解雇とは?【4種類の解雇】懲戒処分の内容、解雇の流れ

ニュースや新聞で度々目にする「解雇」。仕事をする人としては何かと気になりがちな言葉ですが、「解雇」の定義とは一体どんなものか、よく分からないという人も多いでしょう。

ここでは、

  • 解雇の定義
  • 解雇の種類
  • 具体的な処分に
  • 解雇への流れ
  • 解雇予告
  • 解雇制限

などのテーマを軸に「解雇」について掘り下げます。

1.解雇とは?

解雇とは、会社と労働者の間で結んでいる労働契約を、会社側の意思や何らかの事情によって一方的に解消すること。雇用者からの事前の申告により雇用契約が終了するケースは退職といいます。

労働契約は、定められた雇用期間の満了や企業の倒産によって解消しますが、雇用の期間を定めていない場合、会社側の意思表示によって任意に解消できます。

解雇を英語でいうと

英語では解雇を「layoff」「dismissal」「discharge」「firing」などといいます。

解雇とは会社側の一方的な意思表示による労働契約の解除のこと。労働者からの申告で雇用契約を終了させることは退職といいます

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2.解雇の種類

解雇にはいくつかの種類があります。それぞれについて見ていきましょう。

普通解雇

普通解雇とは懲戒解雇・整理解雇以外の解雇の総称のこと。一般的に普通解雇は、会社側と雇用者の信頼関係が破綻したことによる労働契約の解除という意味で使用されます。

無断欠勤や遅刻が多いなどの労働者の勤務態度や、職務を遂行する能力の不足、業務命令違反、病気やけがによる就業不能など労働者の責任を理由に行われる解雇がこれに当たります。普通解雇は懲戒解雇よりも一段軽い制裁と位置付けられる場合が多いです。

整理解雇

整理解雇とは業績が悪化した企業が事業継続の困難を理由に経営の改善策として雇用者を解雇すること。市場経済の景気の悪化、経営不振による人員整理がこれに当たり、通常、複数の労働者が同時期に解雇されます。

現在の労働基準法では、労働者を解雇するには「客観的に見て合理的な理由が必要」です。また、社会通念上相当だと認められない解雇は無効とされます。

そのため整理解雇には次の4つの要件が必要とされているのです。

整理解雇における4つの要件

整理解雇が有効と認められるには、「整理解雇の4要件(4要素)」が必要です。

  • 整理解雇に客観的な必要性がある
  • 解雇を回避する努力義務を果たしたこと
  • 解雇の人選に妥当性がある
  • 雇用者への説明が十分行われている

諭旨解雇

諭旨解雇とは不祥事を起こした雇用者のそれまでの功績や将来などを考慮し、懲戒解雇という重い処分を避けるときに行われる解雇のこと。

まずは退職届や辞表の提出を提案し、それでも退職届や辞表が提出されなかったときに行う解雇のため、懲戒解雇よりは少し穏やかな印象です。

懲戒解雇に次ぐ重い処分ではありますが、諭旨解雇の場合は退職金が全額支払われるケースもあります。

懲戒解雇

解雇の中で最も厳しい措置とされるのが懲戒解雇。窃盗や横領、傷害など、会社の秩序を著しく乱して、大きなダメージを与えた際などに科すことができる制裁罰のひとつです。

簡単にいうと「クビ」ですが、実は懲戒解雇というものは労働者に一生ついて回るもので再就職の際に大きな不利益をもたらします。懲戒解雇になった場合、次に勤務する会社でその旨を申告する必要があるのです。

また通常、退職金は全額支払われない場合が多く、支払われても大幅に減額されます。

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懲戒解雇とは、労働者に科されるペナルティの中で最も重い処分です。 懲戒解雇の意味 懲戒解雇の理由 懲戒解雇の要件 懲戒解雇の判断基準 懲戒解雇の手続き 懲戒解雇を言い渡された際に残っていた有給休暇に...

解雇にも種類があり、それぞれの理由によって「普通解雇」「整理解雇」「諭旨解雇」「懲戒解雇」の4つに分かれます

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3.懲戒処分とは?

