ダイバーシティとは?【意味を簡単に】&インクルージョン

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最近、さまざまな分野で「多様性」を意味する「ダイバーシティ」という言葉をよく耳にするようになりました。とりわけビジネスの世界では、企業経営のキーワードのようにダイバーシティが用いられています。しかしダイバーシティとはどういうことなのでしょう。

  • ダイバーシティの種類や分類
  • 類似語のインクルージョンとの違い
  • ダイバーシティの歴史や推進方法
  • 実際のダイバーシティ活用事例

などについて説明します。

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1.ダイバーシティとは?

ダイバーシティ(Diversity)とは、多様性を意味する言葉で、人種や性別、宗教、価値観、障がいといった様々な属性をもった人達が、組織の中で共存している状態のことです。ビジネスにおいては、この多様性を活かした組織づくりを行うことで、組織の成長や競争優位性を図ります。

ダイバーシティは

  • 年齢
  • 性別
  • 国籍
  • 学歴
  • 職歴
  • 人種
  • 民族
  • 宗教
  • 性的指向
  • 性自認

といった人材の多様性を認めるだけでなく、積極的に労働市場で採用、活用しようという考え方も表しています。

ダイバーシティという考え方は、もともとアメリカ国内におけるマイノリティや女性が差別を受けない採用活動や公正な処遇の実現を求める運動から広がったもの。

日本社会では、人権や少子高齢化によって引き起こされる労働力人口減少に対応できる人材確保といった視点からも、ダイバーシティが叫ばれるようになりました。

そして現在では、

  • 人種
  • 宗教
  • 価値観
  • 性別
  • 障がい者
  • ライフスタイル

といった観点のダイバーシティが日本企業の中で広がりを見せています。

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2.ダイバーシティマネジメント(ダイバーシティ経営)とは?

ダイバーシティマネジメント、もしくはダイバーシティ経営とは多様性を意味するダイバーシティを生かした企業のマネジメントアプローチのこと。

組織内における個人の多様性をマネジメントして、ビジネス市場で優位に立てるよう組織全体を管理する手法というと分かりやすいでしょうか。ダイバーシティマネジメントでは、多様性を生かすことが事業の成長と企業の発展を促すと認識されています。

アメリカではダイバーシティマネジメントを「多様性の受容」、すなわちダイバーシティ&インクルージョン(Diversity &Inclusion)と表記しているため、日本企業もそれにならった表記をしている企業も多いです。

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「日経連ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会」報告書による定義

ダイバーシティとは「多様な人材を活かす戦略」である。

従来の企業内や社会におけるスタンダードにとらわれず、多様な属性(性別、年齢、国籍など)や価値・発想をとり入れることで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長と個人のしあわせにつなげようとする戦略。

参考 ダイバーシティ・マネジメントの方向性文部科学省

木谷宏 麗澤大学経済学部教授による定義

外見上の違いや内面的な違いにかかわりなく、すべての人が各自の持てる力をフルに発揮して、組織に貢献できるような環境を作ることであり、人種、国籍、言語、性別、年齢、容姿、障害の有無などの外見的な違いだけでなく、価値観、宗教、生き方、考え方、生活、性的指向、趣味、好み、働き方、さらには時間制約といった様々な内面の違いや個人の事情をも受容することである。

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参考 人的資源管理論の限界と「社会的報酬」に基づく人事管理の再構築 -ポスト成果主義と人材多様性に向けて-麗澤大学

3.ダイバーシティの種類・分類

ダイバーシティは、大きく分けると2つの種類に分類できます。ここでは、2つに分類した場合のダイバーシティの特性について説明します。

  1. 表層的ダイバーシティ
  2. 深層的ダイバーシティ

表層的ダイバーシティ

表層的ダイバーシティは自分の意思で変えることができない生来のもの、あるいは自分の意思で変えることが困難な属性を意味します。

表層的ダイバーシティには、

  • 人種
  • 年齢
  • ジェンダー
  • 障害
  • 民族的な伝統
  • 心理的能力
  • 肉体的能力
  • 特性
  • 価値観
  • 性的傾向

