組織風土とは、組織内で共有されている独自の価値観や考え方、行動様式、雰囲気といった、組織の中に根付いている目に見えない共通認識や体質のことです。
組織風土は、従業員のパフォーマンスやモチベーション、定着率に影響する要素です。組織風土が良い会社ではこれらに良い影響を与えますが、組織風土が悪い場合には、企業にさまざまなリスクをもたらします。
この記事では組織風土とは何かをふまえ、組織文化との違いや組織風土を構成する要素、醸成のメリットやその方法などを詳しく解説します。
目次
1.組織風土とは?
組織風土とは、組織内で共有されている価値観や信念、行動様式や慣習などを総称したものです。組織によって独自の風土があり、理念や経営計画、制度に反映されます。
さらには、従業員の行動や意思決定にも大きな影響を与えます。
影響を与える具体的な点は、以下の通りです。
- 従業員の感情、行動
- モチベーション
- エンゲージメント
- 定着率
- 労働生産性
- 業績 など
組織風土が良いほど、上記の点に良い影響を与えパフォーマンスの向上、定着率にも反映されます。
2.組織風土の改善が求められる理由
組織風土の改善が求められる理由は、企業を取り巻く環境が大きく変化しているためです。以下のポイントから、組織風土の改善が求められる理由を詳しく解説します。
- VUCA時代に適応するため
- 人材確保・定着のため
- ダイバーシティを浸透させるため
VUCA時代に適応するため
現代は、市場や技術の変化が激しく、予測困難なVUCA時代に突入しています。変化に素早く対応するには、従来の硬直的な組織風土では難しいでしょう。適応できない企業は成長が滞り、どんどん淘汰されます。
変化に強い組織を作り上げるためには、柔軟で適応力のある組織風土の構築が求められます。
また、VUCA時代において、持続的な成長を遂げるためには、常に新しい価値を生み出すイノベーションが欠かせません。組織風土の改善により、従業員の創造性やチャレンジ精神を刺激し、イノベーションを生み出しやすい環境の整備も必要です。

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人材確保・定着のため
組織風土が良い企業は、従業員のメンタリティも良好で、モチベーションやエンゲージメントが高い傾向にあります。なぜなら、企業への愛着や貢献意欲があることで、前向きに仕事に取り組めるからです。
さらに、働きがいや居心地の良さを感じることで、組織の定着率が上がるメリットもあります。そうした企業は外部からみても企業イメージが高く、人材確保にもつながります。
少子高齢化による労働人口の減少で人材確保が難しい中、終身雇用制度の実質崩壊などによって人材の流動性も高まっています。求職者に「選ばれ」、従業員に「働き続けたい」と思ってもらうためには、組織風土の改善が必要です。
ダイバーシティを浸透させるため
グローバル化や企業の持続的な成長を重視する現代の風潮では、ダイバーシティの浸透も求められています。ダイバーシティが浸透し、多様な人材が活躍できる組織風土では、変化への対応力やイノベーションの創出力が高められるでしょう。
しかし、ダイバーシティを推進するうえでは、価値観や国籍、年齢、ライフスタイルの多様化などが原因で、従業員間でのトラブルや混乱が生じやすいリスクもあります。
このリスクを減らすために、組織風土の改善が大切です。そうすることで、ダイバーシティへの理解が深まり、従業員が多様性を受け入れやすい環境が構築できます。

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3.組織風土と組織文化の違い
組織風土と組織文化は一見似た言葉ですが、意味が異なります。その大きな違いは、要素と性質です。
組織風土 | 組織文化 | |
要素 | 普遍的な価値観や思想、慣習 | 現在進行形である価値観やルール |
性質 | 長期的に形成されるもので比較的変化しにくい | 意図的に形成・変革しやすい |
組織風土は無意識的に形成される要素が強く、意識されにくかったり、感覚的なニュアンスを含んだりします。
一方、組織文化は組織の理念や目標などが影響し、意識的に形成される要素です。
4.組織風土の3つの要素
組織風土は、主に以下3つの要素から構成されています。
- ソフト面の要素
- ハード面の要素
- メンタル面の要素
各要素の特徴や具体例をみていきましょう。
ソフト面の要素
ソフト面は、組織の文化や人間関係といった目に見えない要素です。
具体例
- コミュニケーション
- 信頼関係
- 協力関係
- 組織の価値観
- 組織内の慣習やルール
- エンゲージメント
- リーダーシップ、経営層の影響力
- 責任の所在 など
表面的な要素のため、明文化されることはありません。
組織に長年いると、気づきにくい要素である一方、新しく組織に入った人には敏感に感じ取れる要素でもあります。

