ドラッカーのマネジメントとは? 経営思想家「ピーター・ドラッカー」の生い立ちや生み出した用語、ドラッカーのマネジメントに対する考え方などについて

ドラッカーのマネジメントは、現代社会でも広く活用されています。ここでは、ドラッカーのマネジメントについて解説します。

1.ドラッカーのマネジメントとは?

オーストリア・ウィーン生まれの経営学者ドラッカーは、マネジメントについて、「本質的で、顕著で、主要な制度としてのマネジメントの出現が社会の歴史における中心的な出来事であり、西洋文明が存続する限り基本的で支配的な制度である」と述べています

マネジメントとは?

マネジメントとは、取り扱いや措置、管理といった意味の言葉で、経営管理論といったビジネス用語で用いられる場合、「ヒト・モノ・カネ」3つの管理を意味します。しかしマネジメントは単なる管理に留まらず、下記さまざまな要素を総合的に含む概念なのです。

  • 計画
  • 選択
  • 調整
  • 評価
  • 分析

マネージャーの意味

マネージャーは、「物事を管理、監督する人」「チームの世話をする人」「外部との交渉を取り仕切る人」などを意味する言葉で、さまざまな方法を用いて実際にマネジメントを遂行します。

特徴は、「プレイヤーとして自らの業務を行う」「組織を管理、監督する」両方の役目を担う点です。

マネージャーの役割

マネージャーの役割は、下記のとおりです。

  • 担当業務の推進
  • 組織の管理、監督
  • 部下が仕事のしやすい、また部下に仕事を任せられる環境整備
  • 部下への適切な指導
  • 組織としての目標を設定し、組織のビジョンの明確化

マネージャーは、自らの担当業務から組織の目標達成、部下の管理や育成まで、幅広い分野での役割を担っています。

ドラッカーのマネジメントは社会に浸透しており、ビジネスの世界では、マネジメントは、「ヒト・モノ・カネ」3つの管理に用いられます

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2.ピーター・ドラッカーとは?

ピーター・ドラッカーは、オーストリア出身の経営思想家で、「経営学の父」「マネジメントの権威」「ビジネス・コンサルタントの創始者」です。下記のような経営概念を数多く生み出しました。

  • 顧客の創造
  • 知識労働者
  • 分権制
  • ナレッジマネジメント

ピーター・ドラッカーの出生について

ピーター・ドラッカーの出生は、1909年第一次世界大戦前に遡ります。大学在学中に、米国系投資銀行に就職したものの、世界恐慌による経営破綻により地元の新聞社に転職しました。

当時はナチスの台頭が目覚ましかったため、ドラッカーはヒトラーに取材をし、ファシズムの起源を分析した「経済人の終わり」を出版したのです。その著書はイギリスのチャーチル首相も絶賛しました。

ドラッカーが生み出した用語・概念

ドラッカーは、経営に関する用語や概念を生み出しました。ここでは、下記について解説しながら、ドラッカーから見た「日本」について触れます。

  1. 顧客の創造
  2. 知識労働者
  3. 分権制=事業部制
  4. ナレッジマネジメント(KM)

①顧客の創造

顧客の創造とは、「企業の目的は顧客の創造である。したがって、企業は二つの、ただ二つだけの企業家的な機能をもつ。それがマーケティングとイノベーションである。」という主張から生まれた概念のこと。これは、下記のようなことを意味します。

  • 企業組織のマネジメントが企業活動の存続につながる
  • 顧客の継続的な獲得で利潤を生み出せる
  • 顧客の獲得に必要なのはマーケティングとイノベーション

②知識労働者

知識労働者とは、主にコンピューターなど新しい知識を用いて付加価値を生み出せる労働者のこと。

さまざまな知的生産物を創造できる知識労働者は、ナレッジワーカーとも呼ばれます。高度な専門知識を持つ労働者として、従来あるマニュアル化された単純労働者とは正反対の労働者像が生み出されました。

③分権制=事業部制

分権制もしくは事業部制とは、経営管理方式のひとつです。下層の管理者に意思決定を委譲する管理方式で、下記を実現します。

  • 経営トップの負担の軽減
  • 経営トップが重要事項の決定への専念
  • 下層管理職のモラール向上
  • 現場に即した迅速な意思決定

ドラッカーは分権制を、 連邦的分権制と職能的分権制、2つに分けて捉えているのです。

④ナレッジマネジメント(KM)