労働者を処分する「懲戒処分」は全部で6種類です。労働契約法第三章第15条に該当します。

  1. 譴責(けんせき)
  2. 減給
  3. 出勤停止
  4. 降格
  5. 諭旨解雇
  6. 懲戒解雇

①譴責(けんせき)

職務上の義務違反について口頭・文書で警告し、将来の職務姿勢を戒める処分のこと。いわゆる始末書の提出が求められ、労働者は不正や過失、職務上の義務違反などの行為を反省・謝罪し、将来同じ間違いを起こさないと誓約します。

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②減給

減給とは正式に「賃金減額」を指し、会社が雇用者との間で労働契約の中で交わした賃金の一部を減額して支給する対応のこと。

労働基準法第91条により、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の1/10を超えてはならない」と定められています。

③出勤停止

労働者の企業秩序違反行為に対する制裁処分として行われ、出勤が禁止されます。自宅謹慎といわれることもあります。

労働者の就労を一定期間禁止するため、その期間は賃金の支給は行われません。ただし就業規則の懲戒規定にその旨が記載されていることを条件とします。

④降格

降格とは、労働者が会社に不利益を生じさせた場合に会社内の地位を下げるという措置のこと。セクハラなどの不祥事によって降格などさまざまなケースがあります。こちらもあらかじめ就業規則に懲戒処分として降格の可能性があることを記載する必要があります。

⑤諭旨解雇

不祥事を起こした雇用者のそれまでの功績や将来などを考慮し、懲戒解雇という重い処分を避けるときに行われる解雇のこと。

⑥懲戒解雇

窃盗や横領、傷害など、会社の秩序を著しく乱して、大きなダメージを与えた際などに科すことができる制裁罰のひとつです。解雇の中では最も厳しい措置とされます。

労働者を処分する懲戒処分は全部で6つ。ニュースや新聞で報道される「懲戒解雇」はその中でも最も厳しい措置です

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4.解雇を行う際の流れ、ステップ

解雇が行われる際、具体的にどのような流れとなるのでしょう。一般的な解雇の流れを見てみます。

  1. 退職勧奨
  2. 不当解雇になっていないか確認
  3. 解雇について関係者と共有
  4. 解雇理由をまとめる
  5. 解雇通知書の作成
  6. 解雇について通知
  7. 解雇通知書を渡す
  8. 荷物の整理
  9. 解雇の発表
  10. 各種手続き

①退職勧奨

会社が労働者に「自ら退職してほしい」と呼びかけを行うのが「退職勧奨」です。雇用主が一方的に労働者を辞めさせるのではなく、労働者自身がこれに応じた場合に労働契約が終了して退職するというものです。

この場合、少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。退職勧奨はあくまで労働者に退職を促す行為であるため、原則として労働法による規制はありません。

②不当解雇になっていないか確認

会社は労働者の解雇を行うにあたって、解雇が「不当解雇」に該当しないか、確認しなくてはなりません。不当解雇とは、労働基準法や就業規則の規定を守らずに、会社側の一方的な都合で労働者を解雇すること。

たとえば「労働者の国籍または社会的身分を理由とした解雇」「解雇予告を行わない解雇」「解雇予告手当を支払わない即時解雇」「労働者が女性であることを理由とした解雇」などが挙げられます。

③解雇について関係者と共有

会社が労働者を解雇するにあたって「不当解雇トラブル」のリスクがあります。解雇を考える場合は、当該雇用者はもちろん、その上司や上層部に対しても解雇について内容を共有しましょう。

また会社が不当解雇トラブルのリスクを避けるには、「解雇前に労働者へ退職勧奨する」ことも非常に有効とされています。

④解雇理由をまとめる

会社が解雇を実施する際、当該労働者の上司から日頃の職務姿勢などのヒアリングを行い、解雇する理由を的確にまとめます。これによって、解雇したい労働者への説得がしやすくなるのです。

労働者によっては解雇理由に納得いかず、裁判を起こす可能性があります。そのため会社側としてなぜその労働者を解雇したいのかという合理的な理由を、本人に伝える必要があるのです。

⑤解雇通知書の作成

会社が労働者との雇用契約を解除することを本人へ予告するための文書を解雇通知書といいます。解雇を実施するには、就業規則に定められた解雇理由を解雇予定の日付と併せて解雇通知書に記し、解雇する30日より前に労働者に渡すことが必要です。

解雇通知書は失業保険の受給においても重要な役割を持ちます。もし解雇通知書なしに解雇が実施された場合、労働者の請求があれば会社側は可及的速やかに解雇通知書を発行しなくてはなりません。

⑥解雇について通知

会社側は解雇通知書を作成後、労働者に手渡します。この際、解雇通知書に記載される解雇日は、解雇通知書を手渡す日の30日以上前でなくてはいけません。

会社を辞めるといっても「解雇」と「退職」では労働者に生じる再就職への影響が異なります。解雇にはさまざまなリスクが生じるため、解雇通知書を手渡した後でも改めて退職勧奨をして、労働者が納得しての退職に導くほうがよいでしょう。

