人時生産性とは? 計算方法や平均、向上させるポイントを解説

人時生産性とは、従業員1人が1時間あたりにどれだけの粗利益を生み出しているかを示す指標です。企業の生産性や効率性を測る上で重要な指標の一つとされています。

人時生産性は一般的な生産性と何が違うのか、どのように計算してどう向上させるのかなど、気になる点も多いでしょう。

今回は、人時生産性とは何かをふまえたうえで、計算方法や平均値、算出するメリットや向上させるポイントなどを解説します。

1.人時生産性とは?

人時生産性とは、従業員1人が1時間あたりにどれだけの粗利を生み出したかを示す指標です。

人時は、「人の1時間あたりの作業量」を示します。また、生産性は投入したリソースに対して得た成果であり、人時生産性における「生産性」は粗利益のことです。

人時生産性から、1人あたりどれだけの利益を生み出せているかが把握できます。

人時生産性が高いほど、1人あたりが生み出す粗利も大きくなり、人時生産性が高い企業は、短時間で高い価値を生み出しているといえます。

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2.人時生産性の計算方法と具体例

人時生産性は、以下の計算式から算出できます。

人時生産性 = 粗利額 ÷ 総労働時間数

粗利益と総労働時間は、それぞれ以下から計算できます。

粗利益 売上−原価(原材料費や人件費)
総労働時間 業務にかかった人数×時間

人時生産性の具体例

具体例①A社 具体例②B社
売上高 350万円 200万円
粗利益 100万円 50万円
労働時間数 200時間 100時間
人時生産性 100万円 ÷ 200時間 = 5,000円/時間 50万円 ÷ 100時間 = 5,000円/時間

上記2つの具体例では、人時生産性は同じです。売上高や粗利額が大きいからといって、人時生産性が高いとは限りません。

このことから、人時生産性を高めるには、単純に売上や粗利を増やすのではなく、原価や労働時間も考慮してコストパフォーマンスを高めることが有効だとわかります。

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3.人時生産性の平均と目安

中小企業庁「※中小小売業・サービス業の生産性分析」によると、業種別の人時生産性の平均は以下のとおりです。

製造業 2,837円
小売業 2,444円
宿泊業 2,805円
飲食業 1,902円

業種全体の人時生産性の平均は、約2,500円でした。非製造業は、製造業に比べて低い傾向です。

業種によって平均や目安は大きく異なるため、業種ごとの平均値を目安に、自社の人時生産性の良し悪しを判断することがポイントです。

※参考資料:中小企業庁「中小小売業・サービス業の生産性分析

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4.人時生産性が注目される理由

人時生産性が注目される大きな理由は、生産性の向上が重視されるためです。その背景には、主に下記3つの状況が影響しています。

  • 少子高齢化による労働人口の減少
  • 働き方改革の推進
  • グローバル化

こうした背景もふまえ、人時生産性が注目される理由を解説します。

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労働人口の減少に対応するため

現在の日本は少子高齢化の影響により、年々労働人口が減少傾向にあります。そのため、さまざまな業界で深刻な人材不足が課題となっています。

そうした状況下でも、企業が成長し続けるためには、これまで以上の成果を出すことが求められます。限られたリソースで効率的に成果を上げるには、人時生産性の向上が鍵です。

人時生産性を高めることで労働人口の減少に対応し、持続的な成長が期待できます。

働き方改革を実現するため

近年、法改正などにより、働き方改革が推進されています。最近でいえば、以下の法改正が施行されました。

  • 時間外労働の上限規制
  • 年次有給休暇の取得義務化
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

企業には、従業員の健康やワークライフバランスに配慮した働き方の推進が求められます。

働き方改革を推進しつつも、業績を低下させないためには、人時生産性を向上させることが必要です。

人時生産性が向上すれば、従業員の負担軽減と業績向上が両立できます。

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国際競争力を強化するため

近年、市場がグローバル化し、国際競争が激化しており、日本企業は国際競争力を強化する必要があります。労働人口の減少や働き方改革が推進されている状況下で競争力を高めるには、人時生産性の向上が不可欠です。

日本の労働生産性は世界的にみて低い状況にあります。公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較」によると、以下の結果となっています。

  • 時間あたりの労働生産性:56.8ドル/OECD加盟38カ国中29位
  • 1人あたりの労働生産性:92,663ドル(877万円)/OECD加盟38カ国中32位

いずれも、OECD加盟国の中で下位となる労働生産性です。労働生産性の高さは、人時生産性の高さに比例するため、人時生産性に着目することで、同時に労働生産性の改善にもつながります。

