【連載:人事評価はもういらない 第2回】
マイクロソフトやアドビシステムズも 採用する「新たなパフォーマンスマネジメント」は日本でも有効か?

はじめに

連載第1回ではアメリカの名だたる企業が年次評価をやめ、ノーレイティングへと向かった理由がわかりました。では日本ではどうなのでしょうか?
年次評価に変わる「新たなパフォーマンスマネジメント」をキーワードに話が進んでいきます。

エム・アイ・アソシエイツ株式会社 松丘啓司
1986年 東京大学法学部卒業。アクセンチュア入社。2005年 エム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し、代表取締役に就任。以後、パフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョン、営業意思決定といった領域で、企業向けの人材開発・組織変革プログラムの開発と提供を続けている。
著書に『1on1マネジメント』『人事評価はもういらない』(共にファーストプレス)などがある。

戦後の日本企業には評価制度は存在しなかった

戦後の日本企業には評価制度は存在しなかったそうですね。

松丘:はい。日本企業においては、年齢とともに自動的に昇給・昇格していく「年功序列」が基本でしたから。

それが経済成長の鈍化に伴い、徐々に機能しなくなってきたということですね。

松丘:そうです。1970年代から80年代にかけて実力主義が謳われ始めてはいましたが、90年代前半にバブルが崩壊し、「年功主義」から「成果主義」への切り替えが決定的なものとなりました。90年から95年にかけてGDPの伸び率が大きく低下。90年代後半には生産年齢人口の伸び率がマイナスに転じる中で、時を同じくしてグローバル経済が急速に進展したことにより、「年功主義」に起因する高固定費構造が足かせになってしまったのです。

そして「成果主義」が日本企業における評価制度の
原型につながった。

松丘:はい。1990年代後半には、日本企業の多くがアメリカ企業に倣い、「成果主義」を採用するようになりました。ですが、結果的には本来の目標管理や評価制度に込められた理念に反して、その実態は形骸化されてしまいました。つまり「成果主義」を導入したことによって「業績評価」に偏重してしまい、肝心な社員の人材開発が置き去りにされてしまったのです。

OKRや1on1。新たなパフォーマンスマネジメント

その結果として、ヒト中心経営のための新たな評価制度が日本企業でも求められるようになったというわけですね。

松丘:はい。そうした背景からアメリカで新潮流となりつつある「ノーレイティング」をベースとした「新たなパフォーマンスマネジメント」が注目されるようになってきたわけです。

新たなパフォーマンスマネジメントとは?

松丘:ビジネス環境が変化し、半年や1年スパンで行うMBO(目標管理制度)や年次評価が時代にそぐわなくなった今、注目を集める新たな人材マネジメント法です。最近注目されているOKR1on1も該当します。

これまでの画一的な成果主義評価を脱し、一人ひとり違う能力を発揮しやすい環境をつくることで、社員のモチベーション向上と企業のパフォーマンスアップを同時に実現することができます。
第1回でもお話ししましたがマイクロソフトやアドビシステムズ、GAPなどが取り入れて実績を上げています。

「新たなパフォーマンスマネジメント」がかかげる「リアルタイム」「未来志向」「個人起点」「強み重視」「コラボレーション促進」といった基本原則は、、労働人口の減少や働き方の多様化といった課題を抱え、人材の可能性を引き出したい日本の企業にとってもフィットするでしょう

具体的にはどのような業態の企業にマッチするのでしょうか?

松丘:もちろんあらゆる業種や企業において適用できるとは思うのですが、どちらかというとイノベーションの必要性が大きい企業や組織、個人のパフォーマンスが組織全体のパフォーマンスに影響を与えやすい企業のほうが効果的です。すべて機械化されていて「(人間は)スイッチを入れるだけ」といった部門には、あえて導入する必要はないわけですから。

「新たなパフォーマンスマネジメント」の導入に当たっては、システム自体をつくり直す必要性も出てくるような気がします。

松丘:それこそ今はHRテックのソリューションがたくさんあるので、そういったものをもっと積極的に活用するべきであると考えています。おそらく今後は「ピープルアナリティクス」という手法が人事の必須科目になっていくと思うのですが、まだほとんどの会社において、人事の中にデータアナリティクスができる人材がいないので、まずはそういった人材を育てるところから始める必要があるのです。

人事の役割が変わってくるということでしょうか?

松丘:これまでの人事の役割というのは、法の番人のようなものでした。制度が徹底して運用されるように監視して、しっかり管理するというような。ところが最近では「HRビジネスパートナー」といわれる、ビジネスサイドのパフォーマンスを高める支援をするという役割が求められるようになってきています。つまり、管理する役割からビジネスサイドと一緒になってパフォーマンスを高めていく役割に変わってきているということなのです。

そもそもビジネスサイドには人事のことはよく分からないんです。だからこそ、人事自らが専門性を持ちながら、ビジネスサイドで成果を上げていくことが求められる。すなわち、採用から人材開発に至るまで、包括的に支援していく立場へと役割が変わってきている。これまで以上に事業部門に近づいている感じですね。

まとめ

バブル崩壊とともに「年功序列制度」が「年次評価制度」へ。そして日本企業においても「新たなパフォーマンスマネジメント」が必要とされる時代へと変化してきました。

「新たなパフォーマンスマネジメント」では人事の役割も変化し、より経営に近いポジションになっていくでしょう。

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渡邊玲子 文