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ハード面の要素
ハード面は、組織の構造や制度といった目に見える要素です。
具体例
- 組織図
- 組織構造
- 人事制度
- 就業規則
- 経営理念、ミッション
- ビジョン
- バリュー
- 経営戦略・計画
- 事業内容
- コンピテンシーモデル
- オフィス環境
- コンプライアンス など
視覚化できる要素であるため、経営層が積極的に関わることで変革に取り組めます。適切な意思決定によって、理想とする組織風土を醸成しやすくなります。

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メンタル面の要素
メンタル面は、目に見えないソフト面の一種であり、なかでも従業員の心理状態やモチベーションに強く影響する要素です。
具体例
- ストレスレベル
- 帰属意識
- モチベーション
- 心理的安全性
- ワークライフバランス
- 仕事への満足度
- チャレンジ精神
- 適応力
- 自主性・自律性 など
メンタル面の要素は、組織の生産性や離職率に影響を与えやすいのが特徴です。個人の精神的な要素であるため、外部からのコントロールが難しい部分でもあります。
しかし、企業側の取り組みや対応次第では改善が可能です。
5.悪い組織風土の会社の特徴
組織風土が悪い会社には、以下の特徴がみられます。
- コミュニケーションに問題がある
- 職場環境が良くない
- 正当に評価されない
- 従業員のモチベーションが低い
- 離職率が高い
- 主体性に乏しい
自社に当てはまっている特徴がないかチェックしてみましょう。
コミュニケーションに問題がある
組織風土が悪い会社は、上司と部下、部署間のコミュニケーションが不足し、情報共有が滞ることや、意見が自由に言えない雰囲気があります。
情報共有が不十分であるがゆえ、ミスや遅延が生じ、業務が円滑に進まない場合もあるでしょう。信頼関係やチームワークも形成されにくく、居心地が悪い組織ができあがります。
また、双方向的なコミュニケーションが難しいことで、アイデアを言っても受け入れられない可能性も高くなります。そのため、イノベーションが生まれずに、企業の成長を鈍化させるおそれがあります。

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職場環境が良くない
長時間労働などの組織風土がある場合、ワークライフバランスが崩れます。その結果、従業員の身体的疲労が蓄積し、生産性が低下するでしょう。
また、ハラスメントが横行している場合も、従業員が安心して働けません。
さらに、失敗を許さない雰囲気があると、従業員が萎縮します。新しいことに挑戦する意欲が低下し、イノベーションが生まれにくい環境になるでしょう。

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正当に評価されない
成果よりも上司の個人的な感情や好き嫌いで評価が決まったり、評価基準が不明確であったりすると、従業員が評価に納得できません。成果を出しても正当に評価されないため、従業員のモチベーションが低下するでしょう。
また、年功序列の評価体系も公平さに欠ける場合があり、従業員の納得度やモチベーションを下げかねません。努力しても変えられない部分の評価割合が多い場合には、組織全体に悪影響を及ぼします。
従業員のモチベーションが低い
組織風土が悪いと、職場環境や風通しの悪さ、評価への不満などさまざまな要素が絡み合い、従業員のモチベーションが低下します。
モチベーションが低い従業員は組織への貢献意欲が低いため、指示待ちの姿勢が強く、自ら考えて行動しない傾向にあります。
また、自分の仕事に責任を持たず、問題が起きても他人事のように捉える場合も多いでしょう。こうした状態では生産性が上がらず、新しいアイデアや提案も出ないため、組織はむしろ衰退の一途を辿ってしまいます。

