スキル管理とは、従業員が持つスキルや知識、能力を可視化し、組織全体で効果的に活用するために一元的に管理する仕組みです。従業員の強みや弱みを可視化することで、適材適所の人材配置や、スキルギャップを埋めるための育成・採用計画を立てやすくなります。
この記事では、スキル管理の基本や導入メリット、成功のポイントについて解説します。スキル管理システムや導入事例についても紹介するのでぜひ参考にしてみて下さい。
目次
1.スキル管理とは?
スキル管理とは、企業が従業員一人ひとりの知識、経験、資格、能力といった「スキル」を体系的に収集・評価し、一元的にデータとして管理・可視化する仕組みです。
これにより、組織全体のスキル状況を正確に把握し、戦略的な人材配置や、効果的な人材育成、企業価値向上に繋がる人的資本経営を推進するための基盤を築きます。単なる情報の羅列ではなく、組織と個人の成長を両面から支援するための重要な経営インフラと位置づけられます。
2.スキル管理が今、注目される背景と重要性
現代のビジネス環境において、スキル管理は単なる人事管理の一環ではなく、企業が持続的に成長するための不可欠な経営戦略として、その重要性を増しています。労働人口の減少や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速、グローバル競争の激化といった外部環境の変化は、企業に「人材の最適化」と「組織の変革」を強く求めています。
このような背景の中、従業員一人ひとりのスキルを正確に把握し、戦略的に活用するスキル管理は、企業が直面する多様な課題の解決に繋がります。
特に、2023年4月以降、上場企業に人的資本の情報開示が義務化され、スキルや能力の可視化は社内だけでなく、社外のステークホルダー(投資家など)に対しても企業価値を示す重要な要素となっています。
人的資本の情報開示は、人材が企業の「資本」として捉えられる時代への移行を意味し、スキル管理は企業の競争力と信頼性を左右する戦略的な取り組みへと進化しています。
参考:企業内容等の開示に関する内閣府令 | e-Gov 法令検索
3.スキル管理の目的
スキル管理の目的は多岐にわたりますが、その根幹には「組織の生産性向上」と「従業員の持続的な成長支援」があります。具体的には、個々のスキルを可視化することで、適材適所の人材配置を実現し、組織全体のパフォーマンスを最大化します。
また、スキルギャップを明確にし、一人ひとりに最適な育成計画を立案することで、従業員のキャリア形成を支援し、モチベーション向上にも繋がるのです。さらに、人的資本経営が重視される現代において、企業価値を高めるための重要なデータ基盤としての役割も担います。
従業員がもつスキルを再確認すること
スキル管理の主要な目的の一つは、従業員のスキルを再確認すること。大規模な組織では、個々の従業員が持つ能力を把握することが難しくなりがちです。スキル管理を通じて各従業員の強みや専門性を明確にすることで、潜在能力を持つ人材を見つけやすくなります。
また、スキルマップを作成して組織全体のスキルを可視化することで、必要なスキルの不足を特定し、戦略的な人材育成や採用計画を立案することが可能になります。
従業員を適材適所に配置すること
スキル管理のもう一つの目的は、従業員を適切なポジションに配置すること。従業員のスキルや経験を基に、最も適した業務や役割に配置することで、その能力を最大限に引き出せます。
新しいプロジェクトに必要なスキルを持つ人材を迅速に見つけ、配置することが可能です。また、キャリアパスの設計や異動、昇進の際の判断材料としても役立ちます。適材適所の配置は、従業員の満足度を高め、組織の活性化や人材の定着率向上にもつながります。
4.スキル管理とタレントマネジメントの違い
スキル管理は、企業が人材を戦略的に育成・配置し、最大限に活用するための包括的な人事戦略である「タレントマネジメント」の重要な基盤をなします。
タレントマネジメントが、採用から育成、配置、評価、そして退職に至るまでの一連の従業員ライフサイクル全体を最適化することを目的とするのに対し、スキル管理はその中でも特に「従業員がどのような能力を持ち、それをどう活かすか」という側面に焦点を当てます。
