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そこで重要になるのが、「人材育成ロードマップ」です。人材育成ロードマップは、単なる育成計画ではなく、企業の未来を描くための羅針盤として機能します。
今回は、人材育成ロードマップの目的や作成方法、具体的な手順や失敗例などを解説します。
目次
1.人材育成ロードマップとは?目的と導入メリット
人材育成ロードマップがあることで企業が求める人材像と現状のギャップを明確にし、そのギャップを埋めるための育成計画を可視化できます。これにより、従業員一人ひとりが自身の成長を具体的にイメージできるようになるのです。
まずは、人材育成ロードマップの目的や導入メリットをみていきましょう。
人材育成ロードマップの目的
人材育成ロードマップの作成は、単に育成計画を立てるだけでなく、企業全体の成長戦略と連動させる重要な役割を担います。その目的として、主に以下の3つが挙げられます。
人材育成計画を社内に共有するため
人材育成ロードマップは、策定された人材育成計画を社内全体に明確に共有するためのツールとして機能します。
経営層、人事部門、現場の管理職、そして従業員それぞれが、「どのような人材を、いつまでに、どのように育成していくのか」を共通認識として持てるようになるのです。
部署間の連携がスムーズになり、育成の方向性がブレるのを防ぎます。従業員自身も自身のキャリアパスと育成計画が明確になることで、主体的に学習に取り組む意識が高まるでしょう。
一貫した人材育成を行うため
人材育成ロードマップは、企業が目指すゴールに対し、一貫性のある育成を推進するために不可欠です。
ロードマップがあることで、育成担当者によって指導内容が異なるといった属人的な育成から脱却し、誰が育成を担当しても一定の質を保った教育を提供できるようになります。
経営層と現場の意思を統一した上で、企業の経営戦略や事業目標と連携した人材育成を行うことによって、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与します。
人材育成の進捗を確認するため
人材育成ロードマップは、人材育成の進捗状況を客観的に把握し、評価するための基準となるツールです。
計画段階で設定した目標と現状を比較することで、育成プログラムの効果を検証し、必要に応じて改善策を講じることが可能になります。これにより、育成投資の効果を最大化し、より質の高い人材育成を実現できるでしょう。
人材育成ロードマップの導入メリット
人材育成ロードマップの導入は、以下のようなメリットをもたらします。
ここでは、メリットを詳しく解説していきます。
企業理念に沿った人材育成が行える
人材育成ロードマップは、企業の企業理念やビジョンを具現化し、それに沿った人材育成を実現します。
経営戦略と人材戦略が連動することで、企業が求める人材像が明確になり、採用から育成、配置に至るまでの一貫した人材マネジメントが可能となります。目的を失うことなく人材育成に取り組め、企業文化の醸成にもつながるでしょう。
人材育成を効率化できる
ロードマップを導入することで、育成のプロセスが可視化され、効率的な人材育成が可能になります。
とくに、変化が早く予測不可能な現代では、必要なスキルも変化しやすい状況です。臨機応変でスピーディーな人材育成が求められるなか、人材育成ロードマップがあれば育成の道筋が常に明確であるため、戦略的かつ効率的な育成が可能となります。
時間的・金銭的なコストを削減しつつ、育成効果を最大限引き出せるでしょう。
従業員のやりがいを醸成できる
明確な人材育成ロードマップは、従業員に自身のキャリアパスと成長の方向性を示します。
従業員は「将来、自分はどうなりたいのか」「そのために何を学ぶべきか」が具体的にわかるため、目標意識が向上し、学習へのモチベーションが高まります。
また、自分の成長が組織の目標達成に貢献しているという実感は、従業員のエンゲージメントややりがいを大きく向上させ、結果的に離職率の低下にも効果的です。
キャリアパスを明確にできる
人材育成ロードマップは、従業員にとっての具体的なキャリアパスを明確にします。
どのようなスキルを身につければ、どのような職務に就けるのか、どのような役職に昇進できるのかが示されることで、従業員は自身のキャリアを主体的にデザインできるようになります。
人材育成ロードマップを導入することにより、従業員が抱えるキャリアへの漠然とした不安を解消し、中長期的な視点での自己成長を促進できるようになります。
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人的資本経営につながる
近年注目されている人的資本経営において、人材育成ロードマップは非常に重要な役割を果たします。
人的資本経営とは、人材をコストではなく、企業の価値創造の源泉である「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことを目指す経営手法です。
