生産性向上とは?【取り組み・メリットをわかりやすく】助成金

生産性向上とは、組織の生産効率を高める取り組みのことです。ここでは生産性向上の実践に関して、さまざまな切り口から解説します。

1.生産性向上とは?

生産性向上とは、より少ない投資で、より多くの生産量を得るために行う企業の試みのこと。投資とは企業がその事業に投入した経営資源で、生産量とはそこから生み出せた成果の量を指します。

つまり生産性向上には、「投入する経営資源を減らす」「生み出される成果を増やすため、施策を行う」のが求められているのです。

生産性とは?

生産性とは、労働力や設備、原材料などの投資に対して得られた生産量の比率。「生産量÷投資」という計算式で表せます。人的・物的なリソースがどのくらい有効利用されているかを数値で把握できるのです。

「労働生産性」は、従業員1人あたりの生産量を示すものとなります。

業務効率化との違い

業務効率化とは、生産性の計算式「生産量÷投資」の分母にあたる、投資を減らす取り組みです。つまり業務効率化は、生産性向上のための施策になります。

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2.生産性の種類

生産性は労働や資本など、それぞれの生産要素の視点からとらえていくつかの種類に分類できます。

  1. 労働生産性
  2. 人事生産性
  3. 資本生産性
  4. 全要素生産性(Total Factor Productivity)

①労働生産性

労働における生産性、つまり従業員1人あたりまたは従業員が1時間あたりに生み出す成果のこと。

たとえば投資する資源の量が変わらない場合、労働生産性が高くなればなるほど、企業の利益は増えます。労働人口が減少し、資源の拡大が見込めない日本にて、労働生産性の向上は急務です。

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②人時生産性

従業員1人が1時間、働いた際の生産性のこと。従業員1人が1時間働いて得られる粗利高で数値が決まり、それが高いほどその企業は生産性に優れていると判断できます。

また人時生産性とよく比較される指標が人時売上高です。これは従業員1人が1時間にどの程度の売り上げを出したかを表す数値になります。

③資本生産性

有形固定資産の投入に対し、どれだけの付加価値を生み出せたかを示すもので、「付加価値÷有形固定資産」の算式で表されます。

また一般的に労働生産性とは相反関係です。たとえば最新鋭設備の導入により省力化を図った場合、従業員数が減った分だけ労働生産性が上がります。一方、最新鋭設備という有形固定資産が増えるので資本生産性は下がるのです。

④全要素生産性(Total Factor Productivity)

労働と資本という通常の生産要素にくわえ、それらでは測れない技術革新などすべての要素を考慮した生産性指標のこと。計算式は「生産量÷全要素投入量」です。

全要素生産性(TFP)に影響を与える技術革新の動向は、経済の潜在成長率を左右しています。

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3.生産性を向上させるべき理由

生産性向上は企業が永遠に取り組むべきテーマです。また今後もよりいっそうの努力が求められる要因があるのです。

少子高齢化による労働力不足

現在の日本は少子高齢化が急激に進行しています。労働力として国の経済を支える15歳~64歳の生産年齢人口は1995年をピークに減少に転じ、歯止めがかからない状況です。

そのような背景から企業にとって急務となっているのが、生産性向上によって少ない人数でも成果を生み出せるようにすること。近年、政府でも「働き方改革」を掲げて、企業の取り組みをあと押ししています。

国際社会における日本の生産性の低さ

OECDのデータにもとづく2019年の日本の1時間あたりの労働生産性は、47.9ドルでOECD加盟37カ国中21位。主要先進7カ国で比較すると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いています。

また1人あたりの労働生産性も81,183ドルで26位で、1970年以降最低の順位です。

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4.生産性の計算方法

生産性の計算式は、「アウトプット(産出量)÷インプット(投入量)」。分母と分子の詳細は、下記のとおりです。

  • 分母のインプット(投入量):企業が製品やサービスをつくるにあたって購入したもの。部品や資材といった原材料、そしてエネルギー、加工機械、労働力など
  • 分子のアウトプット(産出量):製品やサービスとして販売、提供されたもの

なお企業の事業内容によって、インプットとアウトプットの具体的な内容は異なります。

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5.生産性向上を分析する際に使う指標(KPI)