スキル情報を正確に把握することで、タレントマネジメントシステム内で最適な人材を特定し、育成計画を策定し、後継者育成を計画するなど、よりデータに基づいた意思決定が可能です。両者は密接に連携し、企業の人材戦略をより強固なものにします。

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5.スキル管理のメリット
スキル管理を取り入れると、企業にはさまざまなメリットがあります。ここでは、スキル管理がもたらすメリットについて詳しく見ていきましょう。
- 個人と組織の強みと弱みを把握できる
- 適材適所の人材配置につながる
- 必要な人材を育成・採用できる
- パーソナライズされた人材育成ができる
- 公正な人事評価ができる
- スキルの継承が可能になる
個人と組織の強みと弱みを把握できる
スキル管理を導入することで、従業員一人ひとりの能力が可視化され、個人と組織全体の強みや弱みを把握しやすくなります。たとえば、特定の技術に強い従業員を把握したり、組織全体で不足しているスキルを確認したりすることが可能です。
このデータを活用して、従業員の成長目標を立てたり、組織全体のスキル向上計画を策定したりすることが容易になり、組織の競争力を高められます。
適材適所の人材配置につながる
スキル管理は、組織の成長を加速させる「適切な人材配置」を可能にします。従業員一人ひとりのスキル、経験、志向が可視化されることで、新規プロジェクトの立ち上げ時に必要な専門スキルを持つ人材を迅速に特定したり、欠員が出た際に最適なスキルを持つ従業員を他部署からスムーズにアサインしたりすることが可能です。
たとえば、経理部門で急な欠員が出た場合、スキル管理システムで「経理スキル」を持つ従業員を検索し、他部署のAさんが一時的に応援に入ることで、業務の停滞を防ぎ、組織全体の生産性を維持できます。これにより、属人的な判断に頼らず、データに基づいた戦略的な人員配置が実現し、組織の流動性と適応能力が向上します。
必要な人材を育成・採用できる
スキル管理を実施すると、現状の人材にどのスキルが不足しているかが明確になるため、それにもとづいて効率的な人材育成ができます。たとえば、特定の技術スキルが不足している場合には、社内での研修を実施したり、外部から適任者を採用したりといった対策を取ることが可能です。
また、新しい人材を採用する際にも、求められるスキルが明確になることで、採用活動もスムーズに進行し、必要な人材を適切なタイミングで確保できるようになります。
パーソナライズされた人材育成ができる
スキル管理は、従業員一人ひとりの成長を最大化する「パーソナライズされた人材育成」を実現します。
スキルマップを通じて、個人の現在のスキルレベルと、目標とするキャリアパスや職務に必要なスキルとの「ギャップ」を明確に把握できます。このギャップに基づき、eラーニングの受講や、社内研修への参加、OJTの計画など、最も効果的な育成プログラムを個別にカスタマイズして提供することが可能です。
たとえば、マネージャー候補のBさんの「リーダーシップスキル」が不足していると判明した場合、具体的な研修プログラムやメンター制度を提案し、計画的なスキルアップを支援できます。これにより、無駄のない効率的な人材育成投資が可能となり、従業員のモチベーション向上とエンゲージメント強化に繋がります。
公正な人事評価ができる
スキル管理により、スキルの可視化が進むことで、客観的で公平な人事評価が可能になります。スキルの保有状況やレベルに応じて昇格や昇進、報酬を決定できるので、主観的なバイアスによる人事評価エラーが減少します。その結果、従業員が評価に対して感じる不満も軽減される効果が期待できるでしょう。
スキルの継承が可能になる
スキル管理を通じて、継承すべき重要なスキルを特定できます。とくに、熟練技術者の退職や世代交代が進むなかで、スキルの継承は多くの企業にとって重要な課題です。
ベテラン社員が持つ暗黙の知識を明確にし、計画的に若手社員へ継承することで、企業全体の技術力を維持・向上させることが可能です。
6.スキル管理を実施しない悪影響
スキル管理を行わない場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります。これらのリスクが懸念される場合は、スキル管理の導入をぜひ検討してください。
