ウェルビーイング経営とは?【わかりやすく】取り組み事例

ウェルビーイング経営とは、社員の心身の健康を促進し、意欲やエンゲージメントを高める経営手法です。メリットや取り組み方、企業の導入事例を解説します。

1.ウェルビーイング経営とは?

ウェルビーイング経営とは、社員が身体的かつ精神的に良好であるように職場環境を整え、組織を活性化させる経営手法のこと。目的は、社員の意欲、モチベーション、エンゲージメントを高め、業績向上につなげていくことです。

ウェルビーイングの定義

世界保健機関(WHO)が定義するウェルビーイング(Well-Being)は、「身体的、精神的、社会的に充実している状態」です。

ウェルビーイングには、「主観的ウェルビーイング」と「客観的ウェルビーイング」の2種類があります。主観的ウェルビーイングは個人の主観による幸福度や充実度などを指し。客観的ウェルビーイングは、健康寿命など客観的な基準で測った個々の状態を指します。

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2.ウェルビーイング経営と健康経営の違い

健康経営は、社員の心身の健康に配慮した取り組みを行い、企業の生産性向上を目指す経営方法です。健康経営とウェルビーイング経営の違いは目的と視点にあります。

近年、社員が心身ともに健康に働ける環境を整えることは企業の責任とされており、両者が重視されているのです。

目的

健康経営は、社員の心身を健康に保ち、経営目的の達成を目指す経営方法です。一方ウェルビーイング経営は、社員の心身の健康だけでなく、その先にある充実感やモチベーションの向上などをもたらして経営目的の達成を目指します。

健康経営は社員の「健康」だけに深く介入するのに対し、ウェルビーイング経営はより広い意味で体と精神面の両方の充実を目指す点が異なるのです。

視点

ウェルビーイング経営が社員目線の経営方法であるのに対し、健康経営は企業目線での経営方法という違いがあります。充実感やモチベーションは人によって異なるため、ウェルビーイング経営では社員目線が欠かせません。

ウェルビーイング経営はボトムアップ型で、健康経営はトップダウン型で行われる傾向にあります。そのため健康経営よりも、ウェルビーイング経営のほうが社員を巻き込んで行動を促しやすいという違いもあるのです。

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3.ウェルビーイング経営が求められる理由

社員の幸福を重視するウェルビーイング経営は、年々注目度が高まっています。ウェルビーイング経営が求められる背景を説明しましょう。

  1. 価値観や働き方の変化
  2. 人材不足の深刻化
  3. 経済成長と社会課題の両立の推進
  4. SDGsへの意識の向上

①価値観や働き方の変化

テレワークといった働き方が変わり、仕事や人生に対する価値観が多様化したことが要因として挙げられます。趣味や生きがいなどを重視する社員も増えたため、その流れで社員の充実感や幸福に焦点をあてたウェルビーイング経営が注目されているのです。

②人材不足の深刻化

ウェルビーイング経営で社員の幸福度を高めると、人材の確保と定着を促進して人手不足の解消につながると注目されています。

現在の日本は労働人口が減少傾向にあり、労働人口が減ると企業は人材を確保しにくくなるでしょう。労働力不足による生産性の低下が危惧されているのです。

ウェルビーイング経営は、他社との差別化による人材確保と、既存社員の離職防止に役立つと期待されています。

③経済成長と社会課題の両立の推進

ウェルビーイング経営は社会問題を解決する方法としても注目を集めています。生産性だけを追い求める従来の経営方法では、社員へ過度な負担をかける恐れもあります。このような経営がもとで労働者人口を減少させてしまっては、中長期的な経済成長が期待できません。

ウェルビーイング経営で良好な状態で働ける社員が増えると、国内経済の成長と社会問題の解決を両立できると考えられています。

④SDGsへの意識の向上

ウェルビーイング経営が注目される理由には、SDGs(持続可能な開発目標)への意識の高まりも挙げられます。SDGsとは2015年に国連で採択された、持続可能な開発のための国際目標です。

SDGsの開発目標のなかに「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」が掲げられており、これにはメンタルヘルス対策も含まれます。この目標はまさにウェルビーイング経営と連動するのです。

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4.ウェルビーイング経営のメリット

ウェルビーイング経営は、社員だけでなく企業にとってもさまざまな効果が期待できます。ウェルビーイング経営のメリットを説明しましょう。

  1. 社員の満足度アップ
  2. 生産性の向上
  3. 人材の確保と定着
  4. 医療コストの削減

①社員の満足度アップ

ウェルビーイング経営で、社員が精神的な余裕をもって生き生きと仕事ができる環境を構築すると、社員満足度の向上が期待できます。

心身ともに充実して満足度が上がった社員は、モチベーションもアップし、自主的に仕事をするようになるでしょう。個々のパフォーマンスが高まり、よい結果につながります。また、モチベーションを維持・向上させることで、好循環が生まれるのです。

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②生産性の向上

ウェルビーイング経営によって企業の生産性が高まります。ウェルビーイング経営で社員のモチベーションが向上すると、ワークエンゲージメントの上昇にもつながるからです。

ワークエンゲージメントとは、仕事に対する熱意や活力が充実している状態のこと。ワークエンゲージメントが高まると生産性が向上し、企業の業績アップにつながるのです。

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③人材の確保と定着

社員の幸福度が上がることで、離職率の低下が期待できます。離職の主な原因は、社内の人間関係や労働環境の悪さなど。ウェルビーイング経営によってそれらの問題が解消すれば、離職率の低下が見込まれます。

