離職率とは? 業界平均、企業ランキング、計算方法、調べ方

働きやすさの指標の一つに、離職率があります。就職活動をする若者の中には、会社の離職率や業界の離職率などを気にする人も多いようです。

離職率の定義は何か、「高い」「低い」といった基準がどのような仕組みをもとにして語られているのか、離職率の算出方法をはじめ、高い離職率の原因などを実際の離職率改善事例も含めて解説していきましょう。

目次

1.離職率とは?

離職率とは、ある時点の在籍人数に対して一定期間後に退職した人の割合のことをいいます。一般的には、期初から期末までの1年間で算出することが多いようですが、入社後1年間、入社後3年間などの期間で離職率を算出するケースもあり、算出期間は離職率を算出する目的によって異なります。

離職率は、従業員の仕事や職場満足度に比例します。多くの企業にとって人事が追うべき重要業績評価指標KPI(Key Performance Indicator)であるといえるでしょう。

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厚生労働省の定義と算出方法

厚生労働省は、離職率を「常用労働者数に対する離職者の割合」と定義しています。1月1日現在の常用労働者数(年齢階級別は6月末日現在の常用労働者数)と離職者数を使用して下記の式により算出します。

常用労働者は、「期間を定めずに、または1カ月を超える期間を定めて雇われている者」「日々または1カ月以内の期間を定めて雇われている者のうち、調査期間の前2カ月にそれぞれ18日以上雇われている者」と定義されています。

離職率の計算式

入(離)職率 = 入(離)職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数(※) ×100(%)

(※)年齢階級別は6月末日現在の常用労働者数

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2.定着率とは? 離職率との違い

一般的に定着率については、離職率のように標準的定義は存在していないようです。

厚生労働省が用いる雇用動向の用語の中にも定着率という言葉は見当たりません。
ただし、実際に定着率という言葉が社会で用いられる場合、たとえば「〇社における入社◯年後の定着率は◯%」と表記されているものは、まずは当該年次入社者の離職率を算出し、100から算出した当該年次入社者の離職率を差し引いた数字を、定着率としているようです。

離職率が低い=定着率が高い

離職率とは、常用労働者数に対する離職者の割合です。一方、定着率とは、100から離職率を差し引いた数字です。つまり、離職率が高ければ、定着率は低くなります。

反対に、離職率が低い場合には、定着率が高いという考え方が成り立ちます。どちらの数字から判断しても、当該企業や業界の雇用動向を知ることができるでしょう。

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3.離職率の753(シチゴサン)現象とは?

753(シチゴサン)現象とは、就職して3年以内に離職する労働者が非常に多いという社会問題の総称として使われる言葉です。

753の数字は、それぞれ意味するところがあります。7は中学卒業者が7割、5は高等学校卒業者が5割、3は大学卒業者が3割という、学歴別の離職率を表しています。

新卒はなぜ3年以内に辞めるのか?

労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった、仕事が自分に合わない、賃金の条件が良くなかったなど、退職の理由はさまざまで、年齢が低いほうが離職率が高い傾向にあるようです。

新卒の離職率は32.2%

厚生労働省による「新規学卒者の離職状況」という調査があります。平成26年3月の調査結果によると、大学を卒業して3年後の離職率は、全体で32.2%となっています。この調査結果を別の視点から言い換えれば、大卒者で3年後に定着しているのは7割弱であることが分かります。

ただし、この離職率は企業や業種によっても大きな差があるようです。

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4.職場の離職率の調べ方

離職率は、把握したい内容別に算出します。たとえば、新卒で入社した社員の1年後の離職率、中途入社した社員の5年後の離職率、大卒社員の3年後の離職率といった具合です。

離職率の計算の基本

離職率は、それぞれの目的に応じて対象となる人数を集計し、離職率を算出する方程式の分子と分母の数字を入れ替えることで算出していきます。知りたい傾向に合わせて集計できるので、さまざまな雇用動向分析に対応できます。経営や人事などの参考数値としても活用できます。

