帰属意識とは?【意味を簡単に】エンゲージメント、高める方法

帰属意識とは、ある集団・組織に属しているだけでなく、その一員である意識や感覚のことです。従業員が同じ方向に向かって行動し、かつ企業に長く勤め続けたいと思ってもらうためには帰属意識が重要となります。

今回は帰属意識とは何かを踏まえて、帰属意識のメリット・デメリットや高める方法などを詳しく解説します。

1.帰属意識(きぞくいしき)とは?

帰属意識とは、ある集団または組織にただ属しているだけでなく、自分がその一員であるという意識・感覚のこと。帰属意識は企業のみならず、学校や宗教、自治体など、さまざま単位の集団・組織に対して用いられます。

帰属意識が高いと、その集団・組織との一体感を持ち、興味関心や愛着が強い状態になるのです。企業においてはその企業への満足度や信頼感が高く、目標達成に向けて責任を持って行動し、所属し続けたいという気持ちが強い状態を指します。

帰属意識を英語で表すと?

帰属意識は、英語で「Sense of Belonging」と表します。「Belonging」は、「親密」や「相互信頼」、「帰属」を意味する名詞です。「Sense」は「感覚」「意識」「気持ち」を意味する名詞となるため、そのまま「帰属意識」や「親密な感覚」と直訳できます。

企業から注目される背景

日本では終身雇用制度が一般的でしたが近年、人材の流動化が進んでいます。終身雇用制度が実質崩壊し、複数社で働くのが一般的になったため帰属意識が注目を集めているのです。

就職から定年まで所属することが当たり前であれば、おのずと帰属意識も高まるでしょう。

しかし転職が一般的となった今、そもそも帰属意識の必要性を感じていない人も多いのです。全体的に帰属意識が定着しなくなりつつある背景もあり、帰属意識の重要性や必要性が唱えられています。

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2.帰属意識とエンゲージメント、ロイヤリティとの違い

企業と従業員のつながりを表す言葉には「帰属意識」のほか、「エンゲージメント」や「従業員満足度」「ロイヤリティ」などがあります。ここでは帰属意識とエンゲージメント、ロイヤリティとの違いをみていきます。

エンゲージメントとは

深い関わり合いや関係性を意味する言葉です。

エンゲージメントは従業員から企業、企業から従業員と双方向のベクトルに対して、帰属意識は従業員から企業への一方通行なベクトルです。つまり、帰属意識とエンゲージメントは、ベクトルの向きに違いがあります。

またエンゲージメントが高い状態だと、企業に貢献したいという動機がともなうため業績に反映しやすくなるのです。一方、帰属意識が高いからといって、必ずしも企業に貢献したいという動機が伴うわけではない点も大きな違いです。

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ロイヤリティとは

忠誠心や誠実さを意味する言葉です。

ロイヤリティは企業が上位、従業員が下位といった主従関係のもと従業員が企業に献身的な態度を示す状態を指します。ロイヤリティは主従関係を前提とする一方、帰属意識にはロイヤリティのような主従関係が前提とならない点に違いがあるのです。

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3.帰属意識が「気持ち悪い」「いらない」といわれる理由

近年、働き方の多様化が進み、帰属意識よりも個の尊重を求める風潮にあります。また「帰属意識=愛社精神」というイメージがあり、飲み会や懇親会でとりあえず交流を深めればよいと考える企業もまだまだ少なくありません。

これまでそうした交流で帰属意識が高められた成功体験があったとしても、これからの時代、このような愛社精神の押しつけは、かえって帰属意識やエンゲージメントの低下を招きます。

実際に帰属意識が高い企業が飲み会や懇親会が多いわけではないです。違うベクトルから帰属意識を高めていく工夫が求められます。

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4.帰属意識が低いことによるデメリット

人材の流動化や働き方の多様化により帰属意識の重要性が薄れている一方、帰属意識が低いために業務効率の低下や定着率の低下を招くなどのリスクもあるのです。ここでは、帰属意識が低いことによるデメリットを解説します。