などが該当します。

深層的ダイバーシティ

深層的ダイバーシティとは表面的には同じに見え、大きな問題とは思えないけれど内面的には大きな違いがあり、そのことがかえって問題を複雑にする側面を持ったもののこと。

深層的ダイバーシティには、

  • 宗教
  • 職務経験
  • 収入
  • 働き方
  • コミュニケーションの取り方
  • 受けてきた教育
  • 第一言語
  • 組織上の役職や階層

などがあり、違いに気付きにくいです。深層的ダイバーシティをどう理解し、どう活用していくかは、組織マネジメントの大きな課題といえるでしょう。

表層的ダイバーシティ・深層的ダイバーシティのいずれにおいても、理解のためには人材の情報を適切に管理することが大切です。

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4.ダイバーシティとインクルージョンの違い

ダイバーシティと類似した言葉にインクルージョンがあり、日本では、両方ともほぼ同じ意味や文脈で用いられているのです。しかし一般的には、

  • ダイバーシティ:「同化・分離」
  • インクルージョン:「統合」

と解釈します。

ダイバーシティの定義

ダイバーシティとは、組織が均質な状態(モノカルチャー)から、多様性を内包した状態

中村豊『ダイバーシティ&インクルージョンの基本概念・歴史的変遷および意義』(2017)

(ダイバーシティ&)インクルージョンの定義

ダイバーシティ&インクルージョン(ダイバーシティ・マネジメント)とは、多様な人材を企業組織に受け入れ、それらすべての人々が多様性を活かしつつ、最大限に自己の能力を発揮できると感じられるよう戦略的に組織変革を行い、企業の成長と個人の幸福に繋げようとするマネジメント手法

中村豊『ダイバーシティ&インクルージョンの基本概念・歴史的変遷および意義』(2017)

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5.アメリカにおけるダイバーシティの歴史的変遷

ダイバーシティが誕生したアメリカでは、ダイバーシティはどのように捉えられたのでしょう。歴史的な変遷を説明します。

第一段階:リスクマネジメント(1960年代~1970年代)

アメリカにおけるダイバーシティの歴史の最初の1ぺージは、1960年代から1970年代にかけて刻まれました。

この頃、

  • 公民権運動
  • 女性運動

が盛んになり、それをきっかけとしてダイバーシティの考え方が誕生したのです。

1960年代

  • 1964年公民権法第7編の制定
  • 雇用機会均等委員会(EEOC)2が設立

により、被差別者は採用や昇進の際に雇用機会均等法(EEO)を根拠として雇用者を告訴できるようになりました。

さらに1966年にアファーマティブ・アクション(AA)3 が導入されると、

  • 人種
  • 肌の色
  • 宗教
  • 出身地

などの項目や、1967年から追加された性別の項目についての差別撤廃が社会で受け入れられるようになりました。

そして、一部の事業主には差別によって不利益を被った人々の

  • 積極的採用
  • 教育機会の提供
  • 昇進

といった措置が強く求められるようになったのです。

1970年代

さらに、

  • 1972年に雇用機会均等法における告訴対象が直接差別、間接差別に拡大
  • アファーマティブ・アクションが雇用者に雇用形態の詳細な報告と救済計画の提出を義務付け

などの結果、

  • 1976年までにアファーマティブ・アクションの措置を企業の70%以上が実施
  • 大企業の80%が雇用機会均等法施策を保有

という実績を生み出しました。

こうした流れのほか、黒人女性といったマイノリティに対する人種差別に関する告訴に大企業が敗訴し、多額の賠償金を支払うという事例が発生したのです。

これらにより、企業が取り組むべきリスク管理課題の一つとして、ダイバーシティマネジメントがクローズアップされていきました。

第二段階:企業のCSR・グローバル展開(1980年代~1990年代前半)

ダイバーシティの第二段階は、企業の社会的責任(CSR)やグローバル展開が起きた1980年代~1990年代前半にあります。

1960年代~1970年代にダイバーシティをリスクマネジメントと捉えるきっかけがつくられ、多様性を認識してこなかった組織が多様性の受容を認めるところまで時代を進ませることができました。