一般的には2種類の計算方法

一般的な離職率の表記は、「年間◯%」というかたちになっています。

算出に当たって最も単純な方程式は、期初の人数に分母、期末までの年間退職者数を分子とするパターンです。

さらに、離職率にはもう一つの計算方法があります。それは、期初にいた労働者うち、年間何%の労働者が退職したかを算出する方法です。この場合、期中に入社して期中に退職した労働者数のカウントがされないので、離職率はその分、低く算出されることになります。

定着率の求め方

定着率の求め方は、離職率と定着率の関係が分かっており、かつ離職率が算出されていれば簡単に計算ができます。定着率は、対象労働者の中で、離職しなかった人の割合を示した指標です。

対象労働者の総数を1とみなした場合、1から離職率を差し引けば企業に在籍している人たちの割合が計算できます。定着率を求める方程式は、「1-離職率」と覚えておきましょう。

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5.計算した離職率の正しい見方

日常何気なく「離職率が高い」「離職率が低い」などといった表現をしているかと思います。

ここでは、離職率が「高い」「低い」といった表現は、何を基準に考えられているのかを見ていくとともに、離職率の数値を読み解く際にどのような考え方で「高い」「低い」を捉えればいいのかといった、離職率の解読について解説していきます。

絶対値は存在しない

離職率の「高い」「低い」を語る場合、何かの基準値や絶対値があって、その数値より「高い」「低い」と言っているようにも受け取れます。しかし、実際には「適正な離職率」の絶対値というような数値は存在しません。というのは、離職率の対象母体や離職率算出の目的によって算出される離職率には大きな違いが出るからです。

たとえ同じ業種の企業であっても、人材育成に対しての取り組みいかんで離職率に大きく開きが生じます。国や業種、規模、ライフサイクル、年齢などによっては、算出される離職率の適正レベルはまったく異なるのです。

離職率は低ければ低いほど良い、は間違い?

私たちは離職率が低く、定着率が高い企業が優良企業であるといった見方をしがちです。しかし、離職率や定着率を議論する際に最も注意を払わなければならないのは、離職率が低ければ良いというものではないという点です。

例えば、離職率が低くても、プロジェクトのキーマンといった本当に大切な人が離職していれば、企業にとっては痛手となります。単純に数字だけを追ってしまうのはリスクにつながる、という意識を持って数字を読み解く必要があります。

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6.離職率が高い職場の特徴と高まる原因

離職率は、その企業の労働環境や雇用条件、働きやすさの目安となります。離職率が高いということは、人が流動しやすい職種や業界の場合もありますが、通常は働きにくい、労働者にとって魅力がない職場である可能性があります。

そのため、経営者や人事部門では、自社の労働環境や従業員満足度に問題がないか、その判断材料としても使用できます。

離職率が高くなる主な原因としては、

  1. 賃金が低い
  2. 休みが少ない
  3. 労働時間が長い
  4. 評価が適切に行われていない
  5. 業務上の精神的なストレスが大きい
  6. パワハラなど職場の人間関係に問題がある
  7. 業績や将来性に期待できない
  8. 業界そのものが衰退している

などが挙げられます。

①給与が低い、賞与(ボーナス)が出ない、残業代が出ない

生活のために働いている従業員は多くいるでしょう。労働の対価として得られる給料が低いと従業員が判断した場合、離職は避けられません。また、ボーナスが出ない、福利厚生が手薄い、など従業員が得られるメリットが乏しい場合にも同様に、離職率は上昇傾向にあります。

②休日数が少ない、土日が休日ではない、有休を取得しにくい

実態として週休2日未満の職場や、有給休暇を取得しにくい職場など、満足に休むことが難しい環境にいる人材の離職率は当然高まります。また代休や振替休日などの制度が整っていない環境でも、従業員の不平不満は集まりやすくなります。

③長時間労働、深夜残業・休日出勤がある

36協定に規定される労働時間を超えていたり、深夜残業や休日出勤が常習となっていると、離職率が上がることを避けられないでしょう。労働の対価として割増賃金がきちんと支払われない場合や、みなし残業制度の悪用などが見られる場合、従業員の不信感は高まり離職に繋がりやすくなります。

