取締役とは?【役割と仕事内容を簡単に】執行役員との違い

取締役は、会社法にもとづき、会社の業務執行と意思決定を担う役員として位置づけられています。 会社の経営において中心的な役割を果たす重要なポジションです。

この記事では、取締役の基本的な定義、似た役割名称と役割の違い、仕事内容、メリット・デメリットについて詳細に解説します。また、取締役が果たすべき責任と、会社経営におけるその影響力についても紹介しましょう。

1.取締役とは?

取締役とは、会社の経営において中心的な役割を果たす重要なポジションです。会社法上で定められた企業の最高責任者で、会社の業務執行と意思決定を担う役員として位置づけられています。

会社法では、下記のように取締役の人数まで細かく定められています。

株式会社には、一人または二人以上の取締役を置かなければならない。取締役会設置会社においては、取締役は、三人以上でなければならない。

引用元:会社法第348条

取締役が複数いる場合、会社の業務執行に関する意思決定は取締役の過半数で行い、全員に代表権があります。

取締役は、業務の執行に関する意思決定の重要なポジションを担っているため、一般社員より役割や責任の度合いが高く、高額の役員報酬を得られる可能性もあるのです。

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2.取締役と他の役職との違い

取締役と名称の似た役割に代表取締役、社外取締役、常務取締役、執行役員などがあります。 取締役とそれらの役職との違いについて解説しましょう。

代表取締役との違い

代表取締役は、会社法にもとづいた企業の最高責任者のこと。代表取締役は、会社の法的な責任者として、外部との契約や重要な決定において会社を代表する権限を持ちます。

一方、一般の取締役は、会社の経営にかかわる意思決定を行うものの、代表取締役ほどの権限は持ちません。

代表取締役は通常、取締役会や株主総会によって取締役から選出され、会社の方針や戦略を決定するうえで中心的な役割を果たします。対して一般取締役は、会社の運営における具体的な業務を担当し、代表取締役の決定にもとづいて行動します。

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社外取締役との違い

社外取締役は、会社の外部から選ばれる役員で、独立性と客観性を保ちながら会社を監督します。

令和元年改正会社法で、上場内国会社は一般株主保護のため、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役を1名以上確保することが義務となりました

社外取締役は、中立的な立場から会社の経営を見守り、コーポレートガバナンスを強化する役割を果たします。会社の経営に新たな視点をもたらし、会社の長期的な成功と株主の利益を守るために、経営陣に対する監督と助言を提供するのです。

対して社内取締役は社内で昇進した社員が就任することが多く、業務執行取締役として担当部門を統括・管理を行います。

社内事情に精通している一方、企業と取締役の利益相反の可能性があるととらえられる場合もあるため、そこを補強できるのが社外取締役です。また、社外取締役は常勤ではなく、数社を掛け持ち可能な点も社内取締役とは異なります。

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常務取締役・専務取締役との違い

常務取締役や専務取締役は、取締役のなかの役職のひとつ。取締役でも重要な業務を担当する役職です。取締役が複数人いる会社の場合、取締役に序列をつけて、上位の役職から、代表取締役、専務取締役、常務取締役、役職のない取締役という順番になります。

常務取締役の主な役割は部長や課長などの管理職の育成・管理や事業戦略の構築です。役員のなかでもっとも従業員に近い役員として、取締役として役員会議に出席し、会社全体の戦略の構築にくわわります。

執行役員との違い

執行役員は、会社法上の役員ではなく、会社が任意で定めているポジションです。執行役員は取締役会や代表取締役から委任された業務を実行し、会社の戦略を現実の業務に落とし込み、効率的な運営を実現するために重要な役割を担います。

取締役のように会社の経営方針や戦略の策定にかかわるような重大な権限は持っておらず、法律上では、執行役員は従業員という位置づけです。

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3.取締役の役割

取締役は、会社の経営を担う重要な役割を持ちます。主な役割は、会社の方針決定、戦略策定、および業務の監督です。取締役は、会社の長期的な成功を確保するために、経営の方向性を定め、必要な資源の配分を決定します。

また会社の業務が法令や規則に準拠していることを保証し、リスク管理と内部統制の強化にも貢献するのです。取締役は、会社の利益を最大化するために、効果的な経営戦略を策定し、実行する責任を持ちます。

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4.取締役の仕事内容

取締役は、会社全体の業務について責任を負う立場になります。つまり、個人としての結果だけではなく、会社全体の業績をよくしていくことが取締役の役目です。ここでは、取締役の仕事内容について解説します。