しかし、この頃の企業意識は、

  • 多様性というノルマを果たす
  • 多様性へのコストを負担する

が中心。

1980年代から

1980年代に入って雇用機会均等法とアファーマティブ・アクションが整備されたにもかかわらず、大企業内では、

アファーマティブ・アクションは労働力を統合的に管理するためのもの

  • 人的資源系画策における有用性
  • 政府施策の不安定さから、時代が逆戻りする可能性がある
  • 差別を受けていた人々が思いのほか割安な労働力であった

などに意識を集中していたのです。つまり第二段階までのダイバーシティは、消極的思考のもとに形成されていたに過ぎず、既存の組織文化を崩すまでには至りませんでした。

そのため、ダイバーシティ本来の持つ個人のパーソナリティの発揮には到底届くわけもありませんし、期待を裏切られたことによる高い離職率を生み出しただけだったのです。

しかし、一歩踏み込んで企業の社会的責任としてダイバーシティを意識し始めたことや、その発想がグローバルに展開しつつあったことは評価できるでしょう。

第三段階:競争優位性を確保する戦略的ダイバーシティ(1990年代後半~)

ダイバーシティの第三段階は、1990年代後半からの競争優位性を確保する戦略的ダイバーシティの誕生です。

そのきっかけは、

  • 1980年代のアメリカでの大量生産大量消費モデルの行き詰まり
  • 1987年米国労働省とハドソン研究所が発表した「21世紀のアメリカの人口構成の予測」が「1985年~2000年までの新規労働力のうち、ほとんどの新規労働力は米国生まれ白人女性とマイノリティ人種及び移民である」というレポート

にあります。

つまり、

  • 新商品や新市場、新サービスを生み出して競争優位性を獲得する手段
  • 労働人口構成の激変に対応する手段

として、ダイバーシティの実現によるビジネスチャンスの拡大を企業が模索し始めたのです。

1990年代後半から現代に至るまで

ダイバーシティの解釈は、

  • 企業倫理や企業の社会的責任という視点からではなく、競争優位性や競争力強化といった視点でダイバーシティを捉える
  • 多様な人材という言葉の解釈が、表層的多様性から深層的多様性までに深まりと広がりを持った言葉に変わる
  • ダイバーシティの問題解決の視点が、個人レベルから組織レベルへとステージをアップさせる
  • 政府主導の義務から、企業が独自に問題発見や解決に取り組む長期的な課題に変化する

などの大変革を起こしてきました。これはつまり、ダイバーシティが企業戦略そのものに対して、大きな存在感を持つようになってきた証しといえるでしょう。

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6.日本企業がダイバーシティを重視する背景

日本企業がダイバーシティを重視する背景は何でしょう。1980年代まで日本国内では、ダイバーシティに関する議論はほとんど起こりませんでした。

その理由は、

  • 島国である日本が、極めて単一民族に近い民族構成比だった
  • 終身雇用制度や年功序列といった日本独自の雇用慣行が主流だった

など。

欧米諸国が置かれていた環境と異なる地理的環境や企業文化を持つ日本では、社員や組織の同質性が企業の良さを象徴しており、その同質性をどう活用して成功をつかむかが焦点になっていました。

しかし、徐々にではありますが、日本企業も大企業を中心としてダイバーシティをポジティブアクションと捉えた取り組みを始めているのです。このように、日本でもダイバーシティが重視されつつある背景には、4つの理由が考えられます。

  • 労働人口減少と労働人口構造の変化
  • 企業のグローバル化
  • 雇用意識・価値観の多様化
  • 消費の多様化

①労働人口減少と労働人口構造の変化

1つ目は、労働人口減少と労働人口構造の変化です。

「生産年齢人口」という言葉を知っていますか?これは社会で働くのに適した15歳~64歳までの人口のこと。

NHKの番組内調査によれば、すでに生産年齢人口は1995年にピークを迎え、2015年にはピーク時と比べて1,000万人ほど減少していると分かったのです。2050年にはおよそ2,000万人以上の減少予想もあることから、今後の日本は慢性的な人手不足に陥る可能性が否定できません。

