キャリア開発とは? メリット、具体的な手法、企業事例を解説

現代のビジネス環境では、終身雇用や年功序列といった従来の雇用形態が崩れつつあり、企業と従業員の双方に新たなキャリア戦略が求められています。

また、デジタル技術の急速な進化に伴い、適応力のある人材育成がますます重要となっています。そこで注目されているのが「キャリア開発」です。

この記事では、キャリア開発の基本概念やその重要性、そして具体的な取り組み方について詳しく解説します。企業がキャリア開発を進めるメリットや、導入の際に活用できる助成金、キャリア開発の企業事例や、役立つツールについても紹介するのでぜひ参考にしてみてください。

1.キャリア開発とは?

キャリア開発とは、従業員が理想的なキャリアを築けるように、自分のキャリアを中長期的に計画し、必要なスキルや知識を身につけるための取り組みです。

キャリア開発を成功させるためには、従業員自身が積極的に努力することが大切であるものの、企業がサポートできることもたくさんあります。たとえば、「キャリアデザイン研修の実施」や「社内での配置転換」などです。

キャリア開発は、従業員が職場での成長や満足度を高めるだけでなく、企業にとっても優秀な人材の確保や育成に役立ちます。

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2.キャリア開発が重要な理由

近年、キャリア開発が注目されているのはなぜでしょうか?日本社会の変化とともに、キャリア開発の必要性が増している理由を詳しく説明します。

終身雇用や年功序列制度の崩壊

日本の伝統的な雇用制度である終身雇用や年功序列は崩壊しつつあります。昔は、同じ会社で働き続けて昇進し、定年まで勤めるのが一般的でした。しかし、グローバル化によって企業間の競争が激化し、多くの企業が倒産や従業員の解雇のリスクに直面しています。

このような背景から、これまで企業が保証していたキャリアパスが不確実になり、今では自分のキャリアを自ら主体的に考えて築く必要が高まっているのです。

急進するデジタルシフトに対応するため

AIや自動化技術などのテクノロジーの進化により、従来のビジネスモデルや産業構造が大きく変わってきました。以前は人が行っていた仕事が機械に代替され、仕事の場所や形態も多様化しています。

デジタルシフトは業務の効率化や新しいビジネスモデルの創出を可能にするものの、それに伴い従業員には新たなスキルや知識の習得が求められます。キャリア開発は、こうした変化に対応するためのスキルアップを支援し、企業と従業員の競争力を高めるために重要です。

従業員の適性に合ったキャリア構築をサポートするため

経営環境が急速に変わる中で、従業員に求められるスキルが多岐にわたるようになってきました。そのため、企業は全員を同じ方法で育成するのではなく、個々の適性や能力に合わせたスキル開発のサポートが必要です。

キャリア開発を通じて、従業員のスキルを高め、適切な役割に配置することで、組織全体の成果を向上させられます。

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3.キャリア開発とキャリア形成、キャリアデザインとの違い

キャリア開発に似た言葉に、「キャリア形成」や「キャリアデザイン」などがあります。ここでは、これらの用語の違いについて紹介します。

キャリア開発とキャリア形成の違い

キャリア形成は、個人が自身のキャリアパスを計画し、理想的なキャリアを実現するための計画を立てることです。

一方、キャリア開発は、企業や組織が従業員のスキルや能力を向上させるための支援を行うプロセスを指します。そのため、企業が主導で行うことが多く、企業内でプログラムやサポートを提供します。

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キャリア開発とキャリアデザインの違い

キャリアデザインとは、仕事に関するスキルや役職だけでなく、結婚や生活のバランスなど、人生全体の計画を立てることです。つまり、キャリアデザインは自分が望む将来像を描き、それを実現するための計画を作るプロセスです。

一方、キャリア開発は、企業が提供するサポートやプログラムを通じて、必要なスキルや経験を身につけることに焦点を当てています。要するに、キャリアデザインは個人の将来のビジョンに基づいて計画を立てること、キャリア開発はその計画を実現するためのサポートを受けることを意味します。

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4.キャリア開発を行うメリット

キャリア開発は、企業や従業員が直面する問題を解決するための取り組みです。ここでは、企業と従業員の両方の視点から、キャリア開発がもたらすメリットについて説明します。