ナレッジマネジメント(KM)とは、企業が蓄積している知識や経験、ノウハウや技術、顧客情報などを全社で共有し、競争力を向上させる経営手法のこと。

目的は、経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報のうち、情報を全社的に共有・活用できるように整えて、競争力や価値を高めることです。

ドラッカーから見た「日本」

ドラッカーから見た日本を象徴するのは、「こんにち、最も困難な試練に直面している先進国が、この半世紀間、社会として最もよく機能してきた日本である」(『明日を支配するもの』より)という一文です。

親日家であったドラッカーは、日本の終身雇用や年功序列制度を評価する一方、本業に捉われずと副業やボランティアに熱心に取り組む「パラレルキャリア」も評価していました。

ドラッカーは、「顧客の創造」「知識労働者」「分権制=事業部制」「ナレッジマネジメント(KM)」などの経営用語を生み出しました

3.ドラッカーの名言6つ

ドラッカーは、経営にかかる名言を多く残しており、それらは多くの企業の指針となっています。そんなドラッカーの名言6つを取り上げ、それぞれの意味を解説しましょう。

  1. マネジメントとは人のことである
  2. 人が成果を出すのは強みによってのみである
  3. 強みは当然とできるもので気づかない
  4. 他社との比較で自社の強みを見つけ出す
  5. 組織の目的は、人の強みを爆発させ、弱みを無くすこと
  6. 目指すべき組織は、凡人でも非凡な働きができる組織

①マネジメントとは人のことである

ドラッカーの名言のひとつは、「マネジメントとは人のことである」。これは、人が共同することにより結果や成果を生み出せるという概念にもとづいた言葉です。

この概念が意味するのは、マネジメントで強みを発揮すると、世の中に貢献しながら弱みのない組織が構築でき、それによって人が創造的な存在に成長できることです。

②人が成果を出すのは強みによってのみである

「人が成果を出すのは強みによってのみである」という名言は、人が何か目的を成し遂げるためには、強みのみが必要という意味の言葉です。

弱みを強みに変えようと努めても、平均的・平凡なものになることすら難しいもの。よってただひたすら強みにフォーカスを当てると、大きな成功を収められると語っているのです。

③強みは当然とできるもので気づかない

「強みは当然とできるもので気づかない」という言葉では、強みの特徴を的確に表現しています。強みは人が意識しないで当然にできることで、多くは自分の強みにすら気が付いていません。

メンバーの強みを組織で発見しながら、お互いの強みを利用し合える関係性を構築すると、成功への近道になる点を示しているのです。

④他社との比較で自社の強みを見つけ出す

ドラッカーは、「他社との比較で自社の強みを見つけ出す」とも語っています。

これは、

  • 他社で成功したもので、自社で失敗したもの
  • 他社で失敗したもので、自社で成功したもの

を比較して改めて自社の強みを発見するという意味です。競合他社との闘いに勝利するため、強みに集中するには、自社の強みと弱みの分析が必須だと説いています。

⑤組織の目的は、人の強みを爆発させ、弱みを無くすこと

「組織の目的は、人の強みを爆発させ、弱みを無くすこと」とは、ドラッカーが説いた組織論のひとつです。

組織をマネジメントするというのは、人の強みを最大限発揮し、人の弱みを可能な限り無くすこと。人は最大の経営資源です。強みのみに焦点を当て、弱みを中和し無害なものにしていくと、人を組織で活かせます。

⑥目指すべき組織は、凡人でも非凡な働きができる組織

ドラッカーは、「目指すべき組織は、凡人でも非凡な働きができる組織」といった面白い名言も残しています。天才がいれば組織はそれに頼れますが、天才の存在は稀ですので、下記が組織の目指す形だと唱えているのです。

  • 凡人から非凡と思える強みを引き出す
  • 凡人の非凡な部分をメンバー同士で影響し合う

ドラッカーは、多くの名言を残しています。現在のビジネス社会にも通用する名言なので、ぜひ真理を理解しておきましょう

4.ドラッカーの企業の捉え方

ドラッカーのマネジメントに対する理解を深めるには、ドラッカーの企業の捉え方を正しく理解することが必要です。ここでは、ドラッカーの企業の捉え方について、ポイントを絞って解説します。

企業の目的は、顧客を創造し維持することにある

ドラッカーは、「企業には、マーケティングとイノベーション、2つの基本機能が必要」だと説いています。企業が、顧客を創造して維持するには、2つの基本機能を最大限活用することが必要なのです。

