合計所得金額の見積額とは?【わかりやすく解説】計算方法

合計所得金額の見積額とは、所得の収入額から控除を差し引いた金額の合計額のことです。必要となるタイミングや関連する書類などについて説明します。

1.合計所得金額の見積額とは?

合計所得金額の見積額とは、所得の収入額から控除を差し引いた金額の合計額のこと。細分化すると、各種の収入金額から、必要経費・給与所得控除額・公的年金等控除額などを差し引いた金額の合計となります。

合計所得金額の見積額は、確定申告や年末調整で提出する「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に記載する項目でもあるのです。

所得と収入の違い

所得と収入の違いは、下記のとおりです。

  • 所得…必要経費を含まない
  • 収入…必要経費を含む

「収入=所得+必要経費」という計算式でも表せます。また必要経費は、自営業者と会社員でそれぞれ内容が異なるのです。

  • 自営業者…必要経費は業種(仕事)によって異なる
  • 会社員…業種に関係なく「給与所得控除」としてあらかじめ定められている

以上により会社員の所得は「給与-給与所得控除」で求められるのです。

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2.合計所得金額の見積額に含まれる所得と計算方法

合計所得金額の見積額に含まれる所得について、下記の項目を説明します。

  1. 給与収入所得
  2. 公的年金等所得
  3. 所得金額調整控
  4. 事業所得
  5. それ以外の所得

①給与収入所得

給与所得とは、勤務先から受ける給料や賞与のこと。具体的にいえば、給与収入から給与所得控除を差し引いた金額です。

給与所得=給与収入(源泉徴収前の金額)-給与所得控除

給与所得控除は会社員にかかる経費のようなもので、給与収入金額に応じて差し引かれます。給与収入が400万円だった場合、給与所得は下記のように算出されます。

400万円-(400万円×20%+44万円)=276万円

給与収入に含む手当

  • 基本給
  • 家族手当
  • 住居手当
  • 通勤手当
  • 食事手当
  • 役付手当
  • 職階手当
  • 皆勤手当
  • 能率手当
  • 生産手当
  • 各種技術手当
  • 特別勤務手当
  • 勤務地手当
  • 賞与
  • 役員報酬のうち給与相当額

給与収入に含めない手当

  • 解雇予告手当
  • 退職手当
  • 結婚祝金
  • 災害見舞金
  • 病気見舞金
  • 年金
  • 恩給
  • 健康保険の傷病手当金
  • 労災保険の休業補償給付
  • 家賃
  • 地代
  • 預金利子
  • 株主配当金
  • 大入袋
  • 出張旅費
  • 役員報酬(給与相当額を除く)

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②公的年金等所得

公的年金による所得は、税制上の正式な区分で「雑所得」となります。具体的な算出方法は「その年に受け取る年金額-公的年金等控除額」です。年金以外の所得額や年齢、受け取る年金額に応じて異なります。

所得が年金のみ、または年金以外の所得が年間1,000万円以下の場合の例をご紹介しましょう。

  • 65歳以上で受け取っている年金額が145万円の場合:145万円(受け取る年金額)-110万円(公的年金等控除額)=35万円(年間所得の見積額)
  • 65歳未満で受け取っている年金額が50万円の場合:50万円(受け取る年金額)-60万円(公的年金等控除額) =0万円(年間所得の見積額)

③所得金額調整控

一定の給与所得者の総所得金額を計算する際、一定金額を給与所得の金額から控除すること。控除額の算出方法は、次にあげるように所得の種類で異なります。

給与所得の場合:控除額={給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円)-850万円}×10%

給与所得と年金所得がある場合:控除額={給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円)+公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)}-10万円

④事業所得

事業から生まれた所得のこと。具体的な算出方法は、「総収入金額-必要経費」です。必要経費とは、仕入代金や人件費、交通費や通信費など事業に関係する費用のこと。所得税は、所得額によって課税される税率や控除額が異なります。

事業所得が300万円の場合:300万円(事業所得)×10%(税率)–97,500円(控除額)=202,500円(所得税額)

