KPI例【薬局編】厚労省によるかかりつけ薬剤師・薬局の推進

医療分業の推進により、近年は院外処方が一般的となっています。しかし医療機関の周辺に門前薬局が乱立したために、患者の服薬情報を一元管理できていないなど、必ずしも患者のための薬局になっていないことが指摘されているのです。

こうした状況を改善するために、厚生労働省はビジョンとKPIを策定しています。その内容を詳しく見ていきましょう。

1.薬局業界におけるKPI

厚生労働省は医療分業の考えに基づき、今ある薬局を患者本位のかかりつけ薬局に編成し直すために「患者のための薬局ビジョン」を策定し、ビジョンの実現を目的に達成度を評価するためのKPI(重要業績評価指標)を設定したのです。

KPIは4項目に分かれており、全国的に進捗状況を把握できるよう調査報告書にまとめて公表されました。

患者のための薬局ビジョンとは?

「患者のための薬局ビジョン」は3つの機能で構成されており、それぞれで果たすべき役割を定めています。

  1. かかりつけ薬剤師・薬局機能:服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導、24時間・在宅対応、医療機関等との連携
  2. 健康サポート機能:病気の予防や健康サポート
  3. 高度薬学管理機能:高度な薬学的管理

かかりつけ薬剤師・薬局機能とは?

かかりつけ薬剤師・薬局機能は、「服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導」「24時間・在宅対応」「医療機関等との連携」の3つで成り立っています。

この機能で重視していることは、調剤や服薬情報の管理、処方箋のチェックだけでなく、患者本位のかかりつけ薬剤師・薬局として幅広く対応する点。

これらの取り組み状況を、PDCAを回しながら評価し、診療報酬の改定や制度見直しなどに活用するためにKPIを設定しています。

服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導

「服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導」とは、お薬手帳や患者へのヒアリングによって、患者がかかっているすべての医療機関や服用している薬を把握し、薬学的な知見に基づいて管理・指導すること。

また主治医と連携して、服薬情報を一元的かつ継続的に把握することも職務のひとつとなります。薬学的管理・指導の一例として挙げられるのは、「患者にお薬手帳が複数発行されている場合は一冊に集約する」ことです。

24時間・在宅対応

「24時間・在宅対応」とは、開局時間外にも服用薬の副作用や飲み間違いなどの電話相談を受ける、緊急時には夜間・休日にも調剤を行うといったこと。

また薬剤師による在宅対応も、患者に必要とされているニーズのひとつです。高齢化が進む日本では、在宅医療の充実が叫ばれています。

医師や看護師だけでなく、薬剤師・薬局も地域包括ケアシステムの一環として、残薬確認などを目的に在宅対応を行うことが重要でしょう。

医療機関等との連携

医療機関等との連携とは、薬学的知見から処方医や地域の関係機関と連携して患者の健康に関わること。

連携の例には、

  • 処方内容をチェックして必要に応じて処方医に疑義照会する
  • 調剤後も残薬管理や服薬指導を行う
  • 患者の服用状況などを把握して処方医にフィードバックする

などが挙げられます。また医薬品に関する相談や健康相談に対応して医療機関の受診を勧めるといったことも、地域包括ケアシステムの一翼を担う一員として果たすべき責務でしょう。

3つの機能が示す内容は患者本位の医薬分業を実現させるための重要な要素であるため、全薬局で実現することが求められています

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2.薬局にKPIが設定された背景

厚生労働省が薬局ビジョンを推進している理由は、患者から院内処方と比べて院外処方のメリットが見えづらいという指摘があった点にあります。

近年は院外処方が定着し、医薬分業率は70%を超えました。しかし患者の自己負担増に見合ったサービスや効果を十分に提供できていません。そこで患者本位の医療分業を実現するため、KPIを設定して再編を進めているのです。

KPI策定の目的

「患者のための薬局ビジョン」においてKPIを策定した目的は、医療分業による薬局の役割を明確にするため。

薬局ビジョンには薬局のあるべき姿が記されていますが、言葉だけでは達成度を測定できません。

しかしKPIには、定量的に進捗状況を管理することで、効率的に目標達成を目指せるというメリットがあります。PDCAサイクルを回しながら達成率を高めることもできるため、薬局ビジョンの実現にはKPIマネジメントが必要とされているのです。

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3.薬局の業務を評価する具体的なKPI

厚生労働省は「かかりつけ薬剤師としての役割を発揮できる薬剤師を配置している薬局数」を把握するため、4つのKPIを設定しています。

  1. 患者の服薬情報に関するKPI:ICT(電子版お薬手帳や電子薬歴システムなど)を導入している薬局数
  2. 24時間・在宅対応に関するKPI:過去1年間に平均月1回以上、在宅業務を実施した薬局数
  3. 医療機関等との連携に関するKPI:過去1年間に1回以上、健康サポート薬局研修を修了した薬剤師が、地域ケア会議等の地域の多職種と連携する会議に出席した薬局数
  4. 薬学的管理・指導に関するKPI:過去1年間に平均月1回以上、医師へ患者の服薬情報等を文書で提供した実績のある薬局数

KPIに対する考え方

2025年までに全薬局をかかりつけ薬局に再編するために、すべての薬局が把握すべきKPIとして前述の4項目が設定されました。

また、薬局機能情報提供制度の改正(2017年10月)、および施行(2019年1月1日付)に伴い、全薬局にKPI4項目に対する実態を報告する義務が発生しています。

このほか、地域医療情報連携ネットワークへの参加の有無、受診勧奨に係る情報を医療機関に提供する体制の有無、副作用等に係る報告の実施件数なども報告する必要があるのです。

これらの情報を集計し状況を把握して、PDCAを回していきましょう。

新しい薬局機能情報提供制度が施行されたことで、かかりつけ薬剤師などの広がりをリアルに把握できます