企業側のメリット

ここでは、企業がキャリア開発に取り組み、従業員一人ひとりを支援することで得られる効果やメリットを見ていきましょう。

従業員のエンゲージメント向上

終身雇用や年功序列制度が薄れ、転職が一般的になる中で、従業員は自分のキャリアやスキルアップに対して積極的に取り組むようになっています。キャリア開発を進めることで、従業員がより仕事に対して積極的になり、企業への忠誠心も向上します。

キャリア開発では、従業員一人ひとりの能力や興味に応じた業務やプログラムを提供し、成長を実感させることが重要です。これにより、仕事に対する意欲や責任感が高まり、結果として企業の目標達成に貢献し、組織全体の競争力を強化することが期待されます。

自律した従業員の育成による組織の活性化

変化が激しいビジネス環境に対応するために、企業は「自分から行動し、主体的に仕事に取り組む人材」を求めているでしょう。キャリア開発は、従業員が自分のキャリアやスキルについて主体的に考え、行動する機会を提供します。

自分の成長に責任を持つメンバーが増えると、チーム内での協力や情報共有が進み、組織全体の活性化が期待できます。

優秀人材の獲得と定着率の向上

キャリア開発に力を入れている企業は、社内外に良い印象を与え、優秀な人材を引きつけやすくなります。特に若い求職者は自分の成長を重視するため、キャリア開発の機会が豊富な企業に魅力を感じやすいです。

また、従業員が自分の成長を実感できる環境を提供することで、離職率が下がり、長期間働き続けてもらえる可能性が高まります。

これにより、企業は安定した人材を確保でき、採用コストの削減や業務の継続性も保たれます。さらに、優秀な人材が長く働くことで、企業文化が強化され、組織全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。

従業員のメリット

キャリア開発を進めることで、従業員にはどのようなメリットがあるのでしょうか。次に、従業員側のメリットについて詳しく見ていきましょう。

スキルの向上

キャリア開発は、従業員が新たなスキルや知識を効率的に習得する機会を提供します。企業が提供する研修や教育プログラムを通じて、従業員は自分の専門性を高め、市場価値を向上させることが可能です。

具体的には、業務に必要な技術や知識だけでなく、リーダーシップやコミュニケーション能力といったソフトスキルも磨けます。こうした取り組みを通じて、従業員はキャリアアップに必要な能力を身につけ、将来のキャリアパスを広げることが可能です。

明確なキャリアデザインの形成

キャリア開発は、従業員が将来のキャリアを具体的に描くことで、不安を軽減する手助けとなります。企業がキャリアプランやキャリアパスを提供することで、従業員は自分の目標を明確にし、それに向けた行動計画を立てられるようになります。

まず、キャリア開発の第一歩として、従業員は自分が目指すキャリアを明確にすることが重要です。次に、その目標を達成するための具体的なキャリアパスを設定します。目標とその達成方法が明確になると、将来への不安が軽減され、自信を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。

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5.キャリア開発の手法とやり方

キャリア開発にはいくつかの方法があります。ここでは、キャリア開発の代表的な手法として、7つのアプローチを紹介します。

  1. キャリア面談
  2. キャリアパスの提示
  3. キャリア研修
  4. 人事異動・配置制度の整備
  5. 自己啓発支援
  6. 副業や兼業の推進
  7. リスキリング支援

キャリア面談

キャリア面談は、上司または人事担当者と従業員とがキャリアについて個別に話し合う場です。外部のキャリアコンサルタントに依頼する場合もあるでしょう。この面談は定期的に実施し、従業員が自分の強みや弱みを理解し、キャリアの方向性を具体化する機会となります。

上司は従業員の悩みや不安を理解し、適切なフィードバックやサポートを通じて従業員の成長を促します。具体的には、従業員が直面している業務上の課題や将来のキャリアビジョンについて話し合い、必要なスキルや経験を明確にすることが目的です。キャリア面談で得た情報は、人事異動や配置転換を検討する際に活用するのが有効です。

キャリアパスの提示

従業員が望むキャリアを確認したら、そのキャリアを実現するための具体的なステップを示します。従業員は自分のキャリアについて、これまでのキャリアや所属部署の延長線上で考えがちです。

そのため、自社にはどんなキャリアプランがあるのか、目指すキャリアを実現するためにどんな経験やスキルが必要なのか、といった具体的なキャリアパスを示すことが効果的です。