  1. 生産性の低下
  2. 離職率の増加
  3. コミュニケーションの低下
  4. 既存従業員への負担増加

①生産性の低下

帰属意識が低いと、社内で発生した問題や業務に対して他人事ととらえてしまいます。結果、積極的に問題や業務に取り組まず、組織全体の生産性が低下するのです。

くわえて、ロイヤリティやエンゲージメントも低くなるため、企業への忠誠心や貢献したいという気持ちも芽生えません。

②離職率の増加

帰属意識が低い状態ですと自分が企業の一員であるとの自覚が薄れ、社内に居場所がないように感じてしまいます。また企業に所属したいという意識も低くなり、仕事に対しても意欲が湧かなくなってしまうのです。

そして、企業への愛着もないためためらわず退職を選びます。このような負の連鎖が組織全体の定着率に悪影響をおよぼす可能性も高いのです。

③コミュニケーションの低下

帰属意識が低くなると、社内の人たちへの関心も低下します。

最低限のコミュニケーションで済まそうとするだけでなく、最悪のケースでは最低限の報連相まで滞ってしまう可能性も。さらに、一緒に頑張ろうという姿勢が見られず、組織全体の士気低下を招きかねません。

また、企業が伝える理念や方針も浸透しにくく、同じ方向で業務を進めていくことが困難になってしまいます。

④既存従業員への負担増加

帰属意識が低下した従業員の離職が増加するごとに、既存従業員への負担が増加します。離職者の穴をカバーするだけでなく、新しく入社した従業員への教育にもリソースを割かなければなりません。

これらが原因でさらなる離職者を生み出すといった悪循環が発生してしまうのです。

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5.帰属意識が低くなる原因

帰属意識が低くなる原因には、次の5つが考えられます。

  1. 働き方の多様化
  2. 成果主義の台頭
  3. 企業理念やビジョンが不明瞭
  4. 従業員同士の交流不足
  5. 評価や待遇などへの不満

①働き方の多様化

リモートワークやフレックスタイム制など働き方の多様化により、以前よりも従業員同士が顔を合わせる機会・時間が少なくなった企業も多いでしょう。

とくに、リモートワークではひとりで作業する時間がほとんど。協力し合う意識や企業に所属している意識が薄れ、帰属意識が低下しやすくなるのです。

②成果主義の台頭

近年、終身雇用制度の崩壊に合わせて、年功序列の評価方法も見直されつつあります。その結果、成果主義が台頭し、所属期間に関係なく評価されるようになりました。

本来、成果主義は従業員のモチベーションを上げるための人事施策です。しかし、所属期間が長いにもかかわらず成果が出せない従業員は、企業に所属することに意味を見出せなくなり、帰属意識が低くなってしまいます。

一方で、成果が出せる人はキャリアアップの手段として転職する可能性も高いため、そもそも特定の企業に帰属意識を持たない傾向にあるのです。

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③企業理念やビジョンが不明瞭

企業側が経営方針や目標を伝えるための適切なコミュニケーションを図らないと、従業員が同じ方向を向いて業務に取り組めません。また企業への不信感にもつながります。その結果、帰属意識の低下を招く恐れがあるのです。

④従業員同士の交流不足

業務に取り組んでも、上司や同僚と協力し合っている認識が生まれないと、自分が企業に属している感覚が得られません。社内での居心地も悪く感じ、企業とのつながりも感じられなくなると、帰属意識が低下してしまうのです。

⑤評価や待遇などへの不満

適切な評価を受けていないと感じると「必要とされていない」「認められていない」といった思考に陥り、帰属意識の低下を招きます。また待遇への不満は企業から「労わってもらえない」といった感情から帰属意識が低下しやすくなるのです。

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6.帰属意識が高いことによるメリット

一方、帰属意識が高いと次のようなメリットを得られます。

  1. モチベーションの向上
  2. 定着率の増加
  3. 採用や教育コストの削減
  4. 組織力の増大

①モチベーションの向上

帰属意識が高いと「自分は会社に必要とされている」と認識でき、企業に積極的に貢献しようと行動を起こします。その結果、一人ひとりの仕事に対する意識が高められ、組織全体の生産性が向上し、業績アップにつながっていくのです。

組織全体の士気も高まり、周囲にもよい影響がもたらされるでしょう。

②定着率の増加

帰属意識が高いと企業に長く勤め続けたいという意識が芽生えるため、おのずと定着率が増加します。定着率が増加すれば慢性的な人手不足に陥るリスクも少なく、育成した従業員が長期的に企業に利益をもたらしてくれる効果も期待できるのです。