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5.人時生産性と労働生産性、人時売上高との違い

人時生産性と混同しやすいものに、労働生産性があります。また、人時というワードがつくものは、人時生産性のほか人時売上高も挙げられます。

人時生産性への理解を深めるためにも、労働生産性、人時売上高との違いをみていきましょう。

労働生産性との違い

人時生産性と労働生産性は、どちらも労働の効率性を示す指標です。両者の違いは、成果とする指標にあります。

人時生産性 粗利益
労働生産性 生産量、付加価値

なお、労働生産性には、以下2種類があります。

物的労働生産性 付加価値労働生産性
成果 生産量、生産工数 付加価値

付加価値を数値に表した指標は「付加価値額」と呼ばれ、付加価値額は粗利に近い意味があります。

つまり、人時生産性と付加価値労働生産性は、同じ意味合いとも考えられます。

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人時売上高との違い

人時生産性と人時売上高の違いは、従業員1人が生み出した成果にあります。

人時生産性 粗利益
人時売上高 売上高

注目する点が、粗利か売上高かの違いです。

人時生産性と人時売上高は、以下のように使い分けできます。

人時生産性 付加価値の創出能力や収益性の評価
人時売上高 販売能力や売上への貢献度の評価

人時生産性は従業員1人当たりの「稼ぐ力」、人時売上高は従業員1人当たりの「売る力」を示す指標ともいえます。

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6.人時生産性を算出するメリット

人時生産性を算出するメリットとして、主に以下が挙げられます。

  • 現状を把握できる
  • 業務効率の改善につなげられる
  • 従業員の貢献度や労働力を可視化できる

業務効率を改善したい、従業員がどれだけ利益に貢献しているか知りたい、人件費を最適化したいといった場合には、人時生産性を算出してみましょう。

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現状を把握できる

人時生産性を算出して、分析することで自社の現状を把握できます。人時生産性は、さまざまな観点から算出可能です。算出・分析例は以下のとおりです。

算出・分析例① 時間別・曜日別:繁忙期や閑散時の労働力の過不足を把握
分析結果 繁忙時に人時生産性が低い 労働力不足の可能性あり
閑散時に人時生産性が高い 労働力過剰の可能性あり
算出・分析例② 部門別・店舗別:労働力の偏りを把握
分析結果 特定の部門や店舗で人時生産性が低い 労働力不足、業務効率が悪い可能性あり
特定の部門や店舗で人時生産性が高い 労働力過剰、業務効率が良い可能性あり
算出・分析例③ 従業員別の分析:個々の従業員の貢献度や能力を把握
分析結果 人時生産性が低い従業員が多い 労働力不足、スキル不足の可能性あり
人時生産性が高い従業員が多い 労働力過剰、スキルが高い可能性あり

これらの分析によって、現状から最適な人材配置が検討でき、人件費の最適化も図れます。

業務効率の改善につなげられる

人時生産性の算出により、以下の点が客観的に把握できます。

  • どの業務にどれだけ時間がかかっているか
  • どの業務の効率が悪いか

平均や社内全体の人時生産性と比較して数値が悪い場合には、業務改善の余地があると判断できます。業務プロセスの見直しにより、無駄な作業を削減したり、効率化できるツールを導入したりと、具体的な改善策を検討できるでしょう。

