HRテック(HRTech)とは? 種類や導入効果、比較のポイントを解説

HRテック(HRTech)とは、テクノロジーを活用して人事業務の効率化や質の向上を支援するツール・システム、サービスです。ひとくちにHRテックといっても、その種類やできること、効果はさまざまです。

今回はHRテックについて、普及の背景やHRテックで効率化できる領域、導入方法や導入時の比較ポイントなどを詳しく解説します。

1.HRテック(HRTech)とは?

HRテックとは、人事領域にテクノロジーを活用し、人事・採用・育成などの業務効率化や人事戦略の実現を支援するツールやシステム、サービスの総称です。HRテックは「Human Resource」×「Technology」を組み合わせた言葉であり、読み方は「エイチアールテック」です。

人事領域にテクノロジーを活用する施策そのものを「HRテック」と呼ぶケースもあります。

現代はビジネス環境の激しい変化や、労働人口の減少、採用難易度の上昇により、人事担当者のリソース不足が課題になっている企業も多いでしょう。くわえて、そうした状況下でもアナログで行われている人事業務は少なくありません。

人事業務は、企業の運営の根本にあたる重要なものです。コア業務に集中できる環境を整えるには、テクノロジーを活用して定型業務の自動化や効率化の必要があります。AIやIoT、ビッグデータやクラウドなどの最新技術が活用されているHRテックは、人事業務の自動化・効率化を実現する手段の一つとなっています

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2.HRテックが普及した理由

HRテックが普及したのは2010年代後半ですが、近年その注目度はさらに高まっています。その背景を詳しくみていきましょう。

テクノロジーの発展と普及

AIやビッグデータの解析、クラウド技術など、近年は最新技術の発展が目覚ましい状況にあります。

テクノロジーの発展により、これまで人が対応してきた業務の代替だけでなく、業務の質向上や効率化が可能となりました。テクノロジーを使って業務を改善したり、質を高められたりするのであれば、利用しない手はありません。

なお、HRテックのように「◯◯×Tech」は近年のトレンドでもあります。下記のように、世の中にはさまざまな「◯◯×Tech」が存在します。

金融 FinTech(Finance×Technology)
教育 EdTech(Education×Technology)
不動産 ReTech(Real Estate×Technology)

日々テクノロジーは進化しているだけでなく、社会にどんどん普及しています。テクノロジーを活用する企業が増える環境では、企業競争に打ち勝つためにも同様のテクノロジーを活用しなければなりません。

企業運営の重要な部分である「人事領域」も例外ではなく、テクノロジーを活用して業務効率や戦略性を高めることが重要視されています。

人事業務の高度化・複雑化

少子高齢化による労働人口の減少や働き手の価値観や働き方の多様化、終身雇用形態の実質崩壊など、近年の人事領域の変動は凄まじいものです。

雇用形態や働き方の多様化、雇用の流動性が高まったことで、従来のような均一的な管理が難しくなり、人事部門の高度化が進んでいます。現代の人事はただ事務的に採用し、管理するのではなく、高度かつ戦略的に取り組む必要性が高まっているのです。

人事は経営資源の中でも重要な「人材(人的資源)」を扱う部門であり、企業が保有する経営資源を把握し、効率的に活用することが求められます。経営資源の有効活用にはデータ活用が不可欠です。HRテックでは膨大なデータの蓄積・分析が可能となるため、現代の人事部門に欠かせないITインフラとなりつつあります

労働力の不足

業務が高度化・複雑化する人事部門ですが、労働力は不足する一方です。日本は少子高齢化によって労働人口が減少の一途をたどっておりり、業界や業種、職種に限らず、全体的な労働力不足に直面しています。

HRテックは高度な人事業務を可能にするだけでなく、労働力不足の解消や緩和の効果に期待できます。

高度かつ戦略的な人事が求められているなか、人事担当者が注力すべきは人材採用や配置、育成といったコア業務です。HRテックにより人事労務業務のような定型業務の自動化や効率化が実現すれば、コア業務に割ける時間が増えるでしょう