人手不足の深刻化とは、生産やサービスの供給が需要に対して間に合わなくなる現象のこと。企業活動を行いたくても、社員が確保できないことから操業不可能となってしまうのです。現実、人手不足による倒産も起きつつあります。

現状に危機感を持った経済産業省は、「女性をはじめとする多様な人材の活躍は、少子高齢化の中で人材を確保し、多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高める『ダイバーシティ経営』を推進する上で、日本経済の持続的成長にとって不可欠」と提言しています。

②企業のグローバル化

グローバル化とは、従来の枠組みであった国や地域を越えて、地球規模でさまざまなやりとりが行われること。日本でも、1990年代から始まった国内市場の飽和による内需の減少によって、グローバル化が急速に加速しました。

  • 日本企業の海外進出
  • 海外企業の日本進出

の両方が進む国際競争の激化は、製造業以外のさまざまな業界に事業規模を問わず波及していきます。

つまり多様な価値観を持つ世界中の顧客ニーズにマッチするような商品開発やサービス提供によって、世界規模での消費拡大を余儀なくされたのです。

そのため企業は、多様な価値観の受容、国籍や人種を問わない優秀な人材の採用や育成に力を注ぐことになりました。これが、ダイバーシティの考え方を大きく広げる一因となっています。

③雇用意識・価値観の多様化

3つ目は、雇用意識・価値観の多様化。それは、「会社人間」という言葉に象徴されるような、従来の雇用意識や価値観が終わったことを意味します。

特に、若年層に顕著に見られる傾向で、

  • 仕事と私生活の両立
  • やりがいなど、達成感志向
  • 能力や技術、個性の発揮の重視
  • 転職志向
  • 帰属意識の希薄化

などさまざまな雇用意識や価値観で仕事を捉えようとする人たちが増えているのです。

女性の社会進出もめざましく、女性の雇用比率も年々上昇。また女性が働くことによって、家事や育児などにおける男性の役割変化も問題となっています。

日本社会全体が変わりつつある

つまり日本社会全体で働くことへの意識や価値観の大転換が起こりつつあるのです。

  • 自己の能力が生かせる企業の選択
  • ワークライフバランスを重視する働き方の選択

が進む中で企業側も、

  • 多様化した雇用意識や価値観への対応
  • 多様なニーズ
  • に対した柔軟なマネジメントを行い、
  • 個々の能力の発揮
  • モチベーションの向上
  • 企業との信頼関係の構築

を図ることが急務となっています。

④消費の多様化

4つ目は、消費の多様化。

日本の消費市場は成熟し、飽和状態にある一方で個人の消費志向は多様化しています。また、「1点物の購入」といった個性重視の消費傾向が増加しているといわれているのです。

さらに消費の意味も「モノの消費」から「コトの消費」への移行が進んでおり、機能を求めたモノの購入から、体験を重視する消費行動へ転換してきています。このように多様化した消費者行動に対応するために、企業戦略の転換を求められているのです。

それは、

  • 同質で均一な組織の変革
  • 柔軟な意思決定
  • 自由な発想を創造

などダイバーシティの要素を企業戦略へ積極的に取り入れなければ生き残れないことを意味するともいえます。

消費行動の多様化にマッチする企業戦略を実現するためにも、多様な人材を企業の中に取り込み、顧客間のシームレス化を推進することは重要でしょう。

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7.ダイバーシティを推進するには?

ワークライフバランスの充実

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①育児休業・介護休業の充実、活用

1つ目は、育児休業・介護休業の充実、活用。

「育児休業、介護休業等、育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」には労働者の権利として、

  • 「1歳未満の子」を養育するための育児休業
  • 「2週間以上にわたり常に生活補助を必要とする家族」を介護するための介護休業
  • 3歳未満の子を持つ労働者が利用できる1日6時間勤務といった所定労働時間の短縮措置

