人事は組織の要であり、組織運営に欠かせない重要な役割です。自社の人事がつらいと感じていることや悩みを放置することは、結果として組織全体の力の低下を招くことになりかねません。
それほどまでに組織に不可欠な人事ですが、仕事の性質上、つらいと思っている人も少なくないのが実情です。
今回は人事が仕事をつらいと思う理由やつらいと感じる仕事、その対処法や人事に向いている人・向いていない人の特徴などを紹介します。
1.人事が仕事をつらいと思う理由
人事が仕事をつらいと思う理由は、以下のようにさまざまです。
- 業務量が多い
- 苦情対応に追われる
- 嫌われ役になることがある
- 組織内で板挟みになりやすい
- 仕事のつらさを理解されにくい
- 仕事のモチベーション維持が難しい
- 機密事項が多い
まずは、人事が仕事をつらいと思う理由を詳しくみていきましょう。
業務量が多い
人事の業務は、採用から教育、評価から労務管理とさまざまです。近年、人材や働き方の多様化が進んだことで、人事の業務は高度化・複雑化しています。
従業員の画一的な管理も難しくなり、人事にも高度なスキルが求められるようになってきています。
とくに、新卒採用や新入社員の入社時期、人事考課や年末調整などの繁忙期は、さらに多忙となるでしょう。そうでなくとも、人事の業務は時期に関係なく継続的に発生し、かつ重要度が高いものです。
人事のリソースには限りがあるため、個々が業務に追われてつらいと感じてしまうことも多くあります。
苦情対応に追われる
人事は従業員からのさまざまな相談や苦情に対応しなければならない立場です。その中では、ハラスメントや労務問題など、デリケートな問題への対応も求められます。
相談や苦情に対する対応が遅いと離職に発展するリスクもあるため、そのプレッシャーは大きいでしょう。くわえて、通常業務と並行して対応しなければいけないため、人事側のリソース的にも厳しい状況となるケースも少なくありません。
さらに、相談や苦情の内容は他言できないものが多いため、自分の中に溜め込みすぎてつらいと感じやすい人もいます。
嫌われ役になることがある
人事の仕事は、人事評価や異動など、従業員のキャリアに関わる重要な決定に関わるものであり、ときには従業員にとって不利益な決定を下す必要があります。
とくに、リストラ対象となる社員を検討したり、その決定を伝えたりする際のプレッシャーとストレスは大きいものです。
また、人事が直接決定に関係していないことでも、人事から伝えなければならないことで、従業員からの不満や反発を受ける対象となることもあり、つらく感じてしまうケースは少なくありません。
組織内で板挟みになりやすい
人事は、経営層と従業員の間に立ち、双方の意見を調整する必要があります。ときには、相反する要求の間で難しい判断を迫られることもあるでしょう。
一方で、どちらの立場からも理解を得られず、孤立感を抱くこともあるかもしれません。
状況によっては上の立場の人に意見しなければならず、そうした状況にストレスを感じ、つらいと感じてしまう人もいます。
仕事のつらさを理解されにくい
人事の仕事は、成果が見えにくく、他部署から理解を得にくい性質があります。事務業務があったり、対顧客の業務ではないため、「楽な仕事」と思われがちで、業務の大変さをわかってもらえないことも少なくありません。
実際の業務量や仕事の大変さと外部からのイメージのギャップにより、適切なフォローが受けられず、つらいと感じてしまうケースもあるでしょう。
仕事のモチベーション維持が難しい
とくに、労務管理系の業務はルーティンワークが多く、単調に感じることがあります。また、業務柄、目標を数値化しにくく、成果がすぐに現れないため、達成感を得にくい点もつらいと感じるポイントの一つです。
さらに、組織を運用する側の立場にあることで、組織への貢献度を実感しにくいのもつらさを感じる原因となる場合があります。
それゆえ、仕事へのモチベーションを維持しにくく、その状態が長期化するとつらいと感じてしまいかねません。

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機密事項が多い
人事は、従業員の個人情報や給与情報など、機密性の高い情報を扱う職種です。情報漏洩のリスクがあり、常に慎重な対応が求められるため、ストレスやプレッシャーを感じやすいでしょう。
また、扱う情報の性質上、仕事のことを相談できる相手が少なく、悩みを抱え込みやすいのもつらさを感じやすい原因の一つです。
自分の中で悩みや不安が処理しきれなくなったり、課題が解決しない状態が続いてしまったりすると、つらくいと感じることがあります。
2.人事がストレスを感じる仕事
人事がとくにストレスを感じやすい仕事に、以下が挙げられます。
- 給与計算
- 人事評価
- 解雇者対応
- 悩み・苦情対応
どういった点にストレスを感じやすいのか、詳しくみていきましょう。
給与計算
給与計算は、従業員の生活に直結する非常に重要な業務です。計算ミスや遅延は、従業員の不信感や不満を招き、企業の信頼を損なう可能性があります。
「できて当たり前」「ミスや遅延は許されない」性質がとくに大きい仕事であり、ストレスを感じる人も多いでしょう。
さらに、期日も厳守しなければならないため、他にも多くの業務がある中でしっかりと対応していく必要があります。
最近では、給与計算はシステムやツールでの自動化が進んでいます。手軽に自動化できるようになった中でも、手作業で給与計算をおこなっている企業は、人事のストレスも高まりやすい可能性があるため要注意です。