リソースを最大化・有効活用するといった点でもHRテックが普及しています。

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3.HRテックの市場規模

HRテックの市場規模は急速に拡大、今後もその傾向は続くことが予想されています。

デロイト トーマツ ミック経済研究所の、「HRTechクラウド市場の実態と展望 2024年度版」によると、「採用管理」「人事・配置」「育成・定着」「労務管理」の4分野における、HRテックのクラウド市場規模は直近3年間で以下のように変動しています。

2022年度 前年比136.9%の804億円
2023年度 前年比134.4%の1,077億円
2024年度 (見込み)前年比同128.5%の1,385億円

HRテックのクラウド市場は2025年度以降も継続的な成長が見込まれ、2028年度までの中期展望としては25~30%増の成長率で推移していくと予測されています。

近年、「採用管理×タレントマネジメント」や「人事システム+経費精算/勤怠管理」など、複数プロダクトを絡めた人事トータルソリューションとしてのHRテックが拡大。このようなHRテックシステムの複合化が、市場の伸長に貢献していると考えられます。

また、市場規模拡大の要因には、「人的資本経営」やそれを実現するための「タレントマネジメント」の需要拡大も大きく影響しています。さらに、人事業務のオンライン化もHRテックの成長要因の一つです。

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世界規模で見てもHRテックの市場規模は拡大

HRテックの市場規模は世界的に見ても拡大しており、国内と同様に今後もその傾向が続いていくことが予想されます。

グローバル市場調査会社「Fortune Business Insights」では、2023年の世界のHRテック市場規模を376 億 6000 万米ドルと評価。2024年は404 億 5000 万米ドル、その後2032年までに818 億 4000 万米ドルに成長すると予測されています。企業全体の急速な技術進化により、市場拡大の機会は十分にあるとの見解が得られています。

世界的にHRテックの市場規模が急速に拡大した背景には、新型コロナウイルスのパンデミックによる、労働市場の急速な変化が挙げられています。コロナ禍ではリモートワークなどが普及し、企業は従業員の要求に応えるための新しい環境や手法の採用を余儀なくされました。時代に合わせた働き方を実現するため、HRテックが手段の一つとなり、市場の成長機会が生まれたと考えられます。

さらに、生成AIの進化により、HRテックでも革新的なソリューションが生まれています。HRテックベンダーにとって大きなチャンスが生まれ、HRテックの可能性が広がったことも、HRテックの市場規模拡大に大きく影響しているでしょう。

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4.HRテックが効率化する領域と業務

組織や人に関する領域であればHRテックの範囲内です。では、具体的にはどの人事領域でどのような業務を効率化できるのでしょうか。

ここでは、HRテックを活用できる主な領域と具体的な業務をご紹介します。

労務管理

労務管理は人事領域の基本業務です。事務作業が多く、これまで紙でデータを管理してきた業務も少なくありません。HRテックの普及により、業務のデジタル化がとくに進んでいる領域です。さらに、定型業務が多いため、HRテックによる効率化の恩恵が多い領域でもあります。

HRテックの導入によって、計算の自動化による業務効率化やヒューマンエラーの軽減、多様化する働き方への対応が可能となります。

HRテックで効率化できる業務例

  • 給与計算
  • 勤怠管理
  • 各種手続き(入退社の雇用契約、年末調整など)

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採用管理

採用管理に特化したHRテックも多く、主要分野でもあります。

企業が成長し続けるには、人材確保が不可欠です。労働人口の減少とともに、雇用の流動性が高まっている現代では、採用が企業の未来を左右するといっても過言ではありません。

採用では単に面接するだけでなく、採用計画の策定や求人の作成・掲載、内定者フォローなど業務は多岐にわたります。人事戦略の一つでもあるため、戦略性が重要です。データの活用が良い人材の採用につながることからも、HRテックの活用が欠かせません。

HRテックで効率化できる業務例

  • 採用プロセス
  • 応募書類の管理
  • 採用に関わるコミュニケーション
  • 入社手続き

人事評価

人事評価は、従業員の成長や経営目標の達成に欠かせない領域です。HRテックの活用により、評価者の主観を排除した公正な評価や、日常的には目が行き届かない従業員の細かい行動や目標達成の進捗なども把握できるようになります。