ロードマップを通じて従業員のスキルアップやキャリア形成を支援することは、人的資本の価値を高めると同時に企業の戦略目標の達成に貢献し、企業の競争力を向上させます。
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2.人材育成ロードマップの作成前に確認しておきたい5つのポイント
人材育成ロードマップを効果的に作成するためには、計画を立てる前の準備が非常に重要です。以下の5つのポイントを事前に確認しておくことで、より実効性の高いロードマップを構築できるでしょう。
ここでは、ポイントごとに詳しく解説します。
①現状の分析・把握
まずは、自社の人材に関する現状を詳細に分析し、把握することから始めます。現在の従業員のスキルレベル、保有資格、経験、強み、弱みなどをデータとして収集しましょう。
また、部署ごとの人員構成や業務内容、今後の事業計画なども考慮に入れ、組織全体としてどのような人材が、どの程度不足しているのか、あるいは過剰なのかを把握することが大切です。
この現状分析が、後の「目指す人材像」とのギャップを明確にするための土台となります。
②企業理念・ビジョンの確認・再構築
人材育成ロードマップは、企業の根幹である企業理念やビジョンと深く連携している必要があります。そのため、自社の企業理念や長期的なビジョン、経営戦略を改めて確認しましょう。
育成する人材像は、企業の目指す方向性と合致している必要があるため、このステップは非常に重要です。経営層と人事部門が密に連携し、企業の未来を共有することが成功の鍵となります。
もし、企業理念やビジョンが不明確であったり、現状にそぐわない場合は、再構築するのも一つの手です。
③目指す人材像の明確化
企業の理念やビジョン、そして事業戦略を踏まえ、「どのような人材を育成したいのか」を具体的に定義します。
たとえば、「新規事業を牽引できるリーダーシップのある人材」や「データ分析に基づき課題解決ができる人材」など、具体的なスキルや能力、マインドセットまで含めて明確にしましょう。
この「目指す人材像」は、後の育成プログラムの設計における方向性を示すものとなります。
④現状とギャップの把握
「現状の分析・把握」で得られたデータと、「目指す人材像の明確化」で定義された理想像を照らし合わせ、現状の人材と目指す人材像との間にどのようなギャップがあるのかを具体的に把握します。
たとえば、「〇〇のスキルを持つ従業員が〇人不足している」「△△の経験を持つリーダーが不足している」といった形で、定量的なデータに基づいてギャップを特定しましょう。
このギャップが、具体的な育成ニーズとなり、ロードマップの設計の出発点となります。
⑤短期・中期目標の設定
ギャップを埋めるための具体的な短期・中期目標を設定します。短期目標は、具体的なスキルの習得や特定の業務の改善など、目に見える形で成果を確認できるものが望ましいでしょう。
中期目標は、部署全体のスキルアップや新たな役割への挑戦など、より広範な視点での目標を立てると効果的です。
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SMARTの法則とは? 目標設定の意味・メリット・具体例を解説
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3.人材育成ロードマップ作成の手順・ステップ
次に、以下ステップで人材育成ロードマップを具体的に作成していきましょう。
ステップごとに詳しく解説していきます。
①必要なスキルの洗い出し
まずは、「現状とギャップの把握」で明らかになった課題に基づき、目指す人材像になるために必要なスキルを具体的に洗い出します。スキルを単なる知識だけでなく、実践的な能力や態度、思考力なども含めてリストアップすることが重要です。
それぞれのスキルについて、どのようなレベルを求めるのかなど併せて定義すると、育成目標がより明確になります。
②育成方法の設定
洗い出した必要なスキル習得のために、どのような育成方法が最適かを検討し、設定します。それぞれのスキルや従業員の特性、企業の状況に合わせて、複数の育成方法を組み合わせることも有効です。
以下で、代表的な育成方法を紹介します。
OJT
OJTは、実際の業務を通じて必要なスキルや知識を習得させる育成方法です。先輩や上司が直接指導するため、実践的かつ個別性の高い指導が可能で、業務への早期適応が期待できます。新入社員の育成や、特定の専門スキルを身につけさせる場合に効果的です。
OJTとは? 意味や目的、メリット、進め方、OFF-JTとの違いを簡単に
OJT(On the Job Training)は、実際の業務を通じて従業員を育成する方法として、多くの企業で採用されています。 座学では学びきれない実践的なスキルを習得できるのが特徴で、新入社員や異...
