エンゲージメントサーベイの分析方法とは? 結果の使い方も解説

働き方の多様化や人材確保の重要性が高まる中で、従業員の意欲と職場への満足度を把握する「エンゲージメントサーベイ」に注目が集まっています。

ただ、これは調査を行うだけでは不十分で、結果をきちんと分析し、活かしてこそ意味があるものです。

この記事では、エンゲージメントサーベイの基本から、分析の重要性、効果的な分析手法や結果の活かし方まで詳しく解説します。あわせて、実際にサーベイを活用して組織改善を進めている企業の事例も紹介します。

1.エンゲージメントサーベイとは?

エンゲージメントサーベイは、従業員が仕事や所属する企業に対して、どの程度の熱意や愛着を持っているかを調べるためのアンケート調査です

単なる満足度ではなく、「働くことに前向きか」「組織に貢献したいと思っているか」といった意識を数値化することで、組織全体の健全度や課題を把握できます。

このサーベイは、離職率の低下、生産性の向上、職場環境の改善など、さまざまな施策の起点となる重要な調査が可能です

企業が成長し続けるためには、従業員がどのように感じているかを定期的に確認しなければなりません。その声を活かしながら職場改善につなげていく必要があります。

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2.エンゲージメントサーベイの分析が重要な理由

エンゲージメントサーベイは実施するだけでは十分とは言えません。調査から得られたデータを適切に読み解くことで、初めて組織の課題や改善点が分かります。

ここでは、分析が必要とされる理由を3つの視点から詳しく見ていきましょう。

  • 課題の早期発見と改善
  • 施策効果の検証
  • データ活用による戦略立案

課題の早期発見と改善

エンゲージメントサーベイを定期的に実施し、その結果を分析することで、組織内の潜在的な問題や従業員の不満を早期に察知できます。

たとえば、特定の部署や役職でエンゲージメントスコアの低下が見受けられる場合、その要因を迅速に特定し、適切な対策を講じられるのです。

これにより、問題が深刻化する前に手を打て、組織全体の健全性を維持できます。

施策効果の検証

エンゲージメントサーベイは、実施した施策の効果を検証するためにも有効です。過去のサーベイ結果と比較することで、導入した施策が効果的であったか確認できます。

具体的には、社内コミュニケーションの改善やキャリア開発支援、人事評価の制度を見直した後にエンゲージメントのスコアが上がっていれば、その取り組みは効果があったと言えるでしょう。

さらに、効果が限定的だった場合は、データをもとに施策内容を修正し、次回以降の改善につなげることが可能です。

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データ活用による戦略立案

エンゲージメントサーベイの結果を分析し、得られたデータをもとに戦略を立案することで、組織の成長を促進できます。

たとえば、クロス集計や相関分析をおこなうと、「どの要素がエンゲージメント向上に寄与しているか」を具体的に把握可能です。

データにもとづいた意思決定によって、、経営判断の精度が高まり、組織全体の成果や効率の向上も期待できます。

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3.エンゲージメントサーベイで分析できること

ここでは、サーベイを通じて分析できる主要な6つの項目について解説します。

  1. モチベーション・意欲
  2. 人間関係・コミュニケーション
  3. 上司のリーダーシップ
  4. 評価・報酬の満足度
  5. ワークライフバランス
  6. スキルアップ・成長機会

① モチベーション・意欲

従業員が仕事に対してどれだけ熱意ややりがいを感じているかを分析できます。モチベーションが高い従業員は生産性が高く、離職率も低い傾向にあります。

一方、モチベーションが低い場合はストレスや不満が原因となっている可能性があるため、改善策の検討が必要です。

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②人間関係・コミュニケーション

職場の人間関係やコミュニケーションの質は、従業員満足度とエンゲージメントに大きく影響するものです。サーベイ結果から、チーム内の協力体制や情報共有の状況を分析し、改善が必要な領域を特定できます。

上司・同僚とのコミュニケーション頻度や内容の充実度、またその中で感じている不満やストレスの有無に注目してみましょう。

③上司のリーダーシップ

上司が部下を適切に指導・支援し、チームを効果的に導いているかを把握できます。強いリーダーシップは、従業員の信頼感や業務遂行能力の向上につながるものです。

具体的な質問例として、「上司は自分の話を聞き、意見を尊重してくれますか?」や「上司は明確なビジョンを持ち、それをチームに伝えていますか?」などが考えられます。

スコアが低い場合は管理職やリーダー向けトレーニングプログラムの実施を検討するとよいでしょう。

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④評価・報酬の満足度

従業員が報酬や評価制度に納得しているかどうかは、エンゲージメント維持に欠かせない要素です。従業員が自身の成果や貢献に対して、公平かつ適切な評価および報酬を受けていると感じているかを把握できます。

