ジョブローテーションとは? 長期的視点による人材育成の目的と注意点

欧米には専門分野で転職を重ねてキャリアアップしていく働き方があります。ジョブローテーションはそれと異なる、日本独自の長期雇用制度のなかで生まれた人材育成システムです。

ここでは、

  • ジョブローテーションの概要や目的
  • 社員にジョブローテーションを行うときの注意点
  • 目的別のローテーションスパン
  • ジョブローテーションを社員に納得してもらうコツ
  • ジョブローテーション制度を導入している企業の具体例

などについて解説します。

1.ジョブローテーションとは?

ジョブローテーションとは「人材育成計画に沿って定期的に職場の異動や業務内容の変更を行い、さまざまな職種を体験させて成長につなげる人材育成システム」を指します。

OJT(日常業務で行われる職業訓練)のひとつといえます。

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過去にもジョブローテーションは人事異動・配置転換という形で行われていました。その際の目的は「ジョブローテーションを経験するのは将来の幹部候補とされる有望な社員などに若いうちから多くの現場を経験させる」などだったようです。

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2.ジョブローテーションの目的と変遷

職場にはその仕事に精通したスペシャリストが必要とされていたため、一部の幹部候補などが現場を知るためにジョブローテーションが適用されていました。しかし昨今のグローバルな企業競争では、短期間のジョブローテーションですべてを知り正しい経営判断を下すことは難しいのです。

社員はジョブローテーションによって社内のさまざまな職種や業務に触れるため、幅広い視野を持ったり自分のキャリアについて考えるきっかけになったりします。

企業はさまざまな職種を社員に経験させることで、思わぬ適材適所の配置が可能となったり、組織全体を知ったうえでスペシャリストとして仕事をして強みを発揮できたりと戦略的な人事管理が可能になるのです。

現在多くの企業で取り入れられているジョブローテーションは大きく3つに分かれます。

  1. 新入社員の養成
  2. 幹部候補の能力開発
  3. 既存システムのマンネリ回避

①新入社員向けジョブローテーションの目的は適性判断と養成

多くの企業は新入社員に対し何らかの研修制度を設けているでしょう。一般的に新入社員に対する研修は、特定の業務、部署内またはチーム内で限定的に求められるスキルと知識を身につけるというテーマで実施されているものが多いのでは?

新入社員や入社から間もない若手の社員にジョブローテーションを経験させることで得られるメリットは2つあります。

  • 新入社員の適性判断
  • 企業全体の把握

新入社員の適性を判断できる

ジョブローテーションにより人事担当者は対象社員の適性を見極めることができます。

短いスパンで社員をそれぞれの部署で労務経験させることで何が起こるのでしょう。その人の業務に対する長所を見いだすと同時に適性の不一致を防ぐことができ、さらに最も効率的な人材配置を図ることができるのです。

企業全体を把握させることができる

若手のうちからさまざまな部署での業務を経験させることで、

  • 仕事に対する視野が広がる
  • 企業全体がどう動いているかを具体的に把握できる
  • 社内の人脈や見聞が広がる
  • 個人としてのステータスが向上する
  • 組織的に仕事を進めるうえでの連携力も養える

など多くの良い事が起こります。

またジョブローテーションを経験した社員自らが新しい発見をすることもあります。社員自身が希望していた本配属予定の部署より、自身が活躍できるかもしれないと感じる環境を見いだせるかもしれません。新入社員に多様な業務を体験させることは、社員と企業双方にとって有意義といえるのです。

ヤマト運輸や富士フイルムホールディングス社のジョブローテーション事例

画像引用:ヤマト運輸 http://www.kuronekoyamato.co.jp/

新入社員にジョブローテーションを行っている例として、宅急便の配送事業を展開する「ヤマト運輸」があります。

同社のジョブローテーション制度では、新入社員は2年ほど配送物の集配・配送サポート・営業など、現場での実務経験を積んで本配属になります。この経験で、自身の行っている業務が全工程のどの段階にあるのかを理解してもらい、会社全体の流れを知ってもらうのです。

また、カメラや医薬品などの開発・製造で知られる「富士フイルムホールディングス社」でも、若年層のスペシャリスト育成のため、新入社員に対し3年間の研修制度を導入しています。

