部下のモチベーションを上げ、目標を達成させるための「フィードバック」とは?
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フィードバックは、上司として部下を育成する場面や、同僚と協力してプロジェクトを進める際、また自分自身の成長を促すためにも、非常に重要な役割を果たします。
しかし、一歩間違えると、相手のモチベーションを下げたり、関係を悪化させるリスクも持ち合わせています。
今回は、フィードバックの基本から、効果的な伝え方、具体的な手法やフィードバック力を高める方法を解説します。
目次
1.フィードバック(feedback)とは?
「フィードバック(feedback)」は、もともとは機械工学や情報科学の分野で使われていた言葉で、「帰還」や「戻す」といった意味を持ちます。
これがビジネスの世界に広まり、現在では部下の行動や成果に対して、評価や意見を伝え、成長を促すためのコミュニケーション手法を指すようになりました。
フィードバックは、決して一方的に評価を伝えるものではありません。相手が自身の現状を客観的に把握し、目標達成や課題解決に向けた行動を自律的に考えられるようサポートしていきます。
つまり、単なる「ダメ出し」ではなく、より良い未来へ導くための建設的な対話といえるでしょう。
ビジネスにおけるフィードバックの役割
ビジネスにおけるフィードバックには、単に個人の能力を向上させるだけでなく、組織全体に良い影響を与える多くの役割があります。主な役割としては、人材育成や成長促進、目標達成の効率化、従業員のモチベーション向上などが挙げられます。
一般的には、上司から部下、メンターから新入社員といった関係性で実施されるコミュニケーションです。
フィードバックの種類
フィードバックには、大きく分けて以下の2種類があります。
- ポジティブフィードバック
- ネガティブフィードバック
それぞれの特徴をみていきましょう。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックは、部下やメンバーの良い行動や成果に焦点を当て、それを肯定的に評価し伝えることです。相手の強みや良い点を具体的に伝えることで、自信を持たせ、同じ行動を継続・発展させることを促します。
効果
- モチベーション向上
- 強みの認識
- 良好な関係構築
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックは、改善が必要な行動や課題に焦点を当て、それを伝えることです。ただし、これは単なる「批判」や「ダメ出し」ではありません。相手の人格を否定するのではなく、あくまで行動の改善を促すための建設的な指摘です。
効果
- 問題・課題の指摘と改善
- スキルアップの促進
- パフォーマンスの向上
フィードバックとレビューの違い
フィードバックと混同されやすい言葉に「レビュー」があります。フィードバックが、相手の成長や行動の改善を目的として、評価や意見を伝える「助言」の意味合いが強いのに対し、レビューは「批評」や「評価」そのものを指します。
レビューはあくまで過去の出来事を評価するにとどまることが多く、改善のための具体的な行動指針が含まれない場合もあります。フィードバックは、レビューで明らかになった課題に対し、具体的なアクションを促すための対話といえるでしょう。
フィードバックのもともとの意味・使い方
そもそもフィードバックとは、制御工学の世界で用いられている用語です。
インプット(入力)すると、何かしらのアウトプット(出力)が生じる仕組みがあるとき、アウトプットされた結果がインプットに影響を与えることをフィードバックといいます。
例:部屋が暑くなりすぎたら温風温度を下げるエアコン

制御工学というと難しく感じますが、身近な例、たとえば部屋が暑くなりすぎたら温風の温度を下げる機能があるエアコンで考えてみましょう。
インプットの部分は、リモコンで目標の室温を設定し「スタート」ボタンを押すことに該当します。
アウトプットに当たる部分は、エアコンが設定した目標室温に到達するまで室温より高い温度の温風を吹き出し続けることになります。
アウトプットで吹き出した温風で室内が目標の室温に達したら、エアコンは温風温度を下げたり温風の勢いを弱めたりするインプットをするようになります。これがフィードバックに該当するものです。
2.フィードバックの目的と期待される効果

フィードバックは、個人の成長だけでなく、組織全体に多くの好影響をもたらす重要な活動です。その目的と効果を深く理解することで、より質の高いフィードバックを実践できるようになるでしょう。
フィードバックには、
- 目標の達成
- 人材の育成
- モチベーションの向上
- パフォーマンスの向上
- 信頼関係の構築
- 組織風土・コミュニケーションの活性化
といった6つの目的があります。
フィードバックの目的とは? 面談パフォーマンスの向上を目指す上司と部下の関係
フィードバックには、
目標の達成
人材の育成
モチベーションの向上
パフォーマンスの向上
という4つの目的があります。
それぞれについて見ていきます。
❶目標の達成
チームや個人の目標達成...
ここでは、この6つの目的について、詳しく解説していきます。
❶目標の達成

