定着率とは?【計算方法】上げる方法、平均、離職率との違い

定着率とは、入社した社員が何人残っているかを表す割合のこと。離職率との違い、定着率の計算方法、定着率を上げる方法などについて解説します。

1.定着率とは?

定着率とは、企業へ入社した社員が一定の期間後に何人残っているかを表す割合のこと。一般論として、働きやすい企業や待遇がよい企業は定着率が高まる傾向にあります。働きやすい、あるいは待遇がよい職場であれば、転職の必要性を感じる社員が減り、自ずと定着率が上がるのです。

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2.定着率と離職率の違い

定着率は「どれくらい定着しているか」、離職率は「どれくらい離職しているか」を示す割合です。定着率と離職率は負の相関関係にあるため、採用や育成などの人材戦略ではどちらも分析する必要があります。

離職率とは?

離職率は、「一定の期間内にどれだけの人が離職したか」を表す指標です。離職率の割合は、いずれかの計算で求められます。

  1. 離職人数÷社員数×100(%)=離職率(%)
  2. 100(%)-定着率(%:算出方法は後述)=離職率(%)

たとえば1年間で100人の社員のうち10人が離職した場合の離職率を①の計算で求めた場合、10(人)÷100(人)×100(%)となり、離職率は10(%)です。

集計対象の違い

定着率と離職率では、集計対象とする社員の属性が異なります。定着率では「一定期間後に自社に残った社員」を、離職率では「一定期間後に退職した社員の割合」を用いて算出するからです。ただしいずれも人材戦略で現状分析に用いる指標とされます。

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3.日本企業の平均定着率

日本の平均定着率は、どれくらいなのでしょう。厚生労働省が公表している「学歴別就職後3年以内離職率の推移」と「令和3年雇用動向調査結果の概要」から数値を用いて、「100%-離職率」という計算式で平均定着率を求めてみます。

労働者全体平均定着率

労働者全体の定着率は、厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概要」の離職率から算出できます。「一般労働者」「パートタイム労働者」「男性」「女性」の離職率をもとに計算した定着率(令和3年)は以下のとおりです。

  • 一般労働者:100%-11.1%(離職率)=88.9%
  • パートタイム労働者:100%-21.3%(離職率)=78.7%
  • 男性:100%-12.8%(離職率)=87.2%
  • 女性:100%-15.3%(離職率)=84.7%
参考 令和3年雇用動向調査結果の概要厚生労働省

学歴別平均定着率

厚生労働省が学歴別に就職後3年以内の離職率を調査した「学歴別就職後3年以内離職率の推移」という資料があります。この資料から算出した大卒と高卒の定着率(平成30年)は以下のとおりです。

  • 【大学卒】
  • 1年目:100%-11.6%(離職率)=88.4%
  • 2年目:100%-11.3%(離職率)=88.7%
  • 3年目:100%-8.3%(離職率)=91.7%
  • 【高校卒】
  • 1年目:100%-16.9%(離職率)=83.1%
  • 2年目:100%-11.9%(離職率)=88.1%
  • 3年目:100%-8.1%(離職率)=91.9%
参考 学歴別就職後3年以内離職率の推移厚生労働省

産業別での差

厚生労働省が2021年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、産業によっても定着率に差が見られます。

新規学卒就職者(大学卒と高校卒)における就職後3年以内の離職率が高いのは、「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」「教育・学習支援業」「小売業」「医療」「福祉」など。定着率にすると40%から60%ほどです。

参考 新規学卒就職者の離職状況を公表します厚生労働省

事業所規模での差

大学卒、高校卒ともに事業所規模が大きくなるほど定着率が上がる傾向にあります。「新規学卒就職者の離職状況」から算出した事業所規模別の定着率は以下のとおりです。

  • 【1,000人以上の企業】
  • 大学卒:100%-24.7%(3年以内の離職率)=75.3%
  • 高校卒:100%-25.6%(3年以内の離職率)=74.4%
  • 【5人未満の企業】
  • 大学卒:100%-56.3%(3年以内の離職率)=43.7%
  • 高校卒:100%-61.9%(3年以内の離職率)=38.1%