また「社員の幸福を大切にする企業」という評判が広まれば、企業文化に共感した優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。

④医療コストの削減

ウェルビーイング経営は、医療コスト削減というメリットも得られます。社員が大きな病にかかった場合、企業が医療費を負担しなければなりません。心身ともに健康な社員が増えれば病院にかかる機会が減り、削減できる可能性もあります。

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5.ウェルビーイング経営の注意点

ウェルビーイング経営では、過度な利益追求が難しくなるという欠点があります。社員の幸福や充実度を重視した経営が求められるため、過度な利益目標を設定しづらくなるからです。

またウェルビーイング経営の実施においては、自社だけでなく取引先といった関係者全員の理解を得なくてはなりません。この過程で一時的に利益が低下する可能性もあります。

ウェルビーイング経営は中長期的な視点で取り組むものであり、短期的な視点では効果や利益は出にくいと考える必要があるでしょう。

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6.ウェルビーイング経営の取り組み方

ウェルビーイング経営の実施では、企業における仕組みや制度を明確にする必要があります。ウェルビーイング経営の取り組み方を説明しましょう。

  1. 目標や成果指標の設定
  2. 労働環境の整備
  3. 福利厚生の改善
  4. 社員の健康をサポート
  5. コミュニケーションの活発化
  6. 従業員サーベイの実施

①目標や成果指標の設定

ウェルビーイング経営で重要となるのは、目標や成果指標の設定です。ウィルビーイングには明確な定義がないため、それぞれの企業の方向性や企業文化に合わせたウェルビーイング像を定義する必要があります。

まずは目標達成に向けて具体的に何をするのか、何を変えるのかを決定し、現場の社員の理解と納得を得たうえで取り組みを進めましょう。

②労働環境の整備

ウェルビーイング経営では、社員がストレスなく幸せに仕事ができるよう、労働環境を整えます。そのために重要な取り組みは労働環境の見直しです。具体的な例としては、「長時間労働の是正」「有給休暇取得の推進」「勤務制度の変更」などが挙げられます。

労働環境の改善は単なる健康サポートに留まらず、社員の幸福度やモチベーションの向上にもつながる取り組みです。

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③福利厚生の改善

ウェルビーイングの向上には、福利厚生の充実化が効果的です。福利厚生によって社員のライフスタイルが充実すれば、それだけ幸福度の向上につながります。福利厚生の主な例は「スポーツ・運動」「レジャー」「グルメ」「旅行」などです。

福利厚生は社員が自由に選択できるので、できるだけ多くの種類を用意すると満足度をより高められます。

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④社員の健康をサポート

社員一人ひとりが自身の健康状態を知ることは、ウェルビーイングの最初のステップ。方法として挙げられるのは「定期健診や人間ドッグの補助」「予防接種の補助」「セルフ・ケアの指導や可視化」「健康マイレージの導入」などです。

社員の心身状態を詳しく把握するため、個々でヒアリングを実施するのも方法のひとつといえます。

⑤コミュニケーションの活発化

社内におけるコミュニケーション環境の改善は、ウェルビーイングの向上につながります。コミュニケーションが活性化すると、人間関係や仕事における悩みなどが解決しやすくなり、自分を良好な状態に保ちやすくなるからです。

人間関係の悪化を防ぐための方法として、「チャットツールやSNSの活用」「リフレッシュルームや娯楽室の設置」などが挙げられます。

⑥従業員サーベイの実施

ウェルビーイングの施策を検討する前に、従業員サーベイで社員の本音を聞きましょう。社員が企業に対して何を求めているか、どのような不満を抱えているかを把握すると、労働環境の改善点やウェルビーイングの方向性を明確にできます。

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7.ウェルビーイング経営の企業事例

ウェルビーイング経営の取り組み方は企業によってさまざまです。ここではウェルビーイング経営の取り組み事例を3つ紹介します。

丸井グループ

丸井グループが目指しているウェルビーイングは、「すべての社員が活き活きとし、自ら幸せを感じられる状態」です。幸せを感じる社員が増えれば、それだけワークエンゲージメントの高い組織が実現できるという考えが基盤となっています。

2014年にウェルビーイング推進部が設置されて以降、さまざまな施策が行われました。具体的には「レジリエンスプログラムの導入」「グループ横断の健康経営推進プロジェクトの発足」「日本健康マスター検定の団体受検の導入」などが挙げられます。

取り組み開始後、ワークエンゲージメントの向上やストレスの軽減といった効果が見られているのです。

楽天グループ

楽天はウェルビーイングの取り組みとして「楽天健康宣言:Well-beingFirst」を実施しています。楽天の取り組みの特徴は、社員一人ひとりの取り組みや社内施策だけでなく、教育機関や病院などと連携して社員の健康増進を目指していること。

取り組みの具体例として挙げられるのは「産業医や保健師が確認するストレスチェック」「ウェルネスセミナー・イベントの開催」「ウェルビーイングサーベイ(調査)の実施」など。その結果、心身の健康状態によるパフォーマンスの低下が見られました。

株式会社デンソー

デンソーではウェルビーイング経営の一環として、「社員の健康状態の見える化」を推進。社員の健康状態を数値化して目に見える形にし、その数値を改善するための施策を策定しています。

また各部署に「健康リーダー」を任命して各メンバー状態を詳しく把握できるようにし、施策と改善を効果的に進めているのです。この取り組みをとおして、チーム内や部署内、あるいは他部署間のコミュニケーションが活性化されました。