目標に正しく向かえるように都度、軌道修正を行います
フィードバックは個人だけでなく事業部門やチームなどの目標の達成や、具体的成果を挙げるために行われます。
チームや個人にとって一定の成長が期待できる適切な難易度の目標が設定されている場合、一人の力だけでその目標を達成するのは困難です。
そこで、目標達成への精度を向上させ、目標達成への道のりを効率化するためにフィードバックが用いられます。

効果的な解決方法のを指導や指摘を行うのではなく、人材の将来的な成長を優先するためにあえて時間がかかっても自らで解決策を模索させる、といったケースです
❷人材の育成
企業によっては、目標の達成そのものよりも、フィードバック対象者の成長をより重視するところがあります。
フィードバックを行うことで対象者である部下は、直接的もしくは間接的に自らの問題に対する解決方法に気付きます。
フィードバックによって部下自身が内省の習慣を身につけることができるため、より効率的でより生産性の高い方策を積極的に選択できるようになっていきます。
企業によっては業績といった数値的な目標達成よりも、フィードバック対象者の成長を重視するところがあるのもうなずけるでしょう。
❸モチベーションの向上
フィードバックはモチベーションの向上にも大きな役割を果たします。
フィードバックを効果的に行えば「難しそうだ」といったネガティブな感情を「自分でもできる」と感じるポジティブな感情に転換できます。
つまり、それは自己効力感を高めることにつながります。
目の前の業務についてフィードバックを通して問題解決の糸口がつかめれば、それまで悩んでいた問題にも前向きに取り組む気持ちが生まれるからです。
この自己効力感が高まった状態が、モチベーションを高めていきます。