この研修プログラムは、社員の「自発性」を磨くことをテーマに実施されています。若いうちから、ビジネスマナーなどの教育、各業務内容に求められるスキルと知識の習得、特定の分野における技術と知識を追求する姿勢などを身につけることができるのです。

②幹部候補向けジョブローテーションの目的は能力開発

前述の通り、ジョブローテーションはもともと経営幹部となる人材の育成を目的として行われていました。それはひとつの物事に特化したスペシャリストよりも、さまざまな物事に対し一定水準の知識とスキルを持ったジェネラリストが経営幹部に向いているとされているからかもしれません。

幹部候補にジョブローテーションを行う目的は3つあります。

  1. ジェネラリストとしての能力開発:各部署における業務フローやビジネス環境などの内情を把握させ、さまざまな分野に広く精通したジェネラリストとしての能力を培う
  2. 人的ネットワークの形成:経営幹部となった際より円滑に業務を進められるよう、ジョブローテーションを活用して各関係部署に人的ネットワークを形成させる
  3. マネジメント側の視点と考え方を習得:会社の中核となる経営幹部に求められるマネジメント側としての視点と考え方を習得させる

社員数の多い大企業などでは、スタート時からジョブローテーションを通してポジションを分けている会社もあるようです。

たとえば「日本郵船社」では、若手や中堅に限らず全社員がジョブローテーションの対象となっており、平均して3~4年で部署異動します。なかでも「陸上職事務系」(いわゆる総合職のようなポジション)では、国内から国外、全部門にまたがるジョブローテーションを行っています。幅広い見聞、スキルとマネジメント力を習得させて幹部となりうる人材の育成に注力しているようです。

③マンネリ回避や業務安定性確保のためのジョブローテーション

新入社員や幹部候補の育成以外の目的でジョブローテーションを行う場合もあります。例をあげると、社員に刺激を与え部署内における業務のマンネリ化を回避、中小企業における業務の安定性確保などが該当します。

一般的に人は長期間同じ部署で勤務すると、業務や環境に慣れます。「慣れ」は業務効率化を図る面では第一に目指すべきポイントです。しかし社員が「慣れ」をルーティンワークとして捉えはじめると刺激が不足します。

慣れを回避し、会社の活性化にも有効

ジョブローテーションの定期的な実施は、こうした状況の回避に役立ちます。部署間を超えた人事異動が難しいという場合は、同じ部署内でも役割分担やチームを変えるといった方法もあります。

ただし変化による刺激よりも仕事に慣れ、業務に対する安定性を望む社員もいるでしょう。このような場合、明確な説明なしに異動の対象に選出されると、人事に対し少なからず不満を抱く結果となるかもしれません。異動対象者の選出と打診は慎重に行いましょう。

また、中小企業における「業務の安定性の確保」とは、社員数の少ない企業で起こりがちな「特定の人しかできない業務がある」という人材の代わりが効かないリスクを避けるという意味です。

比較的社員数の多い企業では、ひとつの企画やプロジェクトに対し複数人で取り掛かるという体制を取ることが多いでしょう。しかし、社員数が少ない企業では1人あたりの業務負担量が多くなりがちで、このような体制を取ることは難しいかもしれません。

リスクや社員のプレッシャーを解放

社員がそれぞれ特有のスキルを取得しており、各社員がワンマン体勢による業務を行っているという場合もあるのではないでしょうか。

このような場合特定の人が突発的な欠勤などをした際、社内での業務が回らなくなるというリスクが存在します。ジョブローテーションを行ってそれぞれの社員に業務を経験させ、知識とスキルを共有させることで、このようなリスクを防ぐことも可能でしょう。

特定の社員にしかできない業務を複数の社員に分散させることで、「休暇を取ることができない」というプレッシャーから本人を解放させることも可能です。

3.ジョブローテーションのメリット

  1. さまざまな職種を経験することで社員の真の適性を見いだすことができ、適材適所の配置が可能になる。
  2. ジョブローテーションにより普段なら交流することのない部署と交流が生まれて、新たな社内ネットワークが構築され、風通しのよい組織になる
  3. そのネットワークから新規事業の立ち上げなど副産物が生まれる可能性がある
  4. 長い期間同じ職場・業務に就くことで生じるマンネリを解消することができる
  5. 従業員のモチベーションアップにつながり、従業員の離職率低下にもつながる