Off-JT
Off-JTは、研修やセミナー、講習会など、日常業務から離れて行われる育成方法です。体系的な知識の習得や、複数の従業員に対する一斉教育に適しています。専門知識やビジネスマナー、マネジメントスキルなど、広範囲なテーマに対応できます。
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ジョブローテーション
ジョブローテーションは、従業員が一定期間ごとに部署や職務を異動し、幅広い業務経験を積むことで、多角的な視点やスキルを習得させる育成方法です。組織全体の理解を深めたり、新たな適性を見出したりする効果が期待できます。将来の幹部候補の育成にも活用されます。
ジョブローテーションとは?【意味を解説】メリット、何年
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eラーニング
eラーニングは、インターネットを通じて学習コンテンツを提供する育成方法です。時間や場所の制約を受けにくく、従業員が自分のペースで学習を進められる点が大きなメリットです。
幅広い知識の習得や、多人数に対する効率的な教育に適しています。動画教材やオンラインテスト、インタラクティブなコンテンツなどを活用することで、学習効果を高められます。
eラーニングとは|システム、導入事例、導入時のポイントなど
eラーニングとは、インターネットを通して学習や研修を行う方法のこと。インターネットの普及とともに、企業の教育施策に取り入れられるようになりきました。 eラーニングとは何か eラーニングの種類 eラー...
MBO
MBOは、従業員が個人目標を設定し、その達成度によって評価を行うマネジメント手法です。
MBOは直接的な育成方法ではありませんが、目標設定を通じて従業員自身が成長すべき方向性を認識し、その達成に向けて自律的に行動を促すことで、結果的に人材育成につながります。上司との面談を通じて目標設定や進捗確認を行うことで、個人の成長を支援もできます。
目標管理制度とは? 意味や目的、メリット・デメリットを簡単に
マネジメントで有名な経営思想家ピーター・ドラッカーが提唱した、組織における目標管理制度(MBO)。この目標管理制度は、組織貢献と自己成長の両方が達成できる個人目標を設定させ、その達成度で評価を行う人事...
③育成の優先度を策定
洗い出したスキルと育成方法に対して、どのスキルを、どのタイミングで、どれくらいの期間で育成していくのか、その優先度を策定します。
企業の事業戦略上、すぐに必要なスキルや、習得に時間がかかる重要なスキルなど、さまざまな要素を考慮して優先順位をつけましょう。
たとえば、緊急度と重要度のマトリクスを用いて整理したり、依存関係のあるスキルについては順番に育成計画を立てたりすると効果的です。これにより、限られたリソースの中で最大限の育成効果を出すためのロードマップが完成します。
④人材育成ロードマップに落とし込む
策定した優先度に基づき、人材育成ロードマップに落とし込んで可視化します。ロードマップは現場が理解できるよう、以下のような項目を入れ込んで作成することがポイントです。
⑤現場への定着促進
作成した人材育成ロードマップは、作って終わりではありません。現場で実際に運用され、定着することが重要です。従業員や現場の管理職に対して、ロードマップの目的や内容を丁寧に説明し、理解と協力を促しましょう。
また、ロードマップは一度作成したら終わりではなく、定期的に見直し、PDCAサイクルを回すことが重要です。進捗状況の確認や、従業員からのフィードバックを収集し、必要に応じて内容を修正・改善していくことで、より効果的な人材育成ロードマップへと進化させていくことができます。
Excel、紙の評価シートを豊富なテンプレートで楽々クラウド化。 タレントマネジメントシステム「カオナビ」で時間が掛かっていた人事業務を解決! ⇒【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード4.DX人材育成を見据えた設計実例
近年、企業の競争力向上において不可欠となっているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。これに伴い、DXを推進できる人材の育成が急務となっています。
ここでは、DX人材の育成に焦点を当てたロードマップの設計実例について解説します。
DX人材とは
DX人材とは、デジタル技術やデータを活用して、企業のビジネスモデルや業務プロセスを変革し、新たな価値を創出できる人材のことです。単にITスキルが高いだけでなく、ビジネスに対する深い理解、課題発見能力、変革推進力、そして関係者を巻き込むコミュニケーション能力など、多岐にわたるスキルが求められます。
DX人材とは? 求められる8つの職種とスキル、人材育成の要点
経済産業省による後押しが実施されるなど、国を挙げて進められているDX(デジタルトランスフォーメーション)。デジタル競争の激化や新型コロナウイルスなどの影響もあり、推進に力を入れる企業が増えています。 ...