❹パフォーマンスの向上
フィードバックの目的の4つ目はパフォーマンスの向上です。
フィードバックを行うことで、対象者である部下がより効果的で生産的な行動を選択することができるようになります。
効果のあったパフォーマンスは継続されますし、効果が薄かったものについては改善もしくは廃止といった決断となるため、結果や成果は必然的に上がりやすくなります。
こうしてパフォーマンスは自然に向上していくのです。
❺信頼関係の構築
上司と部下は、フィードバックを通じて真剣に向き合うことで、お互いの価値観や考え方を深く理解できます。
とくに、建設的な対話を重ねることで、部下は「この上司は自分のことを真剣に考えてくれている」と感じ、信頼関係が築かれやすくなるでしょう。この信頼関係は、日々の業務におけるコミュニケーションを円滑にする土台となります。
信頼に基づいた関係性があるからこそ、部下は困難な状況でも安心して相談できるようになります。
❻組織風土・コミュニケーションの活性化
フィードバックが組織全体に浸透すると、上司と部下だけでなく、同僚間でも活発な意見交換が生まれます。
これにより、風通しの良い組織風土が醸成され、新しいアイデアが生まれやすくなり、問題の早期発見・解決につながるでしょう。結果として、組織全体のコミュニケーションが活性化し、一体感が生まれます。
フィードバックが日常的に行われる文化は、チーム全体の生産性を向上させる効果も期待できます。
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3.人材教育におけるフィードバックの意味
部下の教育手法のひとつにフィードバックを導入すると、問題を抱えている部下をより手厚くケアすることが可能となります。
フィードバックは基本的には一対一で行われます。上司が部下のために時間を確保し、一対一で向き合う姿勢を取ること自体、部下にとって大きな意味があります。たとえ耳の痛い内容が話されるにしても、部下を立て直すことに対して真正面から支援する上司の存在は、部下のモチベーションの向上に寄与するでしょう。
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4.人事評価におけるフィードバック面談の重要性
人事考課サイクルにおいて特に重要視されるのが、フィードバック面談です。フィードバック面談とは、部下と上司の間で評価の結果を共有する面談のことです。評価に対する部下の納得度を高めたり、部下が抱える課題を上司が確認し、それを解決することを目的に実施されます。
人材育成の面からも、フィードバック面談の実施は重要です。適切にフィードバックすることにより、部下は評価の良い点をより伸ばし、評価の悪かった箇所を改善することができるようになります。
フィードバック面談とは?【実施方法や話す内容を簡単に】
フィードバック面談とは、上司から部下へ評価結果と理由を共有し、双方で現状の課題を把握して次の行動指針を決めるための面談のことです。
1.フィードバック面談とは?
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人事評価・人事考課のフィードバックとは?【コメント例文】
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5.フィードバックの適切な伝え方とNG例
フィードバックは、伝え方一つで相手の成長を促すことも、逆にモチベーションを下げてしまうこともあります。
ここでは、効果的なフィードバックを行うための適切な伝え方と、やってはいけないNG例を紹介します。
- 目的を明確にする
- 具体的かつ定量的に伝える
- 対象者の行動に焦点を当てる
- 建設的に対話する
目的を明確にする
フィードバックを始める前に、まず「なぜこの話をするのか」という目的を明確に伝えることが大切です。部下は突然の呼び出しに不安を感じて、萎縮してしまっているかもしれません。
「今後、君がさらに活躍するために、この件について一緒に振り返りたい」など、ポジティブな意図を最初に示すことで、相手は安心して話を聞くことができます。
| 【OK例】 | 【NG例】 |
| 「〇〇さん、先日のプレゼン資料について、今後のさらなる成長のために少しフィードバックさせてもらってもいいかな?」 | 「ちょっとこの前のプレゼン資料、見直したんだけどさ…」 |
具体的かつ定量的に伝える
抽象的な表現では、相手は具体的に何を改善すれば良いのかわかりません。「いつ」「何が」「どうだったか」を具体的かつ定量的な事実に基づいて伝えましょう。
これにより、相手は自身の行動と結果の因果関係を正確に把握することができます。
| 【OK例】 | 【NG例】 |
| 「先週のクライアント会議で、〇〇さんが提案した新規機能について、データに基づいたメリットを数字で説明してくれたよね。その結果、クライアントも納得し、契約に繋がったと思う。素晴らしい判断だったよ。」 | 「プレゼンが良かったよ。もっと頑張って。」 |
対象者の行動に焦点を当てる
フィードバックは、「行動」に対して行うべきものです。相手の「性格」や「人格」を否定するような表現は絶対に避けてください。性格は簡単に変えられませんが、行動は意識すれば変えることができます。
| 【OK例】 | 【NG例】 |
| 「今回のプロジェクトでは、情報共有の頻度が少し少なかったように感じた。週に一度、進捗状況をチームに共有する時間を設けてみてはどうだろうか?」 | 「君はいつも詰めが甘いね。だからこのプロジェクトもうまくいかないんだ。」 |
建設的に対話する
フィードバックは、一方的に「伝える」場ではなく、「対話」する場です。自分の意見を伝えるだけでなく、相手の考えや感じたことを聞き、一緒に解決策を考えましょう。この対話のプロセスを通じて、部下は自ら答えを導き出す力が身につきます。
| 【OK例】 | 【NG例】 |
| 「〇〇さんの意見を聞かせてほしい。この件について、今後はどうしていきたいか一緒に考えていこう。」 | 「君のやり方は間違っているから、次はこうしなさい。」 |
6.フィードバックとフィードフォワードの違い

フィードバックと類似した言葉に、フィードフォワードという言葉があります。
両者には、どのような違いがあるのでしょうか。
| フィードバック | 過去の行動や結果に焦点を当て、その原因や良かった点・改善点を振り返るアプローチ |
| フィードフォワード | 未来の目標達成に焦点を当て、そのために「今後どうすればよいか」という具体的な行動計画やアイデアを提案するアプローチ |
フィードフォワードとは?
フィードバックは、過去の事実に忠実なため、客観的な評価がしやすい反面、時に「ダメ出し」と受け取られ、相手のモチベーションを下げてしまうリスクがあります。一方、フィードフォワードは未来志向であるため、前向きな対話になりやすく、相手の強みを活かした解決策を考えやすい点がメリットです。
フィードバックで過去の成功と失敗を正確に把握し、その学びを活かしてフィードフォワードで未来の行動計画を立てるというように、両者を組み合わせることが、個人の成長とパフォーマンス向上には最も効果的です。

