テレワークの人事評価はどうすればいい?【課題と対策一覧】

在宅勤務を導入した企業で新たな課題となっているのが、在宅勤務者への人事評価です。この記事では、在宅勤務の人事評価の問題点や対策について詳しく解説します。

1.在宅勤務(テレワーク)における人事評価の現状

新型コロナウイルスの感染拡大防止や働き方改革などから、在宅勤務を導入する企業が増加しました。しかし運用面や労務管理だけでなく、人事評価を課題に挙げる企業も多く見られます。

パーソル総合研究所が公表した調査結果『テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査』によると、在宅勤務者(テレワーカー)の3割以上が、在宅勤務における不安として評価に関する不安を挙げています。在宅勤務と適切な人事評価を実現するためには、企業と従業員双方の問題を解決する必要があるのです。

参考 テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査パーソル総合研究所

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2.在宅勤務における人事評価の課題

在宅勤務には通勤時間の削減や働き方の多様化といったメリットがあるものの、人事評価ではさまざまな課題が挙げられます。

  1. 評価方法や評価基準があいまい
  2. 勤務態度の評価が困難
  3. 勤務時間の把握が困難
  4. コミュニケーション不足
  5. 手続きの遅滞
  6. 人事プロセスの遅延

①評価方法や評価基準があいまい

在宅勤務は完全非対面のため、誰が何の業務をどれだけ行ったか不明瞭になりがちです。そのうえ明確な評価項目が設定されていない場合、担当者によって評価にバラつきが生じ、公正な評価にならなくなるでしょう。

このような評価では、在宅勤務者は不公平感を抱きやすいです。しかしオフィス勤務者と同じ「プロセスを重視した人事評価」では、在宅勤務の従業員は不利になります。在宅勤務者を同じ枠組みで評価せず、在宅勤務向けの評価項目を設定する必要があるのです。

②勤務態度の評価が困難

在宅勤務では、「部下がどのような姿勢や態度で仕事に取り組んでいるか」の把握が難しいもの。部下の勤務態度を直接見られないため、業務における創意工夫や改善提案などの工程がわからず、十分に評価できません。

成果を重視しすぎてこうしたプロセスが評価されなくなると、部下の仕事に対するモチベーションが低下する可能性も高いです。

③勤務時間の把握が困難

たとえば「勤務時間中に、業務以外のことをしたり休憩したりする」「勤務時間外に業務をする」といった状況が生じていても把握できません。

生産性の観点から、勤務時間のなかで業務を遂行することは、人事評価にて重視されます。勤務時間を把握するには、クラウド型の勤怠管理システムを導入する方法が有効です。

④コミュニケーション不足

在宅勤務ですと、業務の進捗にかかわる相談や確認はおろか、雑談も気軽に行えません。しかしこのようなコミュニケーションこそ、その人の価値観や考え方、要望や不満を知るきっかけでもあるのです。

コミュニケーションの機会が減った場合、評価にかかわる面談を工夫する必要があります。「定期的に1on1を行う」「明確な目標に対する定期的な進捗報告」など、コミュニケーションの促進が求められるのです。

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⑤手続きの遅滞

直筆の記入が求められる書類や押印が必要な書類などがあっても、対象となる従業員が在宅勤務していると、手続きは滞留します。また手続きについて不明点や相談をチャットやメールで質問しても、すぐに回答が得られない場合も多いです。

⑥人事プロセスの遅延

人事評価を実施する担当者の間でコミュニケーションが滞ると人事プロセスが遅延します。評価に必要な情報が共有されないと、適正な評価が行えないからです。その結果、評価にブレや偏りが生じやすくなります。

在宅勤務している従業員の情報をリアルタイムに集約し、迅速に共有する仕組みの構築が必要です。

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3.在宅勤務に適した人事評価を実現するための対策

先述したように在宅勤務者への評価では、さまざまな問題点が生じます。なかでも評価基準に難しさを感じる企業も多いようです。ここからは在宅勤務に適した人事評価制度を実現する6つのポイントを紹介します。

  1. 評価項目の明確化
  2. 評価方法の統一
  3. 目標管理制度(MBO)の導入
  4. 人事評価プロセスを在宅勤務に適したものに改善
  5. 「業務プロセス評価」と「成果主義」の併用
  6. 裁量労働の可視化