が盛り込まれており、企業に対しても、

  • 短時間勤務制度や所定外労働免除制度の導入
  • 労働者から申請があった場合における所定外労働の免除を原則化

といった措置を義務化しているのです。

メリットと課題

これらは企業に、

  • 優秀な人材の確保
  • 人材の採用や育成
  • 女性の視点を生かした商品やサービスの開発

といったメリットをもたらすでしょう。しかし現実には、

  • 長時間労働を当然とする企業風土
  • 職場復帰後のさまざまな不安
  • 対象社員と非対象社員との不公平感

などが阻害要因となり、制度の活用は進んでいません。今後は、ハードの整備とともに、ソフト面のケアにクローズアップした対策が求められるでしょう。

②勤務体系の柔軟化(フレックス制、裁量労働制など)

フレックス制、裁量労働制など勤務体系の柔軟化は重要です。

フレックス制

フレックス制とは、始業時刻と終業時刻に一定の幅をもたせて出・退勤時間の判断を社員に委ねる制度のこと。

  • 業務効率の向上
  • 通勤ラッシュによる疲弊の軽減

が期待されています。

裁量労働制

裁量労働制とは、実際の労働時間とは関係なく、あらかじめ労使で協定した時間において労働したと見なされる制度のこと。

この制度は、

  • 新商品や新技術に関する研究開発
  • 取材や編集、放送や映画関連のプロデューサーとディレクター

など高度に専門的な職務に限られており、

  • 労働時間の分配
  • 業務遂行に関する裁量

は労働者に一任されているのです。柔軟な勤務体系は、社員に自らをコントロールする自立的管理を求めるでしょう。しかし自らの裁量範囲は広がります。これにより、さまざまなワークライフバランスに対応する勤務を実現できるでしょう。

③勤務地の柔軟化(リモートワーク、サテライトオフィスなど)

リモートワーク、サテライトオフィスなどを活用した勤務地の柔軟化も欠かせません。

現代では、スマートフォンやタブレットなどさまざまな電子端末が開発され、これらを活用してオフィス以外の場所で就業するスタイルも身近なものになりつつあるのです。

  • 職場を離れて文書作成をし、それを電子メールで提出
  • 遠隔通信を活用して、職務を遂行

など働き方の選択肢が増えれば、ワークライフバランスの充実に直結するでしょう。

もちろん、

  • 勤務中の社員に対応する管理監督
  • 評価や処遇

といった問題も検討課題に挙がりますがそれ以上に、

  • 通勤による肉体的、精神的負担の軽減
  • 家事や育児、介護との両立を可能とするフレキシブルな就労形態
  • 多様な人材の離職率を低減する
  • 家族や友人と過ごす時間を確保できる

などのメリットをもたらします。

経営層を含めた研修プログラムの整備

経営層を含めた研修プログラムの整備も欠かせません。

ダイバーシティの考え方は、一朝一夕で構築できるものではないのです。企業文化レベルまで引き上げるには、マネージャーといった経営層を含めた研修プログラムの実施が不可欠といえるでしょう。

プログラムでは、

  • 個々の人間が持つバイアスを認識
  • バイアスがもたらす悪影響を認識
  • それら悪影響を意思決定から排除する意識を形成
  • すべての社員が参加できる意思決定に職場を現実化するための行動

を柱にし、組織を率いるマネージャーなどの経営層が、組織メンバーの意見を引き出すにはどういう思考を持った存在になるとよいのかを学ぶのです。これは、ダイバーシティの定着に大きな影響を与えるでしょう。

・研修の受講・未受講の管理
・研修後アンケートの作成・集計
・研修受講者・未受講者のモチベーション分析

これらがすべてカオナビでできます。
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8.ダイバーシティ推進における課題

ダイバーシティ推進における課題は4つ。

  1. 多様な価値観が混在することによる軋轢や対立、誤解
  2. 国籍や人種、第一言語などの違いによるコミュニケーションへの弊害
  3. 多様な意見の調整難航によるチームワークパフォーマンスの低下
  4. 誤認識や無意識のハラスメントの発生