生産性向上を分析する際に使う指標(KPI)について解説します。

  1. 付加価値労働生産性
  2. 物的労働生産性
  3. 労働分配率
  4. 中小企業向けのKPI

①付加価値労働生産性

1人の従業員がどれだけ付加価値が高い仕事をしているかを示すもの。利益を最大化するために役立つ指標となり、計算式は「付加価値(額)÷労働量」です。

この場合の付加価値(額)は生産額から原材料や外注費、機械の償却費用など、生産に必要な原価を除いたものになります。

②物的労働生産性

従業員がどのくらい効率的に製品やサービスを生産しているかを表すもの。品質管理の向上や設備投資の判断によく利用され、計算式は「生産量(または販売金額)÷労働量」です。

販売金額は物価の変動や技術の進歩などで変動するので、純粋な生産効率を測るときには生産量で計算されます。

③労働分配率

財務分析における生産性の指標です。付加価値に占める人件費の割合を示し、付加価値の何%が人件費に分配されたか、分析できます。計算式は「人件費 ÷ 付加価値 ×100」です。

労働分配率が低いほど効率よく利益を出しているという見方ができます。しかし低すぎる会社は、利益の割に従業員の給与水準が低いという可能性もあるのです。

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④中小企業向けのKPI

2020年7月17日、政府は中小企業の生産性向上に関して5つのKPI(重要業績評価指標)を新たに示しました。

  • 中小企業の従業員一人当たりの付加価値額を今後5年間(2025年まで) で5%向上させる
  • 中小企業から中堅企業に成長する企業が年400社以上となることを目指す
  • 中小企業の全要素生産性を今後5年間(2025年まで)で5%向上させる
  • 開業率が米国・英国レベル(10%台)になることを目指す
  • 海外への直接輸出または直接投資を行う中小企業の比率を今後5年間 (2025 年まで)で 10%向上させる

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6.生産性向上によるメリット

生産性向上によってどんなメリットが得られるのでしょうか。

  1. ワークライフバランスの改善
  2. 他社との差別化
  3. コストの削減
  4. 人員不足の解消

①ワークライフバランスの改善

ワークライフバランスとは、仕事と生活のバランスが取れた状態のこと。国際比較や都道府県別データによる分析で、労働時間が短いほど労働生産性が高くなる、という結果が出ました。

よって労働時間を短くする、すなわちワークライフバランスの改善がますます求められています。

②他社との差別化

近年、情報格差や業界間の壁がなくなり、ビジネス環境では競争が激化しています。そのような状況下で、他社との差別化を図る大きなポイントとなるのが価格。さまざまな企業が、コスト優位を保つために生産性向上を目指しています。

③コストの削減

生産性向上につながるコストの削減は、業務に潜むムダを省くと進みます。省くべきムダは5つです。

  • 過剰品質の追求
  • 何もしていない待ち時間
  • 不要不急のコミュニケーション
  • 分業が連携できていない状況
  • 複雑すぎたり多すぎたりする工程

④人員不足の解消

限られた人手で効率的に業務を進める方法の一つが、業務の部分的な自動化。RPA(Robotics Process Automation)の導入で、パソコンを使った作業の一部をロボットに置き換えられます。必要に応じてAI技術を活用すると大量のデータも処理可能です。

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7.生産性向上のための取り組み例

これから生産性向上に取り組む際に必須となる、7つの効果的な方法について解説しましょう。

  1. 業務全体を把握する
  2. 無駄な業務を削減する
  3. 個々のスキルアップを図る
  4. ITツールを導入する
  5. 情報共有の仕組みを整える
  6. 業務を平準化する
  7. タイムマネジメントを行う

①業務全体を把握する

業務に必要な工程をわかりやすくするために、業務全体を可視化できるようにしましょう。次に個人の業務も可視化します。業務の優先順位を確認し、取捨選択を行うのも大切です。

②無駄な業務を削減する

業務の全体像がつかめたら、すべての業務を対象に短縮・削減できる業務はないか見つけましょう。効率よく見つけるには、3つの切り口によるアプローチがおすすめです。

  • 回数を減らせないか
  • 検討・ムダな支出がないか
  • アウトソーシングできるか

③個々のスキルアップを図る

いくらIT化が進んでも、人の手を介さなければ行えない業務もまだたくさんあります。そのような業務の効率化には教育が必要不可欠でしょう。一度教えたらそれきりではなく、習熟度に応じたフォローアップ研修や、勉強会の定期的な実施が有効です。