企業が提供するキャリアパスを示すことで、従業員は自分が考えていない他の可能性に気づくこともでき、自分のキャリアについて前向きに考えられるようになります。

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キャリア研修

従業員が自分のキャリアについて深く考える機会を提供するプログラムです。研修内容には、自己分析やキャリア目標の設定、行動計画の策定などが含まれます。具体的な目標設定や達成に向けたプランニングを通じて、従業員が将来のキャリアビジョンを描くサポートを行います。

キャリア研修は、職種や職位、入社年次、テーマなど、参加者の特徴に合わせて設計することが大切です。従業員同士のネットワーキングの場にもなり、他の人の経験や視点を学ぶ機会にもなります。

また、部下のキャリア開発を支援する役割を持つ管理職には、キャリア開発をサポートするための研修を行うこともおすすめします。

人事異動・配置制度の整備

同じ部署で長く働いていると、得られにくいスキルや経験もあるでしょう。従業員の視野を広げ、中長期的に活躍できるように人事異動を行うことも、キャリア開発の一部といえます。

従業員が自分の希望を申告する「自己申告制」、増員が必要な部署を公開して従業員に応募を促す「社内公募制」、従業員が自身の経験やスキルをアピールできる「社内FA制」など、柔軟な制度を整備できるかもしれません。

企業は、社内で柔軟にキャリアを形成できる制度や環境を整えることで、組織の活性化と人材の定着も期待できます。

自己啓発支援

自己啓発支援では、従業員が自己啓発活動に取り組みやすい環境を整えるためのサポートです。企業は、研修費用の補助や資格取得の支援を通じて、従業員の成長を促進します。

具体的には、自己啓発に必要な書籍やオンラインコースの費用を補助するほか、社内での勉強会を実施することなどが考えられます。

副業や兼業の推進

副業や兼業の推進は、従業員が社外で新たな経験を積む機会となり、幅広いキャリア開発支援にもつながるものです。従業員は、自分の責任で契約から業務までを完了させることで、本業では得られない知識や経験を身につけることが可能です。

副業や兼業の経験を通じて、従業員は自身のキャリアを多角的に考え、柔軟な働き方を実現できるようになります。企業が兼業や副業を認めることに抵抗がある場合は、社内での副業や社内起業を奨励するなど、無理のない範囲で検討することが推奨されます。

リスキリング支援

リスキリング支援は、従業員が新たなスキルを習得するための教育やトレーニングを提供することです。特に、デジタル技術の進化に伴い、従業員が最新の技術に対応できるようにすることが重要です。

具体的には、デジタルスキルやデータ分析、プログラミングなど、今後のビジネスに必要とされるスキルを重点的に育成します。

場合によっては、リスキリングにかかる費用の一部または全額をサポートする企業もあるようです。これにより、従業員は変化するビジネス環境に適応し、キャリアの選択肢を広げることが可能になります。

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6.キャリア開発成功のポイント

ここでは、キャリア開発を成功させるための4つのポイントを押さえておきましょう。

  1. キャリア自律を重視する
  2. キャリアを見直す機会を提供する
  3. 社員の適性に合わせたサポートをする
  4. キャリア開発しやすい社内体制を整える

キャリア自律を重視する

キャリア自律とは、「自分のキャリアを見据え、主体的に目の前の仕事に意義を見出しながら働き、時代の変化に合わせて継続的に学び続ける」状態を指します。従業員が主体的にキャリアを構築する姿勢を持つことで、企業の成果や成長にも結びついていきます。

そのため、企業は従業員が自分の価値観や目標にもとづいてキャリアを選択できるよう支援することが重要です。

具体的には、企業側が社内の様々な職務やポジションを共有したり、キャリアプランニングのためのワークショップやセミナーを開催したりして、従業員が自分のキャリアビジョンを明確にする機会を提供すると良いでしょう。

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キャリアを見直す機会を提供する

キャリア開発を成功させるためには、従業員が定期的にキャリアを見直す機会を提供することも重要です。キャリアの見直しにより、従業員は自分の進捗を確認し、必要に応じて目標を修正することができます。

企業は、キャリア面談や1on1ミーティングを通じて、従業員が自分のキャリアの現状を評価し、将来の方向性を考える場を設けることが大切です。これにより、従業員は自分のキャリアに対する意識を高め、必要なスキルや経験を積むための具体的な計画を立てることができます。

社員の適性に合わせたサポートをする

社員の意向や特性に応じたサポートを行うこともポイントです。例えば、同じ部署で働いていても、目指すキャリアが異なれば、必要なサポートも異なります。

企業は、従業員の強みや興味を把握し、それに応じたキャリアパスや研修機会を提供することで、従業員の成長を促進します。具体的には、適性検査やフィードバックを通じて従業員の能力や興味を評価し、それを基にキャリアプランを策定することが大切です。