ダイバーシティを推進する以前の企業は、同質あるいは均一の価値観が重んじられていたため意思伝達もスムーズで、このような課題は表面化しにくかったといわれています。

しかし、ダイバーシティの考え方を取り入れた場合、多様性が多様な価値観同士の軋轢や対立、誤解を生み出してしまうため、様相が変わるのです。

またそれは、

  • 第一言語や生活習慣の違いからくるコミュニケーションの弊害
  • 異文化で多種多様な人材の混在による無意識や誤認識から発生するハラスメント

といった面にもつながります。このような問題が起こると、当然、組織内のチームワークは壊れますし、パフォーマンスの低下は避けられません。

ダイバーシティを推進する際は、単なる多様な人材の採用と定着だけでなく、「多様な価値観を持った人材を受容する企業風土の創造」が不可欠なのです。

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9.ダイバーシティへの取り組み事例

ダイバーシティに取り組んだ8社の事例をご紹介します。

  1. 損保ジャパン日本興亜
  2. ベネッセコーポレーション
  3. 日本IBM
  4. P&G
  5. 資生堂
  6. リクルート
  7. パナソニック
  8. 大和証券グループ本社

①損保ジャパン日本興亜

損保ジャパン日本興亜は「人間尊重推進本部」を設置し、

  1. 人権啓発
  2. 健康管理
  3. 労働時間
  4. 女性活躍推進

の4テーマを課題として取り組んでいます。内容は、首都圏ウィメンズコミッティを設置し、女性の能力発揮、長期勤続に対する具体的施策を検討するといったものです。

そこで、

  • 短時間勤務制度、退職者再雇用制度の創設
  • 休業中対象者へのフォロー体制
  • 育児休職者専用のホームページの立ち上げ
  • 託児所との連携
  • 業務職のキャリアアップモデルの創設
  • 業務職から総合職への転換推進
  • 業務職の人事ローテーションの実施
  • 社内公募制ジョブチャレンジ制度の業務職への適用
  • 女性いきいきアンケートの実施

などを行った結果、

  • 産前産後休暇や育児休業制度、育児短時間勤務制度、退職者再雇用制度の利用者が増加
  • ウィメンズコミッティに男性社員が参加
  • 2005年に、初の男性育児休職取得者が現れる
  • 平成16年度 均等・両立推進企業表彰「東京労働局優良賞」受賞
  • 経営倫理実践研究センター 第2回経営倫理実践努力賞「共生特別賞」受賞

といった成果を生み出したのです。

②ベネッセコーポレーション

ベネッセコーポレーションは、

  • 女性の積極的活用
  • ワークライフバランス

に早期から取り組んでいる企業の一つです。1999年の「ファミリー・フレンドリー企業表彰」第1回労働大臣優良賞受賞企業でもあります。

  • 本社が岡山県にあるため男性の採用活動が思うように進まなかった
  • 教育、福祉、語学といった事業特性が女性にマッチしていた
  • 4大卒の女性を創業当初から積極採用していた

などを背景にして、女性が働きやすい職場環境や仕組みの構築に努めてきました。

具体的な施策としては、

  • 社内託児施設の設置
  • 育児休職制度は配偶者が専業主婦(夫)でも取得可能
  • 有期雇用社員も育児休職や小学校3年までを適用範囲とする育児時短勤務の取得が可能
  • 育児休職中の社員がイントラネットへアクセスできる環境を整備
  • 復職時にヘルスケア専門担当者がつき、復帰後1年間カウンセリングを実施
  • 住宅、介護、医療、年金、育児などから必要な支援を選べる福利厚生カフェテリアプランを実施(年間92ポイント、1ポイント=1,000円)
  • 全社員への満足度調査を匿名で実施し、結果を公表
  • 社長以下管理職までを対象とした360度サーベイの実施

などがあります。これら施策の実施で、

  • 女性比率57.6%、女性管理職比率32.3%、役員クラスの女性比率17.6%(2005年)
  • 子どものいる女性社員比率17%(2005年)
  • 1995年から2005年の10年間で育児休職取得者378名、復職率90%

などの効果が現れました。

③日本IBM

日本IBMは、

  • グローバルな市場動向を反映した経営
  • 機会均等への社会的責任
  • 女性の積極的活用
  • 管理職の多様性促進
  • 多様な文化の受容と認知
  • ワークライフバランス

