早期離職の原因と対策をわかりやすく|ランキング、悪影響

人材確保が困難な現代、今いる従業員をいかに定着させるかが重要視されています。そのようななか、キャリア形成やよりよい職場で働くことを目的とした転職も一般化しつつあり、早期離職が大きな課題となっている企業も少なくないでしょう。

今回は、早期離職の現状と原因をふまえて、早期離職が企業に与える影響や早期離職防止の対策を詳しくご紹介します。

1.早期離職の定義|何年以内を指すのか?

早期離職とは、一般的に入社3年以内の離職のこと。株式会社リクルート就職みらい研究所「就職白書2020」によると、19年度新卒採用にかかった1人あたりの採用コストは93.6万円、中途は103.3万円です。

これだけの採用コストがかかっているにもかかわらず早期離職が起こってしまうと、企業にとって大きな損失となってしまうでしょう。

参考 就職白書2020株式会社リクルート就職みらい研究所

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2.早期離職の現状

早期離職はどのような現状なのでしょう。ここでは、新卒と中途の早期離職の現状についてみていきます。

新卒の早期離職の現状

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します」によると、令和2年度の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者で36.9%、新規大卒就職者31.2%でした。

令和2年度における新規学卒就職者の離職率は例年に比べてやや低下傾向にあるものの、依然として約3割の新規学卒就職者が早期離職している状況にあります。下記でさらに詳しく、事業所規模別・業種別にみた早期離職者の割合をご紹介しましょう。

事業所規模別にみた早期離職者の割合

左から事業所規模・高卒就職者・大卒就職者の順に見ていきます。

事業所規模 高卒就職者 大卒就職者
5人未満 61.9% 56.3%
5〜29人 52.8% 49.4%
30〜99人 44.1% 39.1%
100〜499人 35.9% 31.8%
500〜999人 30.0% 28.9%
1,000人以上 25.6% 24.7%

高卒・大卒就職者ともに、事業所規模が小さいほど離職率が高くなっています。

業種別にみた早期離職者の割合

業種 高卒就職者 大卒就職者
宿泊業・飲食サービス業 61.1% 51.5%
生活関連サービス業・娯楽業 56.9% 46.5%
教育・学習支援業 50.1% 45.6%
小売業 47.8% 38.6%
医療、福祉 46.2% 37.4%

高卒・大卒就職者ともに、順位に多少の変動はあるものの上位5つは同業種です。サービス業は、高卒就職者で約6割、大卒就職者で約5割と半数以上が早期離職していると、わかります。

参考 新規学卒就職者の離職状況を公表します厚生労働省

中途の早期離職の現状

エン・ジャパン 人事のミカタによる「中途入社者の定着について」のアンケート調査によると、直近3年間で入社した中途入社者の定着率について「約4割」が低いと感じています。

また、データは少し古くなるものの、中小企業庁『中小企業白書』では「中小企業・小規模事業者における採用後3年間の中途採用の離職率は約3割」と紹介されていました。

近年、キャリア形成の一環としても転職が一般化しています。さらに優秀な人材ほど職場に不満を感じたら早期に見切りをつける傾向にあるのです。

中途は新卒よりも採用コストが大きく、かつ即戦力として採用する場合も多いため、早期離職による損失は新卒以上といえるでしょう。こうした理由からも、中途の早期離職も企業が抱える大きな課題であるとわかります。

参考 中途入社者の定着についてエン・ジャパン 人事のミカタ

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3.早期離職の理由とランキング

内閣府「平成30年版 子供・若者白書」における就労等に関する若者の意識によると、初職の離職理由TOP10は以下のとおりです。

  1. 仕事が自分に合わなかったため
  2. 人間関係がよくなかったため
  3. 労働時間や休日、休暇の条件がよくなかったため
  4. 賃金がよくなかったため
  5. ノルマや責任が重すぎたため
  6. 自分の技能・能力が生かせなかったため
  7. 健康上の理由で勤務先での仕事を続けられなかったため
  8. なんとなく嫌になったため
  9. 結婚、子育てのため
  10. 同じ会社等に長く勤務する気がなかったため
参考 平成30年版 子供・若者白書内閣府

ここでは、ランキングもふまえて早期離職の理由を詳しくみていきます。

仕事が自分に合わなかったため

仕事が合わなかった理由として「求人票に書かれた仕事内容とのギャップ」「実際に仕事に取り組んだらスキルを生かせない」などが挙げられます。とくに新卒は、希望する部署に配属されなかったことが原因になる場合もあるでしょう。

また、仕事へのやりがいや面白さを感じられずに早期離職につながることもあります。これの主な原因として挙げられるのは「入社説明会や面接でよいところしか伝えていない」といったものです。

また、仕事内容がきつかったり量が多かったりした結果、早期離職につながるケースも珍しくありません。

人間関係がよくなかったため

新卒・中途ともに多い理由であり、早期離職でなくともつねにランクインする離職理由です。どれほど仕事にやりがいを持てていても、人間関係に不満があると心理的なストレスが大きく、職場に居づらくなるため離職につながりやすくなります。