効果的なフィードバックが行われている職場では、その過程でフィードフォワードも有効に作用していると考えるべきでしょう。
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フィードバックとレビューの違い
レビュー(review)は一般的に、批評・評論という意味で用いられます。ビジネスにおいては、利用者による感想、という意味合いが強いでしょう。よく「カスタマーレビュー」などと表現されます。その点においてはフィードバックと使い方が似ています。
フィードバックとレビューの違いは、助言の度合いがどれほど含まれているか、という点にあります。フィードバックでは、次の打ち手を検討するために振り返りの行為が行われるため、一般的には助言の度合いが強く表れるでしょう。一方、レビューでは、純度の高い感想が求められるため、ノイズが含まれることをできるだけ避ける傾向にあります。
フィードバックとチェックバックの違い
チェックバック(check back)とは、さかのぼってチェックする、という意味です。フィードバックと意味は似ていますが、使用シーンがまったく異なります。
チェックバックが用いられるのは、一般的には映像業界です。制作物への修正指示が出される際に、チェックバックと表現されます。
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7.効果的なフィードバックを構成する3つの要素

効果的なフィードバックは、3つの要素で構成されています。ここでは、それぞれの要素の特徴を解説してみましょう。
- フィードアップ:目的・目標の確認
- フィードバック:経過の振り返り、評価
- フィードフォワード:次の打ち手の検討
①フィードアップの意味と特徴
効果的なフィードバックを構成する要素の一つは、フィードバックの目的や目標の設定や確立です。フィードアップといいます。
目標に照らし合わせて進捗状況を確認すれば、軌道修正の機会を持つこともできるでしょう。
すでに目標が設定されている場合でも、目標を再確認することで、常にその目標の本質に迫ることができます。
フィードバックにおいて、目的や目標の設定は不可欠な要素といえるでしょう
ポイント
- フィードバックの前に、共通の目標を確認する
- 「私たちは、このプロジェクトを成功させるために、〇〇を目指しています」のように、目的を再共有する

②フィードバックの意味と特徴
あらかじめ設定した目的や目標の達成に向けて「どのような行動をとったか」「その中で評価できる点は何か」「以後に改善すべき課題は何か」といった経過の振り返りを行う必要があります。
上司は部下に対して、目標までの道のりの中で、現在どの位置にいるのかを理解させ、さらに、上司は部下が目標達成のために必要な情報を与えます。
このことこそがフィードバックの目的となっています。
ポイント
- 「〇〇のプレゼンは、データが豊富でとても説得力があった」のように、良かった点を具体的に伝える
- 「あの時、顧客への報告が遅れてしまったのは、情報の確認に時間がかかったからだね」のように、事実に基づいた課題を指摘する

③フィードフォワードの意味と特徴
過去を適切に評価することで「未来に向けて次にとるべき一手」を検討します。フィードフォワードの手順は、次のように行います。
まず、目標を意識して目標から逆算して今何をするべきかを考えます。その際、ヒト・モノ・カネといった経営資源の制約を意識せずに考えましょう。
次に、複数のアクションプランから効果が最大限期待できるプランを選択します。
最後に、選択したアクションプランを実際の計画に落とし込むことができたら完了です。
ポイント
- 「次回は、報告を週に2回に増やして、進捗の遅れがないか一緒に確認していこう」のように、具体的なアクションプランを提案する
- 「〇〇さんの強みである論理的な説明力を活かして、次のプレゼンではこの部分をさらに強化してみよう」のように、強みを活かす提案をする
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8.フィードバックを効果的にする4つのポイント

フィードバックを効果的にするには、4つのポイントがあります。キーワードをもとにして、4つのポイントを解説しましょう。
- 目標に結び付けて
- 具体的に
- 行動可能な
- タイムリーに
①目標に結び付けて
フィードバックは、必ず個人の目標や組織の目標に結びつけて伝えましょう。
「このフィードバックは、〇〇という目標を達成するために必要なことだよ」と伝えることで、相手は「なぜこの話を聞く必要があるのか」を理解でき、納得感を持って受け入れやすくなります。
目標と無関係な指摘は、単なる批判に聞こえてしまうため、避けるべきです。
②具体的に
効果的にフィードバックをするためには、具体的な行動に関して具体的な言及をすることが不可欠です。
フィードバックを具体的に行うためには、評価者はフィードバック対象者を細部まで観察することが求められます。
「先日のプレゼンはうまくいったね」と結果だけを伝えるのではなく、「先日のプレゼンは、自分たちの提案がシンプルにまとめられていて、先方も共感していたようだね。資料の使い方も効果的でわかりやすかったよ」と言った方が、部下自身に何が良かったのか、今後はどうすればいいのかというメッセージが伝わりやすくなるからです。
③実現可能なアクションプランを
フィードバックは、「次の一歩」が明確でなければ行動につながりません。
課題を指摘するだけで終わらせず、相手のスキルレベルや状況に合わせて、「すぐにでも取り組める実現可能なアクションプラン」を一緒に考えることが大切です。
小さな一歩でも、それが成功体験となれば、次の挑戦への意欲へとつながるでしょう。