  1. 取締役会への参加
  2. 株主総会での対応
  3. 経営者への助言
  4. 顧客との関係性構築
  5. 損害賠償責任

取締役会への参加

取締役会への参加は、取締役の主要な職務のひとつ。会社法では、取締役を設置する会社は、3か月に1回以上、年に4回程度の頻度で取締役会を開催することが定められています。

取締役会では、会社の重要な意思決定が行われ、経営方針や戦略、重要な投資決定などが議論されます。また取締役会は、会社の業績評価や将来の計画についても検討する場となるのです。

株主総会での対応

取締役は、株主総会での対応も担います。株主総会では、取締役は株主に対して会社の業績や経営方針に関する報告を行い、株主からの質問に答える責任があるのです。

取締役は、株主とのコミュニケーションを通じて、株主の信頼を獲得し、会社の透明性を高めることが求められます。

経営者への助言

取締役は、会社内部の幅広い知識と経験を活用して、経営者に対して適切な意見をすることもあります。これは、経営者による独断的なワンマン経営を防ぐ役割があるのです。

この助言は、会社の方針決定やリスク管理において重要な役割を果たすもの。 取締役のなかでも特に社外取締役には、ワンマン経営を防止する役割が求められます。

顧客との関係性構築

取締役は、顧客との関係性構築にも関与します。顧客との直接的なコミュニケーションを通じて、長期的なビジネス関係を築くことも取締役の役割です。

とくに重要な商談では取締役が自ら顧客に挨拶や交渉のために出向くことで、顧客と良好な関係性を築けるでしょう。それによって商談がスムーズにまとまる場合もあります。

損害賠償責任

取締役は、任務を怠ったときに会社生じた損害を賠償する「任務懈怠(にんむけたい)責任(会社法423条)」や、ステークホルダーに損害を発生させた場合に、損害賠償責任を負います。

後者の場合、取締役の意図的な重大ミスによりステークホルダーに損害を発生させた場合に取締役個人を訴えて会社に対する損害賠償を請求できるのです。

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5.取締役会とは?

取締役会は、会社の経営に関する重要な意思決定を行う機関です。取締役会を開催するには、株主総会で選任された取締役が3名以上と、開催された取締役会をチェックする監査役1人以上が参加する必要があります。

取締役会は、会社の方針決定、戦略策定、重要な業務執行の監督などを行うのです。取締役会のメンバーは、会社の取締役で構成され、定期的に会合を開催して会社の経営に関する重要事項を議論し、決定します。

取締役会は、会社の透明性と責任を確保するために、株主やステークホルダーに対して報告する役割も担うのです。また、取締役会は、会社のリスク管理やコンプライアンスの強化にも貢献し、会社の持続可能な成長と発展を支援します。

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6.取締役になるメリット

取締役になると、以下のようなメリットがあります。

定年がない

取締役には、一般的な従業員と異なり、定年の制限がありません。これにより、長期的なキャリアを築けるうえ、経営に関する深い知識と経験をもとに持続的に会社に貢献できます。

権限が大きい

取締役は、会社の方針決定や戦略策定など、重要な業務を遂行する権限を有しています。この権限により、会社の将来に大きな影響を与える決定を行えるため、自らのビジョンや戦略を実現する機会を得られるのです。

経営に参加できる

取締役として、会社の経営に直接参加できます。これにより、会社の方向性を形成し、経営の核心にかかわることが可能となり、自らのアイデアや戦略を実現する機会を持てるでしょう。

高額の役員報酬を得られる可能性がある

取締役は、責任と貢献に対する報酬として、高額の役員報酬を得る可能性があります。一般的には、一般の従業員よりも高い報酬を受け取れるのです。役員報酬額について、法律上の上限はありません。役員報酬が1億円以上の企業も存在します。

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7.取締役になるデメリット

取締役になることはメリットばかりではありません。以下のようなデメリットがあります。

雇用保険や労災保険に加入できない

取締役は、従業員ではないため、雇用保険や労災保険の対象外となる場合も多いです。これにより、取締役を退任する場合でも、雇用保険に加入していないため、雇用保険からの失業給付を受けられません。

また、労働者ではないため労災保険にも加入していないのです。業務中の病気やケガ、事故に対する保険の補償を受けられません。

労働基準法が適用されない

労働基準法は、労働者に対して適用される法律のため、取締役は、労働基準法の適用対象外となります。これにより、労働時間、休憩、休日などに関する法的な保護を受けられず、長時間労働や休日出勤が求められる場合もあるのです。

責任が大きくなる

取締役は、会社の経営にかかわる重要な決定を行うため、その責任も大きくなります。経営上の失敗や不正行為に対して、法的な責任を負う可能性があり、これは精神的なプレッシャーとなることもあるのです。