人事評価の結果から昇進や昇格、人材配置を検討することもあるため、評価結果を次のアクションにつなげるためにも役立ちます。

HRテックで効率化できる業務例

  • 目標管理
  • 評価プロセス
  • 評価データの収集・分析
  • 評価フィードバック
  • 評価結果の活用

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人材育成

人材は育成により、パフォーマンスを高めていくことが重要です。従業員の成長の鈍化は、企業の成長の停滞につながりかねません。そして、企業の将来を担う幹部候補の育成も重要な取り組みです。

人材は、経営戦略や目標の達成に必要なスキルや能力を明確にし、従業員の個々のスキルや適性に合わせて計画的に育成していく必要があります。

現代は終身雇用制度の実質崩壊に伴い、年功序列の風潮が薄れています。人材育成も画一的に行うことが難しくなり、従業員個々のパフォーマンスを高めるには、それぞれにあった育成が必要です。そのためには、従業員に関する詳細なデータが必要であり、多くの情報を一元化・蓄積できるHRテックが役立ちます。

HRテックで効率化できる業務例

  • 育成進捗の管理
  • 個別の学習プランの作成
  • 育成効果の検証・分析
  • 研修の実施

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人材マネジメント

育成により人材のパフォーマンスを高められても、有効活用できないと企業の成長にはつながりません。限られたリソースを有効活用することが効率的な成長の鍵といえます。そこで重要となるのが、人材マネジメントです。

具体的には、人材の適材適所への配置、エンゲージメントの向上などにより、従業員が持つパフォーマンスを最大化する取り組みを行います。

人材マネジメントの手法として近年注目を高めているのが、タレントマネジメントです。企業が保有する人材の能力や経験、適性などの情報を一元管理し、戦略的に活用するマネジメント手法です。

人材を有効活用するには、まず人材データを可視化する必要があります。企業規模が大きいほどその手間は大きく、人材の成長に伴いデータは常に変化します。流動性が高い情報であるため、HRテックにより常に最新の情報に更新できる環境が必要です。

組織・人材の状況が可視化されるため、経営判断の迅速化にも役立ちます。

HRテックで効率化できる業務例

  • 人材情報の管理・分析
  • 配置・異動の検討
  • エンゲージメント調査

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5.HRテックの導入方法

HRテックの導入方法を下記4つのステップごとに解説していきます。

  1. 導入目的の明確化
  2. 業務の棚卸しと仕分け
  3. 最適なサービスの検討
  4. 導入と効果検証

①導入目的の明確化

まずは導入目的を明確にしましょう。

HRテックは人事領域に包括的にアプローチできるものもあれば、採用や評価など一部の領域に特化したものとさまざまな種類があります。サービスやシステムの種類が多岐にわたるため、最適なものを導入するためにも目的が重要です。自社の課題やその優先度をふまえ、導入目的を検討していきます。

目的とあわせて、HRテックの導入後の運用計画やロードマップを作成できると良いでしょう。3年後、5年後といった中長期的な目線から、HRテック活用により実現したい理想の組織の姿をイメージして作成します。先をイメージしてサービスを導入できないと、課題を解決できないおそれがあります。

②業務の棚卸しと仕分け

目的に合わせて導入すべきHRテックのイメージがつけば、その領域における業務の棚卸しと仕分けを行います。

HRテックはあらゆる人事領域で導入できますが、課題の優先度に応じて領域が限定される場合もあります。また、HRテックの導入・利用にはコストがかかるため、コスト面からHRテックの導入範囲を限定する場合があるかもしれません。

具体的なソリューションを検討するには、業務の棚卸しによりHRテックで代替・効率化できるものを洗い出すことがポイントです。これを機に形骸化している業務を削減することで、さらなる効率化につながるでしょう。

③最適なサービスの検討

代替・効率化したい業務が明確になれば、それを実現できる最適なソリューションを検討します。

たとえば、採用面でもHRテックにはさまざまなサービスがあります。導入目的にマッチし、代替・効率化したい業務に適した機能があるサービスを選ぶことがポイントです。

本格的に導入する前にトライアルを実施できると良いでしょう。トライアルの有無はサービスによりますが、トライアル可能であれば実際の使用感や有効性がわかります。

導入してから使いにくいことがわかったり、必要な機能がなく早期に解約したりといったトラブルを回避できます。

④導入と効果検証

トライアルやスモールスタートを経て正式な導入が決定すれば、社内に周知後、運用を開始します。

全社的に導入することで、初期段階では見つからなかった課題も出てきます。また、HRテックの導入・運用にはコストがかかっているため、その有効性を判断するためにも効果検証が必要です。