⑤それ以外の所得

所得は、その内容によって10に分かれており、それぞれ計算方法が異なります。ここでは、以下3つの所得について概要と計算方法を紹介しましょう。

  • 譲渡所得:資産の譲渡により得た収入がある場合に発生
  • 譲渡資産が土地や建物の場合:譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
  • 譲渡資産が株式等の場合:譲渡所得=総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)
  • 退職所得:勤務先から受ける退職手当や、厚生年金基金などの加入員の退職により支払われる。退職所得=(収入金額(源泉徴収前の額)-退職所得控除)×1/2
  • 一時所得:臨時的に得た収入や、たまたま得た収入がある場合に発生。一時所得=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除(最高50万円)

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3.合計所得金額の見積額が必要となるタイミング

合計所得金額の見積額が必要となるタイミングについて、ポイントを説明します。

  1. 年末調整
  2. 確定申告

①年末調整

所得税の過不足を精算する手続きのこと。企業に勤める会社員は、個人に代わって企業が所得税を納税し、社会保険料・住民税などと一緒に毎月の給与から天引きされています。

この時点では概算で算出されたものなので、その年の所得税が確定したら再計算して正しい税額を納税しなければなりません。正しい税額とこれまで概算で徴収した金額とを比較して、過不足分を会社員に還付、または追加で徴収するのです。

年末調整は、一般的に10月下旬~11月ごろにスタートし、1月下旬にかけて行われます。

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アルバイトやパートも対象

年末調整は原則、企業から給与を受け取っている人が対象です。よってアルバイトやパートも年末調整が行われるのですが、対象になるには条件があります。

年末調整の対象になる人:「年末にアルバイト先に在籍している」「給与所得者の扶養控除等(異動)申請書を提出済である」

年末調整の対象にならない人:「年末前に退職した」「給与所得者の扶養控除等(異動)申請書が未提出」「1年間の給与が2,000万円を超えている」「災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人」

②確定申告

1年間の所得にかかる税額を計算し、国(税務署)に納めるべき税額を報告する手続きのこと。具体的には、次のような人です。

  • フリーランスや自営業といった個人事業主で、事業収入がある
  • 不動産収入や株取引による所得がある
  • 一時所得がある
  • 退職所得があり「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない
  • 所得税の猶予を受けている

確定申告を行う期間は、例年2月16日ごろから3月15日ごろまでです。

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条件に当てはまる場合は公的年金等所得の申告が必要

原則、公的年金も確定申告の対象です。しかし収入の合計額が400万円以下で、かつ次にあげる要件を満たす場合は確定申告が不要となります。

  • 公的年金などの収入金額の合計額が400万円以下であり、さらにその公的年金などのすべてが源泉徴収の対象となる
  • 公的年金にかかわる雑所得以外の所得金額が20万円以下である

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4.合計所得金額の見積額が関連する書類

合計所得金額の見積額が関連する書類について、次の項目を説明します。

  1. 給与所得者の基礎控除申告書
  2. 給与所得者の配偶者控除等申告書
  3. 所得金額調整控除申告書
  4. 扶養控除等(異動)申告書

①給与所得者の基礎控除申告書

基礎控除を申請するための書類です。基礎控除は、従業員の合計所得が2,500万円以下の場合、その従業員の合計所得金額から最大48万円が控除されるというもの。

合計所得金額が2,500万円を超える場合、基礎控除は受けられません。よって、給与所得者の基礎控除申告書を記入する必要はないのです。

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基礎控除とは?

納税者が所得税や住民税の計算をする際、所得から一律で差し引かれる所得控除のこと。

基礎控除が適用されるのは所得2,500万円以下の納税者。合計所得金額から一律で48万円を差し引く仕組みになっています。

合計所得金額から基礎控除などの所得控除を差し引いた課税所得金額に税率をかけ、所得税の金額を計算します。

②給与所得者の配偶者控除等申告書

配偶者控除や配偶者特別控除という2種類の控除を受ける際に提出する書類で、「配偶者控除申告書」とも呼ばれます。配偶者控除申告書には、配偶者に関する次のような項目について記入するのです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • マイナンバー
  • 本年中の配偶者の合計所得金額の見積額

配偶者控除とは?