④タイムリーに伝える
最後のキーワードは「タイムリーに伝える」です。
フィードバックは、対象者がアクションプランを実行してある程度の結果や成果が出た後、速やかに行う必要があります。
行動後の時間が経てば経つほどフィードバックの効果は激減していきます。
極端ですが、アクションプランを実行後すぐにフィードバックが行われるのと、数年経って「あの時の評価だけれど」と昔話のようにフィードバックがなされるのでは、効果の違いは明らかとなります。
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9.フィードバックの手法の種類
フィードバックには3つの型があります。
それぞれの型について、簡単に解説していきます。
- サンドイッチ型
- SBI(Situation Behavior Impact)型
- ペンドルトンルール
フィードバックの主な型(種類)とは? メリット、具体例
フィードバックは、上司と部下の間などで日常的に行われているコミュニケーションの一つです。
効果的にフィードバックを行うために3つの型を、それぞれのメリットやデメリットだけでなく使い方や具体例などを交え...
①サンドイッチ型

サンドイッチ型は、まず褒めて、次に改善点を伝え、最後に再度褒めて終わるという手法です。「ポジティブなフィードバック→ネガティブなフィードバック→ポジティブなフィードバック」といった流れで展開していきます。
サンドイッチ型は、相手の緊張を和らげ、話を聞き入れやすくする効果があります。また、改善点がマイルドに伝わるため、受け手の心理的負担を軽減できるのがメリットです。
ただし、褒める部分が不自然ですと、かえって不信感を与えてしまうことがあります。また、改善点が褒め言葉の間に埋もれてしまい、本当に伝えたいことが伝わらない可能性がある点に注意して活用することがポイントです。
②SBI(Situation Behavior Impact)型

SBIとは、The Center for Creative Leadershipが開発したフィードバックの型で、
- Situation(状況)
- Behavior(行動)
- Impact(影響)
の頭文字をとったものです。
フィードバックをS→B→Iの手順で行うことにより、フィードバックの内容が対象者に理解されやすいメリットがあります。
内容を理解した対象者は、今後自分がどのように行動すべきであるかといったことを内省できるようになります。
対象者が自分の置かれている状況を理解した上で解決策を模索できるため、評価者と対象者の間に信頼関係が構築されやすいのも特徴です。
③ペンドルトンルール