「給与に満足していますか?」や「評価制度は公平だと感じますか?」といった質問から不満要因を特定できると、制度改善につなげられるでしょう。

⑤ワークライフバランス

働き方改革が進む中で、ワークライフバランスへの関心も高まっています。仕事と私生活の調和が取れていることは、従業員の健康維持や長期的なパフォーマンス向上に不可欠です。

従業員の働き方への満足度を測定し、柔軟な勤務制度導入など改善策につなげましょう。

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⑥スキルアップ・成長機会

従業員が自身のキャリアやスキルを向上させる機会を得ているかを測定します。成長の機会が提供されていると感じると、従業員のエンゲージメントは高まるものです。

教育プログラムや研修制度、キャリア支援に関する満足度を分析し、人材育成施策へ反映させましょう。

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4.エンゲージメントサーベイの分析方法

エンゲージメントサーベイを分析することは、従業員の回答結果から現場の課題を洗い出し、適切な改善策を検討するうえで欠かせません。ここでは、サーベイ結果の主な分析方法について解説します。

属性別の傾向分析

属性ごとの傾向分析では、従業員を部門、役職、年齢、性別などの属性で分類し、それぞれのグループのエンゲージメントスコアを比較します。この方法により、特定の属性に共通する課題やニーズを明確化できます。

たとえば、若手社員はキャリア形成に不安を感じているが、ベテラン社員はワークライフバランスに不満を持っているといった、属性ごとの差異が把握できるでしょう。

この分析では、全体的な施策だけでなく、個別ニーズに応じたきめ細やかな対応が可能となります。

※イメージ

属性
若手社員 ベテラン社員
【不安】キャリア形成 【不満】ワークライフバランス

時系列でのデータ比較

エンゲージメントサーベイを継続的に実施することで、過去の結果との比較が可能になります。この比較により、組織がどのように変化しているかを時系列で把握できます。

例えば、ある施策を実施したあとにスコアが改善していれば、その施策が有効だったと判断できるでしょう。逆にスコアが低下している場合は、新たな課題が発生しているか、既存施策に問題のある可能性があります。経年比較をおこなうことで、施策の成果を客観的に評価し、次の改善活動に活かすことができます。

相関分析

相関分析とは、サーベイの各項目と他の要素(例:離職率、業績、勤続年数など)との関係性を調べる手法です。これにより、エンゲージメントに影響する要因を特定できます。

たとえば、「評価制度への満足度」と「仕事へのモチベーション」の相関が高ければ、評価制度の改善がモチベーション向上に直結する可能性があります。

このように相関関係を見極めることで、施策の優先順位を定めやすくなるのです。組織にとって効果的な打ち手を導き出せるでしょう。

項目の構造化

エンゲージメントサーベイの質問項目を単体で見るのではなく、テーマごとに整理し、構造的に分析する方法です。

具体的には、「働きがい」「人間関係」「上司との信頼関係」などのカテゴリに分けて集計することで、どの分野に課題があるかが明確になります。

構造化によって、従業員がどの要因に対して満足または不満を感じているのかが分かりやすくなり、改善すべきポイントを的確に把握できるでしょう。この手法は全体傾向の把握にも優れており、戦略的な施策立案にも役立ちます。

自由記述の活用

数値だけでは見えにくい従業員の本音を把握するには、自由記述の活用が有効です。

「改善してほしい点」や「最近感じたこと」など、自由回答を通じて具体的な意見を収集することで、数値だけでは見落とされがちな細かな問題を深掘りできます。

記述内容はテキストマイニングなどの手法で傾向を分析することも可能です。定量データと組み合わせると、より深い洞察が得られ、現場のリアルな声を抽出できます。

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5.エンゲージメントサーベイ分析のポイント

エンゲージメントサーベイを効果的に活用するためには、分析結果を正確に解釈し、組織改善につなげることが重要です。以下では、具体的な分析のポイントを解説します。

仕事と企業のエンゲージメントを分けて考える

従業員のエンゲージメントは、「仕事」に対するものと「企業(組織)」に対するものの二つに大別できます。

仕事へのエンゲージメント(ワークエンゲージメント)は、従業員が業務に対してどれだけ熱意があるかを示すものです。一方、企業へのエンゲージメントは、組織への愛着やコミットメントを測ります。

仕事へのエンゲージメントは高い一方で企業へのエンゲージメントが低い場合、職務内容には満足しているものの、組織文化や経営方針に対する不満を持つ可能性が考えられます。

このように、二つの視点を分けて評価することで、より的確な施策の立案が可能となるでしょう。

エンゲージメントが高い人と低い人の傾向を分析する

サーベイ結果から、エンゲージメントが高い人と低い人の特徴・傾向を分析することで、組織内に見られる共通の傾向を把握できます。問題の特定や改善策を考える際の参考になるでしょう。