配偶者がいる納税者に適用される税額控除のこと。以下の条件を満たした場合に適用されます。

  • 民法規定の配偶者である
  • 納税者と控除対象者が生計を一にしている
  • 控除対象の配偶者の年間合計所得額が48万円以下である(所得が給与所得のみの場合、収入が103万円以下で適用対象になる)
  • 白色申告者の事業専従者でない
  • 納税者本人の年間合計所得金額が1,000万円以下である

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配偶者特別控除とは?

納税者に「年間48万円以上の所得がある配偶者」がいる場合に適用される所得控除です。

通常、配偶者がいる場合には「配偶者控除」が適用されます。しかし配偶者控除は配偶者の年間所得金額が48万円以下でなければ、適用されません。

ただし配偶者控除が適用できなくても、年間所得金額が48万円~133万円であれば、所得金額に応じて配偶者特別控除が適用されるのです。

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③所得金額調整控除申告書

子育て・介護世帯の負担軽減を目的とした控除の申請に必要な書類のこと。その年の給与の収入金額が850万円を超える居住者で一定の要件に該当する場合、収入金額から850万円を差し引いた金額の10%相当額を給与所得金額から差し引けるのです。

一定の要件とは、次のいずれかに該当することを指します。

  • 本人が特別障害者に該当する
  • 同一生計配偶者が特別障害者に該当する
  • 扶養親族が特別障害者に該当する
  • 年齢23歳未満の扶養親族がいる

所得金額調整控除とは?

下記の引き下げが同時に適用される納税者に対する緩和措置のこと。

  • 給与所得控除額の10万円引き下げ
  • 公的年金等控除の10万円引き下げ

下記に該当する場合、所得金額調整控除が適用されます。

収入額が850万円を超え、次のいずれかに該当する:「本人が特別障害者に該当する」「年齢23歳未満の扶養親族を有する」「特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族を有する」

給与所得控除後の給与などの金額及び公的年金などに係る雑所得の金額があり、それらの所得金額の合計額が10万円を超える

④扶養控除等(異動)申告書

年末調整の際、企業に提出する控除申請書類のひとつです。扶養控除等(異動)申告書には、次の金額を記載する箇所があります。

  • 配偶者の本年中の所得の見積額
  • 扶養親族の本年中の所得の見積額

申告書を提出すると、企業は申告書に記載した扶養親族情報などをもとに必要な控除額を差し引いて、毎月の所得税額を算出します。

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税制上の扶養控除…主に家計を支えている納税者の配偶者や子どもなどの年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入なら年間103万円以下)の場合に一定の金額を控除すること

社会保険上の扶養控除…家計を主に支えている人が加入する健康保険、厚生年金といった社会保険の被扶養者になること

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5.合計所得金額の見積額で注意すべき点

合計所得金額の見積額で注意すべき点について、説明します。

  1. 住民税の所得割額
  2. 合計所得金額の見積額の誤り

①住民税の所得割額

住民税の算出方法は、「所得割額(所得金額に比例して課税される住民税額)=課税総所得金額(前年中の所得金額-所得控除額)×税率-税額控除額」です。

所得税と同様の控除項目が住民税にも設定されていますが、金額が異なります。差がある所得税額控除の例として、扶養控除(一般)・配偶者控除(一般)は、それぞれ所得税が38万円、住民税が33万円となります。

②合計所得金額の見積額の誤り

企業に提出した「給与所得者の配偶者控除等申告書」に記載した給与所得の収入金額などに誤りがあった場合、改めて処理をし、年末調整を行います。

まず給与の支払者(企業)が、書類を提出した従業員に記載内容の訂正を依頼します。従業員が記載内容を訂正して再提出したら、正しい配偶者控除額または配偶者特別控除額によって、年末調整が行われるのです。