キャリア開発しやすい社内体制を整える

キャリア開発を促進するためには、社内体制の整備が不可欠です。業務や所属部署、そこでのポジションは、個人のキャリア形成において重要な要素となります。

会社から一方的に異動を命じられるのではなく、各従業員が自律的にキャリアを考え、自己責任のもとである程度の選択肢が与えられるのが望ましいです。

他にも、研修プログラムの充実、自己啓発支援制度の導入、キャリアに関する相談窓口を設けることも有効です。このような制度の充実により、従業員は自分のキャリアについて自由に考え、行動することができ、企業全体の成長にもつながるでしょう。

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7.キャリア開発の企業事例

ここでは、各企業が社員の自主的なキャリア形成をどのように支援しているかを、厚生労働省が発表した「実践事例 変化する時代のキャリア開発の取組み」という事例集に基づき紹介します。

オリンパス株式会社

オリンパスは、2019年に「グローバル・メディカル・テクノロジーカンパニー」としての成長を目指す企業変革プランを発表し、実現に向けて社内制度の改革を進めています。

その一環として「キャリア自律と自分で選ぶ学び」を推進しており、2022年度から年次や昇格時の階層別研修を原則として廃止し、「スキル獲得のためのトレーニング」として研修を再構築しました。

新入社員は入社初年度に必ず研修を受けますが、その後は社員が自発的に参加する手挙げ制に移行し、主体的な学びを促しています。企業側は、どの研修がどのスキル向上に役立つかを案内するとともに、上司とのキャリア面談を通じて社員の継続的な学びを支援します。

今後は、海外事業所への異動や、国内の事業部門に海外から部下が配置されるなど、グローバル規模での配置転換や異動も計画しているようです。日本国内に限定した人事制度や育成にとどまらず、世界で活躍できる人材の育成を目指して、さらなる検討を進めています。

KDDI株式会社

KDDI株式会社では、業務内容の高度化が処遇の向上に直接結びつくことや、若手の挑戦意欲の向上を目的として、「KDDI版ジョブ型人事制度の導入」を実施しました。KDDI版ジョブ型人事制度では、グレードと専門領域に基づき、各ポストに応じた職務定義書を作成しています。

KDDI版ジョブ型人事制度では、グレードと専門領域に基づき、各ポストに応じた職務定義書を作成しています。評価報酬体系は、職務定義書に基づいた毎年の成果・挑戦評価・能力評価の結果に応じて処遇が決定され、評価が高い社員は昇給し、評価が低い社員は降給する仕組みです。

また、月に一度の上司との1on1、半年に一度のキャリア専用面談、上司の承認不要で希望ポストに応募可能な公募制度など、社員のキャリアプランを本人の希望に沿って整えるための取り組みも充実。

さらに、社員が自分のキャリアプランを社内に公開し、部門が直接人材を探すことができるタレントマネジメントシステムを採用しています。その結果、社員は積極的にキャリア形成を目指し、社内での人材マッチングが活発に行われています。

KDDI版ジョブ型人事制度の導入後、とくにエンジニアやDX系のコンサルティング営業など、会社が注力する分野での中途採用者が増加しました。また、若手がグループリーダー(課長層)に抜擢されるケースも見られ、年次に関係なく若い社員が活躍する機会が増えています。

ロート製薬株式会社

ロート製薬株式会社は、「プロの仕事人」の集団として、「学び続けること」に焦点を当てた施策を展開しており、社員には自己主導で学習内容を選択する自由が与えられています。このアプローチは、従業員に自発的に考え、挑戦することを期待する企業の姿勢から生まれたものです。

企業は、社員が挑戦できる環境を整えると同時に、学習支援として「ロートアカデミー」というオンライン学習プラットフォームを提供。ここでは、研修や講座が豊富に用意されており、社員は自分の裁量で何を学ぶかを選べます。特に選抜型の講座を除く多くのプログラムでは、社員が自主的に受講を決められる仕組みにしました。

さらに、ロート製薬株式会社は学習を企業内の座学に限定せず、兼業や複業も学びの機会として認めています。これにより、「部門間の越境」や「社外での挑戦」といった多様な学習体験が促されています。