課題の発見やHRテックの有効性を判断するための効果検証を定期的に実施し、必要なところは見直しや改善を行うことがポイントです。導入から1年で効果が実感できない場合は、機能の追加やサービスの変更も検討しましょう。

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6.HRテックを比較する際のポイント

HRテックにはさまざまなサービスがあります。目的にマッチしたサービスが複数ある場合、以下のようなポイントから比較検討することがおすすめです。

  • 導入形態
  • 料金
  • 機能
  • 使いやすさ
  • 他サービスとの連携性
  • サポート体制
  • セキュリティ

それぞれどういったポイントを比較すべきか詳しくみていきます。

導入形態

HRテックの導入形態には「クラウド」と「オンプレミス」の2種類があります。

クラウドはインターネット経由でサービスをインストールし、オンプレミスは自社にサーバーを構築しサービスをインストールする形態です。ベンダーが提供するサーバーを使用するか、社内に構築した独自のサーバーを使用するかに違いがあります。

クラウド オンプレミス
メリット ・導入費用が安い
・導入スピードが速い
・運用・保守・メンテナンスが不要
・拡張性が高い
・常に最新機能が利用できる
・カスタマイズ性が高い
・セキュリティレベルが高い
デメリット ・カスタマイズ性が低い
・セキュリティへの懸念あり
・導入費用が高い
・導入に時間がかかる
・自社で保守・運用が必要

メリット・デメリットをふまえて、クラウド・オンプレミスに向いている企業の特徴は、以下のとおりです。

クラウドが向いている企業 オンプレミスが向いている企業
・企業規模がそこまで大きくない
・コスト重視
・すぐに利用したい
・運用・保守のリソースがない
・事業が変動しやすく拡張性が必要
・企業規模が大きい
・機密性の高いデータを扱う
・ITの専任担当者が確保できる

サービスによってクラウドとオンプレミスを使い分ける、ハイブリッド構成も可能です。

料金

HRテックの導入には、初期費用と月額料金がかかります。コストを抑えたい場合にはクラウドがおすすめですが、企業規模が大きくなり利用者が増えると月額料金が高くなる傾向にあります。

オンプレミスは初期費用が高額ですが、中長期的に利用できるHRテックが構築できれば費用面でメリットがあります。

ただし、高額なHRテックだからと、高い効果を得られるとは限りません。ある程度の予算を決め、その範囲内に収まるかも重要なポイントです。

機能

HRテックによって、備わっている機能はさまざまです。たとえば、人事データを管理できるHRテックの導入を検討している場合、データを保管するだけでいいのか、分析やレポート抽出まで対応してほしいのかによって、選ぶサービスが変わってきます。

目的や解決したい課題、代替・効率化したい業務に合わせ、必要な機能を備えているかをしっかりとチェックすることが大切です。

事業規模・内容が変動しやすく、業務が多様化しやすい企業は、機能の拡張性についても確認しておくと良いでしょう。

使いやすさ

料金や機能に納得できるサービスが見つかっても、使いにくいHRテックは業務効率化どころか、逆効果です。

HRテックによっては現場の従業員も利用するため、誰もが使いやすくわかりやすい操作性やデザインであるかも重要なポイントです。とくに、操作性の高さはHRテックの導入の成功・失敗を大きく左右します。

直感的に操作できるものなら、導入から扱いに慣れるのも早く、HRテック導入後に効果が出るスピードにも期待できます。

他サービスとの連携性

すでに利用しているHRテックや基幹システムがある場合、それらと連携できるかもチェックすべきポイントです。連携性が高いサービスであれば、データの一元管理やさらなる業務効率化が可能となります。

導入段階で連携したいツールがなくても、この先もHRテックの導入を検討している場合には、連携性の高いサービスを導入することがおすすめです。

サポート体制

導入時や運用中にわからないことが出てきたり、トラブルが発生したりする可能性があります。このとき、ベンダーから迅速なサポートが受けられるかも重要なチェックポイントです。

運用中にトラブルが発生し、対応に時間がかかると、業務に支障が出てしまうおそれがあります。サポート対応の手段やヘルプデスクの有無など、サポート体制もしっかりと確認しましょう。