④人事評価制度が適切ではない、評価に公平性を感じない

人事評価は給与や職務の内容に大きな影響を与えるため、従業員がもっとも関心を寄せる制度のひとつです。人事評価に対して客観的な正当性を感じられず、従業員の納得を得られない場合、評価のタイミングで離職を決意する従業員も現れるでしょう。

⑤職場にストレスを感じやすい、メンタルケアが適切に行われていない

風通しのよくない職場環境や人間関係、また従業員のストレスに対するケアが適切に行われていない企業では、疲弊した従業員が離職する傾向にあります。

業界や業種により従業員に与える負荷のレベルは異なり、また個人によりストレスの感じ方はそれぞれです。直属の上司が部下をきちんと見守り、ケアする体制を整えることが必要です。

⑥上司によるパワハラやセクハラ、マタハラ、スメハラ等が横行している

職場のパワーハラスメントやセクシャルハラスメントは許されません。直接的にも間接的にも、従業員同士が傷つけ合う職場では特に、人材の出入りが激しくなるでしょう。

最近では、妊婦に対するマタハラや、臭いに対するエチケットの不足によって起こりうるスメハラなども問題視されています。人事担当者は社内の人間関係に細心の注意を向ける必要があります。

⑦企業の業績が低迷している

企業の業績か悪化しており回復が見込めない場合や、特に従業員の給与がカットされる事態にまで陥っている場合には、離職率は大きく上昇します。

⑧斜陽産業である

グローバル化やAIの発展により、国内では斜陽産業の種類が多くなってきています。農業や繊維業、出版業などにおいて業界自体が衰退していることも、従業員が離職しキャリアの転向を目指すきっかけのひとつとなるでしょう。

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7.職場の離職率を確認する重要性

求職者であれば、その企業の雇用条件や業績、将来性などを入念にチェックする必要があります。

また、経営者や人事部門が自社の改善に生かしたい場合は、それぞれに対する自社の問題点を把握するだけでなく、同業他社や世間相場と比較して自社はどうなのか、チェックする必要があります。同業他社や世間相場よりも雇用条件や労働環境が悪い場合、それを補う魅力がなければ人材を集め、定着させるのは難しいでしょう。

このように、企業にとって、特に経営者や人事部門にとって離職率を抑えることは、採用活動や従業員満足度の向上、労働環境の改善において重要な課題といえます。

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8.離職率が高い業界・低い業界まとめ

ここでは、離職率が高い業界、離職率が低い業種を見ていきましょう。
単純に離職率のみを追うことで、それぞれの会社の実態を把握できたり、低ければ会社がうまくいっている・働く環境が整っている会社だという見方をするわけではありませんが、離職率を知ることは、その業界の一般的な離職傾向を知る手がかりの一つになるでしょう。

新卒社員や中途社員が離職しない企業ランキング

定着率の高い(離職率の低い)企業のランキングが東洋経済新報社「就職四季報2019年版」より発表されています。そのランキングによると、定着率が100%の会社、つまり「入社から3年の間に離職者が1人もいなかった会社」は80社あります。

