多くの企業では、人事評価の管理にエクセルを活用しています。
評価シートの作成やデータの集計・分析がスムーズに行えるうえ、無料テンプレートを使えば、作業時間を削減できます。しかし、データ管理が煩雑になりやすく、情報漏えいのリスクもあるため、適切な運用が必要です。
この記事では、エクセルを活用して人事評価を効率化する方法や便利なテンプレートを紹介します。さらに、より安全で高度な管理を可能にする人事評価システムについても解説します。
目次
1.エクセルで効率化できる人事評価の業務
エクセルは、多くの企業で利用されているツールであり、人事評価業務のスムーズな運用に大いに役立ちます。
ここでは、エクセルを活用して効率よく業務を進める方法について詳しく説明します。
人事評価シートの作成
人事評価シートを作成することで、業種や職種に応じて評価項目や基準を柔軟に設定することができ、目標の設定・評価・フィードバック内容まで1つのシートで管理できます。
データの集計・分析
SUMIF関数やピボットテーブルなどの機能を使用することで、部署別や役職別の評価分布、評価項目ごとの平均点などを簡単に算出することができます。
また、グラフ機能を使用することで、評価結果を視覚的に表現し、傾向や課題を把握しやすくなります。
これにより、人事部門だけでなく、経営層や管理職に対しても、客観的なデータに基づいた人事戦略の提案が可能になります。
データの共有
エクセルで作成した人事評価シートや集計データは、OneDriveやSharePointなどのクラウドサービスを利用することで、関係者間でリアルタイムに共有できます。
また、CSVファイルとして保存すれば、他のシステムとのデータ連携も容易です。
人事管理システムや給与システムとデータを連携させることで、さらなる業務効率化を進めることができます。
2.人事評価で使えるエクセルのテンプレート
エクセルテンプレートを活用することで、人事評価業務を効率化できます。
ここでは、bizoceanが提供する人事評価シートと、厚生労働省が提供する職業能力評価シート、判定目安表(評価ガイドライン)を紹介します。
人事評価シート(詳細版):bizocean
bizoceanは、ビジネスに役立つさまざまなテンプレートを提供しているサイトで、人事評価シートのテンプレートも無料で入手可能です。
このテンプレートは、目標やスキルを具体的に記入でき、リストから5段階の評価を選べる仕様になっています。
エクセル形式で提供されているため、自社の評価制度に合わせてカスタマイズして使用するとよいでしょう。
出典:bizocean「人事評価シート(詳細版)・Excel」
職業能力評価シート:厚生労働省
職業能力評価シートは、厚生労働省が提供する人事評価用のテンプレートです。
このシートは、従業員のスキルや知識を客観的に評価するための基準を示しており、各職務に求められる能力を詳しくチェックできます。
評価項目は「職務遂行基準」に基づいて設定されており、上司と部下がそれぞれ〇・△・×で評価を記入できます。
業種や職種、レベルに応じた専用テンプレートが用意されているため、幅広い職務に対応可能です。
出典:厚生労働省「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」
判定目安表(評価ガイドライン):厚生労働省
判定目安表は、厚生労働省が提供する評価ガイドラインです。
各評価項目に対して具体的な行動指標や成果指標が示されており、A・B・C評価の判定基準が明確に定義されています。
このガイドラインを使用することで、評価者による主観的な判断を排除し、より公平で一貫性のある評価を行うことができます。
また、細かい職種ごとにテンプレートが用意されているため、各職種の特性に応じた適切な評価ができるでしょう。
出典:厚生労働省「判定目安表(評価ガイドライン)一覧表」
3.人事評価にエクセルを使うメリット
エクセルを活用した人事評価は、コストを抑えられるうえ、柔軟に運用できるという利点があります。
- コストがほとんどかからない
- 自社に合わせてアレンジしやすい
コストがほとんどかからない
エクセルは多くの企業で既に導入されているソフトウェアであり、追加のコストをかけずに人事評価に活用できます。
専用のシステムを導入する場合と比較して、初期投資や運用コストを抑えられるでしょう。
また、エクセルは多くの従業員が基本的な操作に慣れているため、新たなツールの使い方を学ぶ必要がなく、導入にかかる時間やコストも最小限に抑えられます。
自社に合わせてアレンジしやすい
エクセルの大きな利点は、自社の評価制度や基準に合わせて柔軟にカスタマイズできるところです。