- 必要なスキルを持った人材が不足する
- 社員の意欲が低下する
- 法的および規制上の問題が発生する
①必要なスキルを持った人材が不足する
スキル管理を実施しないと、組織に必要なスキルを持つ人材が不足する事態に陥りやすくなります。とくに技術の進化が速いIT業界などでは、スキル不足が原因でプロジェクトの遅延や品質低下が発生する可能性があります。
また、スキルの不足は組織の成長を妨げ、生産性の低下や重要なビジネスチャンスを逃す原因にもなりかねません。
②社員の意欲が低下する
スキル管理が不十分だと、従業員のスキルや経験が正しく把握されず、適材適所の配置が難しくなります。その結果、従業員の持つスキルと担当業務のミスマッチが発生し、個人の能力を最大限に活かせない状況に陥るでしょう。
たとえば、営業力の高い社員が経理部に配置されるなどの不適切な配置は、業績やモチベーションの低下を招き、最悪の場合、優秀な人材の流出にもつながる可能性もあります。
③法的および規制上の問題が発生する
スキル管理を怠ると、法的および規制上のリスクが増大する可能性もあるため注意が必要です。特定の職種では、法律や業界基準に基づいて特定の資格やスキルが要求されることがあります。
たとえば、第一種電気工事士や危険物取扱資格は、定期的な講習の受講が必要です。また、医師や歯科医師、薬剤師といった医療従事者は、業務の従事状況などを厚生労働大臣や都道府県知事に定期的に報告する義務があります。
スキル管理が不足すると、これらの要件が満たされず、罰金や業務停止、企業の信用低下といった深刻な問題に発展する恐れもあります。さらに、資格の更新漏れによる有資格者不在が原因で、コンプライアンス違反を招くリスクも高まるでしょう。
7.スキル管理の対象となるスキル
スキル管理では、さまざまなスキルが対象となり、「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の大きく3つに分類されます。これらは、ハーバード大学のロバート・カッツ教授が提唱した「カッツモデル」にもとづくものです。
テクニカルスキル
テクニカルスキルは、業務を遂行するために必要な専門的な知識や技術です。職種ごとに必要とされるスキルは異なり、下記のようなスキルが該当します。これらのスキルは、特に現場レベルの管理職や専門職に重要です。
- 営業職:商品知識、マーケティングスキル、提案力
- 事務職:パソコン操作スキル、資料作成力、事務処理能力
- 企画職:データ分析力、市場理解

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テクニカルスキルとは、与えられた業務を適切に遂行するために欠かせない知識や技術、能力のことです。ビジネスパーソンに欠かせないとされるテクニカルスキルについて、見ていきましょう。
1.テクニカルスキル...
ヒューマンスキル
ヒューマンスキルは、人間関係を円滑にするためのスキルです。例えば下記が該当し、これらのスキルは、すべての従業員に必要な能力といえます。
- コミュニケーション能力
- チームワーク
- リーダーシップ
- プレゼンテーション能力
さらに、ヒアリング力やコーチング力、交渉力などは、組織のスムーズな運営には欠かせません。ヒューマンスキルの評価は、どうしても主観的になりやすい傾向にあるものの、360度評価のような方法を使うと、より客観的に多方面から評価できます。

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コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルは、組織全体を俯瞰し、複雑な状況を分析・理解する能力です。特に管理職や経営層に求められるスキルで、全体を見渡しながら適切な判断を下し、組織の方向性を導く役割を果たします。たとえば以下のスキルが該当します。
- 戦略的思考力
- 問題解決能力
- クリティカルシンキング
- 創造性
- 俯瞰力
コンセプチュアルスキルの評価は難しい面がありますが、戦略立案の質や問題解決の実績などから判断することが可能です。

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8.スキルマップとは?