①評価項目の明確化

在宅勤務者への人事評価では、オフィス勤務の場合より明確な評価基準が必要になります。評価基準に数値目標や定量指標などを取り入れ、在宅勤務に合わせた明確な「期限」と「目標」を共有すると、成果が可視化されやすくなるのです。

またプロセスを評価するのも重要です。定期的に1on1といったオンラインミーティングを開催するとよいでしょう。

②評価方法の統一

評価方法に属人的な偏りを無くす仕組みも構築すべきです。在宅勤務者への評価基準を策定しても、慣れていない評価者では評価にブレや偏りが出る可能性もあります。評価を受ける側は、曖昧な評価を受けると不信感が芽生えやすいもの。

まずは評価方法を統一し、評価者に対する研修を実施します。評価基準や評価方法を明確にする方法として、人事評価システムの導入を検討するのもよいでしょう。

③目標管理制度(MBO)の導入

目標管理制度(MBO)とは、個人が達成したい目標とその期限を細かく設定し、その基準にもとづいて評価する制度です。まず上司と部下で目標や取り組みを相談して決定し、部下が取り組みを開始したら、上司は部下の目標達成を実現するためサポートします。

MBOを導入すれば、事前に目標や取り組み内容を決めておけるため、在宅勤務でも成果に対する評価がしやすくなるのです。

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④人事評価プロセスを在宅勤務に適したものに改善

人事評価では複数の管理者や人事担当者がかかわるケースもあります。そこでオンラインで情報を共有できる環境が必要になるのです。

人事評価システムやオンラインストレージなどを活用すれば、評価する従業員の情報を一括管理できます。人事評価の担当者が在宅勤務でも、評価を実施できるでしょう。

ただしセキュリティ面での管理は徹底しなければなりません。外部からの不正アクセス防止と内部への情報漏洩対策に注力しているシステムやツールを選びましょう。

⑤「業務プロセス評価」と「成果主義」の併用

「プロセス評価」と「成果主義」のバランスを意識して、評価項目を設定しましょう。

成果主義に偏った評価をしてしまうと、従業員の意欲が低下する恐れもあります。また数値化できない業務を担当する従業員に対しても、評価が困難になるのです。

プロセス評価と成果(業績)評価におけるバランスは、部署や業務内容によって異なるため、あらかじめ内実を調べておく必要があります。

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⑥裁量労働の可視化

裁量労働制(賃金が支払われる労働時間数をあらかじめ決め、その時間内で従業員が自身の勤務を配分する制度)を導入する際は、公平性と働きやすさを意識しましょう。従業員は勤務時間を調整でき、企業は人件費をコントロールしやすくなります。

ただし裁量労働制は、労務管理や進捗管理などが煩雑になりやすいのが、難点です。公平性と働きやすさを損なわず、評価を可視化する仕組みやルールが必要となります。

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4.在宅勤務の人事評価をうまく運用するポイント

在宅勤務の人事評価では、「どのようにしてコミュニケーションを維持するか」が大きなポイントです。ここでは在宅勤務の人事評価を円滑に進めるための施策を5つ紹介します。

  1. 積極的なコミュニケーション
  2. IT環境の整備
  3. 自己PRの機会を付与
  4. 企業ビジョンの共有
  5. 研修の実施

①積極的なコミュニケーション

たとえば「業務の開始時や終了後に今日のタスクや進捗状況をチャットなどで報告する」「週に1回はオンラインで1on1ミーティングを行う」「上司はすべての部下へ1日に1回は声をかける」などルールを定める方法があります。

またコミュニケーションの内容や難度に応じてリモートと対面を使い分けるのもよいでしょう。コミュニケーションに工夫を凝らすと従業員の業務に対する姿勢も見えてくるため、適切な評価がしやすくなります。

②IT環境の整備

チャットや通話アプリ、ファイル共有などを利用すると、コミュニケーションがスムーズになります。ツールをひとつずつ導入するより、これら機能がまとめて利用できるグループウェアがおすすめです。

また人事評価システムを導入すると従業員の情報が一元管理できるため、在宅勤務者の評価をスムーズに進められます。

③自己PRの機会を付与

設定した目標と成果、プロセスや創意工夫、反省や振り返りなどは評価材料となりえます。PRの場を設けると、評価に対する不信感や不公平感を軽減する効果も期待できるでしょう。