などを経営に盛り込んでいます。具体的施策として、日本IBM社内に社長直属で女性の活躍を阻害する要因と解決策を提言する経営諮問委員会、ジャパン・ウィメンズ・カウンシルを設置しているのです。そして、

  • 女性社員向け大規模フォーラムで女性エグゼクティブの専務がメッセージを発信
  • キャリア相談にアドバイスするメンタリングの実施
  • 技術系女性の採用を強化
  • 女性技術者育成支援のコミュニティ「COSMOS(コスモス)」の立ち上げ
  • 育児・介護を理由とした在宅勤務制度の導入
  • 満2歳までの育児・介護休暇制度の導入
  • 育児・介護の相談や情報検索、関連サービスのサポートを受けられるファミリー・ケア・ネットの導入

が具体的施策として実施された結果、

  • 2000年の離職率が男女同レベル
  • 新卒採用に占める女性比率30%、全社での女性比率は17%に上昇
  • 在宅勤務制度利用者の累計2,000人以上

といった成果が現れました。

④P&G

P&Gは、一般消費者向けの製品を製造・販売している企業です。年々多様化する一般消費者の嗜好にマッチさせるため、多様な価値観から生み出されるイノベーションを製品づくりに生かしています。

  • 企業文化、制度、スキルの相乗効果によって個々の能力と成果を最大化
  • 多彩な才能とアイデアからのイノベーションの創造
  • 多様な価値観を持った顧客を理解する企業文化の創造と製品開発

を実現するため、P&Gはダイバーシティに取り組んでいるのです。

具体的には、

  • 毎年3月に全社員を対象として「社外スピーカーによるダイバーシティとインクルージョンの重要性に関する講演会やセミナー」を実施
  • 管理職と新入社員を対象とした研修を開催
  • 在宅勤務、フレックス制度、ワーク・アワー制度など働き方を選べる制度を設計
  • 毎月最大で5日間、ロケーション・フリー(オフィスや自宅以外での勤務を可能とする)を導入
  • オフィスと自宅、両方の勤務時間を合計できるコンバインド・ワークを導入

といった施策を試みました。

これらの施策により、

  • 多様なアイデアやイノベーションの誕生
  • 多様化した顧客ニーズにマッチした製品の開発
  • 全社的な生産性の向上
  • 有能な人材の確保による母集団のレベルアップ
  • 人材を最大限活用する企業文化の創造

を実現できたのです。

⑤資生堂

資生堂は、

  • コンプライアンスの遵守
  • 社員が働きやすい環境整備

の実現によって、企業イメージを高めている企業です。化粧品を扱っているだけに、女性の登用も積極的に行っています。

そんな資生堂は、

  • あらゆる差別や虐待、モラルハラスメントを許さない
  • 全社員の人格や個性、多様性を尊重し、最大限に能力が発揮できる環境や企業風土の創造
  • 対話を通して社員の成長を促進
  • 公正な人事評価の実現

といった目的課題を設定し、ダイバーシティに取り組んできました。

具体的には、

  • 女性のリーダー任用と人材育成
  • LGBTへの支援や社内セッションの開催
  • 同性パートナーの処遇に関する就業規則の改定
  • 障がい者を積極的に雇用
  • 海外の現地法人で直接採用
  • 希望者全員の再雇用に向けて「ELパートナー制度」「シニア・サイエンティスト制度」を導入

といった施策に取り組みました。

結果、

  • 2017年度に女性管理職比率30%を実現
  • 事業所内で保育所事業を行う合弁会社を設立
  • 長時間労働の削減と時間外労働半減の達成
  • 2016年度に国内資生堂グループ全体で障がい者の雇用率2.06%達成
  • 2017年度に333名の定年後再雇用を実現

といった成果が出ています。

⑥リクルート

時代を先読みする力と情報発信力に定評のあるリクルートも、ダイバーシティに積極的な取り組みを見せています。

リクルートの目的課題は、

  • 「多様な個性、価値観を認め合い、やりがいを持って成長し続けられる会社」を目指す
  • 年齢や国籍、雇用形態などにとらわれず、個々が能力を最大限発揮し、企業競争力を高めていく
  • 多様性のあるユーザーに対応すべく、社内でも多様な価値観を容認していく