⑦解雇通知書を渡す

解雇対象の労働者に能力不足、無断欠勤、勤務態度不良などといった解雇理由を記載した解雇通知書を手渡し、サインを促します。

上記の通り「解雇」と「退職」ではその後の再就職への影響が異なるため、労働者が退職勧奨に応じる場合は、退職届を提出してもらうよう働きかけるのが望ましいでしょう。また会社が説明する解雇理由が就業規則のどの条文に該当するのかも確認します。

⑧荷物の整理

労働者が解雇に合意した場合、最終出社日までに私物の整理をしてもらうよう促します。仕事で使用するファイルやパソコン内の整理についても同様です。また社員証やID、鍵、労働者の名刺や取引先の名刺の返却義務もあります。

最終出社日に向けて仕事の引き継ぎなどで労働者が多忙になる場合もありますので、労働者が解雇を合意した際は、早急に私物の整理を促しましょう。

⑨解雇の発表

対象となる労働者の解雇が決定したら、会社側は社内で「誰がいつ解雇になったか」を発表します。しかし、懲戒処分の社内公表は無制約に許されるものではありません。そのため、対象者の名誉などに配慮が求められるのです。

労働者に対して懲戒処分を行った旨を、うまく社内で公表すれば、その後の再発防止や企業秩序の回復にも役立つでしょう。

⑩各種手続き

労働者を解雇した場合、会社側では社会保険や雇用保険の資格喪失届の提出、住民税天引きの変更手続きなどを行います。解雇などの会社都合による退社に対しては、手続き終了から8日目で失業給付が支給されるのが一般的です。

「解雇」よりも「退職勧奨」による退職のほうが労働者のその後の再就職に有利になります

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5.解雇予告と解雇予告手当

解雇は労働者の生活に大きな影響を及ぼすものですので、突然の解雇による雇用者の生活の困窮を防がなくてはなりません。そこで定められているのが、労働基準法における解雇の手続きです。

やむを得ない事情により労働者を解雇したい場合、会社側は対象者に最低でも30日前に解雇の旨を伝えなくてはなりません(労働基準法第20条1項)。これを解雇予告といいます。

口頭での解雇予告が可能なケースもありますが、中には業務上のけがや病気で休業している期間などで解雇できないケースもあります。

解雇予告手当とは?

解雇予告手当とは、解雇予告の日数が30日に満たない場合、会社側が労働者に支払う不足日数分の平均賃金のこと。

解雇予告手当の計算方法

解雇予告手当の金額は、1日の平均賃金に、30日から解雇日を引いた日数を掛けて算出します。

「平均賃金1日分」×「解雇日までの期間が、30日に足りなかった日数」

たとえば、解雇日の10日前に雇用者に解雇を予告した場合には下記の計算式となるのです。

【直前3カ月に支払われた賃金総額÷3カ月の総日数】×(30日-10日=20日)

解雇予告手当を支給しなくてもよい場合

労働基準法第21条により、下記のようなケースの場合には、解雇予告手当の支給は必要ないとされています。

  • 日雇いでの労働者(雇用期間が1カ月未満)
  • 2カ月以内の期間を定めて雇用される労働者(期間内)
  • 季節的業務に4カ月以内の期間を定めて雇用される労働者 (期間内)
  • 試用期間中の労働者(14日未満)

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6.解雇制限とは?

解雇制限とは、労働者の生活の困窮を防ぐために、下記のケースのような特定の期間について解雇を一時制限するもの

労働基準法第19条に定められている「特定の条件に該当する労働者の解雇を制限する期間」を指します。

  • 労働者が業務上の負傷・病気になった場合に、その療養のために休業する期間及びその後30日間
  • 産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間

解雇制限の除外

会社側は、打切補償を支払う場合や天災事変その他やむを得ない事由などにより事業の継続が不可能となった場合には、解雇制限に該当する労働者を解雇できます。ただしその事由について、所轄労働基準監督署長の認定を受ける必要が義務付けられているのです。

打切補償とは、業務上のけがにより療養している労働者が療養開始後3年を経過しても治らない場合、会社がその後の療養補償などの補償義務を打ち切る代わりに、平均賃金の1200日分を打切補償として支払い、労働契約を解除するもの。

解雇の対象となる労働者が生活に困ることのないよう、労働基準法第19条では一時的に解雇の制限をするよう定めています