スキルマップとは、従業員一人ひとりが保有するスキルや能力、経験、資格などを一覧形式で可視化し、その習熟度を段階的に評価してマッピングした図や表のことです。これにより、個人の強み・弱み、部署やチーム全体のスキルバランス、そして組織全体で不足しているスキルを直感的に把握できます。
単なるリストではなく、人材配置、育成計画、後継者育成など、多様な人事戦略の策定に不可欠な「人材の羅針盤」として機能します。
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9.スキルマップのテンプレート
厚生労働省は、「職業能力評価シート」という名称で、スキルマップのテンプレートを提供しています。職種や業種ごとに必要なスキルや能力が網羅されており、特定の職業や業界に適したスキルセットを体系的に管理できるように設計されています。
テンプレートは、エクセル形式でダウンロードできるので、自社の状況に合わせてカスタマイズして活用するのがよいでしょう。
事務系職種のスキルマップテンプレート
事務系職種では、下記の職種に対応するスキルマップテンプレートが用意されています。
- 人事・人材開発・労務管理・生産管理・ロジスティクス
- 経営戦略、情報システム、営業・マーケティング・広告
- 企業法務・総務・広報、経理・資金財務、経営管理分析・国際経営管理、貿易
業種別のスキルマップテンプレート
業種別では、下記に対応する業種のスキルマップテンプレートが用意されています。
- エステティック業
- 警備業
- 葬祭業
- ディスプレイ業
- 外食産業
- フィットネス産業
- 卸売業
- 在宅介護業
- スーパーマーケット業
- 電気通信工事業
- ホテル業
- ビルメンテナンス業
- アパレル業
- ねじ製造業
- 旅館業
- ウェブ、コンテンツ制作業
出典:厚生労働省「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード」
10.スキル管理の方法
スキル管理を効果的に実施するには、以下の5つのステップで進めていきましょう。
- スキル管理の目的を決める
- 詳細なスキル項目を決める
- スキルレベルを設定する
- スキルマップを作成する
- スキルデータを評価・更新する
①スキル管理の目的を決める
まず、組織としてスキル管理を行う目的を明確にします。自社の現状を分析し、企業が今後進むべき方向や、スキル管理をどのように活用していくかといった目標を設定しましょう。スキルマップの目的には、以下のようなものが考えられます。
- 適材適所の人材配置
- 効果的な人材育成、採用
- 公平な人事評価
- 従業員のモチベーションアップ
- 組織の競争力強化
②詳細なスキル項目を決める
スキル管理の成否を分ける重要なステップの一つが、「適切なスキル項目の設定」です。単に多くの項目を羅列するのではなく、自社の事業戦略、各職務の役割、そして将来的に必要となるであろうスキルを見据えて、本当に管理すべき項目を厳選することが重要です。
この際、厚生労働省が提唱する「ポータブルスキル」の9要素のような公的フレームワークを参考にすることで、網羅性と客観性を担保できます。
また、テクニカルスキルだけでなく、コミュニケーション能力や問題解決能力といった「ヒューマンスキル」や「コンセプチュアルスキル」 もバランス良く含めることで、より多角的な人材評価が可能になります。
参考:
ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)|厚生労働省
③スキルレベルを設定する
スキル項目が決まったら、それぞれのスキルに対して習熟度を示すレベルを設定します。3〜5段階程度のレベル分けにすることが一般的です。スキルレベルの定義例を紹介します。
- レベル1:対象業務の経験がない
- レベル2:サポートを受けながら対応できる
- レベル3:時間をかければ一人で対応できる