連帯保証人になっている場合は、会社が倒産した場合などには債務を負う必要が出てきます。

ローンの審査に通りにくくなる

取締役は会社の役員のため、ローンの審査に通りにくくなる可能性もあります。役員報酬の収入が高くても、役員は会社の経営状況と一体であるとみなされるからです。

そのため、会社の経営状態が悪い場合や、設立して間もない場合などには、審査が通らない場合もあります。家のローン審査を考えている場合は、会社役員になる前にローン審査を受けておくとよいでしょう。

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8.取締役の選任方法

取締役の選任方法は会社の規模や形態によって異なるものの、一般的には株主総会によって決められます。株主総会で株主が投票を行い、過半数の決議で決定するのです。

大企業や上場企業では、取締役会や指名委員会が候補者の選定を行う場合もあります。 取締役には、候補者の経験、専門知識、経営に対する理解度などが考慮され、会社の長期的な発展に貢献できる人物が選ばれるのです。

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9.取締役の人数

取締役の人数は、最低1名以上必要で、取締役会を設置している場合は最低3名の取締役を選任する必要があります

取締役の人数に上限の規定はなく、小規模な企業では1名~数名の取締役で運営される場合が多いものの、大企業や上場企業ではより多くの取締役を置く場合も多いです。

取締役の人数は、会社の運営に必要な専門知識やスキルをカバーできる範囲で決まり、効果的な意思決定と経営の透明性を確保するために重要な要素となります。

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10.取締役の責任

取締役は、会社の経営において重要な責任を担います。これには、会社の方針決定、戦略策定、業務の監督、法令遵守、リスク管理などが含まれるのです。

取締役は、会社の利益を最大化することを目指し、株主やステークホルダーの利益を守る責任がありますまた、不正行為や経営上のミスに対しては、法的な責任を負うこともあるのです。

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11.取締役に求められるスキル

取締役にはどのようなスキルが求められるのでしょうか。 ここでは取締役に求められるスキルを紹介します。

企業経営

取締役になるには、事業戦略や経営戦略、組織運営に関する深い理解と実践的な知識が求められます。これには、市場分析、戦略策定、財務管理、危機管理など、会社を成功に導くための幅広いスキルが含まれるのです。

取締役が最終的な会社の意思決定をするため、経営の複雑な課題を解決し、会社の長期的な成長と安定を確保するための戦略を立案し実行する能力が必要となります。

マネジメント・リーダーシップ

取締役は、部下である管理職のうえに立って、会社組織全体をマネジメントする役割があります。

必要に応じて、管理職への助言を行う場合もあるので、チームやプロジェクトの管理、人材の育成、組織の効率化など、マネジメントに関する豊富な経験を持つことが重要です。

また、組織内の様々なステークホルダーと効果的にコミュニケーションを取り、チームを統率し、目標達成に導くリーダーシップを発揮する必要があります。

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マーケティング・営業

マーケティングや営業は、企業の売上や利益にかかわる重要なスキルです。取締役は、企業のブランドの価値を高め、市場での競争力を確保するための戦略的なマーケティングスキルを持つ必要があります。

これには、市場動向の分析、ターゲット顧客の特定、効果的な広告戦略の策定、デジタルマーケティングなどが含まれるのです。

コンプライアンス・リスクマネジメント

法令遵守と倫理的な経営は、企業が持続的な成長を実現するために必要です。 企業が一度不祥事を起こしてしまうと、信頼回復までに莫大なコストがかかります。

取締役は高いコンプライアンス意識を持ち、関連する法規制の理解、リスク管理、内部統制の強化などが求められるのです。また、社内全体でコンプライアンス意識を高めるような取り組みも、会社の信頼性と持続可能性を保つために不可欠といえます。

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グローバル経験

現代のビジネス環境は、国境を越えた取引が一般的であり、異文化間のコミュニケーションや国際市場の理解が不可欠です。そのため、取締役は、異なる文化や市場の特性を理解し、国際的なビジネス戦略を策定する能力が必要となります。

またグローバルなネットワークを構築し、海外のパートナーや顧客との関係を築くことも重要な役割です。多様な文化背景を持つチームを管理し、国際的なプロジェクトを成功に導く経験は、取締役としての資質を高めます。

ESG経営・サステイナビリティ

企業が持続可能な成長・発展を続けていくには、社会との共存共栄が重要です。 現代の取締役には、環境保護、社会的責任、良好な企業統治に対する深い理解と実践が求められます。

具体的には省エネや工場・オフィスでの使用電力の削減、ダイバーシティの推進、 ワーク・ライフ・バランスの向上、リスク管理のための情報開示・法令順守などを意識した経営です。

環境への配慮、社会的責任を果たし、透明で健全な管理体制を構築することが求められます。

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