DX人材の育成が必要な理由
DX推進は、企業が競争力を維持し、持続的に成長していくために不可欠です。しかし、多くの企業でDX人材が不足しており、デジタル技術の導入が進まない、あるいは導入しても効果が出ないといった課題に直面しています。
自社でDX人材を育成することで、外部に依存することなく、自社のビジネスに特化したDX戦略を推進し、組織全体のデジタルリテラシーを高めることが可能です。これにより、新たな事業機会の創出や生産性の向上、顧客体験の改善など、多大なメリットが期待できます。
DX人材育成のステップ
DX人材の育成には、通常の育成ロードマップと同様に、体系的なステップを踏むことが重要です。以下でDX人材育成のステップを紹介します。
①DXの目的と必要人材の定義
自社がDXを通じて何を達成したいのか、DXの明確な目的を設定します。たとえば、下記のような具体的な目標を定めましょう。
その上で、その目的達成のためにどのようなDX人材が必要なのか、具体的なスキルセットや役割を定義しましょう。
データサイエンティスト、AIエンジニア、UI/UXデザイナー、DX推進リーダーなど、具体的な職種や求められる専門性を可視化することで、育成対象者や育成プログラムの方向性が明確になります。
②育成対象者の選定
次に、定義されたDX人材像に基づいて、社内で育成対象者を選定します。
既存の従業員の中から、デジタル技術への関心が高い人材、論理的思考力のある人材、あるいは各部署のキーパーソンなどを候補としましょう。既存スキルや適性を評価し、ポテンシャルの高い人材を選定することが重要です。
全従業員のデジタルリテラシー向上を目指す場合は、全社的な基礎教育も視野に入れると良いでしょう。
③人材育成ロードマップの作成と実施
選定されたDX人材の育成のために、具体的な人材育成ロードマップを作成し、実施します。このロードマップには、習得すべきスキル項目、学習内容、期間、担当者、評価方法などを具体的に盛り込みましょう。
④実務スキルの応用
座学や研修で得た知識を、実際の業務で応用する機会を提供することが重要です。OJTや社内プロジェクトへの参画を通じて、実践的なスキルを習得させましょう。
たとえば、特定の業務プロセスのデジタル化プロジェクトにDX人材をアサインし、実際の課題解決に取り組ませることで、学習と実践のサイクルを回すことができます。
DX人材育成の設計実例
ここでは、DX人材育成の設計実例を紹介します。
設計実例① 北海道自治体
総務省が令和5年に公表した「⾃治体DX推進参考事例集」より紹介する、北海道の実例です。
こちらの自治体では、全職員を対象に、令和4〜7年度を計画期間とする「北海道職員のデジタル⼈材育成に関する計画」を策定し、⽬指す⼈物像を整理し、レベル別の⽬指す⼈数を設定しています。
出典:総務省|⾃治体DX推進参考事例集【2.⼈材確保・育成】
あわせて、それぞれに求めるスキルや必要な研修を明確化。研修によるスキル習得、⾃⼰啓発の推進、育成体制の構築に加え、外部⼈材確保に向けた⽅策も展開しています。
今後の人材育成ロードマップとして、当⾯はレベル2までの職員のデジタル⼒の向上に注⼒する意向です。あわせて、各⼈材の認定制度や⼈事施策との連携等も段階的に検討を進め、進捗は毎年確認して随時見直しを行っています。
設計実例② 株式会社大林組
株式会社大林組では、デジタルを作る人材だけでなく、デジタルを使う人材の育成も重視し、グループ全体のデジタルリテラシーの向上に注力しています。
具体的にやっていること
教育のフレームワークを設定することで、世代や役割の特性を勘案した個別の教育プログラムが実施できています。
また、資格取得については、IPAのITパスポート試験を重要視し、KPIに新規取得者数を設定しているのも特徴です。
設計実例③ 東京センチュリー株式会社
東京センチュリー株式会社では、DX人材の育成を「ビジネスサイド」「ITサイド」の両面からアプローチしています。