4.ジョブローテーションのデメリット

  1. 一定期間で異動となるため、ある程度長い時間をかけないと継承されない技術や業務についての引き継ぎがうまくできない
  2. 自分に確固たる専門分野がある場合、その仕事に就けないことでモチベーションが下がる可能性
  3. どの部署もローテーション直後は業務の遂行が多少停滞するおそれがある

ジョブローテーションを戦略的に行う場合職場や業務ごとの習得時間に合わせてローテーションの期間を変える、ローテーション直後はスキルの高い社員を近くに配置するなどの工夫が必要です。また、たださまざまな仕事を体験させればいいわけではなく社員一人ひとりの育成計画のもと実施することが重要でしょう。

5.ジョブローテーション実行時の3つの注意点

ジョブローテーションを実行する際の注意点は3つあります。

  1. 目的に応じて適切な期間を設定する
  2. 社員の適性と希望のバランスを取る
  3. ジョブローテーションの目的を理解させる

①目的に応じて適切な期間を設定する

ジョブローテーションを行うときには、その目的に応じて期間を調節する必要があります。

幹部候補や次期リーダー育成などを目的としたジョブローテーションの場合

幹部候補やリーダー育成などを目的とする場合時間をかけて部署を巡らせるとよいでしょう。

主な目的は、

  • 後に部下を引率していく立場としての考え方や立ち回り方
  • 物事の捉え方

などを身に付けることです。しかし、これらのケースは短期間ですぐに身につくようなものではありません。

新入社員など入社後間もない社員に対してジョブローテーションを行う場合

このような場合のローテーションスパンは比較的短く設定するとよいかもしれません。なぜなら新入社員に対してジョブローテーションを行う意図は主に職場での適性判断と業務の大まかな流れを知ってもらうためであり、業務をマスターして専門性を高めてもらうことが目的ではないからです。

もしこのスパンが長いと、新入社員が自身の適性とミスマッチを起こしたときにモチベーションを下げる結果となる場合もあります。

また、新入社員は新しい環境で業務を覚えることを第一の目標としている場合が多いでしょう。さまざまな環境に身を置く機会は少なからず社員の負担となります。「トライアル」としてそれぞれの部署を体験してもらう期間であるとして、慎重にローテーションスパンを考慮しましょう。

②社員の適性と希望のバランスを取る

会社側の望む期間と本人の望む期間に差異があった場合、どちらかを一方的に優先した結論は出さず、両者のバランスを取った期間の設定を行う必要があります。希望に沿わないジョブローテーション、納得できない異動では退職リスクが高くなってしまう可能性があるためです。

特に、若いうちから配属された部署に身を固めて専門性や技術を高め、後にスペシャリストとして活躍したいと考えている社員にとっては、異動はマイナスな要素として受け取られてしまうでしょう。

ひとつの業務に慣れてきたと思った矢先に再び異動というサイクルに社員がストレスを感じてしまうこともあります。また、異動をして慣れるまでは自身に任せられる仕事の裁量度も自由度も比較的低いものです。本人の望む仕事とのギャップを感じてしまう場合もあるでしょう。

これらのマイナス的要因を取り除くには異動先での部署で得られるスキルや体験などを本人と共有し、将来的なキャリアパスをイメージさせるとよいです。

③ジョブローテーションの目的を理解させる

ジョブローテーションで異動を行う際、対象の社員にそれぞれの目的と設定されている期間をあらかじめ伝えておくべきでしょう。どういった目的があって異動となるのかを明確に伝えることで、社員の理解を得るとともに、社員自身のさらなる成長が期待できます。

なお、年齢が上がってからの人事異動はマイナスイメージを持たれる場合があります。そのように社員が疑問に思う可能性のある異動は、業務上の必要性と社員に還元されるメリットを明確に説明することが大切です。

異動を発表する前に、上司と社員間で以下のような内容についてしっかりとディスカッションをしておくとよいでしょう。

  • 新たな部署で求められているその人のスキル
  • 新たな部署で身につけられる能力
  • 将来的な会社でのポジション・キャリアパス
  • 社員自身に任せられる仕事の裁量度・自由度

ディスカッションの結果、異動が両者にとってメリットのある内容であると判断されるようであれば、社員にとっても前向きな異動であると受け取ってもらうことができるでしょう。

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