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人事評価
人事評価は、従業員のキャリアや給与に大きく影響するため、公平性と透明性が求められます。評価基準やプロセスが不明確ですと、従業員の不満や不信感を招き、モチベーション低下につながる可能性があります。
人事は良い評価だけでなく、悪い評価もしなければならないため、その際にはとくにストレスを感じやすいでしょう。
適切に評価しても、従業員が納得できずに攻撃的な言葉をかけてくることがあるなど、精神的につらいと感じる場面もあるかもしれません。

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解雇者対応
解雇は、従業員にとって人生を大きく左右するものであり、精神的なショックを与える可能性が高いです。
解雇が人事の決定でなくても、従業員に伝達するのは人事の役割です。伝えたときに泣かれてしまったり、逆恨みされたりすることもあり、精神的なストレスが大きいです。
また、人事は解雇者との面談や手続きに最後まで対応する必要があります。その間に従業員にネガティブな対応をされることもあり、ストレスが蓄積されてしまうケースもみられます。

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悩み・苦情対応
人事は、人間関係のトラブルやうつ、ハラスメントなどさまざまな悩み・苦情の窓口となる部署です。感情的になっている従業員と接する機会が多く、人事担当者自身も感情的なストレスを感じやすくなります。
とくに、ハラスメントや差別など、デリケートな問題への対応は、精神的な負担も大きいでしょう。
苦情を申し立てた従業員と、苦情を申し立てられた従業員、双方の意見を聞き、双方に納得してもらえるような対応をすることは非常に困難です。
人事だけでは解決が難しい問題も多く、相手の力になれないことに対してストレスを感じてしまう人もいるかもしれません。
3.つらい人事の仕事への対処法
つらい人事の仕事に有効な対処法として、以下が挙げられます。
- 相談相手を見つける
- 業務効率化の工夫をする
- リフレッシュする
- 配置転換をおこなう
人事のつらさを放置してしまうと、人事の離職に発展してしまいます。人事は組織運営に欠かせない重要な存在であるため、正しい対処法を提示してあげることも大切です。
相談相手を見つける
人事の仕事を経験したことがある、あるいは同じ部署内の上司や先輩、同僚、他部署の信頼できる人に相談することがおすすめです。とくに、人事経験が豊富な人だと、具体的なアドバイスや共感を得られる可能性が高いでしょう。
ただし、人事部は機密事項が多い部署であるため、相談する相手、相談内容をよく考える必要があります。
また、友人や家族、カウンセラーなど、社外の相談相手を持つことも有効です。客観的な視点からアドバイスをもらえたり、気分転換になったりする効果に期待できるでしょう。
業務効率化の工夫をする
業務の多さがストレスやつらさの原因となっている場合、業務効率化により業務量を減らすことが有効です。
具体的には、業務フローを見直して業務のムリ・ムダ・ムラをなくしたり、システムやツールを導入して業務を自動化したりするといったことが挙げられます。
また、業務の優先順位づけをおこない、他の人に依頼するなどして柔軟に対応することもときには必要です。業務に余裕が持てることで精神的なストレスやプレッシャーの軽減に期待できるでしょう。

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リフレッシュする
有給休暇を取得し、思い切ってリフレッシュすることも大切です。十分な休息を取ることで、仕事の質や生産性の向上に期待できます。
つらいと感じた時に有給休暇が取れるよう、日頃から計画的に業務を進めることもポイントです。また、部署として有給休暇を取得しやすい雰囲気や環境を整えることも必要です。
配置転換をおこなう
特定業務に対するストレスが高かったり、人事に向いていないと感じたりする場合には、配置転換も有効な対処法です。
業務から一時的に離れたり、自分に適性がある部署に異動できたりすることで、ストレスやつらいと感じる原因を解消できる場合があります。
なかには自分でつらいことを自覚できないまま頑張り続けてしまう人もいるため、従業員から申し出がなくとも、上司から配置転換を提案することもときには必要です。