ビジネスサイドでは、実践型プログラムを通じ、DX視座でパートナーと新たな事業領域を創出することができる人材の育成を目指しています。育成過程でさまざまな外部連携を加えることを通じて、イノベーターとしてのDX人材育成を実施。
また、ITサイドでは、コンサルやITベンダ事業会社、セキュリティ会社などの幅広い業種から経験者を積極採用しています。その人たちが持つIT技術・スキルをビジネス展開することを重視し、IT部門の強化を図っています。
なお、DXの取り組み状況について、同社は全体平均を上回っており、進捗は良好です。
Excel、紙の評価シートを豊富なテンプレートで楽々クラウド化。 タレントマネジメントシステム「カオナビ」で時間が掛かっていた人事業務を解決! ⇒【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード5.人材育成ロードマップの運用を定着させるための工夫と注意点
人材育成ロードマップは、作成して終わりではありません。実際に組織に浸透させ、効果的に運用していくためには、いくつかの工夫と注意点があります。
柔軟性を持たせる
人材育成ロードマップは、一度作成して終わりではありません。市場環境や事業戦略の変化、従業員の成長度合いなどに応じて、柔軟に見直す機会を設けることが重要です。
そのため、最初から完璧なロードマップを目指すのではなく、まずは大枠を定め、運用しながら改善していくアプローチが効果的です。定期的な見直し会議を設けたり、従業員からのフィードバックを積極的に取り入れることで、常に最適な状態に保つことができます。
定量的な目標を設定する
目標設定は、人材育成ロードマップの効果を測る上で不可欠です。
抽象的な目標ではなく、「〇〇研修を〇月末までに受講完了する」「△△ツールの資格を〇月までに取得する」といったように、具体的かつ定量的な目標を設定しましょう。
数値で測れる目標を設定することで、進捗状況の把握が容易になり、目標達成へのモチベーションも高まります。また、目標達成度を人事評価と連動させることで、従業員の主体的な取り組みをさらに促進できるでしょう。
学んだことを実務に活かす機会をつくる
研修や教育で学んだ知識やスキルが、実際の業務で活用されなければ意味がありません。ロードマップにおいては、学習内容を実務にどのように活かすか、具体的な機会を設けることが重要です。
たとえば、研修後すぐに実践的なOJTを実施したり、新たなスキルを活用できるプロジェクトにアサインしたりといった施策が考えられます。学んだことをアウトプットする場を意図的に作り出すことで、知識が定着し、真のスキルとして身につくでしょう。
上司は、従業員が新しいスキルを試すことを奨励し、成功体験を積ませるような環境づくりを心がけましょう。
従業員に説明する
人材育成ロードマップが、従業員にとって「自分ごと」として捉えられるように、その目的と内容を丁寧に説明する場を設けることも大切です。
ロードマップの導入背景、企業の目指す方向性、そしてロードマップが従業員一人ひとりのキャリア形成にどう役立つのかを具体的に伝えることで、従業員の理解と納得感が深まります。
説明会や個別面談、社内報などを活用し、従業員がいつでもロードマップを確認できる環境を整備することも有効です。従業員がロードマップを自身の成長の道標として認識することで、主体的な学習意欲を引き出せるようになります。
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人材育成ロードマップの作成・運用には、いくつか陥りやすい失敗例があります。それぞれの失敗例と、その改善策をみていきましょう。
初期設計だけで終わってしまう
人材育成ロードマップを綿密に設計しても、いざ運用が始まると形骸化し、計画倒れに終わってしまうケースです。