評価項目や計算式を自由に設定でき、必要に応じて簡単に修正することができます。また、部署や職種ごとに異なる評価シートを作成するのも容易です。
4.人事評価にエクセルを使うデメリット
エクセルを使用した人事評価にはメリットがある一方で、データ管理やセキュリティに関する課題も存在します。
ファイルやデータの管理が煩雑になる
エクセルでは、従業員ごとにファイルを作成するため、人数が多くなると管理が煩雑になります。評価期間ごとにファイルを分ける必要がある場合、データの整理が一層難しくなるでしょう。
また、複数の担当者がファイルを編集する場合、最新版の管理や変更履歴の追跡が困難になることがあります。さらに、人事評価シートのフォーマットに変更や誤りが発生した場合、使用中のエクセルファイルを個別に修正しなければなりません。
確認や集計に手間がかかる
エクセルは表計算ソフトとして、スコアの集計や数式を使った計算を得意としています。
しかし、複数のファイルに分散したデータをまとめる際は、専用の集計ファイルを作成し、手動で情報を統合する必要があります。
その結果、作業工程が増え、人的ミスが発生しやすくなるでしょう。
データの紛失や情報漏洩のリスクが高い
エクセルファイルは、誤って削除したり、不適切に共有されたりするリスクがあります。特に、機密性の高い人事評価データの場合、情報漏洩は深刻な問題につながる恐れがあります。
また、セキュリティ機能が限られているため、アクセス権限の細かい設定や、データの暗号化が困難です。これにより、ファイルが外部に流出したり、権限のない従業員に閲覧されるリスクも考えられます。
5.人事評価をエクセルで効率化する方法
エクセルを用いた人事評価の効率化は、下記4つの手順となります。
- 評価項目を設定する
- 評価基準を明確にする
- テンプレートを活用して評価シートを作成する
- 実際に運用する
①評価項目を設定する
まず、評価項目を設定します。自社の目標や価値観に合わせて、適切な評価項目を選定しましょう。一般的に、業績評価、能力評価、情意評価などをバランスよく設定することが重要です。
例えば、業績評価では「目標達成度」や「生産性」、能力評価では「リーダーシップ」や「問題解決力」、情意評価では「チームワーク」や「積極性」などの項目を設定できます。
職種や役職に応じて、評価項目を調整することも効果的です。エクセルでは、各評価項目をシートの列に配置し、従業員ごとに評価を入力できるようにします。
②評価基準を明確にする
評価項目を設定したら、次に各項目の評価基準を定めます。評価基準を明確にすることで、評価者による主観的な判断を減らし、より公平で客観的な評価が可能になります。
各評価項目に対して、具体的な行動指標や数値目標を設定しましょう。
例えば、5段階評価の場合、「3:期待通りの成果」「4:期待以上の成果」「5:卓越した成果」というように、具体的な基準を設けます。
③テンプレートを活用して評価シートを作成する
評価項目や評価基準が決まったら、評価シートを作成します。この際、既存のテンプレートを活用すれば、作業時間を短縮し、統一感のある評価シートを作成できます。
カスタマイズ時には、評価項目や基準を調整し、計算式や条件つき書式を追加するとより実用的です。これにより、自社独自の評価シートを効率的に作成できます。
④実際に運用する
評価シートを作成したら、実際に運用を開始します。運用開始前に、評価者向けの説明会を開催し、評価方法や基準について十分に理解してもらうことが重要です。
また、定期的に評価プロセスや評価シートの見直しを行い、必要に応じて改善を加えることも大切です。従業員からのフィードバックを参考に、より使いやすい評価シートに調整していきましょう。
6.人事評価でエクセルを使う際のポイント
人事評価にエクセルを活用する企業は多いですが、効果的に運用するために以下の2つのポイントを押さえておきましょう。
ファイル名の命名規則を定める
エクセルで人事評価データを管理する際、ファイル名が担当者ごとに異なると、後で必要な情報を探すのに時間がかかってしまいます。統一した命名ルールを設定することで、ファイルの内容や更新状況がすぐに分かり、管理がスムーズになります。
例えば、「2025年度上期_人事評価_〇〇(人名)_20250320.xlsx」のような年度、氏名、更新日の命名規則を採用することで、ファイルの内容と更新日が一目でわかるでしょう。なお、氏名はカタカナを使うことで、並び替えがしやすいです。
更新のルールを決める
人事評価シートは、定期的な更新や修正が必要となるため、更新のルールを決めておきましょう。