ペンドルトンルールは、受け手(フィードバックを受ける側)の自己評価を重視する対話型の手法です。フィードバックの流れは以下となります。
- フィードバックを行う目的を伝える
- 受け手に「うまくいったこと」を自己評価してもらう
- フィードバッカー(伝える側)は、受け手の自己評価で良かった点を肯定し、さらに良い点を付け加える
- 受け手に「改善すべき点」を自己評価してもらう
- フィードバッカーは、受け手の自己評価を尊重しつつ、さらに改善策を提案する
- 今後の行動計画を一緒に考える
この手法では、受け手自身が主体的に考え、内省する機会を持てるため、自律的な成長を促せます。一方的に話すのではなく、対話を通じて信頼関係を深められるでしょう。
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10.手法別・フィードバックの例文
主要なフィードバック手法をはじめ、手法別にさまざまなフィードバック例文を紹介します。
相手の性格や状況に合わせて、適切なフィードバックを行うための参考にしてみてください。
①サンドイッチ型フィードバックの具体的な文例
サンドイッチ型は、ポジティブなフィードバックから始まります。
| 褒める | 「先日のA社へのプレゼン、内容が非常によかったです。 わかりやすく、先方の課題にも合致していたので受注できるといいですね。 すばらしいクオリティでした」 |
| 改善点 | 「ただし、その資料作成に費やした時間は次回から改善してほしいです。 平均5時間だった残業時間が先月は4倍になっています。 今回作成したものをひな形化するなどして、効率化してください」 |
| 褒める | 「とてもいい資料だったので、今度のチームミーティングで発表してほしいです。 できれば他のメンバーも使えるように資料を共有してほしいです。 どうでしょうか?」 |
このようにサンドイッチ型は改善点をポジティブな会話で挟み込んだ会話ができるため、部下もモチベーションを維持したまま次の課題に向かうことができます。
②SBI型フィードバックの具体的な文例
SBI型の中のポジティブフィードバックの場合を見てみましょう。
| Situation | 「昨日の会議での発言についてです」 |
| Behavior | 「議論が脱線しそうになったり、本質的でないことが焦点になったりしたとき、 本当に話し合うべきことに戻すようメンバーを誘導しましたね?」 |
| Impact | 「私は、あなたのおかげで会議の生産性が上がったと思うし、 チームの目標への意欲も向上しているようで、とてもうれしいです。 いまの調子で引き続きよろしくお願いします」 |
次に、SBI型の中のネガティブフィードバックの場合を見てみましょう。
| Situation | 「A社への見積もり送付の期限は10日前でした」 |
| Behavior | 「見積もりは送付されなかったし、A社や私への報告がありませんでしたね?」 |
| Impact | 「私は、この商談の達成見込みが低くなり、A社の当社への信頼が低下したと思い、 がっかりしています」 |
③ペンドルトン型フィードバックの具体的な文例
ペンドルトンルールにおけるフィードバック例を見ていきます。
部下
先日行われた新入社員向けのマナー研修の準備・運営についてです。
前任者から引き継がれていた前年の反省点を踏まえ、ロールプレイングを多めに取り入れたのが好評だったようでした
そうですね。課題だった点を改善して、アンケートでも満足度の高い結果が出ていたのでよかったです。
見学に来ていたマネージャー陣にも好評でした。
もっとこうすればよかった、という点はありますか?
上司
部下
外部講師の方が予定の時間に来社されず、急遽研修プログラムの順番を変更するというトラブルがありました。
前日に確認の連絡をしておけばこのようなことはなかったかと思うので、その点は反省点ですね
そうですね。それもそうですし、電話でしかやりとりしていなかったので、確認の意味でもメールなどで明文化しておくとお互いに間違いがうまれにくいかもしれません。
ただ、トラブルに見舞われてもうまく機転を利かせて対応できたと思います
上司
部下
次回のために工程表と準備物のチェックリストを作ろうと思います。
今回、満足度は高かったですが、細かい抜け漏れがあったり、前任者からは口頭で引き継ぎされてわかりにくかったこともありました。来年は誰が担当するかわかりませんし、誰が担当になってもいいようにしておこうかと思います
それはすばらしいアイディアですね。できあがったらぜひ見せてください
上司
部下
かしこまりました。メモ程度ですでに大まかな内容は残してあるので、1週間もあればまとめられると思います。来週、今日と同じ時間に見ていただけますでしょうか。よろしくお願いします
プロセス型のフィードバック例
|
今回の営業成績は目標に届かなかったけど、結果だけを気にしないでほしい。なぜ目標に届かなかったのか、そのプロセスを一緒に振り返えろう。 例えば、新規顧客へのアプローチ回数は先月より増えているよね。これは良いプロセスだ。一方で、商談から成約に至るまでの期間が長くなっている傾向があるね。 この部分を改善できれば、結果はついてくるはずだ。どうすればこの期間を短くできるか、何かアイデアはあるかな? |
プロセス型のフィードバックとは、結果だけでなく、そこに至るまでの「プロセス(過程)」に注目する手法です。とくに、失敗や課題があった場合に、その原因を深掘りし、今後の改善につなげられます。
DESC法のフィードバック例
| Describe:描写 | 先週の会議で、〇〇さんが他のメンバーの意見を遮ってしまう場面が何度かあったよね。 |
| Express:表現 | 私は、せっかくの良いアイデアが出にくくなってしまうのではないかと少し心配になったんだ。 |
| Specify:提案 | 今後は、相手が話し終えるのを待ってから発言するようにしてみてはどうだろうか。もしくは、発言の前に『少し補足させてください』と一言断りを入れてから話す方法もあるよ。 |
| Choose:選択 | どちらの方法が、〇〇さんにとってやりやすいかな? |
DESC法は、D(Describe:描写)、E(Express:表現)、S(Specify:提案)、C(Choose:選択)の4つのステップで、相手に改善を促す手法です。自分の意見を客観的に伝えつつ、相手に選択肢を与えることで、自主性を引き出せます。
FEED型のフィードバック例
FEED型は、F(Fact:事実)、E(Explanation:解釈)、E(Effect:影響)、D(Desired behavior:期待行動)の4つの要素でフィードバックを行う手法です。とくに、相手の行動が周囲に与える影響を明確に伝えたい場合に有効です。
| Fact:事実 | 先日のチームミーティングで、〇〇さんが積極的にアイデアを出してくれたね。 |
| Explanation:解釈 | 私は、そのアイデアがチームの議論を活性化させたと思ったんだ。 |
| Effect:影響 | 結果として、新しい企画の方向性が短時間でまとまった。チーム全員が君の貢献を頼もしく感じているよ。 |
| Desired behavior:期待行動 | 今後も、積極的に意見を出してくれることを期待している。 |
KPT型のフィードバック例
KPT型は、プロジェクトや期間の振り返りで使われる手法で、K(Keep:今後も継続すること)、P(Problem:現状の課題・問題)、T(Try:次取り組むべきこと)の3つの観点でフィードバックを行います。意見交換しながら進めていくため、双方向的なフィードバックが可能です。
今ある問題を可視化して振り返るため、気づきを得やすく、自発的な行動につなげやすいでしょう。
| Keep:今後も継続すること | 君が毎日、日報で進捗を細かく報告してくれたおかげで、チーム全員が状況を把握できていたのは本当に良かった。これは次も続けていこう。 |
| Problem:現状の課題・問題 | 予期せぬトラブルが起きた時に、一人で抱え込んでしまう場面があったよね。 |
| Try:次取り組むべきこと | だから次回のプロジェクトでは、何か問題が発生したら、まずその日のうちにチャットで共有してみる、という新しい試み(Try)をしてみてはどうだろうか。 |
その他のフィードバックの例文
下記記事に人事評価時のコメント例文を載せています。フィードバックの例文としてこちらをご参考ください。
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11.フィードバックを効果的にするスキル・能力
フィードバックの効果を高めるためのスキルの中に、ティーチングとコーチングという能力があります。ここでは、それぞれについて説明していきます。
ティーチングとコーチングの違いのまとめ

