働き方改革関連法とは? 2023年の施行内容、罰則、テーマ

働き方改革関連法とは、労働に関する既存の法律に加わった改正の総称。働き方改革関連法の主な施行内容や罰則、企業が変革すべき項目について解説します。

1.働き方改革関連法とは?

働き方改革関連法とは、改正された8つの労働関連法を指す総称で、正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」。改正された法律は以下のとおりです。

  • 労働基準法
  • 雇用対策法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者派遣法
  • 労働時間等設定改善法
  • パートタイム労働法
  • 労働契約法
  • じん肺法

少子高齢化と労働人口の減少が深刻化するなか、政府は2015年に一億総活躍社会の実現を掲げ、あらゆる人があらゆる場で活躍できる社会を目指すことを目標としました。

この目標を受けて2019年4月から順次施行された働き方改革関連法は、労働環境の見直しによる生産性の向上や、休眠労働力の活用による労働力確保の実現を目指しているのです。

働き方改革の目的

働き方改革の目的は、労働者がそれぞれの事情に応じて柔軟な働き方を選べる社会を実現すること。少子高齢化が進む日本では、生産年齢人口が減少する一方で、「育児や介護と両立したい」や「複数の仕事をしたい」、「好きな時間や場所で働きたい」など、労働者のニーズが多様化しています。

このような労働者の事情や希望に寄り添ってワークライフバランスを重視した働き方を実現することは、企業における「就業人口の増加」や「労働に対するモチベーション向上」、「成長機会の提供」や「生産性の向上」などの課題解決の糸口にもなるでしょう。

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2.働き方改革関連法の8つのテーマをわかりやすく解説

2018年6月29日に成立した働き方改革関連法には、「時間外労働の上限規制」や「有給休暇の時季指定による取得義務化」、「同一労働同一賃金の実現」をはじめ、8つのテーマが盛り込まれているのです。それぞれについて詳しく解説します。

残業時間の上限規制

時間外労働の上限が罰則付きで規定されました。長時間労働には労働者の健康を悪化させる可能性が高いほか、高齢者が労働に参加しづらいといった影響があります。さらには女性のキャリア形成や男性の家庭参加を困難にし、少子化を加速してきた背景もあるのです。

このような経緯を受けて、「時間外労働は原則月に45時間、年間360時間、原則の時間を超えることができるのは年6か月まで」といった上限規制が盛り込まれました。

ただし法律で規定される時間外労働と休日労働は、一般的な残業や休日出勤とは考え方が異なるため注意が必要です。労働基準法での法定労働時間と法定休日は、「労働時間は1日8時間かつ1週40時間以内、休日は1週間につき1日以上」としています。

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有給休暇の取得義務化

すべての企業は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者へ、時季を定めて年5日間を取得させなくてはなりません。

年次有給休暇は原則、労働者が希望する時季に与えるとされていますが、周囲への気遣いなどが原因で取得率が低く、問題視されていたのです。年次有給休暇の時季指定に関する主な項目を紹介します。

  • 年次有給休暇が年10日以上付与される労働者が対象
  • 対象労働者には管理監督者や有期雇用労働者も含まれる
  • 企業はできる限り労働者の希望に沿って時季指定のうえ、年5日間の年次有給休暇を取得させる
  • 労働者が自分から請求した日数と計画年休を含めて計算する
  • 違反した場合は罰則として6か月以下の懲役または30万円の罰金が科される可能性がある

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フレックスタイム制の見直し

フレックスタイム制における労働時間の清算期間が、1か月から3か月に延長されました。フレックスタイム制とは、始業時間や就業時間を決めず、一定期間に定められた総労働時間働く雇用制度。

清算期間とは労働時間を計算するために区切られた期間で、清算期間ごとに給与計算が行われます。また総労働時間の範囲内であれば、清算期間中に労働者の都合による労働時間調整が可能です。

改正内容のポイントを3つ紹介します。

  • 当該月に時間外労働がある場合、翌月の労働時間を短くして調整できる
  • 清算期間が1か月を超える際は労使協定を所轄の労働基準監督署長へ届け出る必要がある
  • 届出を怠った場合、30万円以下の罰金が科されるおそれがある

今までのフレックスタイム制では、「時間数を超過した場合は割増賃金の支払う」や「時間数の不足があれば欠勤扱いや賃金を控除する」などの問題がありました。

そのため規定の総労働時間に達するまで働くケースも多く、フレックスタイム制のメリットを十分に活かしきれていなかったのです。

今回の改正でより柔軟で効率の良い働き方が後押しされたといえます。ただし月ごとの繁閑差が大きいからといって、繁忙月に過度に働かせることはできません。

清算期間全体の労働時間が週平均40時間を超えた場合や1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えた場合は時間外労働とみなされます。

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インターバル制の普及、促進

働き方改革関連法で労働時間等設定改善法が改正され、「勤務間インターバル制度」が企業の努力義務になりました。

インターバル制とは、1日の勤務終了時刻から、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する制度。労働者の生活や睡眠にあたる休息時間を意識的に確保することが目的です。