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4.定着率の計算方法

離職率は先に述べたとおり「離職人数÷社員数×100」で計算できます。しかし離職率を使わなくても定着率を計算できるのです。定着率の計算方法は以下のようになっています。

(入社人数-退社人数)÷入社人数×100=定着率

たとえば入社人数が100人、退社人数が9人の場合、(100人-9人)÷100×100%=91%となり、定着率は91%です。

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5.定着率を高めるメリット

定着率を高めると、優秀な人材を確保し続けられるようになります。優秀な人材は生産性や利益の向上などをもたらし、運営が安定しやすくなるのです。

  1. 優秀な人材の確保
  2. 採用や教育のコストを削減
  3. 生産性の向上
  4. 社員のモチベーションアップ

①優秀な人材の確保

定着率を高めれば、優秀な人材も定着しやすくなります。優秀な人材が定着すれば、企業には高度なノウハウやスキルが蓄積されていき、業務の質向上が期待できるでしょう。

また定着率が高い企業では、社員のエンゲージメントが向上している傾向が見られます。リファラル採用(社員からの紹介による採用)の機会が増え、さらに自社にマッチする優秀な社員を確保しやすくなるのです。

②採用や教育のコストを削減

定着率を高めると、新規採用や教育にかかるコストを削減できます。年間の採用頻度が下がり、採用人数も少なくなるからです。

たとえば人材を採用した場合、中途採用ならば1か月、新卒ならば3か月ほどの研修期間が必要でしょう。この期間では被研修者のみならず、研修を担当する社員の人件費がかかります。定着率が高まれば、これらのコストを最小限に抑えられるのです。

③生産性の向上

定着率が高くなれば、研修に割く時間も減るため生産性が向上します。そのうえ、1年目より2年目の社員のほうが仕事に慣れるため、業務効率や生産性もアップします。

長期に定着している社員のノウハウを関連部門へ共有すれば、新規採用した人材の成長も早まり、さらに社員の生産性を向上できるでしょう。

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④社員のモチベーションアップ

定着率が高いと人員に余裕ができ、社員のモチベーションアップにもたらします。離職率が高いと、急に退職した人の業務を同じ部署やチームのメンバーが請け負わなければなりません。ときには残業や休日出勤もありえます。

定着率が高ければこのような退職が減るため、ひとりあたりの業務量が安定しやすいのです。ワークライフバランスを保てるようになり、仕事もプライベートが充実してさらにモチベーションが向上しやすくなります。

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6.定着率が低くなる理由

定着率が低くなる要因は、主に「労働環境」「業務内容」「人間関係」の3要素です。これらの要素について解説します。

  1. 労働環境の悪さ
  2. 給与や評価が不適正
  3. 業務のミスマッチ

①労働環境の悪さ

労働環境が悪いと定着率が低くなります。社員のストレスが溜まりやすくなり、離職を招きやすくなるからです。

たとえば残業や休日出勤が多い職場、職場の人間関係が悪い職場、雰囲気が悪い職場などで働く社員は、ストレスに耐えきれず退職する恐れもあります。定着率の向上には、安全かつ安心して働ける労働環境の整備が必要です。

ハラスメント

職場でハラスメントが発生すると、労働環境の悪化を招きます。ハラスメントとは「いやがらせ」のことで、パワハラやモラハラ、セクハラやマタハラなどのハラスメントが問題となっている職場も少なくありません。

ハラスメントで心理的苦痛を受けた社員が退職に至る事例も増加しています。定着率を上げるなら、ハラスメント防止策も設けておきましょう。

②給与や評価が不適正

「給与を適切に支払っていない」「適切な評価が行われていない」場合も、社員の定着率が低くなります。納得のいかない人事評価や業務に見合わない賃金を提示された社員はモチベーションが大きく下がり、もっと待遇のよい企業へ転職していくからです。