ティーチング

ティーチングとは、業務上必要となる知識や技術などのスキルを指示や助言などによって直接指導することをいいます。
相手から答えを導き出し自己解決を求めるコーチングとは区別して用いられています。
ティーチングは、答えそのものをズバリ指導します。
よって、短期間で確実な成果を挙げられる可能性が高いため、現場教育を効率的に行えるというメリットがあります。
ただし、注意しなければならない面もあります。
それは、指示を待っているだけになる、責任感を養えなくなる、モチベーションを強く持つことができなくなる、などといった側面です。
- 業務手順
- 業界知識、前提知識
- IT/PCスキル
といったものは自分で考え出すものではありません。
| フィードバックでの使い方 |
| 「この資料作成には、〇〇というツールを使うと効率が上がるよ。使い方は、このマニュアルに書いてあるから見てみよう。」 |
| 「この問題は、まず〇〇という手順で考えると解決できることが多い。まずはこの手順で試してみて。」 |

コーチング

コーチングとは目標の達成を間接的にサポートする手法のことです。
コーチングでは、傾聴によって相手の話を注意深く聴き、質問によって相手の心の中にある答えを引き出すことを目指します。
ティーチングのように直接答えを与えることはせず、本人自らが答えを引き出すまで質問を続けていきます
このやり方によって、自分で答えを見つける能力が身に付き、組織の中で自主性や主体性を発揮しやすくなります。
また、自ら考えることで今まで誰も思いつかなかったような答えを導き出し、それが会社の発展につながるようなアイデアになることもあります。