などです。

施策として、

  • 次世代の経営人材候補となる女性を育成
  • 28歳の女性社員を対象として先輩女性社員によるキャリア面談を実施
  • 出産や育児で一時休職した社員の職場復帰支援を拡充
  • 事業内保育園の創設

などを実施し、

  • 2012年から2013年にかけて、女性執行役員比率が向上
  • 2012年時点で女性社員の4人に1人がワーキングマザー
  • 本社内に事業内保育所「And’s」を開設
  • ベビーシッターとの法人契約を実現
  • 28歳の女性社員に向けて社内限定サイト「Career Cafe 28」を開設

といった成果を生み出しています。

⑦パナソニック

パナソニックは、一般消費者の暮らしの役に立つ家電製品を技術革新によって生み出してきた企業で、ダイバーシティに関する取り組みにも積極的です。

目的課題として、

  • ダイバーシティによる個性と能力の発揮により、イノベーションを創造
  • 個々の社員が革新的な価値の創造に取り組む
  • 多様性が生きる企業風土の創造

を設定し、具体的な施策に落とし込んできました。

その施策とは、

  • 次世代育成支援対策推進法への対応
  • 小学校就学直前まで取得可能な通算2年間の育児休業制度といったワーク・ライフ・マネジメント支援の整備
  • 介護や学校行事で利用できるファミリーサポート休暇を導入
  • 不妊治療専用にチャイルドプラン休業を導入
  • 女性リーダー向けキャリアアップセミナーを開催
  • 再雇用を希望する全60歳以降の社員に就業機会を確保

施策により、

  • 2017年に女性管理職464人を実現
  • 2017年に女性役付者比率6.9%を達成
  • イントラネットに「ワークライフバランス体験談コーナー」を設置
  • 介護融資制度の創設
  • グローバル連結総社員26万人を日本以外の多様な国籍メンバーで構成

といった成果を生み出しました。

⑧大和証券グループ本社

大和証券グループ本社は、証券営業の業績を上げる社員を学歴やジェンダーを問わずに評価する文化を持つ企業で、女性の総合職や管理職登用にも積極的です。

その大和証券グループ本社が、さらなる女性の活用を目的課題に据えて、ダイバーシティに取り組んでいます。

具体的な施策は、

  • 女性の新卒採用を積極に進める
  • 女性の管理職登用を実現
  • 女性活躍支援プランの策定
  • 女性が家事や育児と仕事を両立できるような環境を整備

また、2005年には女性活躍支援プランが策定されました。その中身は、

  • 営業員再雇用制度の実施
  • 育児休職期間・育児時間の取得期間延長
  • 上限2万円の範囲内で保育施設費用補助制度の新設
  • 休暇制度の充実
  • 復職復帰プログラムの実施

などで構成されています。その結果、

  • 女性管理職の急増
  • 新規採用の女性比率5割弱を達成
  • 証券営業職の優秀社員を表彰する社長表彰受賞者の女性比率3割達成

といった実績を残しており、今後のますますの取り組みが期待されています。


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ダイバーシティのQ&A

ダイバーシティ(Diversity)は、「多様性」や「相違点」という意味を持ちます。経営用語として用いる場合には「個人や集団の間に存在しているさまざまな違い」という解釈になります。 ダイバーシティの対象には、年齢・性別・国籍・学歴・職歴・人種・民族・宗教・性的指向・性自認があります。
多方面のテーマにおいて推進できますが、ワークライフバランスの充実がよく取り上げられます。 ①育児休業や介護休業の制度充足 ②勤務体系の柔軟化(フレックス制、裁量労働制など) ③勤務地の柔軟化(リモートワーク、サテライトオフィスなど) 上記を例として、施策を検討してみましょう。
ダイバーシティマネジメントを推進し、女性社員のキャリア形成に注力する株式会社えがおの事例をご紹介します。 社員の7割を女性が占める環境で、保育所の設置はもちろん、夏休みなどの子どもの長期休暇の期間中は学童保育も運営し、社員の子育てと仕事の両立を支援されています。