背景には、フレックスタイム制や裁量労働制などの柔軟な労働時間制度を取り入れたがゆえに生じた問題があります。たとえば、繁忙期の長時間労働が免れなかったり、交代制勤務の場合に勤務間隔が短くなってしまったりするケースです。

インターバル制で十分な勤務間インターバルを確保させ、労働者の心身における健康維持や、ワークライフバランスの改善や向上を目指します。

勤務間インターバル制度とは?【何時間?】義務化、罰則
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高度プロフェッショナル制度の新設

高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識や技能を持ち、一定以上の年収を得ている労働者が特定の業務にあたる際に、労働基準法の定める労働時間や休憩、割増賃金、残業代の規定を適用除外できる制度。

成果評価で報酬が決まる点は裁量労働制と共通ですが、一般的に保護される労働者の権利から除外される点に違いがあります。労働時間に縛られず自由に働いて成果を上げたいプロフェッショナル人材の生産性やモチベーション向上が期待できます。以下が導入に際しての条件です。

  • 制度導入は法律で定めた企業内手続きが必要
  • 労使委員会の決議と労働者本人の同意が前提
  • 年間104日以上の休日確保、健康確保措置を講じなければならない

対象となる労働者は以下3点をすべて満たしている必要があります。

  • 労使間の合意のもと、業務内容や責任範囲、評価水準が明確に定められている
  • 企業から確実に支払われる見込みの年間賃金額が少なくとも1,075万円以上
  • 対象業務以外に状態的に従事している場合は対象にならない

高度プロフェッショナル制度とは?【簡単に説明すると?】
高度プロフェッショナル制度は、働き方改革の中でも注目を集めている制度。新聞紙面やインターネット上にも、特定された高度な専門的業務に関する新しい働き方として多く登場しています。 高度プロフェッショナル制...

同一労働同一賃金の実現

「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」を目指し、「同一労働同一賃金制度」を適用しました。

同一労働同一賃金制度とは、同一企業内で同一の職務を遂行する正社員と非正規社員に対して、基本給や賞与などに待遇差を設けず同一の賃金を支払うという制度。

パートタイム労働者、有期雇用労働者が同一企業内で正社員と同じ職務内容に従事する場合、あらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることを禁止されたのです。

非正規社員から待遇に関する説明を求められた際には、企業は説明義務を果たすよう明記されている点にも注意しましょう。なお派遣労働者に関しても「派遣先の労働者との均等かつ均衡待遇」または「一定の要件を満たす労使協定による待遇」が義務化されています。

同一労働同一賃金とは?【わかりやすく解説】いつから?
同一労働同一賃金は、雇用形態などが異なっても同じ仕事をする場合、賃金も同等のレベルで支給するというルールです。政府のガイドライン案も発表されており、各企業で同一労働同一賃金の導入に向けて対応を模索する...

同一労働同一賃金ガイドラインとは? 概要、待遇差の解消に向けた支援
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中小企業での残業60時間超の割増賃金率引き上げ

2023年4月1日から、中小企業における月60時間超の時間外労働割増賃金率が変更され、現在の25%から大企業と同じ50%へ引き上げられます。

月60時間超の時間外労働があった場合、「超えた時間に対して50%以上の割増賃金率で計算された割増賃金を支払う」または「割増賃金率の引き上げ分にあたる25%を支払う代わりに、有給休暇を与える」のいずれかの対応が必要です。現状の割増賃金率25%は有給休暇では代替できないため注意しましょう。

企業は時間外労働を正確に把握して計算するために、タイムカードやPCの使用時間、勤怠システムなどを利用し、客観的な記録を残す義務があります。人件費削減のために残業を60時間未満に抑える工夫も必要となるでしょう。

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3.働き方改革による労働基準法改正を適用年月からチェック

働き方改革を進めるにあたり、関係する法律の改定や整備が必要となりました。

なかでも大企業と中小企業で実施時期が異なる項目や、義務化された項目について十分な注意が必要です。

労働基準法の改正事項と、それぞれの適用開始時期について解説します。

2019年4月~適用になるもの

義務化するのは下記2項目です。ただし、時間外労働の上限に罰則が付くのは大企業のみ、中小企業は2020年4月からの適用となります。すべての企業が、10日以上の年次有給休暇がある労働者を対象に、年5日間の有給休暇を取得させなければなりません。

  • 時間外労働の罰則付き上限規制(大企業のみ)
  • 時季指定による年5日間の年次有給休暇取得

企業に判断が任される項目はふたつです。いずれも制度採用の際には所定の届出や企業内手続きなどが必要とされ、入念な計画や準備が求められます。

  • フレックスタイム制の労働調整期間が3か月に延長
  • 高度プロフェッショナル制度の導入

2020年4月から適用になるもの

2020年4月からは中小企業も含めて、すべての企業に時間外労働の上限が適用となります。時間外労働の上限を原則月45時間、年360時間として、臨時的な特別な事情がある場合にも上限を設定。超過した場合には罰則が科されるおそれがあります。