また、相手が知識や技術を持っていないことに対しては不向きな方法です。そういったときは、その場合はティーチングで直接答えを与えるようにしましょう。
たとえば、パソコンの操作ができない人に「ウェブサイトをつくる」という目標を掲げている場合は、コーチングでPCスキルを向上させようとするのは無謀といえるでしょう。
| フィードバックでの使い方 |
| 「この結果について、君自身はどう分析している?なぜこの結果になったと思う?」 |
| 「今後、目標を達成するために、どんな行動を増やしていくことができそうかな?」 |
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12.フィードバック力を高める方法
フィードバック力は、高めることが可能なスキルです。ここでは、フィードバック力を高めるために有効な以下の3つの方法を紹介します。
- 双方的なフィードバック機会を設ける
- 観察力を高める
- 研修を実施する
双方的なフィードバック機会を設ける
フィードバックは、上司から部下への一方的なものだと捉えられがちですが、本来は双方向のコミュニケーションです。部下から上司へのフィードバックを積極的に求めることで、上司は自身のマネジメントや指導方法を客観的に見つめ直すことが可能になります。
また、普段フィードバックされる側である部下も、フィードバックする機会があることで、自身のフィードバックの受け答えに足りない点に気付けます。さらに、将来的にマネジメント側に回った時に必要なフィードバックスキルが身につけられるでしょう。
これにより、フィードバックの質が向上するだけでなく、組織全体の心理的安全性の向上にもつながります。
観察力を高める
適切なフィードバックを行うには、部下の行動や状況を日頃からよく観察することが不可欠です。
日々の業務で「どんなことに苦労しているか」「どんな時にモチベーションが上がっているか」といった小さな変化に気づくことで、より具体的でタイムリーなフィードバックが可能になります。
部下との雑談やランチの機会を設けたり、業務日報を丁寧に読むするなど、意図的に観察する時間の確保も良い方法です。
研修を実施する
組織全体のフィードバック力を底上げするためには、フィードバックに関する研修を実施することも有効です。
フィードバックの目的や効果、具体的な手法や注意点などを体系的に学ぶことで、マネージャー層の指導力向上はもちろん、メンバー間でのフィードバック文化の醸成にもつながります。
外部の専門家を招いたり、社内で事例を共有する場を設けるなど、学びの機会を作ってみましょう。
13.フィードバックに関するよくあるQ&A
ここでは、フィードバックに関するよくあるQ&Aを紹介します。
Q1. フィードバックの意味をわかりやすく説明すると?
Q2. フィードバックを言い換えると?
Q3. スマホでよく出てくるフィードバック送信とは?
Q1.フィードバックの意味をわかりやすく説明すると?
フィードバックとは、相手の行動や結果を客観的に伝え、今後の成長や改善を促すための「建設的な対話」です。単に褒めたり、叱ったりするのではなく、具体的に何が良かったのか、何を改善すべきかを伝え、次の行動へと繋げることを目的とします。
Q2.フィードバックを言い換えると?
ビジネスにおけるフィードバックは、状況によってさまざまな言葉に言い換えられます。言い換えの言葉を知ることで、フィードバックの意味をより理解しやすくなるでしょう。
| ポジティブな意味合い | ・助言提案 ・意見 ・評価 ・感想 ・コメント |
| より建設的な意味合い | ・行動の振り返り ・内省を促す対話 ・軌道修正 ・改善点の指摘 |
Q3.スマホでよく出てくるフィードバック送信とは?
スマートフォンやアプリなどで見かける「フィードバックを送信」は、そのサービスや機能について「利用者の意見や感想を開発者側に伝える」ことを意味します。ユーザーからのフィードバック送信があることで、サービス提供側は、不具合の修正や機能改善に役立てられます。
14.まとめ
フィードバックは、単なる「ダメ出し」や「褒め言葉」ではなく、個人の成長と組織の発展に欠かせない重要なコミュニケーションです。効果的なフィードバックを実践するためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 目的の明確化
- 具体性と客観性
- 未来志向の対話
- 双方向のコミュニケーション
フィードバックの活用シーンは人材育成や業務内、1on1や評価などさまざまです。タイムリーなフィードバックは、より効率的な目標達成や改善につなげられるようになります。フィードバックにはさまざまな手法があるため、部下の状況や課題に応じて使い分けることがポイントです。
本記事を参考にフィードバックの役割や適切な伝え方、手法などを押さえて、人材の成長促進や部下のモチベーション向上、効率的な目標達成につなげられるようなフィードバックを実践してみてください。
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