マーケティング

マーケティングとは、顧客の存在や特性を明らかにし、接触方法を提起することで、その目的は、下記のとおりです。

  • 顧客の属性や特徴、ニーズの十分な理解
  • 顧客のニーズに合った製品やサービスの提供
  • ニーズと合致している製品やサービスの販売向上

イノベーション

イノベーションとは、より優れたより経済的な製品やサービスを提供すること。ドラッカーはイノベーションを、「パフォーマンスの次元を変えること」と捉えており、イノベーションにより、富や資源の創造を起こす道具として活用することを説いています。

マーケティングのイノベーション

マーケティングのイノベーションとは、イノベーションはマーケティングそのものという発想です。イノベーションの定義が、「支配的な価値次元を新しい価値次元に転換」だとするなら、それはマーケティングの在り方を変えるものになり得るという意味になります。

コモディティ化

コモディティ化とは、高付加価値製品が個性や市場価値を失って、他社と差別化できない一般的製品になること。コモディティ化が起こると、下記のような悪循環が生まれます。

  • 製品選択基準が販売価格の違いだけになる
  • 企業は安価な製品を製造せざるを得なくなる
  • 企業経営を圧迫する

マーケティングのコモディティ化

マーケティングのコモディティ化とは、マーケティングの基準が製品価格以外になくなるため、競争の視点がコストの低減以外に存在しなくなること。マーケティングがコモディティ化されることは、マーケティングの敵です。

脱コモディティ化

脱コモディティ化とは、価格のみによる企業競争から脱却を図ることで、その鍵を握るのは、「その製品(サービス)にユニークな価値を普遍的かつ客観的に測定可能な特定少数の次元にもとづいて把握できる程度」という意味の価値次元の可視性です。

ドラッカーの企業の捉え方を示すキーワードは、「マーケティング」「イノベーション」「コモディティ」の3つです

5.ドラッカーのマネジメントに対する考え方

ドラッカーのマネジメントに対する考え方には、重要なポイントがあります。ここでは、ドラッカーのマネジメントが重要だとした「労働」について、下記5つの考え方を解説します。

  1. 生理的次元
  2. 心理的次元
  3. 社会的次元
  4. 経済的次元
  5. 政治的次元

①生理的次元

労働を生理的次元で考えた場合、ヒトを機械のように扱ってはなりません。労働の主体であるヒトに、たとえば長時間一つの作業を延々と繰り返すような多様性を否定する働き方を強制すると、疲弊してしまいます。

②心理的次元

人にとって喜びと苦しみの両方を与えてくれる労働とは、人格の延長線上・自己実現の場
で、これらは心の動きに大きな影響を及ぼします。労働を通して、「自分の価値を知る」「自分の人間性を問う」といった心理的な側面を考えることも必要です。

③社会的次元

労働は、「ヒトとヒト」「ヒトと社会」をつなぐ社会的な営みです。一日の多くを労働に費やしている点からも分かるとおり、職場はひとつのコミュニティとして重要な役割を果たしています。コミュニティ、すなわち組織を社会的なものと捉える視点が必要です。

④経済的次元

労働の経済的次元とは、労働が金銭を得るための手段であること。「労働により得た金銭を使うことで、他の労働者の金銭を生み出す」といったつながりを生み出していると説いたものです。

⑤政治的次元

政治的次元とは、権力関係のこと。「上司と部下」「派閥」「部署間の対立」といった構造からも分かるとおり、企業活動には権力構造が付いて回ります。労働の政治的次元について考慮することも、マネジメントには不可欠なのです。

ドラッカーのマネジメントでは、労働について、「生理的次元」「心理的次元」「社会的次元」「経済的次元」「政治的次元」5つを考える重要性が説かれています

6.ドラッカーから学ぶマネジメントで大切なこと

ドラッカーから学ぶマネジメントでもっとも大切なことは、「人は経営資源のマネジメント」。ここでは、経営管理者不在の時代にマネジメントを説いたドラッカーがたどり着いた概念を解説します。

人は経営資源のマネジメント

ドラッカーは、「ヒトは経営資源のマネジメント」を提唱していますが、多くの企業では対人マネジメントの機能不全に頭を抱えているもの。それは、「ヒトの存在の軽視」「ポジションパワーでのヒトのコントロール」に起因しています。

ドラッカーは、動機付けられた部下自身の自己統制によってマネジメントを進めていくことが、機能不全を解消する唯一の解決策だと指摘しているのです。

ドラッカーは、「ヒトは経営資源のマネジメント」というコアコンセプトを大切にしています。それは、対人マネジメントの機能不全を解決する唯一の方法だからです