ベンダーによっては導入や運用時のサポートだけでなく、自社に合った有効な活用方法を支援してくれます。さらに、勉強会やセミナーを実施しているなど、幅広いサポートを提供しているところもあります。

セキュリティ

HRテックでは、社内の個人情報や機密情報を扱う場合があります。万が一情報が漏えいしてしまうと、企業の信頼を損ねかねません。以下のようなポイントから、セキュリティに信頼性があるかをチェックすることが大切です。

  • セキュリティ認証取得
  • SSL暗号化通信
  • データバックアップ
  • アクセス権限管理

外部からのサーバー攻撃といったリスクに対応できるかだけでなく、社内での情報の操作や閲覧に制限がかけられるかもチェックしましょう。

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7.HRテック導入の注意点

HRテックを導入する際、以下のポイントに注意が必要です。

  • 目的が不明瞭なまま導入しない
  • 中長期的な視点で運用する
  • 社内の理解を得る
  • HRテックに依存しない

目的が不明瞭なまま導入しない

HRテックを導入したからといって、何らかの成果が出るわけではありません。「トレンドだから」「他社も使っているから」といったような不明瞭な目的で導入しては、活用しきれずに失敗に終わってしまうでしょう。

HRテックの導入が目的ならないよう、HRテックを導入して「どうなりたいか」を明確にすることが大切です。

中長期的な視点で運用する

HRテックはデータを蓄積して分析・活用したり、扱いに慣れて業務に浸透したりしてこそ、効果を発揮するものです。

導入後は慣れない操作などで、一時的に生産性が低下する可能性もあるでしょう。課題もすぐに解決されるわけではないため、中長期的な視点で運用することがポイントです。

運用していく中で定期的に効果検証し、本当に有用かをしっかりと確認しましょう。

社内の理解を得る

HRテックによっては、現場の従業員も利用します。現場の理解なしに導入を進め、いきなり運用をスタートしても、従業員はその重要性や必要性を理解できず活用が進みません。

また、新しいツールに抵抗感を抱く従業員も少なからずいるため、導入時には従業員の理解を得ることが大切です。

導入前は、HRテックとは何か、導入することでどんな効果やメリットに期待できるかをしっかりと説明しましょう。HRテックの活用を促すためにはマニュアルを作成したり、従業員にも活用スキルを習得してもらうことも必要です。

HRテックに依存しない

HRテックは人事領域のあらゆる業務をカバーできます。しかし、あくまで効率化や業務の質を高めるためのサポート役であり、最終的な判断や施策の実施は「ヒト」の役割です。

とくに、採用や人材配置、評価のように意思決定が必要な業務では注意が必要です。最終的な判断は「ヒト」がすることを念頭に、HRテックに依存しすぎないよう気をつけましょう。

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8.HRテックの種類

HRテックは、人事領域の業務を効率化させるシステムの総称です。具体的にどういった種類のツールがあるのか、代表的なものをご紹介します。

タレントマネジメントシステム

タレントマネジメントシステムは、従業員が保有するスキルや能力、経験や適性などの情報を一元化・可視化し、組織や人材のパフォーマンスを最大化するためのシステムです。

人材情報を一元化・可視化することで、経営戦略を達成するための人事戦略の質を向上できます。さらに、データの分析によって戦略的な人材育成や人材配置につなげられます。

主な機能

  • 人材データベースの構築・管理
  • 後継者管理
  • 目標・パフォーマンス管理
  • 要員計画
  • 報酬管理
  • ハイパフォーマーの特定 など

労務管理システム

労務管理システムは、給与計算や勤怠管理、社会保険の手続きといった、労務業務を効率化するシステムです。労務管理は定型業務や事務業務も多く、HRテックによって代替・効率化しやすい領域です。

労務管理にHRテックを導入することで、多様な働き方への対応や、職場環境の改善、整備といった重要度の高い業務に集中できます。

主な機能

  • 給与の自動計算
  • Web給与明細の発行・配布
  • 年末調整の手続き
  • マイナンバー管理
  • 勤怠管理(勤怠や残業の自動集計など)
  • 法改正対応 など

採用管理システム(ATS)

