トップマネジメントとは? 意味、役割、求められる能力とその影響力

稲盛和夫、カルロス・ゴーンや孫正義など、日々著名なトップマネジメントの言動に社会的な関心や注目が集まっています。現役の経営者だけでなく、松下幸之助や本田宗一郎、スティーブ・ジョブスなどの故人にまつわるエピソードも、目にしない日はないといっても過言ではありません。彼らは憧れの存在でもあり、成功者から英知を授かりたいと願う人々の関心の対象となっています。

一方で「だからうちのトップはダメなんだ!」「トップが変わらない限りどうにもならない…。」といった居酒屋トークが展開される光景もまた珍しいものではありません。あるときは救世主であり、革命児、またあるときは戦犯とも評されるトップマネジメントですが、実際はどんな役割を担う人たちなのでしょうか。

今回は、トップマネジメントに必要な能力、そして、彼等が具体的に組織のパフォーマンスにどのような影響を及ぼしているのかをそれぞれ解説していきます。

組織で働く2種類の人―マネジメント層と一般従業員

組織で働く人は、一般従業員の層とマネジメント層の2種類に分けられます。一般従業員は、直接作業や仕事に携わる従業員のことで、ほかの社員の仕事を監督する責任は負いません。一方、マネジメント層は、組織のほかの構成員たちの活動を指示・監督する立場にある人のことを指します。ほかの人の仕事を監督する以外に、自らも直接的な仕事を行うプレイングマネジャーも存在します。

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トップマネジメントの意味とその役割

組織のマネジメント層は、トップマネジメント、ミドルマネジメント、第一線マネジメントの3つ に分類されます。そのうちトップマネジメントは、経営トップ、あるいは組織の最上層に近い立場にあるマネジャーたちのチームを指します。一般的な肩書きには、社長、副社長、会長、業務執行取締役、最高経営責任者(CEO)、最高執行責任者(COO)、取締役会会長などがあります。

その役割とは、組織の方向性について決断を下し、組織の構成員全員が従うべき方針や理念を定める責任を負うことになります。

より具体的には、企業理念に基づいて外部環境変化に対応する企業文化を維持・革新する「体制構築」と、企業価値配分関係者(ステークホルダー:顧客、社員、株主、現代社会、未来社会)に、均衡した企業価値配分を実現する「関係制御」の役割を担っています。

マネジメント層に求められる経営専門能力とは

ハーバード大学の教授であるロバート・カッツ氏は、マネジメント層が身につけるべき能力を経営専門能力と名づけ、この能力を構成する3つの要素について、次のように言及しています(以下『マネジメント入門』スティーブン・P・ロビンス著, 高木晴夫監訳, ダイヤモンド社,2014より引用)。

(1)「コンセプチュアル・スキル」=仕事を「構想し、企画し、戦略を寝る」力

目標達成のための業務はどのような要素がどのような理由で関係付けられていて、今後は、その業務をどのように展開していくべきか、要素と関係について構想し、企画し、戦略を練る力

(2)「ヒューマン・スキル」=人々を動かすための「人間関係力」=ヒューマン・スキル

業務活動で関係する人々、部下たちのみならず、自分の上司、仕事で関係する人々についてよく知り(その人、という人間を理解する)、自分を含めそれらの人々の関係性についてよく知り(人間関係を理解する)、担当する目標達成に向けて必要な人間関係をつくり、動かしていく能力

(3)「テクニカル・スキル」=仕事が要求する「専門技術力」

業務活動に必要な職能的な技術知識(科学技術的専門知識、会計や財務の専門知識、マーケティングの専門知識、法律や人事の専門知識など)を持ち、活用できる能力
(引用終)

マネジメント階層ごとに異なる要求能力の割合

これらの能力はすべて、トップマネジメント、ミドルマネジメント、第一線マネジメントの各階層において同様に必要になりますが、各ポジション別に必要とされる割合が異なるとされています。

組織のトップレベルに近づくにしたがって、構想力、企画力、戦略力の必要度が増し、コンセプチュアル・スキルが最重視されるようになります。一方で、ヒューマン・スキルはどのマネジメント階層においても等しく重要になってきます。

経営スタイルによって異なるトップマネジメントのパフォーマンスへの影響度合い

実際に、トップマネジメントは組織にどのような影響を与えているものなのでしょうか。

まず、トップマネジメントのスタイルには、「急進的な変革の推進者」とするモデルと、「長期的な時間の広がりの中での経営の継承の担い手」とする2つのモデルが存在するとされています(加護野,野中,榊原,奥村)。

そして、米国型企業のように、トップマネジメントの交代があるとプラスにせよマイナスにせよ業績変動が大きいのが前者のモデルで、日本企業のように、長期ビジョンをバトンリレー式で完成させていくため、「戦略転換や組織変更には殆ど影響がない」(Sakano & Lewin, 1999) のが後者のタイプになります。

このように、マネジメントのスタイルによって、トップマネジメントによる経営への影響度合いが異なることが実証されていますが、どちらのスタイルを採用していても、それぞれの組織の目的・目標にかなった経営成果が出ていればよいのであり、類型自体に優劣はつけられません。

メディアでは変革型トップマネジメントが賞賛される傾向にありますが、企業には「変革」だけでなく「継承」も、経営資源の蓄積・育成の観点から欠かせないという視点も同様に重要な指摘となっています。


1:ミドルマネジメント…トップマネジメントが設定した目標を具体的な形にして、第一線マネジャーが実施できるようにする役割を担っている。肩書きは、局長、事業部長、部長、課長、プロジェクトリーダー、地区マネジャー、店長などがある。第一線マネジャー…一般従業員たちの日々の仕事を指示する責任者である。監督、チームリーダー、コーチ、などと呼ばれることが多い。

2:『マネジメント入門』スティーブン・P・ロビンス著, 高木晴夫監訳, ダイヤモンド社,2014より『マネジメント入門』スティーブン・P・ロビンス著, 高木晴夫監訳, ダイヤモンド社,2014

3:『MBA リーダーシップ』p.226大中忠夫監修 グロービス・マネジメント・インスティテュート編, ダイヤモンド社, 2006

4:『マネジメント入門』スティーブン・P・ロビンス著, 高木晴夫監訳, ダイヤモンド社,2014

5:Kagono, T., Nonaka, I., Sakakibara, K., & Okumura, A.(1983). 日米企業の経営比較:戦略的環境適応の理論 [Comparison of management systems between American and Japanese corporations: The theory of strategic adaptation to environment]. 日本経済新聞社.

6:Sakano, T., & Lewin, A.Y. (1999). Impact of CEO succession in Japanese companies: A coevolutionary perspective. Organization Science, 10(5), 654-671.