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8.キャリア開発で利用できる助成金

厚生労働省は、企業がキャリア開発を推進するために様々な助成金制度を用意しています。これらの支援策を活用して、社員のキャリア形成を促進しましょう。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、企業が従業員のスキルアップや能力開発を目的とした職業訓練を行う際に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。企業は、専門的な知識や技能を習得させるための訓練を計画的に実施することで、国から助成を受けられます。

具体的には、下記の7つのコースがあり、企業のニーズに応じて選択できます。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース

詳細は厚生労働省の公式サイトで確認できます。

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、有期契約労働者や無期雇用労働者などの非正規雇用者のキャリア形成を支援するための助成金です。この制度は、非正規雇用者の正社員化や処遇改善を図るために、企業が行う取り組みに対して助成を行います。

具体的には、下記の6つのコースがあり、正社員への転換や賃金アップ、能力開発のための研修などを実施した場合に、助成金が支給されます。

<正社員化支援>

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • <処遇改善支援>
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース

詳細は厚生労働省の公式サイトで確認できます。

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金

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9.キャリア開発で役立つツール

企業がキャリア開発を行う際は、既存のツールやプログラムを利用することが有効です。ここでは、キャリア開発で役立つツールを3つ紹介します。

ジョブカード

厚生労働省が推奨している「生涯を通じたキャリアプランニング」や「職業能力証明」の役割を果たすツールです。形式は履歴書や職務経歴書に似ており、職務経験やスキル、資格、自己評価などを記載します。

ジョブカードを活用すると、従業員は自分のキャリアの現状を把握し、将来の目標を設定が可能です。また、企業側も従業員の強みや弱みを理解し、適切なキャリア支援を提供するための参考資料として活用できます。

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キャリアアンカー

個人がキャリア選択を行う際に譲れない価値観や欲求のこと。この概念は、アメリカの組織心理学者エドガー・シャインによって提唱され、個人のキャリアにおける「アンカー(船のいかり)」となる要素を特定することを目的としています。キャリアアンカーには、8つのカテゴリーがあります。

  • 管理能力
  • 技術・機能的能力
  • 自立・独立
  • 保障・安定
  • 独創性
  • 奉仕・貢献
  • 挑戦
  • ライフスタイル

従業員は8つのカテゴリーにもとづいた設問に答える診断テストを活用することで、どの要素を重視するかを明確にし、自分の価値観に基づいたキャリアパスを描けます。また、「自分にとってのキャリアアンカーは何か」を考え、発表してもらうことで、各自のキャリア観を把握することが可能です。

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タレントマネジメントシステム

タレントマネジメントシステム(TMS)は、企業が従業員のスキルや能力を把握し、効果的な人材配置や育成を行うためのシステムです。このシステムは、従業員のスキルデータや評価情報を一元管理し、適切な人材育成プランを策定するために利用されます。

従業員は、自分のスキルやキャリアの現状を把握するとともに、自身のキャリアプランを社内に公開し、社内での人材マッチングによるスキルアップの機会を得ることが可能です。タレントマネジメントシステムは、企業の人材戦略を支えるツールとして、多くの企業で活用されています。

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キャリア開発のQ&A

キャリア開発とは、会社が社員のキャリアを作るためにさまざまな点から支援することです。まずキャリアの道筋を作るために、キャリアビジョンを作ります。 社員自身が、今後どうなりたいか、どんな仕事をしたいか、具体的なイメージを描いてもらいましょう。 その後、会社からいくつかのプロセスを用意します。たとえば、上司による面談サポート、先輩社員からの経験の提供、社内公募制度や社内FA制度の活用などです。
CDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)と呼ばれる開発支援が、キャリア開発の核となります。具体的には4つの工程に大別されます。 ①社員の申告や面談を通じ、当人の能力や展望を確認する ②会社のニーズ(人員計画や欲しい人材の姿)と照合する ③求められる研修内容や業務経験をクリアにする ④配置や異動、研修を実行する
一昔前の日本では、与えられた業務を遂行する、という働き方が主流でした。ところが今では、ワークライフバランスやダイバーシティといった新しい考え方が浸透し、働き方の多様化が推進されています。 従業員がみずから、労働の目的や方向性をすすんで見直し、多様な選択肢のなかからキャリアを開発する必要が生じています。 会社から開発支援を受けられない場合、従業員は会社外に対して視点が広がりやすく、職場定着が上手くいかなくなる恐れがあります。