例えば、更新のタイミングや担当者、変更内容の記録方法などを事前に決めておくことで、情報の最新性を保ちつつ、混乱を防ぐことができます。また、更新履歴をシート内に記載することで、誰がいつどのような変更を行ったかを追跡でき、透明性の高い運用が可能となります。
7.人事評価でエクセルを使う際の注意点
エクセルを用いた人事評価には、いくつかの注意点があります。
特に、ファイルの不正コピーや外部への持ち出しを防ぐための対策を講じましょう。
簡単に複製できないようにする
人事評価データには機密性の高い情報が含まれているため、簡単に複製できないよう対策を講じる必要があります。
例えば、パスワード設定を行い、関係者以外のアクセスを制限しましょう。また、シート保護機能で特定のシートやセルに対して編集制限をかけることで、データの改ざんや不正コピーを防ぐことができます。
ファイルの持ち出しやメール添付に関するルールを定める
エクセルファイルは簡単に外部へ持ち出せるため、情報漏えいのリスクが高まります。そのため、以下のような社内ルールを策定し、従業員に徹底しましょう。
- 持ち出し制限:機密性の高いファイルの社外持ち出しを禁止し、業務上必要な場合は上長の許可を得るなどの手続きを設ける。
- メール添付の制限:重要なファイルをメールで送信する際には、パスワード付きの圧縮ファイルを使用し、パスワードは別の手段で伝達する。
- クラウドサービスの活用:ファイルの共有には、アクセス権限を細かく設定できるクラウドストレージを利用し、不要な外部送信を避ける。
8.エクセルの問題を解決する人事評価システムとは?
人事評価システムは、従来手作業で行っていた評価業務を自動化し、効率化を図るためのシステムです。
搭載されている機能はシステムによって異なりますが、人事評価に関連する情報を一元管理でき、データの集約や活用をスムーズに行えます。
人事評価システムの主な機能
人事評価システムには、以下のような主要機能があります。
- 情報管理機能:従業員の個人情報、経歴、スキル、評価履歴などを一元管理
- 人事評価機能:360度評価やコンピテンシー評価など、多様な評価手法に対応したテンプレートを提供。評価シートの作成・配布・回収をシステム上で完結
- 目標設定・進捗管理機能:従業員の目標設定や進捗状況をリアルタイムで把握、フィードバックを行うことが可能
- 人事管理機能:従業員の住所や社会保険などを一元管理
- 他システムとの連携機能:労務管理や勤怠管理システムと連携

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人事評価システムのメリット
人事評価システムを導入することで、手作業で行っている評価項目の設定やデータ解析が効率化されます。さらに、評価基準を数値データなどの客観的な指標に基づくことで、評価者の主観を排除し、公平性を高めることが可能です。
また、システムを活用して従業員のスキルや経験を一元管理することで、適材適所の人材配置が容易になり、組織のパフォーマンスを最大化できるでしょう。加えて、アクセス権限の設定やログイン認証などで、情報漏えいリスクを低減できます。
人事評価システムを選ぶポイント
人事評価システムを選ぶ際は、以下のポイントを比較・検討し、自社に適したものを選びましょう。
- 導入形態:クラウド型かオンプレミス型か
- 必要機能:自社の評価制度に合致した機能があるか
- カスタマイズ性:自社の評価制度や組織構造に合わせて柔軟にカスタマイズできるか
- 他システムとの連携:既存の人事システムや給与システムとの連携が可能か
- セキュリティ:十分なセキュリティ対策が施されているか
- サポート体制:導入時のサポートや運用中のトラブル対応など、充実したサポート体制があるか
- 価格:初期費用やランニングコストは適正か

人事評価システムの選び方と10の選定ポイント
人事評価システムを選ぶ際は、自社の課題や導入の目的を明確にする必要があります。ここではシステム選びの重要性や事前準備、具体的な選び方などについて解説します。
1.なぜ人事評価システムの選び方が重要な...
人事評価システムの導入事例
さいごに、人事評価システムを導入し効果を上げている企業事例を紹介します。
清水建設株式会社
清水建設株式会社は、約1万人の従業員を抱える大手建設会社です。同社は、エクセルでの人事管理に限界を感じ、データの一元管理や情報の更新・共有に課題がありました。
そこで、新しい評価制度を導入するにあたり、人事管理システムとして「カオナビ」を導入。約1万人の従業員、50を超える事業部門の評価データを一元管理できるようになり、情報の集約と共有が格段に効率化されました。
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