠です。人事は経営層と連携し、経営層によるトップダウンの発信にとってメンター制度に意欲的に取り組む姿勢を醸成しましょう。

また、メンター制度は現場に負担がかかる施策であるため、管理職層の理解と納得を得る必要があります。そのためにも経営層からメンター制度の重要性や会社の利益にどう繋がるかをわかりやすく伝えることが大切です。

メンターのフォローに注力する

メンターとの面談による進捗確認やメンターの業務量の確認など、メンターをサポートする体制を整えましょう。真面目な人ほど悩みを抱え込んでしまう傾向にあるため、企業側やメンターの上司にあたる社員は、注意深く様子を確認していきましょう。

またメンター同士が情報交換できる機会、メンター同士がノウハウや悩みを共有できる場を設けることも効果的です。

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9.メンター制度の導入手順

メンター制度の導入手順をステップ別に解説します。

  1. メンター制度を導入する目的の明確化・周知
  2. 運用体制・ルールの構築
  3. メンターの選出・メンティとのマッチング
  4. メンターの育成
  5. 運用開始
  6. 振り返りと改善

①メンター制度を導入する目的の明確化・周知

若手社員の離職率低下や社内コミュニケーションの活性化、女性の活躍推進など、まずはメンター制度を導入する目的を明確にしましょう。

企業の実態を調査し、メンター制度で解決可能な課題を明確にすることがポイント。メンター制度の導入が決定したら、従業員に周知して社内全体で協力体制を構築しましょう。

②運用体制・ルールの構築

メンター制度を導入するにあたって、社内の協力体制も欠かせません。メンター制度は全社的に実施していくべき施策であり、人事部門や経営層、メンターやメンティの所属部署・上司からの理解と協力が必要です。

メンターは業務として並行してメンティをサポートするため、社内全体の協力がないと運用も難しくなります。事前研修の実施やマニュアルの整備、メンターのサポート体制構築など、運用体制やルールを構築することが大切です。

③メンターの選出・メンティとのマッチング

運用体制が整えば、メンターを選出します。選出する社員はメンター研修を受けた、メンターの役割を十分に理解できている人が望ましいです。

選出方法は指名や自薦、他薦があり、社員の適性を見極めて管理職候補として育成したい社員を選出するのも良いでしょう。

メンターが選出できれば、メンティーとマッチングします。双方の性格や特徴を考慮し、相性のミスマッチを防ぐことが重要です。

④メンターの育成

実際の運用の前にメンターの育成を行います。育成方法は事前研修を実施がメインとなり、メンター制度の意義や目的、ルールや実施するうえでの心構えなどを伝えます。

「メンター・メンティー・キックオフ研修」として、研修をメンティーとの顔合わせの場とするのもよいでしょう。メンターの育成は運用開始後も継続的に行います。それにより、実践中にインプット・アウトプットができ、効率的な育成が可能となるのです。

⑤運用開始

メンターの準備が整ったら、実運用を開始します。ポイントは、メンターとメンティの相性を定期的にモニタリングし、運用に問題がないかを確認すること。相性がよくないといった問題が見られるときは、メンターを変更して柔軟に対応しましょう。

メンターに負荷がかかっていないか、メンティに適切なサポートができているかを周囲が確認することもポイントです。

⑥振り返りと改善

メンターの実施期間が終了したら、双方にアンケートやヒアリングを実施して振り返ります。良かった点や改善点を振り返り、次のメンター制度の改善に生かしましょう。

また、離職率を測定するといった、設定した目的に対する成果を客観的に見ることも大切です。メンター制度で効果が出なかった場合、運用のどこに問題があったか、メンター制度では解決できない課題だったかを分析して次のアクションへとつなげていきましょう。