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離職率が高い
組織風土が悪い状態が改善されないと、従業員が不満を抱え、より良い環境を求めて退職する可能性があります。なぜなら、優秀な人材は需要が高いため、転職が容易だからです。
人材の流出は、組織のノウハウや知識の喪失につながり、業績悪化を招きかねません。人が流出し続けると社内の雰囲気も悪くなり、連続的な退職が発生したり、従業員のパフォーマンスが低下したりして、組織は次第に悪い方向へと向かうでしょう。

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主体性に乏しい
トップダウンが強い経営を行う組織は、従業員の主体性が乏しい傾向にあります。上層部がいくら良い決断を下したとしても、それを実行する現場のモチベーションが低いと、うまくいきません。
また、上からの強い圧力や、同調圧力の風潮がある場合にも、現場は主体的に動けないでしょう。主体性に乏しいとイノベーションも生まれにくく、組織をより良くしていくための姿勢も起こりません。
6.良い組織風土の会社の特徴
一方で、以下の特徴がある会社は組織風土が良いといえます。
- MVVに共感・浸透している
- 目標に一丸となって取り組めている
- コミュニケーションが活性化している
- 従業員のエンゲージメントが高い
- 正当に評価される
- 個が尊重されている
MVVに共感・浸透している
MVVとは、「Mission(ミッション)」「Vision(ビジョン)」「Value(バリュー)」のことです。組織風土が良い会社はMVVが明確で、従業員に浸透している傾向にあります。
従業員が組織の目標や価値観を理解し、共感している状態であるため、組織全体に一体感が生まれます。MVVが日々の業務や意思決定の指針になることで、組織の理想とする姿を実現しやすくなるでしょう。