2023年4月から適用になるもの

中小企業の月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が、現在の25%から50%に引き上げられます。すでに大企業では義務化されているため、2023年4月からはすべての企業において基準が統一されることになるのです。

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4.働き方改革関連法における罰則

働き方改革関連法における改正は多岐にわたり、新たに罰則が科される項目も少なくありません。企業にとって優先して確認すべき項目となるでしょう。ここでは罰則付きの改正項目と、罰則条件やその内容について解説します。

時間外労働の上限規制違反に対する罰則

時間外労働の上限規制に違反した企業は、6か月以下の懲役または30万以下の罰金が科されます。これまで同様、労使間で36協定を結んでいる場合に限り、36協定の上限にあたる「月45時間、年360時間」の時間外労働が原則の上限です。特別な事情がある場合に関しても、年間6か月を超えない範囲で、下記3点を満たす必要があります。

  • 年間の時間外労働時間が月平均60時間、年720時間
  • 休日労働を含めた月平均時間外労働時間が80時間未満
  • 休日労働を含めた1か月の時間外労働が100時間未満

割増賃金に対する罰則

月60時間を超えて時間外労働をさせる場合、割増率50%の残業代を対象の労働者に支払わなければなりません。違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金があるので注意しましょう。

これまで中小企業は適用が猶予されてきましたが、2023年4月1日以降は猶予措置が撤廃。月60時間を超える時間外労働には1.5倍の割増賃金の支払いが義務化されます。なお割増賃金の代わりに代替休暇を付与することも可能ですが、事前に労使協定を締結させておかなければなりません。

フレックスタイム制に対する罰則

フレックスタイム制では、清算期間中の法定労働時間の総枠を超えた時間数を時間外労働と見なします。

従来のフレックスタイム制は、1か月ごとに労働時間の清算がされていましたが、改正にともない清算期間の上限が3か月に延長されることとなりました。

1か月を超える清算期間を設定する際には、労使協定を締結のうえ、所轄の労働基準監督署長へ届け出なければなりません。この義務を怠った場合には、30万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。

有給休暇制度に対する罰則

2019年4月から、すべての企業に年次有給休暇の時季指定取得が義務化されました。違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

対象となる労働者は、年10日以上の年次有給休暇が付与される人。最低5日は年次有給休暇を取得させなければなりません。

原則は労働者本人の希望で取得させますが、それが難しい場合には「労使双方の同意のうえ企業側で時季を指定する」や「計画年休制度の導入する」などの方法があります。

高度プロフェッショナル制度における罰則

高度プロフェッショナル制度を導入する企業は、制度を適用する労働者に対して、医師による面接指導を受けさせなければなりません。

2019年4月より施行され、すべての企業が対象です。違反した企業には50万円以下の罰金と刑事罰(罰金刑)が科されます。高度プロフェッショナル制度の対象となる人材は、新たな技術や商品などの開発、研究に関わる業務を担当することが多く、企業でも人数が限られるため労働時間が長くなる可能性が高いためです。

対象者が長時間労働による健康障害のリスクを回避できるよう、健康管理時間の規定を超えた際には、労働者の申請がなくとも産業医の面談指導を受けさせることができます。

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5.働き方改革関連法により変革を求められる労務業務

働き方改革関連法により、労働基準法をはじめとした労務に関わる法律の改正が進められています。

これらの改正は企業の労務業務に大きな影響を及ぼすでしょう。今後どのようなポイントに着目して業務を行っていくべきかを解説します。

勤務制度や勤怠実績の管理

高度プロフェッショナル制度や1か月を超えるフレックスタイム制など、幅広い勤務制度に応じた勤怠実績管理の方法を見直す必要があります。

「客観的な記録」をもとに、「1分単位の正確な労働時間の把握」を実現できる環境整備や、労務違反を防ぐための仕組みづくりやツール導入の検討も重要です。対策例は以下のとおりです。

  • 労働者全員を対象に、Web打刻やPCログなどで客観的データを取得
  • 適切なインターバル制運用のチェック体制構築
  • 事前の残業申請、実績と背反している理由提出の義務化
  • 年休管理簿による有給休暇取得状況の把握
  • 時季指定や計画年休などで強制的に有給休暇消化を推進
  • 通知やアラートによる申請漏れや遅延の防止、タイムリーな残業指導
  • 毎月の労働時間と平均労働時間、上限時間の管理

勤怠データの活用

「集計」や「照会」、「分析」といった勤怠データの活用先にも、法改正の内容を反映する必要があります。

働き方に多様性が実現すると、労務の一括管理は困難になり、個別の労働者ごとに管理するほかありません。日々の労働時間の把握だけでなく、月合計や複数月の平均を確認し、各条件と照らし合わせ、必要に応じて告知や指導をする必要があるでしょう。

打刻や集計時点で間違いが起きにくい仕組みをつくることが課題です。法改正内容の反映が容易なシステムを導入し、システムによる通知やアラート機能、自動メール送信機能などを活用しましょう。