多忙な業務に追われ、ロードマップに沿った育成活動が後回しになったり、進捗管理が疎かになったりすることが原因として挙げられます。
改善策
人事評価と連動していない
人材育成ロードマップで設定された目標が、人事評価に反映されないため、従業員が育成プログラムへのモチベーションを維持しにくいケースです。
育成の努力が正当に評価されないと感じると、従業員は学習意欲を失ってしまうでしょう。
改善策
育成担当者のスキルに左右される
OJTなど現場での育成が中心の場合、育成担当者のスキルや経験、熱意によって育成の質が大きく左右されてしまうケースです。
特定の担当者が異動したり退職したりすると、育成ノウハウが失われるリスクもあります。
改善策
本業と育成を両立できない
従業員が本業の業務で手一杯になり、人材育成ロードマップに沿った学習や研修に取り組む時間や精神的余裕がなくなるケースです。
とくに、業務が繁忙な部署では、目の前の業務に追われて育成活動が疎かになりがちです。
改善策
- 業務時間内に学習時間を設けたり、研修への参加を業務命令にしたりと、企業側が育成時間を確保させる
- 育成対象者の業務量を一時的に調整する
- eラーニングなど、従業員が自分のペースで学習できる仕組みを導入する
- 研修は業務の一環であるという認識を定着させる
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ここでは、人材育成ロードマップに関するよくある質問を紹介します。
Q1.人材育成ロードマップにテンプレートはありますか?
Q2.人材育成ロードマップと人材育成計画表(書)は同じですか?
Q1.人材育成ロードマップにテンプレートはありますか?
人材育成ロードマップのテンプレートは、Web上で「人材育成ロードマップ テンプレート」と検索すれば、無料でダウンロードできるものから有料の人材育成システムに付属するものまで、幅広く見つけることができます。
テンプレートは、作成の手間を省き、必要な項目を漏れなく洗い出すのに役立つでしょう。
しかし、テンプレートはあくまで汎用的なものです。自社の企業理念、事業戦略、現状の課題、そして目指す人材像に合わせてカスタマイズすることが重要です。テンプレートを参考にしつつ、自社独自のロードマップを構築することをおすすめします。
Q2.人材育成ロードマップと人材育成計画表(書)は同じですか?
人材育成ロードマップと人材育成計画表は、どちらも人材育成に関わる計画を示すものですが、その役割と示す内容に違いがあります。
人材育成ロードマップが「どこへ向かうか」という全体像を示すのに対し、人材育成計画表は「どのように進むか」という具体的な手段とスケジュールを示すものといえます。両者は相互に補完し合い、効果的な人材育成を実現するために不可欠なツールです。
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8. まとめ|人的資本経営と目指す未来を描く育成戦略
VUCA時代と呼ばれる現代において、企業を取り巻く環境は常に変化し、それに応じて求められる人材像も変化し続けています。このような状況下で企業が持続的に成長していくためには、場当たり的ではなく、戦略的で体系的な人材育成が不可欠です。
人材育成ロードマップは、企業の目指す未来と、その未来を実現するために必要な人材像を明確にし、具体的な育成計画を可視化するツールです。従業員一人ひとりが自身のキャリアパスを明確に描き、主体的な成長を支援することで、組織全体のパフォーマンス向上、ひいては人的資本経営の実現へとつながるでしょう。
人材育成ロードマップの運用には、失敗例もあります。改善策の一つとして、タレントマネジメントシステムを活用することも有効です。
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