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目標に一丸となって取り組めている
組織風土が良い会社は、組織全体の目標が明確で、従業員にも適切に共有されています。さらに、目標達成に向けた進捗状況や課題が定期的に共有され、透明性の確保も容易です。
そのため、従業員が目標を正しく認識でき、達成に向けて行動できる環境が整います。目標達成への従業員の貢献が適切に評価されるため、従業員のモチベーションも上がるでしょう。
効率的に目標達成しやすい状態であり、組織の成長が期待できます。
コミュニケーションが活性化している
組織風土が良い会社は、上司と部下、部署間のコミュニケーションが活発で、意見やアイデアが自由に交換できる環境です。社内の雰囲気も明るく、風通しが良いともいえます。
そのため、従業員は失敗を恐れずに意見や質問ができる心理的安全性が確保できます。また、建設的なフィードバックが活発に行われ、個々の成長と組織の改善につながるでしょう。
さらに、対面でのコミュニケーションだけでなく、チャットツールや社内SNSなど、多様なコミュニケーション手段が活用される会社が多いです。情報共有が円滑で、誤解や伝達ミスが少なく、業務効率も向上しやすい環境です。
従業員のエンゲージメントが高い
組織風土が良い会社では、従業員の貢献意欲や組織への愛着が高まる傾向があります。なぜなら、組織の一員であることに誇りを持ち、積極的に業務に取り組める環境だからです。
そのため、生産性やパフォーマンスが上がり、業績向上にもつながるでしょう。
また、人材が定着しやすく、組織力が低下するリスクが少ないのも特徴です。離職率の低さは人材確保の面にもプラスに影響し、「人が集まる企業」へと成長できます。
正当に評価される
良い組織風土の会社では、評価体制が整っています。評価基準が明確な場合、従業員もそれを正しく理解できます。
また、成果だけでなく、プロセスや貢献度も評価対象です。頑張った分だけ適切に評価され、昇進や昇給にも反映されるため、モチベーションや組織への貢献意欲が高まりやすいでしょう。
評価制度が整っていると、従業員のキャリアアップを支援する研修や挑戦する機会が提供される場面も増えます。そのため、組織のパフォーマンスや従業員のエンゲージメントが向上しやすくなります。
個が尊重されている
組織風土が良い会社は、従業員の多様な価値観や個性を尊重し、受け入れる文化があります。自分らしく自由に働ける環境があることで、従業員のエンゲージメントも高まります。
また、企業側が従業員一人ひとりの能力や強みを把握しているため、最適な人材配置が実現できます。従業員は能力を最大限に発揮でき、結果として組織全体のパフォーマンスも向上するでしょう。
7.良い組織風土を醸成するメリット
良い組織風土を醸成することには、以下のメリットがあります。
- 従業員のエンゲージメントが高まる
- 生産性が向上する
- 従業員同士の関係性が良好になる
- 風通しの良い職場になる
- 組織の一体感が高まる
- 人材が定着する
従業員のエンゲージメントが高まる
組織風土が良い会社は、従業員にとっても働きやすい環境です。正当に評価されたり、自分の意見が受け入れられたりするため、組織への信頼や愛着、仕事へのやりがいや貢献意欲が高まるでしょう。
エンゲージメントが高いと、生産性や定着率の向上にも寄与し、組織力の強化につながります。
生産性が向上する
円滑なコミュニケーションがおこなえたり、働きがいを感じられたりすることで、従業員の生産性が向上します。業務効率や品質も向上し、結果として業績も上がるでしょう。
また、良い組織風土のもとでは心理的安全性が高まり、従業員が新しいことに挑戦しやすくなります。主体的に意見やアイデアが出せる環境で、イノベーションが促進されます。
従業員同士の関係性が良好になる
職場の風通しの良さやコミュニケーションの取りやすさ、お互いを尊重する文化など、良い組織風土が根付くと、従業員間の信頼関係が深まります。協力し合う風土が醸成され、チームワークも向上するでしょう。
良好な人間関係によって、従業員のストレスが軽減し、満足度が向上します。また、組織全体の雰囲気も良くしてくれます。
風通しの良い職場になる
上司と部下、部署間のコミュニケーションが活発になり、情報共有が円滑になります。心理的安全性が確保されるため、主体的に意見やアイデアを出しやすい環境ができます。
コミュニケーションがスムーズになることで業務効率が上がるだけでなく、組織全体の課題解決や改善にも取り組みやすくなります。
組織の一体感が高まる
組織の目標や価値観が従業員に共有され、共通の目標に向かって協力し合うことで、一体感が生まれます。組織への帰属意識が高まり、従業員は組織の一員としての誇りを持って働けるでしょう。
こうした環境では、従業員が目標に向かって前向きに取り組み、組織の成長を加速させます。
人材が定着する
良い組織風土があると、従業員が安心して働ける環境が構築され、離職防止に有効です。優秀な人材が定着すると、組織のノウハウや知識が蓄積され、組織の競争力も向上していきます。
また、人材が定着することで企業の評判を高め、優秀な人材の獲得にもつながります。
8.組織風土変革の進め方
組織風土の変革は、以下のステップで進めていきます。
- 組織の現状把握
- 問題点・課題の明確化
- 基本指針の策定
- 組織風土変革の必要性の周知
- 具体的なアクションの実行
①組織の現状把握
まずは自社の組織風土の現状を把握します。変革の目的を明確にするためにも、自社の風土の強みや弱みを洗い出しましょう。
なお、分析手法には、以下の方法があります。
- 3C分析などのフレームワークの活用
- 従業員アンケート
- インタビュー
- グループディスカッション など
外部調査に依頼すると、より客観的な分析ができます。自社で調査する場合には、多角的に分析することがポイントです。

3C分析とは? 目的とやり方、関連フレームワークをわかりやすく
3C分析は「Customer」「Competitor」「Company」3つの視点から調査、分析を行うことで、自社の事業展開に関する課題を探し出すフレームワークです。
ここでは、
3C分析とは何か
...
②問題点・課題の明確化
次に、現状と理想とする組織風土のギャップを把握し、問題点や課題を抽出します。表面的な問題だけでなく、構造的な問題にも目を向けることがポイントです。
組織内で共通認識を持てるよう、問題点や課題をできる限り言語化しましょう。問題点・課題をピックアップできたら、変革に取り組む優先順位をつけます。