定着率が増加すれば職場環境も安定し、結果企業に良い循環をもたらします。

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③採用や教育コストの削減

定着率が高いため、ひんぱんに採用を行う必要がないと同時に、新たな人材を教育するコストも削減可能です。欠員補充のための早急な人員補充も必要ないため、必要な人材をじっくり見極められ、採用の質も向上します。

さらにリファラル採用も活発になりやすいため、自社にマッチした人材を獲得しやすくなるうえ、採用コストの抑制にもつながるのです。

④組織力の増大

帰属意識が高まると社内のコミュニケーションも活発になり、良好な人間関係が構築しやすくなります。それにより心理的安全性が高まり、アイデアや意見が組織に反映されやすくなって、個々が持つパフォーマンスが最大限発揮できるようになるのです。

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7.帰属意識を高める方法

メリットからもわかるように、帰属意識の向上は企業にとって大きな利益をもたらすのです。ここでは、帰属意識を高める6つの方法をご紹介します。

  1. インナーブランディングの強化
  2. コミュニケーションの機会を提供
  3. 福利厚生の拡充
  4. 評価制度の改正
  5. 業務や役割の明確化
  6. 多様性の受容

①インナーブランディングの強化

インナーブランディングとは、社内に向けて行うブランディングのこと。具体的には企業理念やビジョン、ブランドの価値などを適切に伝え、理解を深めてもらう取り組みを実施します。

そのとき、社内報の活用や動画視聴、ワークショップなどさまざまな手法で行われるのです。

②コミュニケーションの機会を提供

コミュニケーションが活性化すると、社内における自分の役割や位置づけを認識できるようになります。結果、帰属意識が向上すると同時に、周囲のよい影響からモチベーションも向上しやすくなるのです。

コミュニケーションの機会を提供する方法としては「社内イベントの開催や食事手当など福利厚生を導入する」「オープンスペースやカフェスペースを設置する」などが挙げられます。

③福利厚生の拡充

福利厚生はたんに待遇をよくするだけでなく、企業が従業員を「労わっている」「大切にしている」といったメッセージを形にしたものといえます。給与以外にも従業員を労わる気持ちを形にして提供すると、帰属意識が芽生えるきっかけになるのです。

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④評価制度の改正

能力や取り組みが適切に評価される環境は、従業員の帰属意識を高める際に有効です。重要なのはただよい評価を与えるのではなく、従業員が評価内容に納得できること。

長期的な帰属意識を高めるためにも、適切な評価制度を構築・運用できる環境を整えましょう。

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⑤業務や役割の明確化

帰属意識は、自分の役割や働く意味が認識できて初めて高まるもの。ただや業務や役割を与えるのではなく「なぜその人に業務や役割を与えたのか」を明確に伝えると、さらなる帰属意識の向上が期待できます。

自分の役割を認識し、企業に自分の居場所や必要性があると感じられることが重要です。

⑥多様性の受容

性別や年齢、国籍や個々の事情など多様性が受容される環境は、従業員の心理的安全性が高まります。安心できる職場であれば長く所属したいと思えるだけでなく、個々のパフォーマンスも存分に発揮できるのです。

こうした職場に対しては、おのずと帰属意識も高まります。

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8.帰属意識向上に成功した企業事例

帰属意識を高めるための取り組みは、企業によってさまざま。ここでは、帰属意識向上に成功した企業事例をふたつご紹介します。

サイボウズ

サイボウズでは、多様性を受容する制度を多く新設しています。

副業や在宅ワークを先駆けて導入するだけでなく、2013年には「選べる!選択人事制度」によって「ワーク重視方」「ワークライフバランス型」「ライフ型」と自分の人生設計に合わせて柔軟に働ける環境を整備しました。

結果従業員の帰属意識が向上し、離職率は4%にまで低下したのです。

オリエンタルランド

オリエンタルランドでは帰属意識向上の取り組みとして、企業精神を徹底して伝えてモチベーションの高い従業員を育成しました。そのほか、立場を超えてアイデアを気軽に提案できる環境づくりも進めています。

また2016年には人事制度を改定し、準社員に対しても役割ごとの昇給や評価基準の改善などを反映。結果3年後には離職率0%という驚きの定着率を誇るようになりました。