- レベル4:問題なく一人で対応できる
- レベル5:他者に指導できる
④ スキルマップを作成する
スキル項目とレベルにもとづき、スキルマップを作成します。スキルマップにより、組織全体のスキル分布や個々の従業員の強み・弱みを視覚的に把握できます。とくにチーム編成やプロジェクトの人材選定において、スキルマップは非常に有効なツールです。
また、従業員自身も自分のスキル状況を把握しやすくなるため、スキルアップに向けた動機づけにもつながります。
⑤スキルデータを評価・更新する
スキル管理を形骸化させず、その効果を最大限に引き出すためには、「スキル情報の定期的な更新」が不可欠です。従業員のスキルは、日々の業務経験、研修受講、資格取得などによって常に変化しています。
情報が古いままだと、誤った人材配置や育成計画に繋がり、組織のパフォーマンスに悪影響を及ぼしかねません。理想的には半年に一度、長くても年に一度は全従業員のスキル情報を棚卸し、最新の状態に保つことを推奨します。
この更新プロセスを効率化するためには、アンケート機能や自己申告機能を備えたスキル管理システムの活用が効果的です。また、上司との1on1ミーティングや人事評価のタイミングと連動させることで、更新の習慣化を促せます。
11.スキル管理を成功させるポイント
スキル管理を成功させるために、以下の3つのポイントを押さえましょう。
明確な評価基準を設ける
スキル管理を成功させるためには、評価基準を明確にすることが欠かせません。評価基準が曖昧であると、従業員のスキルレベルを正確に判断できず、公平な評価が難しくなります。
評価基準は、具体的な行動や成果を基に設定し、誰が評価しても同じ結果になるよう心がけましょう。明確な基準により、従業員の自己評価と上司の評価のズレを最小限に抑え、公平性を担保できます。
また、従業員にとっても次のステップが明確になり、モチベーション向上につながります。
スキル管理で確認すべきポイントを押さえる
スキル管理をすべきポイントとして、以下があります。これらはスキル項目を設定する際に考慮すべき重要な要素です。
業務遂行に必要なスキル | 実務的なスキルにくわえ、コミュニケーション能力なども含める |
業務経験やキャリア | これまで担当したプロジェクトの経験や担当した役割、他社での職務経験など |
保有資格 | 業務に関連する資格の有無、取得した年月日、更新時期など |
研修履歴 | 研修や外部のセミナーの受講履歴など |
タレントマネジメントシステムを活用する
大規模な組織や複雑なスキル体系を管理する場合、タレントマネジメントシステムの活用が非常に有効です。このシステムを使用することで、スキルデータの一元管理、リアルタイムでの更新、グラフの自動生成などが可能になります。
また、従業員の自己評価や上司による評価の入力、キャリアパスの可視化など、スキル管理に関連する様々な機能を統合的に利用できます。
システムの導入により、人事部門の業務効率化だけでなく、従業員のスキル向上への意識づけや、組織全体のスキルマネジメントの質を向上させる効果も期待できるでしょう。

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12.スキル管理の導入に向けたセルフチェックリスト
スキル管理の基本的な考え方や進め方を理解したら、次は実際に自社に導入できるかどうかを確認しましょう。
以下のチェックリストは、スキル管理体制の整備に向けた準備状況を可視化するためのものです。社内の状況に照らし合わせて、順番に確認してみてください。
- スキル管理の目的が明確になっているか?
- 現状のスキル管理における課題を特定できているか?
- 管理すべきスキル項目と評価基準の方向性は見えているか?
- スキル管理を推進する担当部署や責任者は明確か?
- 従業員への説明と協力体制を築く準備はできているか?
- スキル管理システムの導入を検討するフェーズにあるか?