また従業員は、設定した課題に対する自己評価から成果とプロセスを再認識でき、今後の改善につながります。

④企業ビジョンの共有

たとえば「ビジョン実現型人事評価制度」では、経営方針やビジョン、行動理念などにもとづいて育成計画を策定し、個人の課題や目標を設定します。

この目標達成や進捗が評価の材料になるのです。困難な目標を押し付けられないため、従業員からの不満も出にくくなるでしょう。

また従業員が成長すれば組織が強化され、業績アップにつながる可能性も高いです。そこで「利益が出たら従業員へインセンティブを出す」といった対応をとると、公平性を保ちつつ従業員の自発性を促せるでしょう。

⑤研修の実施

評価担当者の目線を統一させるため評価項目や評価基準を整備したうえで、評価者に研修を実施しましょう。評価者間で実際の評価結果を共有し、自身の評価や判断に偏りがないか、認識する必要があるからです。

たとえば実際に評価した従業員の事例をモデルとして提示し、その評価が適性だったか、評価担当者の間で話し合う方法があります。

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5.在宅勤務に合わせて人事評価を改善した企業の例

いちはやく在宅勤務を導入した企業は、在宅勤務者への人事制度の改善が進んでいます。そうした事例を参考にして、自社での取り組みを検討するとよいでしょう。

  1. SiM24
  2. カルビー
  3. KDDI
  4. シトリックス・システムズ・ジャパン
  5. 向洋電機土木
  6. レノボ・ジャパン

①SiM24

データ解析やシミュレーションサービスを提供するSiM24では、完全在宅勤務制度を導入。基本、勤務時間内で達成した成果を評価します。適切な評価を行うために作業指示を明確にし、週次報告や顧客へのアウトプット状況などを細かく管理しているのです。

また独自のフォロー制度も設置しています。「経験の浅い従業員に熟練スタッフを専任アドバイザーとしてつける」「分野ごとに5名1組のチームを組む」といった制度を作り、在宅勤務でも円滑にフォローできる体制を実現しました。

②カルビー

大手食品メーカーのカルビーは、2020年7月からニューノーマルな働き方「Calbee NewWorkstyle」を掲げ、オフィス勤務者約800人を対象に適用しました。同時にモバイルワーク制度も導入して「30%前後の出社率」という目標を掲げ、以下施策を行ったのです。

  • フルフレックスの導入
  • 単身赴任の解除
  • 通勤定期券代の支給停止
  • モバイルワーク手当の支給
  • 社用パソコンやスマートフォンの貸与

導入後、従業員の通勤時間の削減や新しいコミュニケーションスタイルの浸透、ITによる業務効率化といった効果が出ています。

③KDDI

大手通信回線業者のKDDIは、2020年8月からジョブ型の人事制度を導入。「勤務時間だけでなく成果や挑戦を評価する」というコンセプトのもと運用しています。

適正な評価判断をするために人事制度を改善し、各職務の責任や役割を細かく定義しました。また感染対策として9割の従業員が在宅勤務になったものの、生産性の低下や残業の増加といった問題もとくに見られていません。

④シトリックス・システムズ・ジャパン

ソフトウェアの開発や保守を行うシトリックス・システムズ・ジャパンは、2009年から自社製品を活用した在宅勤務を推進。人事評価では裁量労働制を導入しています。その日の成果を評価対象とし、パフォーマンスを高めるほど高い評価につながるのです。

同時に従業員満足度も向上しており、なかでも労働環境に関する満足度が高かったという結果が出ています。さらに従業員の8割は「オフィスと同等の生産性を維持できている」とも回答していました。

⑤向洋電機土木

屋内外の電気設備の設計や施工を行う向洋電機土木は、ワークライフバランスの一環として在宅勤務を導入。成果評価をベースとし、申請内容と成果物をもとに生産性を評価する仕組みです。評価材料には、工程表や議事録、成果物の品質などが挙げられます。

平均労働時間の低下やコストの削減などを実現させたうえに売上が倍増しており、厚生労働省が公表した好事例企業のひとつです。

⑥レノボ・ジャパン

電機機器メーカーのレノボ・ジャパンは、2005年の設立から在宅勤務を導入。時間や場所を問わず、成果を重視する業績評価を取り入れました。

同社には全ての職務に職務定義を定めた職務記述書があり、 従業員はその職務記述書と企業の方針にもとづいたKPI(重要業績指標)を設定しています。そしてKPIの達成度合いに応じた業務評価が行われるのです。