④ITツールを導入する

生産性向上を実現するには、生産設備の増設や人員の補強が早くてかんたんです。しかしこれらは初期投資はもちろん、維持費や人件費という形で長いスパンのコストも発生します。その点、ITツールの導入なら、低コストで大幅な時短・効率化が可能です。

⑤情報共有の仕組みを整える

個人スケジュールや業務の進捗などがリアルタイムで全体に共有できる、業務の「見える化」によって、ムダなコミュニケーションが減少します。それにより組織や管理者は、下記のようなメリットが得られるのです。

  • スケジュール管理がしやすくなる
  • 個人への確認作業の手間が減る
  • 問題点の早期発見もしやすくなる

⑥業務を平準化する

特定の従業員以外は対応できない業務も少なからず存在します。もしその従業員が退職したら、ビジネスは確実に停滞するでしょう。こうしたリスクを回避するため、業務を幅広く平準化(ルール化)し、誰もが等しく業務をできるようにするのが必要です。

⑦タイムマネジメントを行う

タイムマネジメントとは、仕事の優先順位をつけて自身の仕事のやり方、進め方を管理すること。

方法として挙げられるのは「早急に処理するべき業務と後回しにする業務を見極める」「重要でない業務はシステム化やアウトソーシングを検討」などです。単なるスケジュール管理と違い、限られた時間をどう活用するかが重視されます。

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8.生産性向上に取り組むときの注意点

仕事の生産性向上を目指した施策について考える際は、効率化のために従業員が犠牲にならないように注意しましょう。

  1. 長時間労働をさせない
  2. マルチタスクを避ける
  3. チームの生産性に注目する
  4. 全員の理解と納得を得られる方法を採る

①長時間労働をさせない

労働時間が長くなっても、時間とコストだけが増加して生産量は変わらない場合もよくあります。長時間労働や残業は従業員の負担増、そして離職につながってしまうもの。従業員の心身の健康を守るうえでも避けなければなりません。

②マルチタスクを避ける

1人の従業員が複数の業務を担当するマルチタスクは、生産性が上がると考えられがちです。しかしマルチタスクは、より大きなエネルギーを要してストレスを生み、判断力を低下させます。作業効率を下げると知られてきているので、極力避けましょう。

③チームの生産性に注目する

個人の生産性のみを追求すると、生産性低下の原因になります。たとえば10人のチームで、リーダーが自分の生産性を5倍にしても全体では「1×9+5(リーダー)=14」です。

しかし全体の生産性を2倍にすると、自分の生産性は半減しても「2×9+0.5(リーダー)=18.5」になります。

④全員の理解と納得を得られる方法を採る

現場の状況を理解していない施策は、的外れで意味のないものになってしまいます。数値的として改善されても現場にしわ寄せがきて、従業員のモチベーションを下げてしまうのです。施策を発案する際は、現場の声にしっかり耳を傾けましょう。

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9.生産性向上に活用できる助成金・補助金

企業の生産性向上のための取り組みで投資が必要なものには、助成金が支給される場合があります。有効に活用しましょう。

  1. 業務改善助成金
  2. 人材開発支援助成金
  3. IT導入補助金

①業務改善助成金

中小企業・小規模事業者の業務改善を国が支援し、従業員の賃金の引上げを図る制度のこと。設備投資を行い、生産性向上を達成した中小企業・小規模事業者に、その設備投資などにかかった経費の一部を助成します。

②人材開発支援助成金

従業員の職業訓練開発を実施した際の、訓練の経費や訓練中の賃金を一部助成する制度のこと。以下の4コースがあります。

  • 特定訓練コース
  • 一般訓練コース
  • キャリア形成支援制度導入コース
  • 職業能力検定制度導入コース

③IT導入補助金

中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援する目的で、ITツールの導入にかかる経費の一部を補助する制度のこと。対象となるITツールはソフトウェア製品やクラウドサービスなどです。導入時のサポート費用や設定費用も対象に含まれます。