当事者でなくとも、周囲の人間関係が悪いために職場全体の雰囲気も悪くなるのもあるでしょう。それによって居心地が悪くなり、離職を引き起こす恐れもあります。

労働時間や休日、休暇の条件がよくなかったため

「ワークライフバランスが確保できない」「有給が取得できない」など、働き方に関する理由です。近年、ワークライフバランスが重視されている傾向にあるため、残業や休日出勤が多い職場では離職リスクが高いといえます。

最近では労働環境の改善に努める企業も増えているため、他社と比較した結果、よりよい環境を求めて離職してしまうケースもあるのです。また、ライフステージが変化して長く働ける会社でないと判断した結果、離職を選択する人も少なくありません。

賃金がよくなかったため

「労働時間と給与が見合っていない」「昇進や昇格による給与の上がり幅が小さい」など、給料に関する理由は新卒・中途ともによく見られる離職理由です。給与は働く理由でもあり、モチベーションにも影響する重要な要素といえます。

多少労働時間が長かったり、仕事が大変だったりしても、給料が高ければモチベーションは維持しやすいもの。

しかし近年、情勢的にも給料が上がりにくい状況にあり、かつ人手不足な企業も多いです。給料への不満が一向に解消されないとして離職につながってしまうケースも多くみられます。

ノルマや責任が重すぎたため

無理なノルマや力量に合わない責任を担うと、プレッシャーとストレスが高まり離職を引き起こしてしまいます。

ノルマを達成できないために責められる環境にあると精神的な負担が大きいからです。なかには上司がノルマや責任の重さを見誤っている場合もあります。

「ノルマや責任ゆえに仕事がうまくいかない」「適切なノルマ・責任でないにもかかわらず評価に反映されてしまう」場合、職場への不満も大きくなり離職につながってしまうのです。

会社の将来性や安定性への不安があった

終身雇用制度は実質崩壊し、変化の激しい時代になったため企業の将来性や安定性も以前より変動しやすい状況にあります。とくに大手企業に比べると将来性や安定性に欠けるベンチャー企業や中小企業では、こうした離職理由がみられやすいです。

また「今の職場でのキャリアプランが描けない」「理想のキャリアが築けない」場合、将来性を不安視して転職を選択する人も珍しくありません。

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4.早期離職がもたらす影響

早期離職は、企業に以下のような影響をもたらします。各影響について詳しくみていきましょう。

  1. 採用・教育コストの損失
  2. 企業イメージの低下
  3. 現場社員の負担増加

①採用・教育コストの損失

人材確保や教育にかかるコストの損失は、企業にとっても大きな痛手です。採用には新卒で93.6万円、中途で103.3万円かかっているとのデータもあります。早期離職が起こると採用コストを回収しきれない可能性があるでしょう。

また、入社してからかけてきた教育コストもあります。もし教育してスキルや経験が身につき始めた頃に離職されてしまったら、その分の教育コストや時間も無駄になってしまうでしょう。

離職が発生すると新たに人材確保が必要となるため、再度採用・教育コストが発生し、コスト発生・損失の悪循環に陥ってしまうのです。

②企業イメージの低下

入社3年後の定着率を離職率と合わせてチェックする求職者は多い傾向にあります。

「若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)」の第13条により、新卒採用をしている企業は直近3年間におけるその離職率を公表しなければならないため、必然的に求職者の目にも留まるでしょう。

早期離職が多い企業は何らかの問題があるのではと推測され、イメージを損ねてしまう可能性もあります。また、現在は転職の口コミサイトも多く、そこに評価の低い口コミが書かれてしまうとさらにイメージダウンにつながってしまうのです。

結果、採用力が低下し、人材が流出するばかりで確保が難しくなってしまう状況に陥ってしまう恐れがあります。

③現場社員の負担増加

中途は新卒よりも任される仕事が多いため、とくに中途の早期離職は現場の負担も増えてしまいがちです。とはいえ、新卒でも入社3年以内で自分の仕事や案件を持つことも多いため、現場の負担が増えることに変わりはありません。

早期離職が起こった結果、離職者の穴を埋めるために現場の負担が増え、その負担からさらなる離職者が発生する恐れもあるでしょう

また、優秀な社員が離職してしまうと周囲のモチベーションが低下するうえ、一人の離職に触発されてさらなる離職が起こることもあります。

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5.早期離職対策の具体例

早期離職は、企業側からアプローチすると防ぎやすいです。ここでは、早期離職対策の具体例をご紹介します。

重要なのは、自社で起こっている早期離職の原因を究明し、適切な対策を講じること。まずは自社の現状と課題を分析し、その結果に応じて具体的も参考に対策を検討してみてください。