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③基本指針の策定
組織のビジョンや戦略に基づき、目指すべき組織風土を具体的に定義します。そのうえで、変革するためにどう行動すべきかを、基本指針として策定しましょう。
従業員が共感できるような、具体的でわかりやすい指針を策定することがポイントです。このとき、組織のビジョンや戦略と整合性を持たせましょう。
④組織風土変革の必要性の周知
組織風土の変革は、現場の従業員が主体的に取り組むことで実現します。そのためには、まず従業員がその必要性を理解しないといけません。理解を深めてもらうには、変革によるメリットを伝えることが大切です。
これらは継続的な取り組みとなるため、経営層は変革の必要性や思いを発信し続け、従業員の意識を変えていく必要があります。
⑤具体的なアクションの実行
基本指針に基づき、具体的なアクションプランを策定します。アクションプランでは、目標やスケジュール、担当者や評価指標などを明確に示すことで、現場が主体的に参加しやすくなります。
定期的に進捗状況を評価し、必要に応じて計画を修正しましょう。経営層が率先して取り組むことで、現場にも変革の意識が浸透していきます。
9.組織風土改革成功のポイント
組織風土改革を成功させるためには、以下3つのポイントを意識して取り組みましょう。
- 中長期的な視点で取り組む
- ハード面の変革から取り組む
- 経営陣が率先して取り組む
中長期的な視点で取り組む
組織風土は長年にわたって培われたものであり、変革は容易ではありません。短期間で劇的な変化を期待するのではなく、中長期的な視点で根気強く取り組む意識が必要です。
改革に取り組んでいる間は定期的に検証し、改善を繰り返しましょう。短期的な目標を設定し、小さな成功体験を積み重ねることで、従業員のモチベーションを維持し、改革への意欲を高められます。
施策は段階的に講じ、社内報などを通じて継続的に発信することも大切です。
ハード面の変革から取り組む
ハード面は、組織の行動を規定する基盤であり、組織風土改革の土台となります。目に見える要素であるため、従業員の行動や意識に変化をもたらしやすいのがポイントです。まずは、組織体制や制度、戦略などに着目し、具体的なアクションプランを策定しましょう。
経営陣が率先して取り組む
組織風土改革は、経営陣が率先して取り組む姿勢を示すことが重要です。
それによって、組織風土改革への士気が高まり、従業員の協力も得やすくなります。経営陣が自ら行動し、組織風土改革の重要性を従業員に伝えましょう。
10.組織風土改革の成功事例
組織風土改革の成功事例を2社から紹介します。
ダイハツ工業株式会社
ダイハツでは、2024年に車両認証試験の不正が発覚しました。その背景には、短期スケジュールによるプレッシャーやコンプラ意識の希薄化などがありました。
同じ過ちを繰り返さないため、ダイハツでは「三つの誓い」を策定し、その一つに風土改革を挙げています。
風土改革のテーマは、「法令・ルールを遵守し、一人ひとりがつながり、笑顔で成長できる風土を築く」ことです。そのため、以下の取り組みを実施しています。
- 経営陣と従業員、従業員同士がつながる場づくりと対話の活性化
- 人間力向上に向けた「思いやりコミュニケーション研修」の実施
- 内部通報制度の改善(改善の取り組みの周知、声を上げられる環境の構築)
一時生産停止に追い込まれたダイハツですが、こうした組織風土改革の取り組みもあり、現在は信頼回復に向けて生産を再開できています。
JAL(日本航空)
JALは2010年に経営破綻により、会社更生法を適用し、膨大な負債を抱えた過去があります。
当時のJALは一部の幹部によるトップダウンな経営スタイルでした。そこで、まず実施したのは、旧経営陣の刷新です。さらに、企業理念やロゴマークといった企業の根本となるハード面の変革に着手しました。
くわえて、ソフト面の変革として、従業員全員が持つべき意識、価値観である「JALフィロソフィ」を掲示しました。フィロソフィの提示によって、従業員の根本的な意識を変革し、組織風土の改善につなげました。
結果、JALは過去の危機を乗り越え、2024年3月期に大幅な増収増益を達成し、経営は順調に回復しています。そして、2025年3月期も引き続き、増収増益が見込まれています。
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◆資料内容抜粋 (全31ページ)
・人事評価システム「カオナビ」とは?
・人事のお悩み別 活用事例9選
・専任サポートについて など