採用管理システムは通称「ATS」とも呼ばれる、採用活動を効率化するシステムです。ATSは「Applicant Tracking System」の略称です。

採用管理システムでは、求人募集から応募の受付、応募者とのスケジュール調整や採用進捗の管理などを採用の一連のプロセスをシステムに一元化できます。蓄積した採用データをもとに、戦略的な採用活動に取り組めるようになります。

主な機能

  • 求人管理(求人の作成や募集状況の管理)
  • 応募者の情報管理
  • 選考管理(面接の日程調整、選考の進捗管理、面接の評価の一括管理)
  • 内定者管理
  • 採用データの蓄積・可視化・分析 など

学習管理システム

学習管理システムは通称「LMS」と呼ばれる、eラーニングをはじめとした社内での学習活動を管理・運用するシステムです。LMSは「Learning Management System」の略称です。

eラーニングを実施するプラットフォームにもなり、その中で学習履歴の管理や社内SNS、教材の作成といったさまざまな機能を備えています。企業側が学習を管理するための機能というよりは、従業員が学習しやすい環境を構築し、学習効果を高めることを主眼に置いたHRテックです。

主な機能

  • 教材管理
  • eラーニングの配信
  • 受講者管理
  • 学習進捗管理
  • 成績評価
  • コミュニケーション機能
  • レポート機能 など

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9.HRテックの主な企業・サービス一覧

ここでは、ジャンル別にHRテックサービスを展開する主な企業とサービスを一覧でご紹介します。

タレントマネジメントシステムの主な企業・サービス

企業名 株式会社カオナビ
サービス名 カオナビ
概要 社員の個性・才能を発掘し戦略人事の実現をサポート。人材情報の一元化・可視化、人事労務業務や評価業務の効率化、人材配置やハイパフォーマー分析など、人事領域の効率化や人事戦略に必要な機能をラインナップ。
企業名 株式会社プラスアルファ・コンサルティング
サービス名 タレントパレット
概要

中堅・大手企業向けのタレントマネジメントシステム。人事+マーケティングで人事業務の効率化とデータに基づく「科学的人事」を実現。人事業務や人事戦略に必要な機能をワンプラットフォームで提供。

企業名 株式会社HRBrain
サービス名 HRBrain
概要 従業員のスキルや特徴がわかる人材データベースを活用したタレントマネジメントから、煩雑な人事業務の効率化までワンストップで実現。課題に合わせて必要な製品を選べる導入の柔軟性が強み。

労務管理システムの主な企業・サービス

企業名 株式会社SmartHR
サービス名 SmartHR労務管理
概要

各種手続きをペーパーレス化し、労務業務のあらゆるミスをなくすことで、業務をカンタンに。業務を通じて蓄積された従業員データを人的資本経営やタレントマネジメントにも活用できる、多機能型の労務管理システム。

企業名 株式会社DONUTS
サービス名 ジョブカン労務HR
概要 すべての従業員規模に対応できる、幅広い労務業務を自動化&効率化できるシステム。人事労務まわりの紙書類を無くし、電子申請も利用できる。人事労務の自動化・効率化から人材情報の活用、電話・メール・チャットの無料サポートなど、機能が充実。
企業名 フリー株式会社
サービス名 人事労務freee
概要 人事に関する情報を一元管理し、バックオフィス業務全般を効率化。機能の充実性はもちろん、他システムとの連携性も抜群。導入前から導入後まで、サポート体制も充実。

採用管理システムの主な企業・サービス

企業名 株式会社ビズリーチ
サービス名 ハーモス採用
概要 ビズリーチ社の自社開発システム。採用の効率化から分析・改善までハーモス採用ひとつで完結。オペレーション業務の削減、レポートの自動作成から採用に関するあらゆるデータが瞬時に見える化。
企業名 Thinkings株式会社
サービス名 採用管理システムsonar ATS
概要

新卒・中途採用に関するあらゆる採用業務を効率化。新卒・中途採用の総合・一括管理が可能。料金形態は管理する応募者の人数と利用期間で決まり、インターンシップ期間だけの短期利用にも対応。

企業名 株式会社DONUTS
サービス名 ジョブカン採用管理
概要 中途・新卒の一元管理ができるシステム。採用業務の効率化や分析機能だけでなく、採用サイトを簡単に作成できる機能付き。採用管理だけでなく、母集団形成のサポートまで可能。30日間の無料トライアルあり。

