ジョブ型雇用とは? メリット・デメリット、メンバーシップ型雇用との比較、事例、導入の流れと適材適所実現のポイントについて

ジョブ型雇用とは「仕事」に「人」を当てはめるという考え方を基本とした雇用形態のことです。本記事では「ジョブ型雇用」について説明していきます。

1.ジョブ型雇用とは?

ジョブ型雇用とは「仕事(=ジョブ)に対して人材を割り当てていく」という考え方の雇用形式を指します。

ジョブ型雇用を採用する企業では、各ジョブに対して「ジョブディスクリプション(職務記述書)」が用意されています。そこには、

  • どんな業務を行うか(職務)
  • 労働条件はどんなものか(勤務地、勤務時間、報酬など)

が明文化して定められています。

メンバーシップ型雇用とは?

ジョブ型雇用に対して「人材に対して仕事を割り当てていく」という考え方の雇用形式を「メンバーシップ型雇用」と呼びます。

旧来、日本ではこの雇用形式が一般的で、潜在的なポテンシャルをもった(主に新卒)人材を「まず採用し」、それから仕事を割り当てて知識やスキルを身に着けてもらうことを前提としています。「人」が先に来るので業務内容は決まったものがなく、従業員ごとの役割の線引きはあいまいです。

OJT、ジョブローテーション、終身雇用、年功序列といった制度との相性がよいです。

タスク型雇用とは?

近年生まれた概念として「タスク型雇用」が挙げられます。ジョブより小さい単位の「タスク」をこなすための一時的な雇用関係を指す言葉です。

たとえば、Uberがわかりやすい例です。タクシードライバーというジョブから、「運転して人を運ぶ」というタスクだけを切り出しています。この場合、運転手はタスク型の雇用をされている、という見方ができます。

参考 濱口桂一郎氏 『メンバーシップ型・ジョブ型の「次」の模索が始まっている』リクルートワークス研究所

日本では一般的だったメンバーシップ型雇用から、海外で主流のジョブ型雇用の導入企業が徐々に増えています

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2.ジョブディスクリプション(職務記述書)とは?

ジョブディスクリプションとは「担当する業務内容や範囲、難易度、必要なスキルなどがまとめられた文書・書類」のことを指します。簡単にいえば「あなたの仕事は◯◯ですよ」と明文化されたもの。

ジョブ型雇用を基本とする海外企業では一般的に用いられています。しかし、日本企業では、メンバーシップ型雇用が主で各人の業務内容の線引きがあいまいなため、あまり使われることはありませんでした。

日本語では「職務記述書」ともいいます。

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3.ジョブ型雇用のメリットとデメリット

ジョブ型雇用のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

メリット

まずはジョブ型雇用のメリットからです。

企業のメリット

企業のメリットとして挙げられるのは「専門的なスキル/知識を持ったスペシャリストを採用できる」ことです。募集段階から職務内容を定義しているので、ある程度合致した人材の応募・採用が見込めます。

働く側のメリット

従業員のメリットとして考えられるのは以下です。

  • 専門的なスキル/知識を活かした業務ができる
  • 自分の専門分野をより深められる
  • ゴールが明確になっている
  • 異動や転勤などがない

デメリット

つぎにジョブ型雇用のデメリットについてです。

企業のデメリット

企業がジョブ型雇用を採用するデメリットとしては、

  • 契約外の業務を依頼できない/しにくい
  • 仕事が属人化しやすい
  • チームワークが醸成されにくいことも

働く側のデメリット

従業員側のデメリットは、

  • 新卒者は雇用されにくい
  • 仕事がなくなることがある
  • 日本ではまだキャリアアップの選択肢が少ない

ジョブ型雇用が注目されているからといってメリットばかりというわけではありません

4.ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い

日本では一般的となっているメンバーシップ型雇用のメリット・デメリット、ジョブ型雇用との違いについて見ていきます。

メンバーシップ型雇用のメリット

メンバーシップ型雇用のメリットにはどんなことが挙げられるでしょうか。

企業のメリット

メンバーシップ型雇用の企業側のメリットは、人員の計画が立てやすい(採用しやすい、従業員が離職しにくい、会社都合で異動できるなど)ことが大きいです。

働く側のメリット

  • 仕事がなくなってもほかの仕事が割り当てられる
  • 未経験でも(スキルがなくても)採用される
  • 教育/研修が整っている(ことが多い)

などが従業員のメリットとして考えられます。

メンバーシップ型雇用のデメリット

一方でデメリットについても見ていきます。

企業のデメリット

企業としては、ゼネラリストタイプの社員が増え、スペシャリストを育てにくいといったデメリットが考えられます。

働く側のデメリット

  • 会社都合の転勤の可能性がある
  • 異動の可能性があり特定分野のスキルを伸ばせない

などが従業員のデメリットとして考えられます。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用のメリット・デメリットを比較

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の特徴やメリット・デメリットを比較した表がこちらです。

参考 『ジョブ型雇用とは 職務明示し採用・配置、成果で評価』日本経済新聞 参考 『【図解】コレ1枚でわかるジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用』オルタナティブ・ブログ