  1. 日本新薬
  2. 安川電機
  3. 任天堂
  4. 森永乳業
  5. アサヒビール
  6. 電源開発
  7. オークマ
  8. 都市再生機構
  9. ニチアス
  10. 宇宙航空研究開発機構
  11. セントラル硝子
  12. シマノ
  13. ミルボン
  14. 三菱食品
  15. 東京海上日動あんしん生命保険
  16. コーセー
  17. 西部ガス
  18. 日本郵船
  19. 三菱地所
  20. 三井不動産
  21. 伊藤忠丸紅鉄鋼
  22. 牧野フライス製作所
  23. 共同通信社
  24. バンダイナムコエンターテインメント
  25. 西濃運輸
  26. 日新電機
  27. タチエス
  28. アンリツ
  29. 吉野石膏
  30. 沖縄電力
  31. さくら情報システム
  32. 味の素AGF
  33. トヨタホーム
  34. 田中貴金属グループ
  35. 太陽誘電
  36. 石油資源開発
  37. アサヒグループ食品
  38. 東京応化工業
  39. 三ツ星ベルト
  40. 江崎グリコ
  41. 日本パーカライジング
  42. 椿本チエイン
  43. 日本軽金属
  44. 稲畑産業
  45. 名古屋鉄道
  46. 日本メクトロン
  47. 大京
  48. SUMCO
  49. 日本合成化学工業
  50. 太平洋工業
  51. 日本農薬
  52. 東洋大学
  53. 蝶理
  54. 新光電気工業
  55. 日東工業
  56. 南海電気鉄道
  57. ナムコ
  58. 西日本新聞社
  59. PALTAC
  60. 新電元工業
  61. 日新製鋼
  62. 朝日放送
  63. テレビ東京
  64. 毎日放送
  65. ヨネックス
  66. 栗本鐵工所
  67. ジュピターショップチャンネル
  68. 中外炉工業
  69. 日本紙パルプ商事
  70. 中央大学
  71. 住友大阪セメント
  72. 伊藤忠丸紅住商テクノスチール
  73. 東映
  74. 東京建物
  75. 伯東
  76. 日本電気硝子
  77. ピジョン
  78. 森トラスト
  79. 黒崎播磨
  80. 澁澤倉庫

離職率が低い業界ランキング

電飾・ガスなどのエネルギー:95.6%

電気・ガスなどのエネルギー業界における平均定着率は95.6%。上位に入る企業は以下の通りです。

離職率が低い企業例

電源開発、西部ガス、沖縄電力、四国電力、中国電力、JXTGエネルギー、九州電力、東北電力、コスモエネルギーグループ、出光興産、昭和シェル石油など。

メーカー:91.6%

各種メーカーにおける定着率は91.6%。上位に入る企業は以下の通りです。

離職率が低い企業例

日本新薬、安川電機、任天堂、森永乳業、アサヒビール、オークマ、ミルボン、シマノ、牧野フライス製作所、バンダイナムコエンターテインメント、日新電機、ミズノ、バンダイ、フタバ産業、デンソー、豊田自動織機、川崎重工業など。

建設・不動産:87.1%

建設・不動産業界における定着率は87.1%。上位に入る企業は以下の通りです。

離職率が低い企業例

都市再生機構、三菱地所、三井不動産、東京建物、森トラスト、鹿島、新菱冷熱工業、大林組、大京、千代田化工建設、東洋エンジニアリング、竹中工務店、新日鉄住金エンジニアリング、日揮など。

情報・通信・同関連ソフト:86.9%

情報・通信・同関連ソフト業界における定着率は86.9%。上位に入る企業は以下の通りです。

離職率が低い企業例

共同通信社、朝日放送、テレビ東京、毎日放送、西日本新聞社、NTT東日本、NTTドコモ、菱友システムズ、NSW、SCSKなど。

金融:86.5%

金融業界における定着率は86.5%。上位に入る企業は以下の通りです。

離職率が低い企業例

東京海上日動あんしん生命保険、三菱UFJニコス、みちのく銀行、JA三井リース、NTTファイナンスと、生命保険会社、信販会社、銀行などさまざまです。

国内の離職率は高まる傾向?

942社の3年後定着率の平均は88.0%という水準になっており、前年と比較すると0.9ポイント減少しています。

有給休暇取得日数平均は微増、残業時間月平均もわずかながら減っているなど、働きやすさを示すデータはやや改善傾向が見られているにもかかわらず、定着率は悪化している現象が起きています。

離職率が高い業界ランキング

最も低いのは、小売(75.6%)で、それ以外の業種の平均は、メーカー91.6%、建設・不動産87.1%、情報・通信・同関連ソフト86.9%、金融86.5%、となっています。