スキル管理の目的が明確になっているか
スキル管理は「何のために行うのか」が明確でなければ、導入しただけで満足してしまい、形だけの運用に終わるリスクがあります。単にスキルを「見える化」することがゴールではなく、その情報をどう活かすかが大切です。
スキル管理が企業戦略や経営課題の解決にどう結びつくのか、社内で合意形成が取れているかを確認しましょう。
【具体例:スキル管理の目的】
- 人材の適材適所を実現し、業務効率を最大化する
- スキルに基づく教育体系を設計し、人材育成を体系化する
- 中長期的な人材戦略や後継者育成のためにスキルデータを蓄積する
- 人的資本経営や情報開示(ISO30414、人的資本可視化指針)に備える
- リスキリング施策のターゲットや優先度を明確化する
現状のスキル管理における課題を特定できているか
現状の課題を正確に把握していなければ、「何をどう改善すべきか」があいまいになり、導入したスキル管理が的外れなものになるリスクがあります。Excelや属人的な管理に頼っているケースもあり、スキル情報が分散・陳腐化していることもあるでしょう。
スキル管理を始めるにあたって、現状の業務フロー・情報管理のどこに非効率やリスクがあるのかを洗い出しておきましょう。
【具体例:スキル管理における課題】
- スキル情報がExcelや個人ファイルに散在し、更新や共有が困難
- 異動・評価・研修に必要な情報が、実際には使われていない
- 各部門でスキルの定義が異なり、全社での統一が図れていない
- 保有スキルと必要スキルのギャップ(スキルギャップ)を把握できていない
- 現場から「管理のための管理」と不満の声が上がっている
管理すべきスキル項目と評価基準の方向性は見えているか?
スキル管理の設計には、「何を・どこまで・どうやって管理するか」を事前に考えておく必要があります。対象となるスキル項目が曖昧だと、データの精度も活用の幅も大きく制限されてしまいます。業種や職種によって求められるスキルは異なるため、自社にとって本当に必要なスキルの定義をクリアにしておくことが大切です。
また、単に「ある・なし」で判断するのではなく、レベル評価や習熟度も含めたスキルの「深さ」を可視化する必要があります。
【具体例:スキル項目・評価基準】
- テクニカルスキル(専門スキル):プログラミング、設計、生産技術、法務知識など
- ヒューマンスキル:コミュニケーション能力、リーダーシップ、チームワークなど
- ビジネススキル・思考力:課題解決力、論理的思考、プロジェクト推進力など
- 資格・業務経験:国家資格、社内認定、OJT経験など
- レベル設定例:0〜3段階、初級〜上級などの評価レベルと基準の整備
スキル管理を推進する担当部署や責任者は明確か?
スキル管理の導入・運用には、持続的なマネジメントが欠かせません。誰がリーダーシップを取り、関係者を巻き込み、運用を定着させるのかが曖昧な場合、プロジェクトは途中で頓挫する可能性があります。
スキル管理は人事部門だけで完結するものではなく、各部門の責任者や現場リーダーとの協働が求められます。全社的な推進体制の設計とともに、日常的な運用ルール・更新フローを担う「運営責任者」の存在も重要です。
【具体例:スキル管理の体制のチェックリスト】
- 経営層の理解・コミットメントがあるか
- 人事部が全体設計とガバナンスを担い、現場との橋渡し役になっているか
- 各部門にスキル管理の協力責任者(部門長や育成担当)を配置できているか
- スキル管理の更新・評価・利活用に関する定例の運用フローがあるか
従業員への説明と協力体制を築く準備はできているか?
スキル管理は従業員一人ひとりが自分のスキルを正しく申告し、更新していくことで成り立ちます。しかし、運用者視点だけで導入を進めると、「管理されるだけ」「評価に使われるのでは」と従業員の不安や抵抗を招き、うまく機能しなくなります。
導入初期には、従業員に対してスキル管理の意義やメリットを明確に説明し、納得感を得ることが重要です。信頼関係を築きながら、主体的に協力してもらえる体制づくりを進めましょう。
【具体例:従業員への説明・協力体制のチェックリスト】
- スキル管理の目的と、従業員にとってのメリット(育成、評価、キャリア形成など)を伝えられているか
- 個人情報や評価との関連について、透明性を持った説明がなされているか
- 負荷を感じずにスキルを入力・更新できるツールやサポートがあるか
- 従業員の声を吸い上げ、改善・運用に活かすフィードバックループがあるか
スキル管理システムの導入を検討するフェーズにあるか?