学習管理システムの主な企業・サービス

企業名 KIYOラーニング株式会社
サービス名 AirCourse
概要

受け放題の動画研修がついた学習管理システム。幅広いテーマの動画研修コンテンツが受け放題に加え、自社オリジナルコースの作成も可能。学習管理はもちろん、SlackやLINEのように使えるコミュニケーション機能などが充実。

企業名 株式会社ライトワークス
サービス名 CAREERSHIP
概要 異なるシステムを利用しているグループ会社間での学習の一元化、部門や施策単位の教育の効率化が可能。学習環境や管理機能の提供だけでなく、キャリアマップ機能やスキル管理機能など、「攻めの教育」を実現する戦略的な機能をラインナップ。
企業名 株式会社デジタル・ナレッジ
サービス名 ナレッジデリ
概要 マルチブラウザ対応で多様な受講環境を構築。社内のナレッジを共有するプラットフォームとして、教材作成から学習、運用管理まで幅広い機能を完備。一部運用をベンダーに任せられ、導入も手軽な点が特徴。

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10.HRテックと関わり深いテクノロジー

HRテックには、さまざまなテクノロジーが活用されています。なかでも、関わりが深い4つのテクノロジーをご紹介します。

AI

AIは、近年さまざまな分野での導入・発展がめざましいテクノロジーです。「人工知能」ともいわれるように、データを読み込み学習することで解析結果を出力する能力があります。

学習期間が必要であり、学習対象のデータが豊富かつ質が高いほど性能も高まります。最終的な判断はヒトが行うべきですが、その意思決定に大きな影響をもたらす可能性があるテクノロジーです。

ビッグデータ

ビッグデータとは、人の手では解析が難しいレベルの膨大なデータ群のこと。AIとの関連が深く、AIの根拠となるデータです。

組織運営が続く以上、日々データが蓄積されていきます。蓄積されていくデータがビッグデータとなり、AIも併用して解析できれば、人力での分析からは発見できない課題や要素が抽出できるようになります。

クラウド/SaaS

クラウドは、ネットワークを通じて、サーバーやストレージなどのITリソースを利用できるサービスです。ネット環境があればどこでもデータにアクセスでき、自社でサーバー管理の手間がなくなるといったメリットがあります。近年、セキュリティ技術も高まっており、クラウド利用の安全性も高まっています。

そして、このクラウドを利用して提供されるソフトウェアがSaaSです。SaaSは「Software as a Service」の略称で、HRテックにも多くのSaaSがあります。これにより、社内での情報共有の円滑化やデータ管理の一元化などが可能となります。

RPA

RPAとは「Robotic Process Automation」の略称で、作業をソフトウェア・ロボットが代行する技術です。人事領域において、労務に関する事務作業の自動化を担うテクノロジーです。給与の自動計算など、一部作業をミスなく効率的にこなしてくれます。

hrtechのQ&A

HRテックとは、Human ResourcesとTechnologyを掛け合わせた略語です。人的資源管理とテクノロジーが融合した新システムを指します。 ビッグデータ解析やIoT、AI(人工知能)、クラウドサービスといった最先端のIT技術によって、従来にない新しい人事・組織マネジメントサービスが生まれています。
HRテックを活用できる領域はおもに下記3つです。 ①人事業務のデータ化・一元管理 ②オペレーションの効率化 ③分析や仮説立案の精度・速度の向上 あらゆる人材情報をデータ化して一元管理するHRテックでは、これまで手間のかかってじゅた人事業務のオペレーションも効率化できるはず。 また、既存データを用いた現状分析や仮説立案の精度を高めるだけでなく、ビッグデータの解析技術などを用いて分析・立案に要する時間を短縮できるでしょう。
牛丼チェーンの吉野家のほか、讃岐うどんのはなまる、寿司の京樽、ステーキのアークミールなど、国内外で2,900店以上を展開する大手チェーングループの吉野家ホールディングスでは、 ・グループ内で人材情報を一元管理したい ・社員の顔と名前を一致させたい ・埋もれている人材を可視化したい などの目的でHRテックを導入。グループ各社それぞれの目的やねらいに合わせ活用しています。 参考:吉野家ホールディングスの導入事例