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9.離職率を下げることに成功した企業事例

離職率を下げることに成功した企業、株式会社レオパレス21と株式会社鳥貴族の実例から、離職率の低減に向けてのヒントを探ってみます。

事例①株式会社レオパレス21

テレビコマーシャルでもお馴染みの株式会社レオパレス21は、1973年に設立された企業です。

事業内容は、アパートやマンション、住宅などの建築および賃貸管理・販売や、リゾート施設の開発・運営です。また、ホテル事業やブロードバンド通信事業、介護事業にも業務展開をしています。本社は東京都中野区にあり、約20の関連会社を傘下に置いています。

住まいに関する事業を中心として社会に貢献している東京証券取引所市場第一部上場企業です。

離職率を改善できた理由

株式会社レオパレス21の離職率に対する施策が始まったのは、2013年でした。もともと業界自体の離職率が高かったこともあり、優秀な社員の流出を防止し、社員の定着を図るため

  • 研修の充実
  • 人事・評価制度の見直し
  • 労働時間の短縮

の3つの社内改革に着手しました。

研修の充実では、管理職研修、営業力強化研修、組織マネジメントといった部門や立場ごとに研修を細かく用意しました。人事・評価制度の見直しでは、人事部によりヒアリングを強化。

主戦力である建築請負部門から他部署への異動希望に道を開き、建築請負部門を離れる人材に対して人事部が丁寧にヒアリングを行ったり、新卒採用1年目の社員に対しても現場だけでなく人事部がヒアリングをしたりする制度を設けました。

労働時間についても、「労働時間イコール評価ではない」といった情報発信、リフレッシュ休暇制度や計画年休制の創設などにより、しっかり休んでしっかり働くというサイクルを社員に根付かせました。

その結果、離職率が3年連続で改善できただけでなく、一人当たりの月間時間外労働は6時間の削減、70%に迫る有給休暇の取得率などを達成。社員の意識改革とともに、離職率の低い長く働きやすい職場環境が整備されました。

事例②株式会社鳥貴族

株式会社鳥貴族は、1986年に設立されました。

「鳥貴族」は、全メニューが298円の均一料金で、安さと国産国消の取り組みが若者や女性、サラリーマンを中心にヒットしている外食産業です。焼き鳥をメインにした飲食店「鳥貴族」の営業とカムレードチェーン事業を展開しています。

2018年8月末現在、店舗数666店舗、パート・アルバイトを含む従業員数は2018年7月末現在12,599名で、「焼鳥屋で世の中を明るくしていきたい」という理念のもと急成長しています。

成功のポイント

株式会社鳥貴族の人財部は、採用に関して「むやみやたらに採用しない」ことにこだわっています。

入社後に活躍できる人材を見極め採用。採用方法にもこだわりがあり、中途採用では応募者の面接を1対1で行います。その後、東西エリアの面接官2名、人財部部長、採用教育課マネージャーの計4名で選考会議を行い、4名の多様な価値観で採用を決定します。店舗で面接を行う場合もあり、実際に働く職場へのイメージを採用前につかんでもらう取り組みにも積極的です。

また、入社1カ月後には、面接官が配属先の店舗を訪れます。新入社員の対応を店長に任せるのではなく、人財部が関与することで離職への火種を消すことを目的としています。

外食産業のイメージである長時間労働といった点にも対応した制度を整えており、無断での残業、休日出勤の禁止、多少の残業でもその都度上長へ申告させるなど、社員が安心して働ける労働環境を整えています。株式会社鳥貴族の企業理念の一つである「外食産業の社会的地位向上」の使命の下、社員が夢や誇りを持てる企業づくりが行われています。

離職率を下げる方法まとめ

一般的に、離職率は従業員満足度に反比例するとされています。離職率が上がれば、従業員満足度は下がっている状態を示し、離職率が下がれば従業員の満足度が上がることが多いからです。

離職率を下げることは、企業にとってもメリットが多いことは言うまでもありません。労働時間の改善や評価制度を最適化するなどして、職場における従業員満足度を向上させ、人材の定着を図りましょう。