スキル情報を正確かつ継続的に管理するには、ITシステムの導入が不可欠です。手作業での更新やExcel管理では、情報の鮮度・網羅性・セキュリティに限界があるためです。
また、最近ではスキル情報を人材配置・育成・評価・人的資本開示に活用できるクラウド型のスキルマネジメントシステムも多く登場しています。自社に合ったツールを導入することで、現場に負担をかけず、戦略的な活用が可能になります。
【具体例:スキル管理システムの導入ニーズ】
- 多職種・多拠点の従業員スキルをリアルタイムで見える化したい
- 部門や役職ごとに必要スキルを定義し、ギャップを定量的に把握したい
- 評価や教育体系と連動させて、スキル情報をフル活用したい
- 将来的に人的資本開示やISO対応に備えたい
- 従業員のリスキリング・キャリア形成を支援する基盤を作りたい
13.スキル管理システムとは?
スキル管理システムは、従業員のスキルや知識情報を一元管理し、可視化するためのツールです。とくに従業員の数が多い企業や、スキルの多様性が求められる職場での活用が進んでおり、企業全体のパフォーマンスを向上させるための重要なツールとして注目されています。
スキル管理システムの主な機能
スキル管理システムの主な機能には、以下のようなものがあります。
- スキルデータの登録・管理
- スキルマップの作成・可視化
- 評価機能(自己評価・上司評価)
- キャリアパスの設計支援
- 教育・研修の管理
- 検索・分析機能
- eラーニングと講座研修の一元管理
これらの機能により、組織全体のスキル状況を把握し、戦略的な人材育成や配置が可能になるでしょう。
スキル管理システムの導入効果
スキル管理システムの導入により、以下のような効果が期待できます。
- 人材の適材適所の配置
- 効率的な人材育成
- 客観的な評価基準の確立
- 公平で透明性のある評価
- キャリア開発支援
- 組織の競争力強化
従業員のスキルを可視化するだけでなく、スキルを総合的に管理し、組織運営の効率化や人材育成に役立てることが可能です。
スキル管理システムの導入事例
さいごに、スキル管理システムの企業導入事例を紹介します。
ジャパンシステム株式会社
ジャパンシステム株式会社では、社員が増え、テレワークも普及する中、社員のスキルや経歴管理がExcelでバラバラに行われ、情報の可視化に課題を抱えていました。また、各部門間でのデータの一元化が進んでいないことも問題でした。
そこで、スキル管理システム「カオナビ」を導入し、社員のスキルや業務経歴を顔写真と共に可視化。この結果、新入社員の上司や配属状況が簡単に確認でき、管理職のマネジメント意識も向上。
社員のつながりや働きぶりを一目で把握できるようになり、人財育成にもつながっています。さらに、組織変更や異動がスムーズに行えるようになり、評価制度の効率化やペーパーレス化も実現しました。
参照:株式会社カオナビ「社員の顔もスキルもキャリアプランも、可視化することが人を動かす」

スキル管理システムとは? スキルマップ作成等のメリットを解説
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社員のスキルを一元管理できるスキル管理...
スキル管理に関するよくある質問
- 自社の管理したいスキル項目や評価基準に柔軟に対応できる「カスタマイズ性」があるか
- 従業員が簡単に情報を入力・更新できる「操作性」があるか
- 人事担当者やマネージャーがデータを分析しやすい「分析機能」があるか
- 既存の人事システムや評価システムとの「連携性」があるか
- しっかりとした「セキュリティ機能」があるか
- 導入後の「サポート体制」が充実しているか
- 自社の予算に合った「料金プラン」であるか