定着率が上がらない場合は、評価制度や報酬制度の見直しを推奨します。

③業務のミスマッチ

職務や業務と人材がマッチしていないと、定着率が低くなります。たとえばエンジニアとして中途採用で入社した社員に、経理や総務など事務仕事を任せるといったものです。

割り当てられた業務が自分の特性やキャリアに合わないと感じた社員は、自分が望む仕事ができる企業へ転職していくでしょう。

また割り当てられた業務を実際にやってみたところ思うようにいかず、自信をなくして退職するケースもあります。このような退職が起こりやすいのは、スキルや経験が不十分な入社1年未満の社員。こちらは教育やフォローなどで回避が可能です。

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7.定着率を上げる方法

定着率を上げる方法には、前項の「定着率が低くなる理由」で解説した3要素の改善が挙げられます。ここではそれぞれの取り組みを解説しましょう。

  1. 労働環境の改善
  2. 評価制度の見直し
  3. 適材適所な人員配置

①労働環境の改善

働きやすい労働環境を整備するために、現状に問題がないかを見直しましょう。見直すべきは次の項目です。

  • 勤務時間は適正か
  • 賃金や手当などの待遇は適正か
  • 働きやすい勤務形態か
  • 教育体制は充足しているか
  • 社内の人間関係に問題はないか
  • 上司の管理方法に問題はないか

どこに問題があるかを把握するには、社員アンケートが有効です。このとき匿名のアンケートを選ぶと、社員が本音で回答しやすくなります。

②評価制度の見直し

現行の評価制度を見直し、公平で納得のいく評価制度を整備します。見直すべきは次の項目です。

  • 現在運用している評価手法や評価基準、評価フローは適切か
  • フィードバックが適切に行われているか
  • 評価者のスキルが不足していないか
  • 評価と報酬のバランスは適切か

やはりこちらも社員アンケートを活用すると、問題点を特定しやすくなります。

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③適材適所な人員配置

適切な部署への配置は定着率の向上につながります。希望やキャリアプランに沿って個々の能力が発揮できる部署に配属すれば、社員のモチベーションが高まるからです。それにより定着率も向上します。

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8.定着率に関する企業の取り組み事例

定着率の向上は、多くの企業が掲げる課題。しかし実際に独自の取り組みで定着率を上げた企業の事例も多数あります。ここでは3社の事例を紹介しましょう。

  1. サイボウズ
  2. レオパレス21
  3. ホットランド

①サイボウズ

サイボウズは東京都に本社を置くIT企業です。インターネット黎明期から事業成長を続けていましたが2005年以降、離職率が急激に上がり、28%にまで達してしまいました。

そこでサイボウズは離職率を下げるために、社員が働きやすい環境作りに着手し、6年間の育休制度やテレワークを導入したのです。

2013年からは「ウルトラワーク制度」を整備し、100人100とおりの働き方ができることをコンセプトに徹底的に働きやすい環境を構築しました。結果、2018年には離職率5%という低水準を達成し、大幅に定着率を上げたのです。

②レオパレス21

レオパレス21は、不動産業のなかでも離職率が高い傾向にあり、2010年から2011年の大学から新卒社員は離職率15%と悪化。さらにリーマンショックによる不景気が影響して業績が伸び悩み、またしても離職者が続出したのです。

そこで2013年に離職率を改善すべく、社内改革を実施。問題となっていた時間外労働を削減し、有給取得率の向上を実現しました。また社員からの要望が多かった研修制度を強化したのです。

働きやすい環境を作り上げたレオパレス21は現在、離職率9%前後の低水準を実現しています。

③ホットランド

人気たこ焼き店の銀だこを運営するホットランドは、店舗拡大による人材不足に陥りますした。採用しても新人教育が上手くいかず、2016年には新入社員17人のうち5人が離職するほど悪化してしまったのです。

ホットランドが取り入れた離職防止施策は、店長とコンサルタントで新人社員の悩みや不満を聞くこと。退職が決定した社員とも面談したところ、フォロー不足と時間外労働が離職の原因と判明したのです。

出店計画や教育体制を見直したところ、2017年の新卒15人のうち退職したのは1人のみ。定着率が大幅に上がりました。