改善後は再度人時生産性を算出し、その効果を判断します。

従業員の貢献度や労働力を可視化できる

人時生産性を算出してわかるのは、従業員1人あたりが生み出す粗利益です。従業員の貢献度や労働力の高さを定量的に可視化できます。

その結果が人事評価に反映されれば、評価への納得度が高まり、従業員のモチベーションアップにも有効です。

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7.人時生産性を低下させる原因

人時生産性を低下させる原因として、以下5つの業務ロスが挙げられます。

  • 生産ロス
  • 管理ロス
  • 動作ロス
  • 手作業によるロス
  • 編成ロス

人時生産性が低い場合には、このようなロスが発生していないかをチェックしましょう。原因が明確になれば、人時生産性を高めるための具体策を検討できます。

生産ロス

生産ロスは、商品やサービスを生産するプロセスで発生します。

原因の具体例

  • 不具合の修正
  • 設備故障
  • 材料不足
  • スキル不足
  • 曖昧な指示 など

製造や制作の過程で、どのようなロスが生じやすいかを、あらかじめ把握します。そして、対策しながら業務に取り組むとロスを防止できます。

管理ロス

管理ロスとは、突発的に発生する待ち時間です。管理ロスが発生する原因として、以下の事象が挙げられます。

原因の具体例

  • 計画の不備
  • 指示の遅延
  • 情報共有の不足
  • 在庫管理の不備
  • 人員配置のミス など

管理ロスは管理側の問題であり、従業員側では対処できない原因です。そのため、立て直しが難しい部分でもあります。

動作ロス

動作ロスは、生産・制作過程で従業員がムダな動きをすることで生じます。

原因の具体例

  • スキル不足
  • 業務配分のミス
  • 作業方法の理解不足
  • 作業環境のレイアウト不良
  • 作業手順の非効率性 など

動作そのもののムダや作業環境の効率の悪さから、余分な労働時間が発生している状況です。粗利益が高くても、労働時間が増えると人時生産性は低下します。

手作業によるロス

手作業によるロスは、自動化できる作業を手作業で行うことによって発生します。

原因の具体例

  • 自動化設備の導入不足
  • 自動化技術の知識不足
  • コスト意識の不足 など

粗利益に直結しにくいノンコア業務は、積極的に自動化すべきです。本来自動化できる業務を手作業で行っている場合は、大幅な時間ロスが発生している可能性があります。

自動化により、初期費用や教育に時間がかかり、一時的に生産性が低下する場合もありますが、中長期的にみれば、多くのロスを削減できます。

編成ロス

編成ロスは、流れ作業の設計が不適切なことで発生します。

原因の具体例

  • 業務フローの不明確さ
  • 連携不足 など

編成ロスは、ライン作業などの連続的なプロセスが必要な業務で発生する可能性があります。1つの工程でロスが発生すると、次の作業に遅延が生じ、結果として労働時間が増加します。

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8.人時生産性を向上させるポイント

人時生産性の向上は、業績の向上につながります。以下のポイントを参考に、人時生産性の向上に取り組みましょう。

  • 正確なデータ管理をおこなう
  • 従業員を適材適所に配置する
  • ムリ・ムラ・ムダをなくす
  • RPAを導入する

正確なデータ管理をおこなう

人時生産性を向上させるには、まず人時生産性を正確に算出する必要があります。人時生産性の算出には、以下のデータが必要です。

  • 売上
  • 粗利
  • 労働時間

データが不正確だと現状を正しく分析できず、人時生産性を高めための施策が検討できません。

たとえば、労働時間であれば、POSシステムや勤怠管理システムなどを活用し、データを自動収集・管理するとよいでしょう。

売上や粗利についても、会計システムや売上管理システムが活用できます。システムならデータの自動収集・計算ができるため、正確なデータ管理が可能です。

人時生産性も正確に算出でき、向上のための改善策に取り組めます。

従業員を適材適所に配置する

従業員一人ひとりのスキルや能力、適性を把握し、それぞれの強みを活かせる業務に配置することは、生産性の向上に有効です。

得意なことやスキルを活かせる業務であれば、業務を効率的に処理できるだけでなく、成果につながりやすくモチベーションも高まります。結果として生産性が高まり、人時生産性の向上が期待できるでしょう。

ただし、生産性だけを重視した人員配置をおこなわないよう注意が必要です。従業員の希望なども考慮したうえで、最適な配置にすることがポイントです。

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ムリ・ムラ・ムダをなくす

業務プロセスを見直し、無駄な作業や重複作業を排除することで、業務効率を向上させられます。さらに、業務の標準化やマニュアル化を進めれば、作業のばらつきをなくし、効率化できます。

スケジュールに無理がないかも確認すべきポイントです。無理なスケジュールは、残業が発生する原因になりかねません。業務におけるムリ・ムラ・ムダをなくし効率が上がれば、労働時間を短縮でき、人時生産性も向上します。

RPAを導入する

RPA(Robotic Process Automation)とは、定型的な業務を自動化する技術です。人が行っていた業務をRPAに任せることで、ヒューマンエラーの削減や業務効率化が実現します。

RPAの導入によって、従業員がより付加価値の高い業務に集中でき、労働時間の削減にもつながります。その結果、人時生産性の向上が期待できます。

ただし、無差別にRPAを導入すればいいわけではありません。以下のフローでRPAの導入を検討しましょう。

  1. 現在の業務の棚卸し
  2. RPAを導入する業務の選定
  3. 導入するRPAの選定

現在の業務を棚卸しし、人時生産性の向上に大きく影響する業務にRPAを導入することがポイントです。

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