  1. 正しい情報発信
  2. オンボーディング
  3. メンター制度
  4. 1on1ミーティング
  5. 社内コミュニケーションの活性化
  6. パルスサーベイ
  7. 労働環境・条件の見直し
  8. タレントマネジメントシステムの導入

①正しい情報発信

入社後のギャップを防ぐには、正しい情報を発信することが大切です。とくに仕事内容や給与、社風のミスマッチは影響力が大きいため、求人票や面接を通じて正しい情報発信が欠かせません。

また応募の段階でミスマッチがあっては、採用にかかる時間もコストも無駄になってしまうため、応募段階から正しい情報発信に力を入れましょう。

②オンボーディング

早期離職防止の対策として代表的であり、新入社員や中途社員が早くに組織に馴染み、即戦力化することを目的に行う取り組みです。新入社員の孤立化を防ぎ、社員がいち早く活躍できる環境を整えましょう。

実務だけでなく、人間関係や企業文化への浸透など環境に馴染むためのサポートも含まれる点が特徴です。また精神的な支えになるため、心理的安全性を高められる効果があります。

オンボーディングの施策例は、下記のように段階に応じてもさまざまです。

  • 入社前:入社前研修や内定者インターン、懇親会や交流会、社内見学や面談など
  • 入社後:企業理念・ミッション・ビジョン・バリューなどを学ぶ研修やランチ会、歓迎会やOJTなど

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③メンター制度

年齢の近い社員が新入社員をサポートする制度です。メンタル面でのサポートが中心となり、新入社員の相談にのったりアドバイスを行ったりする取り組みを進めます。

業務の悩みを相談しにくい環境は、早期離職につながる原因のひとつ。新入社員の孤立化を防ぎ、心理的安全性を高めるためにもメンター制度は有効な対策です。

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④1on1ミーティング

上司と部下が1対1で定期的に行う面談です。一般的な面談と違い、部下の育成やモチベーションアップを目的としており、上司との信頼関係を構築するためにも役立ちます。

上司との信頼関係が築ければ働きやすくなるだけでなく、上司は部下の悩みに寄り添い、早期に必要なフォローができるため早期離職の対策としても有効です。

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⑤社内コミュニケーションの活性化

風通しのよい職場や良好な人間関係の構築には、コミュニケーションが欠かせません。コミュニケーション活性化のためにできる施策は、下記のようにさまざまです。

  • チャットツールの導入
  • オープンスペースやカフェスペースの設置
  • フリーアドレス制の導入
  • ランチや飲み会費用の補助
  • 社内イベントの開催

とくに、入社2〜3年目の仕事に慣れてくる時期は周囲のフォローも薄くなりやすいです。そこで、悩みや不安を打ち明けにくい状況に陥る場合もあります。

孤立化や悩みを抱えたまま離職してしまわないためにも、社内コミュニケーションが活性化した環境を安定させることが大切です。

⑥パルスサーベイ

社員の状況をリアルタイムにチェックする意識調査で、5〜15問程度のかんたんな質問を週1〜月1回ほどの短いスパンで実施します。主な調査内容は、満足度や経営理念の浸透、業務内容についてです。

パルスサーベイはエンゲージメント向上や社員の心理状況の可視化、ストレスチェックなどに有効といえます。社員の不満や悩みをリアルタイムに把握し、早期に必要なフォローができる方法として早期離職対策にも活用されています。

パルスサーベイとは? 【質問項目】ツール、事例、デメリット
パルスサーベイとは、従業員の離職防止や満足度向上を目的に短いスパンで行う意識調査のこと。従業員の離職や満足度に課題を抱えている場合、解決の糸口としてパルスサーベイの実施を検討している企業も多いでしょう...

⑦労働環境・条件の見直し

早期離職の理由にも多いのが、労働環境・条件への不満です。まずは従業員が労働環境や労働条件のどこに不満や悩みを持っているかを把握しましょう。そしてアンケートやパルスサーベイを実施し、回答結果から適切な施策・対策を立案します。

労働環境・条件を見直すうえでの具体的な施策例は、下記のようにさまざまです。

  • 多様な働き方の導入
  • 福利厚生の充実
  • 手当や制度の導入
  • 活用の促進
  • ノー残業デーの導入

従業員の声を反映させた取り組みが重要です。自社にあった対策を講じましょう。

⑧タレントマネジメントシステムの導入

タレントマネジメントシステムとは、人材データを集約・一元管理するシステムです。従業員の能力や経験などの管理が中心となるため、給与や勤怠を管理する人事管理システムとは異なります。

人材情報を活用し、適材適所な人員配置や社員一人ひとりに適した育成などに役立ちます。

システムによって、備えている機能はさまざま。たとえば、カオナビはパルスサーベイやアンケートで従業員のコンディションを定点観測しつつ、残業時間といったデータと掛け合わせたマトリクス分析から、離職の兆候を早期に発見します。

離職兆候のある従業員をピックアップして人事と現場で共有できるので、早期離職の兆候をいち早くキャッチ可能です。それにより必要なフォローを行えるでしょう。

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