高エンゲージメントの従業員が共通して持つ要因を特定できると、その要素を他の従業員にも広げる施策を検討できます。逆に、低エンゲージメントの従業員に共通する課題を見つけ出せると、具体的な改善策を講じられるでしょう。

このような分析により、組織全体のエンゲージメント向上への効果的なアプローチが見えてきます。

分析結果を正しく解釈する

分析結果を正しく解釈するためには、データの背景や文脈を理解することが必要です。たとえば、「コミュニケーション満足度が低い」という結果だけを見ると、人間関係の問題と捉えられるかもしれません。

しかし、実は情報共有不足や、上司のリーダーシップの欠如が原因とも考えられます。このように、表面の数値にとらわれず、さまざまな角度からデータを見ることが大切です。

もし解釈に迷うようであれば、外部の専門家に相談するのも一つの手でしょう。

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6.エンゲージメントサーベイ分析結果の活用方法

エンゲージメントサーベイの分析結果を適切に活用することで、組織の現状を的確に把握し、従業員の満足度や生産性の向上を図ることが可能です。ここでは、具体的な活用方法を解説します。

組織課題の設定

エンゲージメントサーベイの結果をもとに、組織内の課題を明確にできます。従業員の回答データを分析する中で、エンゲージメントが低下している原因や改善すべきポイントを特定してください。

たとえば、「キャリア支援が不十分」「評価制度に不公平感がある」といった課題が浮かび上がるかもしれません。課題を共有することで、関係者同士が共通認識を持ちやすくなり、協力体制づくりにもつながります。

より正確な課題把握を目指すためには、サーベイ結果だけでなく、従業員インタビューや他の関連データもあわせて活用すると効果的です。

人事施策の策定

組織課題が明確になったら、それにもとづいて具体的な人事施策を策定します。エンゲージメント低下の原因が「学びの機会不足」である場合、eラーニングシステムや研修制度の導入が候補として挙がるでしょう。

また、「報酬制度への不満」が原因の場合は、給与体系や評価基準の見直しが必要です。施策を実施した後は、その効果を測定しましょう。必要に応じて改善を繰り返すことで、従業員のエンゲージメント向上につながります。

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7.エンゲージメントサーベイの企業事例

さいごに、エンゲージメントサーベイをうまく活用し、職場の改善に取り組んでいる企業の具体例をご紹介します。

西日本電信電話株式会社

西日本電信電話株式会社は、2023年度に予定していた人事・給与制度の見直しを前に、社員のキャリアに対する課題意識を把握するエンゲージメント調査を実施しました。

その結果、「将来のキャリア像が見えにくい」「具体的なキャリアパスを知りたい」「キャリア形成に関するサポートが欲しい」といった声が集まり、多くの社員が将来のキャリアに不安や迷いを感じていることが明らかになりました。

これを受けて、「キャリア相談窓口」を新たに設置し、専任の組織体制も整備。また、全社員向けにトップメッセージの動画を配信するとともに、社長自らが各支店を巡る「社長キャラバン」を企画しました。

経営戦略やビジョン、キャリア支援の方向性について直接説明し、社員との双方向コミュニケーションを図りました。

相談や要望内容をもとに、キャリアデザイン研修を再構築したほか、キャリアの参考になるロールモデルの動画も配信するなど、社員の声を反映した取り組みを通じて、エンゲージメントの向上に取り組んでいます。

参考:厚生労働省「グッドキャリア企業アワード2024

オムロン株式会社

オムロン株式会社では、社員一人ひとりが自身の情熱やスキルを最大限に活かし、企業理念を実践できる職場づくりを推進しています。それに伴い、2016年度からエンゲージメントサーベイ「VOICE」を導入しました。

2022年度に実施された第5回調査では、20,603名を対象に実施され(回答率91%)、38,503件にのぼる自由記述コメントも寄せられました。

これらのデータやコメントを活用し、全社的な課題、さらには部署特有の課題に対応する改善活動が進められています。

具体的には、在宅勤務をはじめとした柔軟な働き方の推進に加え、円滑なコミュニケーションを支えるITツールの活用を強化。

また、ジョブ型人事制度を導入し、マネジメント力アップに向けて、目標設定面談の見直しやフィードバックスキル向上のトレーニング、1on1ミーティングの導入などを展開しました。

グローバル全体で570件の改善アクションが計画されており、それぞれの現場で主体的に実行されています。

参照:オムロン株式会社「従業員との対話


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◆資料内容抜粋 (全31ページ)
・人事評価システム「カオナビ」とは?
・人事のお悩み別 活用事例9選
・専任サポートについて   など