それぞれにメリットやデメリットがあるので一概に「◯◯型がよい」とはいえません

5.ジョブ型雇用が注目される理由・背景

それではなぜジョブ型雇用が近年注目されているのか、について見ていきましょう。

コロナ禍の在宅勤務

コロナ禍に在宅勤務(リモートワーク)を一時的・継続的に導入する企業が増え、「不要な業務」が明確になってきました。売上や利益に悪影響があった企業をはじめ、業務や人事制度の見直しの気運が高まり、ジョブ型雇用への関心が高まってきています。

同一労働同一賃金

2020年4月から施行された「同一労働同一賃金」ルールも影響要因のひとつです。従来のメンバーシップ型雇用では終身雇用・年功序列を基本としているため、同一労働であっても勤務年数などによって賃金に違いが出てしまいます。この「ズレ」を是正のため、ジョブ型雇用への移行が推進される可能性があります。

日本型雇用習慣の時代とのズレ

上述した終身雇用や年功序列などをはじめとした「日本型雇用習慣」はすでに崩壊の一途をたどっています。トヨタ自動車の豊田社長が「終身雇用難しい」との発言があるなど、ジョブ型雇用などの代替手段への転換が社会的に求められているという背景もあります。

また、経団連でも2020年の春闘方針としてメンバーシップ型雇用の再検討を提言しています。

参考 「終身雇用難しい」発言の舞台裏 トヨタ社長が焦るワケ日経ビジネス

相次ぐ大企業での導入

さまざまな要因を受け、

  • KDDI
  • 富士通
  • 日立
  • 資生堂

など国内大手企業でもジョブ型雇用を一部導入する方針が発表されました。大手企業の決断により、今後中堅~小規模の事業者での導入が進んでいくことが考えられます。

従来のメンバーシップ型雇用が立ち行かなくなっている企業が目立つようになってきました

6.ジョブ型雇用の導入企業(日本)の事例

大手企業の「ジョブ型雇用」導入(予定)事例について紹介します。

KDDI

大手通信会社のKDDIは「働いた時間ではなく成果や挑戦および能力を評価・称賛し、処遇へ反映することを目的とした、新人事制度」を20年8月から導入するとしています。約1万3,000人の正社員を段階的にジョブ型の人財マネジメントに移行する予定とのことです。

参考 時間や場所にとらわれず成果を出す働き方の実現へ、KDDI版ジョブ型人事制度を導入KDDI

富士通

富士通では20年4月から幹部社員を対象にジョブ型の人事制度を導入。グローバルで統一基準の「ジョブ」をもとに報酬に反映するとのことです。段階的に一般社員もジョブ型への移行を目指します。

参考 評価・処遇と職場環境整備富士通

日立

日立製作所ではまず21年3月までにすべての職種においてジョブディスクリプションの整備を行い、以降ジョブ型雇用を本格導入。あわせて、デジタル人財採用・経験者採用・通年採用の強化を行っていくとのこと。

参考 ジョブ型人財マネジメントの実現に向けた2021年度採用計画について日立製作所

資生堂

資生堂では一足早く15年から管理職を対象にジョブ型の人事制度への移行を開始しています。21年1月から一般社員3,800人へと対象を拡大予定です。魚谷社長はジョブ型を『究極の適材適所』とも表現しています。

参考 『ビジネス特集 資生堂流人事の極意 脱・年功序列で会社が変わる?』NHK

ソニー

ソニーは12年からコース別採用を実施し、採用時から「ジョブ」の明確化を図っています。19年からは「初任給は横一線」という平等原則を廃止しました。

参考 『日立、富士通、資生堂…大企業ジョブ型導入で崩壊する新卒一括採用』BUSINESS INSIDER

すでに取り組みを始めている企業もあり、ジョブ型導入の流れは今後も勢いを増しそうです

7.ジョブ型雇用を導入するには?

ジョブ型雇用を導入する場合に、どのような流れで行っていくかについて見ていきます。

導入範囲の選定

導入範囲を選定します。どの部門で行うか、どの業務で導入するかを同時並行で検討します。

業務の分類・優先順位づけ

各部門で業務を分類します。

大きくわけて、

  1. 作業内容や時期が決まっている定型業務
  2. ミッションや時季に応じて最適な戦略・戦術を立案実行する不定型な企画型業務

の2つがあります。

①の定型業務の方がジョブ型への移行難易度が低いため、まずはこちらから段階的に導入するという方法もあります。

導入部門の選定

全社的に導入するのか、一部部門から導入するのか、一部部門ならどの部門から優先的に導入するかを検討します。

ジョブディスクリプションの作成

導入範囲が決定した業務から、業務内容や雇用条件を明文化したジョブディスクリプションを作成していきます。1つのジョブにつき1つのジョブディスクリプションが原則です。

すでに取り組みを始めている企業もあり、ジョブ型導入の流れは今後も勢いを増しそうです