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4.人事が向いていない人の特徴
人事に限らず、仕事には向き不向きがあります。以下のような特徴の人は、人事に向いていない可能性が高い可能性があります。
- コミュニケーションが苦手
- 実力・成果主義
- 物事を白黒はっきりさせたい
コミュニケーションが苦手
人事の仕事は、経営層や従業員、求職者や外部機関など、多様な関係者とのコミュニケーションが不可欠です。
人間関係やパワハラなど、デリケートな相談を受けることも多く、相手の立場や状況を理解し、適切な言葉遣いや態度で接する必要があります。
コミュニケーション能力が低いと、誤解やトラブルを招きやすくなり、問題解決に貢献できなくなってしまいます。
一方、組織の中立な立場として、ときには意見を述べることも必要です。自分の意見を言えないがゆえに物事が悪い方へ進んでしまう可能性もあるため、人前でしっかりと物を言える強さも求められます。
実力・成果主義
人事の仕事は、従業員の育成や組織開発など、長期的な視点で行う業務が多くあります。そのため、短期的な成果や効率を重視する人は、達成感ややりがいを感じにくく、仕事へのモチベーション維持が難しい可能性があるでしょう。
また、人事の仕事は、他部署との連携や協力が不可欠なため、実力や成果を重視して個人プレーに走りやすい人も人事には向いていないといえます。

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物事を白黒はっきりさせたい
人事の仕事では、明確な答えが出せない問題や、相反する意見の調整など、曖昧さやグレーゾーンへの対応が求められます。
また、交渉や調整が必要なシーンも多く、妥協しなければならない場合も多くあります。白黒はっきりさせたい人は、こうした状況にストレスを感じやすく、柔軟な対応が難しいかもしれません。
5.人事が向いている人の特徴
一方で、以下のような特徴の人は、人事に向いている可能性が高いといえます。
- コミュニケーション力・交渉力がある
- 人間観察力が高い
- 口が固くて機密情報を守れる
- 情報収集力に長けている
人事への採用や配置の際は、人事が向いている人の特徴もチェックしてみてください。
コミュニケーション力・交渉力がある
人事は多方面の人と連携・調整を図ることが多い立場です。優秀な人材を確保したり、社内外で調整したりするためにも、コミュニケーション力や交渉力がある人に適性があります。
とくに、交渉力は良い人材を自社に引き入れたり、社内で戦略を実現したりするのに役立ちます。
また、人事は従業員の人生に関わる重要な交渉を行うこともあるため、相手の立場や状況を理解し、適切な言葉遣いや態度で接することも大切です。
人間観察力が高い
採用活動では、応募者の能力や性格を見抜き、自社に合った人材を見つける必要があります。面接や適性検査などを通して、応募者の潜在能力や適性を見抜く洞察力は、人事担当者にとって重要なスキルの一つです。
従業員のモチベーションや人間関係、組織全体の課題などを把握し、早急に対処するためにも必要な適性といえます。
口が固くて機密情報を守れる
人事の仕事は、従業員の個人情報や給与情報など、機密性の高い情報を扱います。情報漏洩のリスクを常に意識し、慎重な情報管理を行う必要があるため、口外できないことも多くあります。
従業員からの信頼を得るためにも、口が固く機密情報を守れるかは重要な要素です。
情報収集力に長けている
採用活動では、人材市場や業界動向に関する情報を収集し、効果的な採用戦略を立案する必要があります。また、従業員のニーズや不満、組織の課題などを把握するためには、社内の情報収集も欠かせません。
さらに、労働法や人事制度は常に変化するため、最新の情報を収集し、知識をアップデートするためにも、情報収集力に長けている人が人事に向いています。
6.人事の仕事のやりがい
人事はつらい仕事や大変なこともありますが、やりがいも大きい仕事です。見方を変えれば、以下のようなことにやりがいを感じられる人も人事に向いているといえます。
- 組織づくりに携われる
- 従業員の成長に伴走できる
- 会社の顔として活躍できる
組織づくりに携われる
人事の仕事は、組織づくりです。というのも、人事が扱う領域は自社サービスや製品そのものではなく、「人材」であるからです。
「人材」は、企業の重要な経営資源の一つであり、企業を成長させられるかは、いかにして人材を成長させられるかにかかっていると言っても過言ではありません。
自分が携わった組織が成長していく姿を間近で見ることができるのは、大きな達成感ややりがいにつながるでしょう。
従業員の成長に伴走できる
研修や教育制度を通して、従業員のスキルアップやキャリアアップを支援できます。従業員が成長していく姿を間近で見ることができ、自分の仕事が人の成長に貢献していることを実感しやすいでしょう。
人事の成果は組織や従業員に直結するため、仕事の影響度が大きいこともやりがいを感じられる要素の一つです。
会社の顔として活躍できる
人事は、採用活動や広報活動を通して、企業の魅力を社会に発信する役割もあります。とくに、採用においては会社の代表として候補者と関わる立場です。
候補者が最初に接する会社の人でもあるため、相手に与える印象は大きいです。応募のきっかけが人事の人柄というケースも珍しくなく、自分の存在が誰かのきっかけになることもある点はやりがいにつながります。
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